オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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二人で突き抜けるノンストップ!仮面ライダーSPIRITS その六

海岸にて、左腕を失ったアマゾンが横たえられている。

肩口から引きちぎられる様にして腕を失ったアマゾンは、既に瞳孔も開ききり、心停止から一時間以上経過していた。

発見こそ早かったものの、安全と思われる位置まで慎重に運ぶあまり時間を取りすぎたのだ。

 

「まぁ見ろ、この腕の断面、変な神経が生えてるだろ?」

 

「強い気を放っていますね……これが仮死状態にしているわけですか」

 

鍼師でもあるSPIRITS隊員のウェイ・ペイが、レッドイクサの指差す腕の断面を見て興味深げに呟く。

 

「一部の武術家とかが使う、気の制御による生体補助を自動でしてくれてるワケだ。腕は自分から取れたんだろ。どっちかって言えば腕がってよりギギの腕輪が、なんだけども。あのサイズの凶器が振り下ろされたにしては断面がキレイ過ぎんだよ。出血も異様に少ない。腕一本取れてる癖に出血分の重量変化もほとんど無いし血の気もありすぎる」

 

「本体の保護の為に自切したと?」

 

「ギギの腕輪にとってどっちが本体かは知らんけどな。少なくとも、切り離されても元の持ち主の命を維持しようとはしてる」

 

「じゃ、アマゾンは」

 

ゴードンに小脇に抱えるようにして掴まれているマサヒコは、必死な形相で、縋るような気持ちでアマゾンの容態を確認する。

そのマサヒコにちらと顔を向けたレッドイクサは、コクリと頷き、親指を立てた。

 

「非常用バッテリーで動いてる生命維持装置でギリギリ死んでないようなもんだからこのままなら半日くらいで完全に死ぬぜ!」

 

「言い方!」

 

極めて朗らかに宣言したレッドイクサと絶望顔のマサヒコを除くほぼ全員がツッコミを入れる。

それをまぁまぁと手で制し、レッドイクサはベルトのサイドに懸架していたケースから、一つの箱を取り出した。

 

「肉体を維持しているのがギギの腕輪から伸びてる神経で、この神経がエネルギーを使い果たしたら死ぬ。逆に、この神経を維持できるようにしてやれば、もう少し時間を稼げるってわけだ」

 

箱の中身は、謎の粘土状の物質だった。

真昼の沖縄、その海岸に降り注ぐ強い日差しのせいでその場の殆どの人間は気づけなかったが、その粘土らしき物体は、霊的視覚を持って見た場合、仄かに輝きを帯びているのがわかるだろう。

その粘土を少し平べったく広げ、アマゾンの腕の断面に貼り付けるレッドイクサ。

するとどうだろう、粘土状の何かから細い糸が無数に伸び、肩口に残されたギギの腕輪由来の強化神経へと接続されていくではないか。

 

「それは?」

 

「超廉価版のギギの腕輪、みたいなもん。見てみな」

 

心なしかアマゾンの顔色が良くなり、良く見れば浅くではあるが呼吸を再開している。

 

「生き返った……?!」

 

「いや、今繋いだパーツが、無理やり身体を維持しようとしてるだけ」

 

繋いだ粘土の正体は、極小の魔石の出来損ないの集合体だ。

野生動物、そしてある程度解析が済んだ奇械人の失敗作にグロンギ化の煙を浴びせ、魔石を形成しきれずに生まれた肉瘤や砂粒の様な魔石もどきを寄せ集めて、ブラックイクサがアマゾンの取り敢えずの延命の為に作った生体エネルギーを溜め込んだバッテリー。

粘土状、と表現こそしているが、実際は半ば生き物の様なものだ。

起源が違うために元の世界のそれら出来損ないと比べてもなお劣り、繋いだ生命にほぼ永遠の命を保証すると言っても過言でない魔石と比べれば、乾電池か栄養ドリンクか、という程度の規模しか無い。

ほぼ無尽蔵の力を供給するギギの腕輪の代替にはならないが……。

生命の生きようとする力を支える程度の事はできる。

 

「これであと一日くらいは持つ。まぁこの状態で殺されたらやっぱり死ぬけどな。私も護衛に回ってやろう」

 

「後は腕を探してくりゃあいいわけ」

 

