オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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115 観察者への襲撃

自己強化に限界は無いが、制限がある。

アギトの力は時間と経験さえ重ねればほぼ無限に進化するし、テオスの力も時間さえかければ更に制御が効く様になるだろう。

だがそれはどちらも時間をかけさえすればという前提のものでしかない。

 

時間をかける、というならタイムベントを使えば、と思うかもしれない。

だがタイムベントを使った時間遡行は本能的にアギトには察知されてしまう。

それは取りも直さず、俺以外のアギトの進化を促進する結果にも繋がってしまうだろう。

無論、最終的に人類の中のアギトの力が成長するのは喜ばしいことではある。

しかし、力に振り回される、或いは力に酔うタイプのアギトもまた増える事が予測される。

 

それを俺が発見する事ができれば力を没収してしまえば済む話なのだが。

これを他の人類敵対勢力に確保されたりすると面倒な事になるだろう。

ゴルゴムに確保されたり、というのは想定しなくて良い。

ゴルゴムの規模を考えれば間違いなく構成員の中にアギトの力に目覚めた者が居るだろうと予測がつくからだ。

なんならアギトベースの改造人間が居てもおかしくはない。

 

アギトのオルタリングはアークルやゲドルードと異なり、人間態の時にわかりやすい弱点として体内に存在している訳ではないが、分子レベルで分解された状態ではあるものの、全て体内に格納されている。

これを見抜いてさえしまえば、アギトの超進化の力と怪人化手術による強化を両立した新たな戦士を作るのは、ゴルゴムにとっては容易な筈だ。

それが表立って運用されていない、或いは、既存の兵隊であるイミテーションにアギトの力が移植されていないという時点で、何かしらの思惑があるものと考えられるが……。

これは今考えても答えが出るようなものでなく、考えれば考えるだけただの妄想になってしまうので打ち切る。

 

自己改造にも限界はある。

今の俺の人間態も、厳密に言えば無改造の人間とは異なる素材を使用している。

そしてその状態をアークルに記憶させているので、これがデフォルトとなっている。

だからこそ、人間の反応速度の限界を越えることも出来るし、過度な超能力を使用しても脳に反動が来ず、並より上かな程度の怪人なら捩じ切れる膂力を持つ事ができている。

が、今の俺が持つデータではこれ以上の更新は難しい。

アギトの力かテオスの力のおかげで時間操作への耐性はあるものの、変身態でなければ出来ないことの方がやはり多いというのも事実。

時間操作問題はそれこそホモというサンプルが居るので、時間に任せてしまえば見様見真似で習得も不可能ではないのだが、その時間が作れない。

局所的な時間加速ならば周囲への影響も無いが、それでできる進化というのも限界がある。

ただ悪戯に一個体が長い時間を過ごした所で、それが成長に繋がる訳ではない。

 

解決の鍵となるのは、それこそアンデッド、そしてそれを元に動植物の細胞と組み合わせる事で生み出すことができるトライアルシリーズ。

生存本能、進化への種族的欲求が実体化した集合無意識とも呼べるアンデッドと異なり、トライアルシリーズはそれを限定的にとはいえ、実体のある一個体へと移植してみせているのだ。

そして、トライアルシリーズは人間の記憶と、人間の姿を取ることもできる。

人間としての構造を破綻させずに、アンデッドの力を行使する。

これを矛盾を持たせず物理的に再現することのできる構造がトライアルシリーズには存在しているのだ。

 

第一号であるクマー、その構造を元の熊と比較して、毒蔦を生やし操る構造、というのは解析できた。

これは比較的単純な作りであった為に容易に再現が可能だったが……。

より複雑な、或いは概念的な能力を操るアンデッドの力というものは、トライアルシリーズとして再現できるのか。

それを検証するためにも、やはりデータは必要になってくる。

 

