オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版)   作:ぐにょり

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仮面ライダークウガ 2000年~2001年
序章


人は誰しも仮面を被りながら生きるもの。

使い古された言い回しではあるが、それだけに正鵠を射た言葉である。

 

人は仮面を被る。

それは自分を偽るため、転じて、本当の自分に出来ない事をする為に。

本心を隠し、周りに合わせる為。

本心を隠し、誰かの望む自分を演じる為。

本心を隠し、自分が願う理想の何かを真似る為。

 

仮面はその形を変えることはない。

仮面の下に何があろうとも、仮面は平等にそれを覆い隠し、望まれた形を見せ続ける。

仮面の下で涙を流そうとも。

仮面の下で恐怖に顔を歪めようとも。

 

誰しもがありのままに生きていける世界ではない。

理由はどうあれ、人は仮面を被り、時に仮面を付け替え、生きていくしか無い。

 

生きていたいと思うのであれば。

死にその身を委ねるのでなければ。

 

その素顔(本心)に仮面を被り。

偽りの自分を乗りこなし。

果て無き世界(儚き人生)踏破(全う)せよ。

 

―――――――――――――――――――

 

ざり、ざり、と、砂利と土、雑草の入り混じった獣道とも呼べない様な道を踏みしめる。

山や森の中というのは、季節にも寄るが大体の場合は人混みの喧騒とは異なる騒がしさがある。

獣の鳴き声や鳥の羽撃き、虫の声が、木々や山の起伏に反射して四方八方のどことも知れぬ方角から耳朶を打つ。

枝葉が風に揺られて擦れ合いざわめきとなり、木々によって遮られた薄暗さに不気味さを含ませる。

 

そして、その自然の作り出す音を押し退けて耳に居座る音が、自分自身の身体が出す音だ。

ヘッドホンやイヤホンなどで耳を塞いでいないのであれば、まず一番に聴覚を支配するのは自分の呼吸である。

或いは服の擦れる音か、背に負ったリュックサックの揺れる音か、地面を踏みしめる足音か。

立ち止まり、歩く度にチャプチャプと音を立てていたペットボトルをリュックのホルダーから引き抜き、蓋を空け、一口。

温まったスポーツドリンクが喉を潤し、普段なら甘過ぎるとも思う糖分が僅かに緊張を解す。

 

「はぁ」

 

一息。

緊張を解し、しかし、解しすぎてもいけないと気を引き締め直す。

当たりは付けてあるが、目的地は未だ遠く、この成熟していない身体で踏破するには難しい道のりだ。

やはり一人で行くには無理があるかもしれない。

だが、車で送ってもらえる様な道も無し。

それに、目的地で行う事を考えれば、誰かに付いてきて貰う、というのも問題がある。

無理がある、という程度であれば、無理をしてでも行かなければならないだろう。

幸いにして、無理を通せるだけのズルはできるのだから。

……本当に幸いかは知らないが。

 

「行こう」

 

どうしようもない自問自答で萎えそうになった心を奮い立たせる。

そも、こういう鬱蒼とした森の中に長居をしたいとは思わない。

森の中で警戒すべき対象が、熊などの野生動物だけではない事を知っているのだから。

可能な限り、いや、可能なのだから、急ごう。

心は重いが、足取りだけでも軽く。

先よりも僅かに小さくなった足音をBGMに、再び歩き出す。

 

―――――――――――――――――――

 

所謂、『二度目』というものなのだろう。

勿論、それが本当に二度目なのか、間に何回か覚えていない生を挟んでいるのかは知らないが。

少なくとも、俺の主観で言えば、それは二度目、二周目、と言っても過言ではない状況だった。

覚えがある社会で、似たような境遇の家庭に生まれ、まだしっかりと頭に収まっている知識を蓄え直している間に、それは確信に変わった。

 

物語の題材としては使い古されている。

いや、話として見れば、あまりにも平穏過ぎて、退屈ですらあるかもしれない。

それくらい、この人生での最初の数年はありふれたものだった。

誰しもが一度は妄想した事があるかもしれない、自己開発の真似事をした程度か。

獣とさして変わらぬ振る舞いしかできない時期を過ぎ、拙いながらも手足と指が人としての知恵ある振る舞いを許す様になった頃、幼児期特有の学習能力の高さを有効活用した程度か。

子供の振る舞いとして無理のない程度の行為だったが、今生の両親が酷く喜んでくれたのは印象に残っている。

 

家で世話をやかれながら本を読んだり、脳トレの真似事をしたり、幼稚園に通ったり。

幼児に混じっての生活は疲れる、などと言うつもりはない。

彼等の有様こそが本来あるべき姿であり、俺もまた年齢相応の振る舞いを学ぶ上では大きく参考にさせて貰えた。

年相応の振る舞い方もまた、両親の喜びに繋がるというのは理解出来る話だ。

育てて貰っている以上、彼等が安心して見ていられる子供であるべきだし、そうありたいと思う程度には子としての愛情というものがあるのだ。

 

焼き直しというには、順風満帆過ぎる滑り出し。

退屈ですらある学び直しを繰り返す中で、しかし、俺は一つの発見をした。

前回……前世? では、ついぞ見たことのない、体験した事のないもの。

 