だな、と、続けようとした滝の言葉が突然の爆音にかき消される。

何事かと全員が振り返るより疾く熱風が全員に襲いかかる。

距離がもっと近ければ良くて全身やけどだったと簡単に想像できる。

空には爆心地の直上にあると思しき薄っすらとしたきのこ雲。

 

「何、腕もすぐ来るさ」

 

ちょっと遊んだ後でな、と、その言葉を飲み込んだレッドイクサ、グジルは、イクサの仮面の下で、自分だけ模擬ゲゲルとかずるくね?と、口を尖らせていた。

 

―――――――――――――――――――

 

こつ、こつ、と、早くも固まり始めた足場を歩く機械のアマゾン。

それに対しヤマアラシロイドも距離を取りつつ様子を見、針を構える、魔法陣から乗り出した状態で相手取れる敵でない、と、その判断から身を乗り出す。

一歩、二歩、徐々に速度を上げ、機械のアマゾンが走り出す。

その頭部を貫くように突き込まれるヤマアラシロイドの巨大な針。

BADAN製の怪人、いや、ゼクロスの装甲すら容易く貫く鋭さと強靭さを備えた針に対し、機械のアマゾンが緩やかに前に腕を突き出す。

き、と、ガラスを引っ掻くような音。

ヤマアラシロイドの針先に、機械のアマゾンのヒレ──前腕のアームカッターがかちあい、()()()()

 

「なに……!」

 

引き裂かれる針が、アームカッターが押し込まれる毎に柔軟性の無さから割れ、髪の毛程の細かな針として舞う。

その針すら、呼吸器に入れば肺をズタズタに引き裂く事になるが、機械のアマゾンはそれを意に介する様子も見せない。

真っ直ぐにヤマアラシロイドに突っ込んでくる。

驚嘆に値する程の鋭さ。

自らの持つ針の鋭利さを凌駕するアームカッターの切れ味を認めつつ、次の一手を考えるヤマアラシロイド。

対処できない速度ではない。

あの肉体の変異はギギの腕輪というよりアマゾンの腕を取り付けた場合の変化か。

ギギの腕輪は届けなければならないが、その前に性能を確かめる事ができるのは僥倖だ。

 

そう考えていたヤマアラシロイドの、目の前から迫る機械のアマゾン。

その姿が消える。

加速したか、だがどこに来るかは予測できる。

如何に素早くとも物理法則を超える事はできない。

見えないという事は掠めるように横を通りながら先のアームカッターで斬りつける。

それを防ぐ。

ヤマアラシロイドから見たアームカッターは極めて短い、元のアマゾンのそれと大差ない。

両脇に針を構えれば見えずとも防ぐ事ができる。

自らの身体から針を引き抜く。

 

いや。

 

引き抜こうと。

腕が伸びず。

目の前に。

自分の。

()()()()()()()()()──

 

―――――――――――――――――――

 

一方、海上。

ゼロ大帝を載せた十面鬼は自在に宙を舞いながら、全方位へと炎を吹き出し、ゼクロスを寄せ付けずにいた。

ゼクロスもまた飛行能力を備える仮面ライダーではあるが、その飛行能力はあくまでも補助的なもので、足裏のブースターによる飛行では、自在に空を駆けるという訳には行かない。

無論、大首領の肉体のコピーである為に、十面鬼の吐く炎程度ならばさしたるダメージにはならないが、踏ん張りの効かない空中では、吹き出す炎を無視して十面鬼に肉薄する事もできない。

 

海岸に展開していた獣人達程度であれば、SPIRITSの隊員でも処理できる。

しかし、幹部級ともなると話は違う。

それが、ガガの腕輪を装着した十面鬼ともなればなおさらだ。

ゼクロスのボディだからこそ、多少のダメージと押し返される程度の被害で済んでいるが、SPIRITSの隊員程度の装備では一瞬で焼け死ぬのが落ちだろう。

十面鬼の上に仁王立ちし、ゼクロスを相手に高笑いをしているゼロ大帝は逃げ切れまい、などと唱えているが、逃げるどころか、ゼクロスは決め手のないまま、ここで足止めを続けるしかないのが現状なのだ。

 