天王寺のところならば細胞を全て保管はしているだろうが、あちらはあちらで研究を続けている。

手間を省くという意味でも資料を物理的に奪うのは悪手だし、それが発覚すれば警備は厳重になり、或いは何らかの対策を講じられてしまうのが落ちだ。

盗みがばれない最善の方法は、相手に盗まれた事を悟らせない事である。

そして、情報だけを抜くのであれば相手は盗まれた事にそうそう気づけ無いし、気づけないという事は今の警備体制に疑問を抱く事をしない。

盤石の警備であると信じればこそ、相手は新たな手を打たない。

 

データを取ろう。

戦闘データを、細胞サンプルを採取して。

秘密裏にトライアルシリーズの生産を続け。

生物化したアンデッドの特殊能力を解析し。

各種構造を理解した上で、新たな身体機能として組み込む。

今回できる自己強化となれば、この程度が限度だろう。

 

自由に動かせる兵隊の強化、増産。

アンデッド由来の能力の、トライアルシリーズ製造を経由した解析と取り込み。

これを、今回の一連の騒動のとりあえずの目的とする。

 

偽りのバトルファイト。

これを、少しでも新ゴルゴムとの力の差を埋めるための足がかりにさせて貰う。

 

―――――――――――――――――――

 

若松町、ショッピングモール。

日が沈み電灯に照らされるのは、綺羅びやかな店構えだけではない。

ほんの数分前までは生きていた筈の、まだ温かみすらあるだろう死体。

身体の一部を大きく陥没させ、あるいは無理矢理に肉を引き裂かれたかの様なその死体を作り出したのは、カテゴリー9、シマウマの始祖であるというゼブラアンデッドだ。

 

ゼブラアンデッドの姿を見て逃げ惑う人々の走りに躊躇いは無い。

人々の中で既に、人間を襲う異形の者、という脅威は広く浸透している。

だが、想定外の事が起きればたちどころにその落ち着きも崩れ去ってしまう。

ゼブラアンデッドから逃げた先、先回りしたかの様に現れるゼブラアンデッド。

特殊能力である分身だ。

分身が、或いは本体が、巨大な馬蹄型のブーメランを投げるでもなく棍棒の如く無造作に振るえば、その場から逃げ遅れた人間はたちまちに物言わぬ躯と化す。

無論、ショッピングモールの出入り口は二つだけという事もなく、総体で言えば逃げた数の方が多くはあるが……。

 

多くの人間を本能のままに殺し、悠々とショッピングモールから出ていくゼブラアンデッド。

その正面に立つのは、ギャレンバックルを手にした橘朔也だ。

恐怖に飲まれ戦いから離れ、しかし、実際に人々を襲う脅威を前に、命惜しさに逃げ出す程にも諦めきれない。

踏み出したのは、戦士としての矜持か、或いは。

倒れ伏した母に泣きながら縋る子供を目にした為か。

誤魔化しきれない恐怖と、恐らくは同等か上回る程の怒りに震えながら、淀みなくバックルを装着。

 

『ターンアップ』

 

震えを抑え込んだ手がターンアップハンドルを引き、分子レベルで分解されたギャレンアーマーで構築されたオリハルコン・エレメントを展開。

走り出し、光の壁をくぐり抜けたなら、そこに橘朔也の姿はない。

現れたのはBOARD製仮面ライダーシステム一号、ギャレン。

 

得物であるギャレンラウザーを構える事すらせず、一気に距離を詰め殴りかかる。

元々は研究者としてBOARDに務めていた橘ではあるが、その戦歴は長い。

なんとなれば研究者として務めた時間よりも戦士として戦った、或いは戦いに備えた時間の方が長いかもしれない。

度重なる戦闘訓練、多くのアンデッドとの戦闘経験は、間違いなく橘朔也を仮面ライダーギャレンとして成立させる程のものだ。

それが正常に発揮されたのならば、という話ではあるが。

 

インファイトでの殴り合い。

BOARD製の、対アンデッドシステムであるギャレンにとって、初手で何らかのカードを使用する、という事は稀だ。

アンデッドは不死であるというだけでなく、人間を遥かに超える身体能力を備える。

それ故、目の前の敵が銃をホルスターから引き抜き、後部のギミックを展開させ、そこからカードを引き抜き、銃に備えられたスリットへと滑り込ませる、という行動を黙って見逃し、その後に放たれる技を受けてやる理由がない。

 

封印する為に大ダメージを与える必要がある。

大ダメージを与える為にラウズカードを使った必殺技を当てる必要がある。

必殺技を当てる為に動きを鈍らせる必要がある。

動きを鈍らせる為にある程度のダメージを与える必要がある。

 

或いは、ここが人里離れた洞窟の類であれば話は違ったかもしれない。

ギャレンの主武装である醒銃ギャレンラウザーは拳銃型のデバイスであり、本体からエネルギーが供給される限りは弾切れもそう起きない。

肉弾戦を行う代わりにひたすら銃撃を浴びせるという選択肢もあり得た。

だが、そうはならない。

市街地、いや、それどころか人が多く居たショッピングモールを背後にしての発砲は難しい。

既に大半が逃げ、残るのは殆ど死体のみだが、まだ息がある人間が居る可能性は捨てきれない。

冷静に判断すればするほど、ギャレンラウザーを抜く事ができない。

 

或いは。

恐怖の感情に縛られて戦えないという現状を否定する為に、あえて格闘戦を挑んでいるのか。

叫び声すら上げながらゼブラアンデッドへ拳を振るう姿は勇ましく思える。

だが、それが恐怖を抑え込む為のもの、自分を奮い立たせる為に必死に絞り出したものである事は、戦闘を傍から見つめるものからすれば一目瞭然だった。

 

禿げ上がった小太りの中年科学者が、融合係数を測定するスコープ越しにギャレンを見詰めている。

 

「512EHから、500、490、484……」

 

スコープに映された橘の融合係数は見る見る内に低下していく。

ギャレンの、BOARD製ライダーシステムの初期型故の欠点、使用者の恐怖心を増大させ、破滅のイメージを抱かせる。

それは少なくとも、恐怖心を抱いたまま赴いた戦いの中で克服できるような生易しいものではない。

 

「相変わらずだな……。戦い始めると融合係数が下がる」

 

アンデッドですら、真のバトルファイトの中ですら、ああいう戦いを行う戦士は居なかった。

戦いに臨むというのであれば、何らかの手段で肉体、精神ともに整えて、というのが、アンデッドの中でも常識だった為だ。

 

「重症だな」

 

中年の科学者の隣でギャレンの戦いを見下ろす伊坂──ピーコックアンデッド。

伊坂の頭の中には、既にギャレンを自らの手駒として利用するプランが完成していた。

古代のバトルファイトにおいてもアンデッド達が利用していたシュルトケスナー藻を使い恐怖心を消し去り、その依存性を利用して自らの手駒とする。

それは、アンデッドを統制者の助けが無くとも封印できる、ジョーカーの力を模倣したシステム、ライダーシステムを利用してバトルファイトの勝者となる為の一手に過ぎない。

その上、伊坂は既に残されたカテゴリー1、スパイダーアンデッドを利用した新型のライダーシステムの設計開発、装着者の選別を開始している。

橘朔也とギャレンは、あくまでも新型の、最強のライダー完成までの繋ぎに過ぎない。

 

ピーコックアンデッドにとって、人間は洗脳して利用するだけの駒、あるいは資源の一種に過ぎない。

故に、依存性の高いシュルトケスナー藻を利用して、使い捨てる様にしてギャレンを利用する事には何ら罪悪感を抱く事はない。

だが……、もしかすれば、無自覚ながらも、戦うものとしての哀れみの様なものをギャレンに感じてもいたのか。

少なくともこの時点のピーコックアンデッドにとって、どのライダーも脅威足り得ない。

最強のライダーを作る上でカテゴリーエースのカードが必要だとしても、それを封印したライダーを撃破して奪ってしまえば良い。

それこそ、不調を抱えてまともに戦えないギャレンの為にシュルトケスナー藻溶液を作り、戦闘への自信を取り戻させるなどという手間をかける必要はない。

 