しかしその拮抗も、バダンの尖兵として作られたラストバタリオン、遺伝子操作で作られた生物兵器達と、それを引き連れてきたビクトル・ハーリンのお陰で崩れ去る。

十面鬼に埋め込まれた十人の悪人の生首、そこから吐き出される炎を、ラストバタリオンの飛蝗人間達が引き受ける事で、ゼクロスが突撃する為の隙が生まれつつある。

無論、ゼクロスとラストバタリオンの雑兵では耐久力が異なる。

飛蝗人間達は一度でも炎を喰らえばただでは済まないが……。

彼らを統率するビクトルの指示さえあれば、彼等が死を恐れる事はない。

彼等は自らの命を盾に、ゼクロスの為の道を作ろうとしている。

 

だが。

この状況も長続きするものではない。

十面鬼が近づくラストバタリオンを尽く炎で薙ぎ払い近づけず、ビクトルがラストバタリオンに指示を出す事で被害を少なくしているからこそまだ気づかれていないが、そもラストバタリオンは盾にはなれないのだ。

近づかれたら危険だ、故に迎撃する、という思考から炎の矛先を向けられているからこそゼクロスの為の道が作られつつあるだけであり、彼等が、少なくとも十面鬼にとって大した害にもならない雑兵である事が知れてしまえば、再び道は閉ざされる。

ラストバタリオンへの迎撃の手を、ゼクロスを狙うついで、程度のものにしてしまえば、彼等は無為に焼き払われるだけになってしまう。

無論、少なくともこの場の戦力差という意味で言えば、人類側が多少優勢になった事は間違いないが……。

 

ふと、十面鬼の上のゼロ大帝の背後に、魔法陣が浮かび上がる。

BADANが度々使う、空間転移の魔法陣。

そこから、ゆっくりと、一本の腕が浮かび上がってきた。

()()()()()()()()()()()()()

 

「くく、よくやったニードル」

 

この場の戦力差が一気に覆る。

 

「ギギの腕輪の力を我が物にするには、インカの秘術が必要だという」

 

ゼロ大帝は、魔法陣から受け取ったアマゾンの腕、そのアームカッターを用いて、自らの左腕を切り離す。

 

「ナ……ニ」

 

突然の凶行に戸惑うゼクロス。

だが、何も不思議なことはない。

ゼロ大帝にインカの秘術の知識は無く、あったとしても今この場で自らに施す程の時間は無い。

故に、既に秘術の施されている肉体をそのまま繋いでしまえば良い。

そんな極めて単純な発想の元、ゼロ大帝の左腕のあった場所に、アマゾンの腕が押し付けられる。

 

「ヌ、ウウ……」

 

びき、びき、と、接続された腕から伸びた神経が、ゼロ大帝の体内を引き裂き、融合し、その身体を作り変えていく。

ばち、ばち、と、徐々に人のラインを失っていくその身体が()()()()()()、腕から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ゼロ大帝が跳ねた。

獣そのものの咆哮。

ゼロ大帝の全身甲冑はそのままに、まるでアマゾンの生き写しの様な、オオトカゲの如き容貌の怪物。

理性を失った、戦うための生物兵器か。

 

魂すらない人形であるはずのゼロ大帝の脳は、この世のものとは思えない程の充足感に支配されていた。

万能感、いや、全能感。

これが、ギギの腕輪の力!

古代インカの秘術が齎す超能!

飛びかかったゼクロスにも力負けしない。

 

―――――――――――――――――――

 

この時、ゼロ大帝は気づいていない。

明らかに目的を見失っている。

力に飲まれている。

だから、アマゾンの腕が出てきた魔法陣が消えていない事に、疑問を抱く事も無い。

 

ゼクロスに飛びかかったゼロ大帝。

そして、残されたのは、人間部分の半身を失ったまま、半ば自動的にラストバタリオンの迎撃を続ける十面鬼。

その上に、魔法陣から一つの影が降り立った。

影は無造作にアームカッターの付いた腕を振るい、十面鬼の腕を切り落とし、返す刀でその首を落とした。

 

「さて」

 

ぽん、と、首の切断面に掌を置く。

するとどうだろう、十面鬼がぴたりと炎を吐くのを止めたではないか。

影はそのまま、切り落とした十面鬼の腕から、ゆっくりとガガの腕輪と十面鬼の半ば食いちぎられた生首を回収し……。

再び魔法陣の中へと消えていった。

 