戦士でありながら、自らの心の弱さを克服できず、それでも戦うしかない。

そんなギャレンに、バトルファイトの参加者として、種族を代表する戦士として、哀れみを抱かずにはいられなかった。

そして、人間は駒でしかないと考えているピーコックアンデッドは、自分がギャレンにそんな感情を抱いているという自覚すらできていない。

そう考えることもできるのかもしれない。

 

人間という生命体が地上に溢れ、その中で隠れるようにして行われる新たな──偽りのバトルファイト。

そこには自覚無自覚問わず、無数の思惑が入り乱れている。

そして、その無数の思惑の中には。

他者の思惑を一切考慮しない、という思惑も存在している。

 

ひゅ、という、風切り音。

人間の聴覚であればまず捉えられないそれに対し、伊坂は反射的に反応して見せた。

腕を振り上げ、前腕で音の発生源を抑える。

がつ、と、人間態でありながらも一定の強度を誇る伊坂の腕に刃がめり込んだ。

不可視の……いや、単純に、夜闇に紛れる様につや消しの赤みがかった黒で染められた刀身。

一見して日本刀の様な、しかし、反りも無く刃紋も無い飾り気のない刀剣。

それを振り下ろしてきたのはマントを被った謎の存在だった。

いや、マントからして普通ではない。

風に揺らめいているからこそ僅かに視認できるが、そのマントは襲撃者の向こう側の風景を写し、背景に溶け込ませていた。

光学迷彩を施されたマントだ。

一般に出回るようなテクノロジーではない。

 

腕を切り落とすことの出来なかった襲撃者が、刃のめり込んだ腕を蹴り、後方宙返りで距離を取る。

そこに伊坂が手をかざし火炎弾を放つ。

空中を跳躍している最中の襲撃者はそれを避けることも出来ず炎に包まれる。

だん、と、襲撃者が着地。

炎に包まれたマントを脱ぎ捨てる。

銀色の機械的全身装甲。

 

何者だ、とも、ライダーか、とも、伊坂が問う事はない。

それは、自らの手中に収めてから確認すれば良いだけの話だからだ。

火炎弾を出した構えのまま、伊坂が意識を集中する。

人間の耳には捉えられない超音波。

脳機能を狂わせ、伊坂の思うがままに意識を操る洗脳音波だ。

 

その音波の中、銀色の戦士の身体が蹌踉めく。

何の対策も施されていないのであれば、この音波から逃れ得る人間というのはそう居るものではない。

 

「面白いものを持っているな……使いみちがありそうだ」

 

ライダーシステムの一種か。

警察の使用している装甲服とは違うのか。

新たな最強のライダーを作る上での参考になるか。

そんな皮算用と共に、集中を強める。

 

「……?」

 

しかし、銀色の戦士は蹌踉めきこそすれ、倒れる気配も、完全に意識を失う気配も無い。

そこに違和感を覚えるのと、伊坂の、いや、ピーコックアンデッドの戦士としての勘が警告を発するのは同時。

音もなく迫る何か。

ナイフ程度の長さを持つ柄の無い刃物が伊坂の首を落とす軌道で迫る。

瞬間的に伊坂の姿がピーコックアンデッドのものに切り替わり、ノーモーションで放たれた羽手裏剣が飛来物を迎撃する。

オリハルコンプラチナの装甲すら破壊する羽手裏剣、それを受けた飛来物はその場に撃ち落とされる──事もなく、数枚の羽手裏剣を切り裂いて勢いを失い、しかし、まるで見えない力に引き寄せられるように再加速し、ブーメランの様に戻っていく。

 

ブーメランが持ち主の、奇襲の下手人の元へと戻る。

キンッ、という金属音と共に、そのブーメランを頭部に装着したのは、先の銀の戦士と同じデザインラインを持つ、銀と赤、そして青の体色を持つ装甲服の戦士。

先の銀の戦士が纏っていた光学迷彩マントと同じものか、しかし、全身を覆わず、背景も映さず、ただ堂々と靡かせている姿は騎士の如く。

マントの下から、明らかに内部に収まりきらない長さの槍を取り出し、穂先を地面に付け、歩く。

がり、がり、と、地面との間に火花を散らしながら引きずられる穂先が次にどこに向けられるかは明白だ。

ピーコックアンデッドの手の中に大剣が現れ、構える。

 

じり、じり、と、互いの距離が詰まる。

ビルの屋上の角にピーコックアンデッド、それを二方向から挟み込む様に銀の戦士と三色の戦士。

 

槍を構えた戦士の身体が前のめりに倒れ込んだ。

ぎ、という、脚部の倍力機構に過剰な負荷が掛かる音と共に、足場が爆ぜる。

方向転換を考えない、上へのそれではない、横方向への跳躍。

走る動きとは根本的に異なる動き。

構えられたピーコックアンデッドへ向けて真っ向から突撃する。

 

大剣で受け流す構えのピーコックアンデッド。

銀の戦士への警戒も解かない。

脅威であるか無いかに関わらず、敵から注意を外さない、というのはアンデッドとして当然の心構えだった。

それがたとえ、剣を鞘に収め腰を落とし、今にも座り込もうとする銀の戦士だとしても。

 

ピーコックアンデッドは人間社会や文化を事細かに調べている訳でもなく、銀の戦士が座り込もうとしているのではなく、居合の構えを取ろうとしているということにも気づかない。

だが、単純なスペック差の問題で、ピーコックアンデッドが注意を向けている間は、何をしたとしても後出しで対処されてしまう。

この瞬間において、銀の戦士は何をしてもピーコックアンデッドの敵足り得ない。

 

ミサイルの如く突き出された槍の穂先を大剣で受け、逸らす。

恐るべき速度をそのままに受け流され、三色の戦士の無防備な姿がピーコックアンデッドの足元に一瞬通り過ぎる。

そこに蹴りを加え入れ、三色の戦士をビルの下へと蹴り落とし、同時、視線がズレている事に気がつく。

いや、違う。

ズレているのはピーコックアンデッドの視線ではなく、足場。

足場としていたビルの角が、綺麗に切り落とされている。

 

ビルの下に蹴り落とされた三色の戦士の頭部を見れば、二本装着されていたブーメランがどちらも外されていた事に気がつけただろう。

地面を蹴っての横向きの跳躍。

一発の弾丸の様にピーコックアンデッドに向けて飛び出した瞬間にそれは抜けるように取り外され、本体の影に、マントに隠れる様にしてビルの側面に回り込み、槍が大剣によって受け流される瞬間にその足場を切り落としたのだ。

 

落ちる事も足場がなくなる事も問題ではない。

ビルから落ちた程度でアンデッドはダメージを受けず、ピーコックアンデッドは超能力により空を飛ぶことができる。

しかしそれが、ピーコックアンデッドの認識の外で行われたなら。

一瞬。

ほんの一瞬だけ、ピーコックアンデッドが現状を見失う。

 

瞬きほどの、というには長い一瞬。

それは、その場の全ての戦士が近接戦を可能とする距離にあるこの場では致命的。

思考の隙、僅かな空白に滑り込む様に銀の戦士が動く。

走るのでも飛ぶのでもない。

座り込む様な低い姿勢から、身体を前に向けて起こす流れる様な動き。

鞘走る勢いでつや消しの塗装が剥げ、夜闇を照らす街灯の光を反射しながら伸びるように抜き放たれたブレードが、吸い込まれる様にしてピーコックアンデッドへと吸い込まれ……。

 

―――――――――――――――――――

 

「……っていう事があったんだー。逃げられちゃったんだけど」

 

「あったんだー、ではないが」

 

あっけらかんと話すあお。

なんでこいついきなり上級アンデッドに人の友達連れて突撃してるわけ?