―――――――――――――――――――

 

異形と化したゼロ大帝が、ゼクロスを足場に跳躍。

弾丸の如く近場のラストバタリオンへと飛び移り、そこを足場に再び跳躍。

ここにきて増援が仇となる。

無論、ゼクロスを殺すだけならばそのままアームカッターで切りかかれば良いだけの話ではあるが……ゼロ大帝の目的はそもそもそんなことではない。

だが、今のゼロ大帝の脳裏からはその目的そのものが消えつつあった。

虚ろな魂の無い肉人形。

そこへ無尽蔵に送り込まれる戦いへの興奮と熱狂。

 

「大・切・断!」

 

叫びながらゼクロスに斬りかかる。

明らかに浅い。

狙った動きだ。

殺すことを目的とすらしていない。

オオトカゲの口が醜く釣り上がる。

 

「ケケケケケー!」

 

雄叫びとともに再びラストバタリオンを足場に。

見せしめとでも言わんばかりに、足場に使ったラストバタリオンを惨殺していく。

 

「どうだ!いくら貴様とて、このスピードにはついてこれまい!」

 

ラストバタリオン、飛蝗人間の首を引きちぎりトロフィーのように掲げながら挑発するゼロ大帝。

しかし、相対するゼクロスはその挑発よりも、ゼロ大帝の有様にこそ声を失っていた。

ギギの腕輪を付けた直後こそ、ゼロ大帝の肉体はまるで甲冑を着たアマゾンの写し身だった。

しかし、その姿が徐々にズレていく。

人のシルエットにオオトカゲをかぶせたようなアマゾン。

その境が曖昧に。

いや、徐々に、人間味を失いつつある。

既に手足の骨格は人間のものではない。

跳躍に適した逆関節の足、アームカッターは長大に、根本である前腕は猿もかくやと伸び始め、オオトカゲの仮面の如き顔は、骨格が伸び、巨大なトカゲそのものになりつつある。

 

いや、既にアマゾンどころか、オオトカゲですらあるかあやふやになりつつある。

背に生えたのはラストバタリオンのそれに似た薄羽か。

ぎょろりとした複眼が顔面の半分を埋め尽くし。

全身を覆っていた甲冑ですら、肉体と半ば溶け合うようにして融合しつつある。

 

「おお、おあああ、が、が!」

 

人語ですらない叫び。

熱狂に支配されている。

そう。

ゼロ大帝であったもの、肉の器は、既にBADANの支配ではなく、自らの内から溢れる本能に支配されていた。

 

「おお……!」

 

ゼクロスの全身が光を放ち、ブースターを吹かしながらゼロ大帝へとキックを放つ。

それに応えるようにゼロ大帝もキックで迎え撃つ。

 

「ゼクロスキック!」

 

ゼロ大帝は無言。

いや、声を発するという器官すら無用のものとしたその身体からは、金属板を引き裂くような鈍い鳴き声ばかりが響いた。

激突するキックとキック。

跳躍によって推力を得た蹴りとブースターによって加速を得ている蹴り。

インカの力……ではない、進化の力と大首領の写し身の力。

それが避けることもなく正面からぶつかり合い、僅かに、ゼクロスが押し負ける。

ゼクロスの脚部がきしみを上げながらひしゃげ、それを押しつぶすようにゼロ大帝の脚が突き刺さり──

 

「──ぁ」

 

ゼロ大帝の肉体が一瞬で何倍にも膨れ上がり、風船の様に爆ぜた。

 

―――――――――――――――――――

 

緊急時なら仕方がない、とは思うのだけど。

本物かどうかもわからない古代兵器をぶっつけ本番で肉体に移植するのって、ああいうリスクがあってしかるべきではないだろうか。

 

「持ってきたぞ」

 

ぶらぶらと、接続を外し、内部に紛れ込んだ俺の細胞を丁寧に除去したアマゾンの腕を掴んで揺らしながら、浜辺で上空の戦闘を見守っていたSPIRITSの方々とグジルに声をかける。

 

「ずいぶん早かったね」

 

「まぁな」

 