 

「待て待て、あれはやはり魔化魍では無かったのか?!」

 

「せめて童子と間違えるならわかるけど仲村くんも疑問に思って?」

 

「今の御時世、人間型の魔化魍が出てきてもおかしくはなかろう。それに、最初はショッピングモールを襲う魔化魍が居ると言われてだな……」

 

「そしたら近くにもっと強そうなのがコソコソしてたから、あっちの方がお小遣い増えるかなー、って」

 

えへへー、と、悪びれずに笑うあお。

何故かゼロスーツを使いこなせるからといって変に無茶をし過ぎだし、戦闘用としてはまだスーツが調整段階の仲村くんを連れて行くのも明らかに無茶だ。

 

「小遣いが欲しければ言え。何も撃墜数だので決めてる訳でもない」

 

「でも、ああいうの相手のデータがあると嬉しいでしょ?」

 

「人の友達を巻き込んでまでやる事か。せめてスーツの更新が終わってからにしろ」

 

「後から強い敵と戦うのも今強い敵と戦うのも変わんないって、いっしょいっしょ」

 

「一緒な訳があるかバカモン!」

 

使い捨てのお絞りパックを念動力であおの顔面に射出する。

いったーい! と大げさに騒ぐあおを横目に、ため息。

 

「すまん、だが、あまりあお殿を責めないでくれるか。始まりは恐らく純粋にあのシマウマのアンデッドへの対処だった筈なのだ」

 

「そのままそっちに対処してくれる方が俺としても助かったんだけどね。封印役も居たんだし」

 

俺が仲村くんにアンデッドの、バトルファイト案件に関わってほしくなかったのは、何も天王寺の権力を恐れて、というだけではない。

俺が仲村くんに提供しているウルトラギアは、今は仲村くんの意向で戦闘用に徐々に調整をしている最中ではあるが、対アンデッドの最重要機能である封印に関わるラウズカードを取り扱う機能を搭載できていないのだ。

というか、これに関しては恐らく正式版と呼べるレベルになるだろうVer.7台への大型アップデートを済ませたとしても搭載する予定は無い。

 

「だが、その封印役のライダーならば一人で対処することも可能なのだろう? ならば、状況を裏で操るフリーな方に向かうというのは間違っていない筈だ。……そうだ、それで、なのだが」

 

「はん?」

 

ごそ、と、仲村くんがバックの中を漁り始めた。

ギアを壊しでもしたか、何か調整してほしい部分でも出たか……?

そう思う俺の目の前で、テーブルの上に置かれたのは、青い羽飾りの生えた、分厚いレザー生地の様な物体。

ピーコックアンデッドの肩部先端だ。

 

「研究の為に集めている、と聞いた。足しになるか?」

 

「あの装備で、ピーコックアンデッドからこれを?」

 

「うむ……。もう少し踏み込みが足りていれば、首を跳ねられたと思うのだが、修行が足りていなかったらしい」

 

装飾品のように見える部分だが、これも含めてアンデッドは一つの個体としてカウントされる。

つまりこれもアンデッドの肉体の一部であり、上級アンデッドの強固な肉体という事になるのだが……。

それを、まだ鬼にもなれていない状態で、完全な戦闘用に調整できていない試作量産型のカスタム程度のスーツで?

接近戦での火力が心もとないからって装備させておいた、ただ固くて鋭いだけのブレードで?

つまり、生身の身体能力、技量、魔石無しで学習した武器術のみで?

 

「小春の?」

 

「……仲村くん、改造人間って、興味ある?」

 

試しに。

念の為に聞いただけだったのだけれど。

何故かあおが必死の形相で仲村くんを背後に庇い猫のように威嚇を始めたので。

この話はお流れとなってしまった。

通常の医療では治せない怪我もどうにかできるよ、ということは伝えてあるので、どうしようもなくなった人とかは、たぶん紹介して貰えるだろう。

俺という、いくらでもリカバリが利く被検体が居るには居るが、常人の肉体も改造できるに越したことはないしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





時間を掛けた殴り合いだとプロレスになる
一行動ごとに描写すると実戦闘時間は短くなる
なやみどころ

☆ファイナルギア
待ちに待ったロボ成分多めの横スクロール型アプリ
見下ろし式のアイアンサーガよりもよりわかりやすくメカを動かせるから楽しいんだけど現状量産機のバリエーションも専用機の種類もそんなに多くない
でもまだリリースして一週間と少しだから今後に期待してほしい
一式揃ってない専用機の不足分パーツを量産機のパーツで補ってると、ああ、ロボットものしてる……って気分になれて結構カスタマイズが楽しくなる

☆外見を気にするのもいいけど、戦士は中身も大事マンブラザーズ
大惨事マンブラザーズバンドというのはどうだろうか
若い子は知らんか……
俺も知らん
嘘、それが大事だけ知ってる、サウザー様のせいで、イチゴ味再開まだかなって思うけど作者さん物理的にも精神的にも頑丈ではないぽいのできっちり養生してから再開してほしい……ムキムキの健康体とケンシロウに激突するまでのヒャッハーばりの精神強度を備えたパーフェクトソルジャーになって帰ってきて……
主人公がピアノできるし、仲村くんも太鼓とトランペットとギターができるようになる
あとは適当にグジルなりジルなり難波さんなりにカスタネットでもギロでもテルミンでも持たせればバンドとして成立するやろ!
なおお前の音楽はメトロノーム
あの子供たちはもう一度ピアノを聞かせてって言ってくれたからセーフ
エアヴァイオリン(ピアノ)
あぁ^~水の月がアレグロビバーチェすれば人の月はその生命をアジタートに歌い上げるんじゃ^~
女の子キャラが可愛かったのが最大の評価点だったけどその一点で逆転無罪では?
ロゴスは序盤でなんか見なくなっちゃったけど男たちが大はしゃぎで夕暮れの海に走っていったのと落語の話とジュニアアイドルに決して詳しいわけじゃない政治方面に詳しいイケメンだけ覚えてる
新しい戦力を作るのもいいけど自己強化も進めていきたい
それを怠るとだいたい失敗するからね
でも理屈で言えば改造すれば死ににくくなるっていうなら友人だって最終的には改造したくなるよね?

☆アンデッドも魔化魍もいっしょいっしょ
アンデッドが集合無意識的なものであるとすると要するに一種のエネルギー体だから実際規模が異なる魔化魍みたいなものなので実際いっしょとも言える
後から強い敵と戦うのも今強い敵と戦うのも(結局は中身を鍛える関係でどこかで強敵とぶつからないと成長出来ないんだから遅かれ早かれでしかないし、常に完全な装備で戦えるとも限らないんだから弱い装備で当たっても最終的な危険度は)変わんないって!
いっしょいっしょ!
つまりお気に入りの子を父親も納得するような一人前の戦士にする為の最適解とも言えるのだ
健気では……?
投げつけられたお絞りはあれ、ウェットティッシュみたいな薄いやつね、ビニルにはいってるやつ。かっぱ寿司とかのカウンターにおいてある感じの

☆戦える身体になって戦う技術も装備もあって戦う相手もはっきりしていて
戦いの場に誘導されたらそりゃ戦いもする仲村くん
なお外部からの音声は全てフィルターを通しているので洗脳音波の類は通用しない
なんか危険な音波を出している、というナビ音声が流れたからあおが不意を打つ隙を作る為に効いてる演技していただけ
スーツは首から下が北斗神拳伝承者みたいになってから何度かアップデートを果たし現在Ver.6と少しでグレート要素が抜けて徐々にセブンスーツに近づきつつある
なおあおは何故かスラッガーを念力で動かせるが、仲村くんはまだムキムキな生身の人間で鬼ではない為そういう遠隔武器は使えない
ダンベルの脱いだマチオさんのライトバージョンみたいな状態である為、威圧感は抜群


書いても話が進まないという事はどういうことですか?
書いても進まないという事は書いても進まないということです
でも書いた分は消費したし、上位アンデッドのパーツも手に入ったので、暫くは本編に手を出さないかも
このショッピングモールでゼブラアンデッドが暴れるとこに装甲服部隊出せるかなって思ったけど、ここ、戦闘シーン警察が駆けつけられるほど長くないな……ってなった
余計な設定を積んでいくからこういう時に困るのだ
でもせっかく戦力強化してるんだからそれらにもアンデッドへの対応させたいよねというジレンマ
そのうち書けたら書きたい
書けなかったら……まぁ、天王寺が圧力かけてたとかにしとけばええやろ
という浅ましい考えのSSではありますが、それでもよろしければ次回を気長にお待ち下さい

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