ギギの腕輪とガガの腕輪の合体実験はそう何度も出来るものではないので離れた場所でやらせて貰ったが、そう多くの発見はなかった。

ギギの腕輪とガガの腕輪は対になっているだけあって、その構造というかシステムはそう違うものではない。

内部の力そのものではなくその制御にこそ興味があったので、合体実験に関しても無益ではなかったが、まぁそんなものか、というくらいの結果だ。

だが、テオスの力の制御という意味で言えば大きく前進したし、バゴーの助手だったという十面鬼の首から上も少し手に入った。

魂のない抜け殻だが記憶が無い訳でもないし、この部位を元にして魂を呼び出して技術を引き抜く程度の事はできるだろう。

 

「あ、これ、ガガの腕輪」

 

腕を鍼師の人に渡し、ガガの腕輪を滝さんに放り投げる。

まだ死体のアマゾンに向けて投げるのは心象が悪いだろうという心遣いなのだけど。

金髪のキツめっぽいお姉さんに銃口を向けられ、ムキムキの大男に槍♂を向けられている。

この世界、気が短い人が多いね。

元の世界の警察の方々が恋しいわ。

たまに撃たれるけどいい人ばっかりだった気がする。

 

「どうしました、そんなに張り詰めてるとシワが増えますよ。ほーら、スマイルスマイル」

 

イクサのマスク越しに口の両端に手を当てるジェスチャをして笑顔を促す。

それに対する反応はせず、銃口と槍の穂先を向ける二人を手で制した滝さんが問いかけてくる。

 

「なぁ、さっき、十面鬼と一緒に消えたのは」

 

「俺ですね」

 

「そうか。じゃあ、ゼロ大帝に腕を渡したのは……?」

 

「良い出来だったでしょう。自爆装置付き偽アマゾンの左腕と偽ギギの腕輪」

 

「あの魔法陣は?」

 

「バダン式のではないですよ。見た目を寄せただけです」

 

というのも厳密には嘘なのだけど、まぁ俺はバダンではないのでそういう事で良いだろう。

ここまで不審な点は無いと思うのだけど……。

 

「今、俺達はバダンの件で忙しい。だから、こういう事はあんまり言いたく無いし、聞きたくもないんだが」

 

「はい」

 

「あんたの……いや、あんたらの目的は」

 

曖昧な滝さんの問い。

俺と、魔石の出来損ないをアマゾンから取り外したグジルに、まっすぐな視線が向けられる。

周囲には、徐々にSPIRITSの隊員が、そして、生き残ったラストバタリオンが集まりつつある。

世界平和、というのが、ある意味では俺の目的とも言えるのだけど。

別段、この世界が平和である必要も無いしな。

あえて言うなら……。

いや、言わないとだめだろうか。

ここは対人コミュほぼ無敵のアマゾンさんが命の恩人である俺達をキレイに弁護してくれると助かるのだけど。

肝心のアマゾンさんは、腕を接続されて息こそ吹き替えしているけれど、まだ意識が朦朧としているのか、ぼんやりとした視線を向けるだけでなにも言ってくれない。

ちゃんと日本語喋れるのわかってんだかんな……?

 

「しいて言うなら、バダンの、JUDOの抹殺?」

 

「じゃあ、協力できるか?」

 

「うーん……いきなり銃を向けてくる人と協力する文化が無いからなぁ……」

 

「そっか、じゃあ……俺と会ったことあるか?」

 

ほ、鋭い。

一応このイクサスーツにもボイチェンつけてるんだけど。

話し方とか身のこなしでわかるってやつだろうか。

戦闘時と日常時で動かし方は意識的に変えてるつもりなんだけど。

 

「たぶん無いんじゃないかなって」

 

「じゃあ、今から話そうぜ、ちゃんと顔合わせてよ」

 

「俺らもあなたらもそんな暇無くないですか?」

 

次の目標の出現地点は青森………………。

じゃない。

そうだ。

違うじゃん!

赤心少林拳黒沼流が活躍するから青森県って思ったけど。

ロボットスーパー1自体は石川県が出現場所だ!

そうだよ、倒した後に別の場所からスーパー1と誰かは青森には龍に乗って移動したんだ!

 

「……まずい、早く行かねば」

 

「青森だっけ?」

 

「違う」

 

「あれ、でも監視は青森に」

 

「記憶違いだ!」

 

「マジで?」

 

「ほんとの出現地点に監視を置いてないから……あー!」

 

パラレルワールドへの転移なんてするから調子が狂ってたか!

振り返る。

すっかり辺りはラストバタリオンとSPIRITS隊員に取り囲まれている。

 

「逃がすと思うか?」

 

「貴方方には少し話を」

 

()()

 

全員の脳に干渉する。

人間以外を見分ける為に、人間の脳への干渉実験はずっと続けていた。

その場に居る人間は全てふらつきながら倒れこむ。

ラストバタリオンは……。

道を譲ってくれた。

良い子だ。

戦闘生物は意外と物分りが良い。

 

「待て」

 

唯一、ボディの関係で脳への干渉を退けたゼクロスが立ちふさがる。

それは悪手だ。

 

「待つのは貴方だ。この場でまともに動けるのは貴方だけ、この場の皆さんは暫く動けない。獣人の生き残りが一人でも居れば、この場の全員貪り食われて終わりですよ」

 

「…………」

 

「事情聴取なんぞに関わってる暇は無いですが、ええ、あなた達と敵対するつもりは本当に無いんですよ。()()()()()()()()()()()()()()。それで納得してください。それでは」

 

呼び寄せておいたマシントルネイダーにグジルと共に跨り、その場を後にする。

間に合ってくれよ……!

 

 

 

 

 

 





なんだこいつぅー!

☆今回のやむをえぬぎせい
ガガの腕輪を簡単に取る為に魔石を利用したギギの腕輪もどきでゼロ大帝をテンションマックスにした上で自爆させた
爆殺したら魔石は残らない……五代さんが証明してくれていたからね
これで魔石が相手に渡る事も無い
ゼロ大帝が暴れている間にガガの腕輪は他の惑星で少し動かしてみた
ラストバタリオンが少し犠牲になった?
でもそれはビクトルぼうやのトモダチであって主人公からすれば弱めの雑兵、ヘキサギアみたいなもんなので
ニードル?
刹那で忘れちゃった

☆ニードル(生死不明)
なんで変身した後に何手で積むとか言われなかったかって?
主人公と会った時点でもう詰んでたから一手も必要ないからね、仕方ないね
今更この程度の的には苦戦する理由が無い
ましてギギの腕輪の力ありだしなぁ
貴重なバダンの改造人間だよ!

☆魔石ベルトの派生技術の犠牲になったゼロ大帝
具体的にはほんの数分で慣らしもなしに一気にガドル驚愕体かそれ以上にまで進化させられた上で内部で封印エネルギーの暴発を意図的に引き起こされた
ASHR兄貴にベルトをつける時に怪死するかもって言ってたのを意図的に引き起こす構造のベルトを装着させられたようなもの
本来ならそれでもベルト装着してから肉体に馴染むまでの激痛とかでおかしいと思うもんだけど、ゼロ大帝はインカの秘術はこういうものだろうという思い込みがあったので耐えちゃった
本来のゼロ大帝よりも撃破数は少ないので結果的に被害は減ってる
ギギの腕輪なしだとどういう挙動するかわからんし、ラストバタリオンも普通に火炎放射で死んでたから結果被害は少ないハズなんだけど怒ってたね
怖いね、短気な人って

☆今回の悲しい事実
ビクトルとマサヒコ、特にユウジョウを結ぶ機会ナシ
ゼクロス、インカの秘術とかギギガガの力に触れず
モグラ獣人、腕を必死に回収するイベント経由しないのでSPIRITSからどう扱われるか不明


最初は普通にゼロ大帝を魔法陣から出てきたアマゾンもどきがぶっ殺してって話だったんだけど
……十面鬼とゼロ大帝しか敵が居ないから、それだと文字数がね……
そういう理由で魔改造改造人間爆弾ゼロ大帝は生まれたのだ
腕移植ナシだとただの雑魚処理になっちゃうからね
腕を奪われないと展開がまきまきになっちゃうのだ
技術回収を徹底すると、敵が少なくて戦う場がなかったりで困っちゃう
まぁでもそういう番外編だから仕方ない
あんまり本編との乖離がひどけりゃ後の合流は完全にナシの完全パラレル、劇場版みたいな扱いにしてしまえば良いし

そういう訳で、本編の続きもちょっと思いついたので次回からは本編に戻ります
こういうあっちにふらふらこっちにふらふらとした不安定なSSですが、それでもよろしければ次回も気長にお待ち下さい

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