『超能力』

 

テレビの心霊オカルト特集で面白おかしく取り沙汰され、規模の大きな書店の隅に並ぶ長寿オカルト雑誌の上では当たり前の様に登場し、その登場から現代に至るまで長く人々を魅了してきた力。

この世界ではありふれたものなのか、慎重を期して図書館などを駆使し(前回死亡時よりも前の時代である為にネットなどという便利なものはまだ普及していない。生まれ変わりとは時間に左右されないのかもしれない)調べた結果、その扱いが俺の知る社会でのそれとそう変わらないという事がわかった。

 

体験した、という言い方は持って回った言い方だったか。

ありていに言えば、俺は自分が超能力者であるという事実を理解してしまったのだ。

それが、曖昧な一回目の知識を元に行った幼児に対する脳力開発(定期的に流行る『脳を目覚めさせる』とかいうヤツだ)が原因なのか、持ち越された多くの知識が幼児の脳に何らかの影響を与えたのか、単純に遺伝なのか、全く関係のないスピリチュアルな理由なのか。

 

原因や理由はさておき、少なからず心が踊ったのは間違いない。

この力が成長過程で消えていくものなのかどうなのか(現状では『使えなくなる』予感は無いが、あてにはならないだろう)はさておき、自分に『まるで漫画!』とでも言いたくなるような力があるとわかったのだ。

それまで使いもせずに溜め込んでいたお小遣いの一部を握りしめ、近所のゲームセンターに遊びに行き、明らかに取らせる気のないクレーンゲームなどの景品を片端からゲットしていったのは言うまでもないだろう。

小市民的、と侮るなかれ、リスクの少ない超能力の活用法としてはそう悪くない選択肢だったと今でも思う。

これで馬券なり宝くじなどが買える年頃であれば、もう少し調子に乗っていたかもしれないが、当時の年齢を考えればこれでも冒険した方ではないか。

 

手を使わずに物を動かす念動力。

まるで予知でもしているかの様な超直感。

使い所の思いつかない小規模な発火能力。

 

昔に読んだ超能力バトル漫画の登場人物が調子に乗っていたのも解る。

実際、やろうと思えばそういった作品の真似事くらいは出来てしまう。

俺も、もしも調べ方を間違っていれば、そういう連中と同じ道を辿っていたかもしれない。

 

図書館で雑誌や新聞、古い文献まで漁ってこの世界と俺の知る世界との差異を調べている時、幾つかの名前や事件を見つける事さえ無かったのなら。

この世界の住人が、超能力の素養を持って生まれてくる可能性を秘めている理由に、辿り着かなければ……。

 

―――――――――――――――――――

 

「ここ、か」

 

立ち止まり、見上げた先には、やはりこれまでの道程と何一つ変わらない、草木の生い茂る山の斜面。

一見して何の変哲もない斜面。

だが、間違いない。

 

「むっ……」

 

周囲に人が居ないのを確認し、精神を集中。

僅かに体重の半分程を軽減していた念動力を強くし、緩やかに宙に浮かぶ。

高さ一メートル程、あくまでも念の為に。

次いで、斜面に植えられていた木々をゆっくりと土ごと引き抜き、左右に退けていく。

人が立ち寄る様な場所でもないが、木と土が大きく動く音は予想よりも遥かに大きく響く。

地鳴りの様な音を立て、斜面の土と草木が履けていく。

 

「ああ」

 

あった。

見つけてしまった。

 

感動と言って良いのか。

引き継いだ知識と予想……予知、超直感を合わせて、半ば確信はあった。

言ってしまえば確認作業に過ぎない。

だというのに。

 

重厚な岩戸。

何かを祀っている訳ではないと一目で解る。

これは、封印だ。

忌まわしきものを、破壊する事すら躊躇われる異物を、ただ静かに眠らせる為だけの墓標なのだ。

 

手を触れる。

開ける事など一切想定していない、頑丈な蓋でしかない岩戸。

端に指を掛け、ゆっくりと、引き開ける。

岩が土を削ること暫し、その中身が晒された。

 

「墓標……ですら、ないな」

 

狭い空間には、どう折り畳んでも人の死体など入りそうにもない小さな石棺が一つ。

石棺にも、狭い石室の内側にも、びっしりと見覚えのある文字が刻まれている。

覚えがあるだけで、読める訳ではない。

だが、何を書いてあるかは知っている。

知った上で、俺はこれからその『警告』を無視しなければならない。

 

「なまんだぶ」

 

意味があるかは知らないが、一つ冥福を祈り、石棺の蓋に手を掛ける。

途端、脳裏に浮かぶ俺のものではないイメージ。

超能力によるものか、この石室に施されたものか、この石棺の中身が見せたものか。

それは戦士のイメージ。

鎧を纏った仮面の戦士。

その身体を甲殻に包んだ異形。

ほんの僅かな、数少ない戦いの記憶。

 

「申し訳ない」

 

これが、本来なら取り出されるべきでない事は、使われるべきでない事は、重々承知している。

使われるとしても、もっと志の高い、戦うに相応しい戦士が持つべきものであると知っている。

だが、本当に申し訳ない話ではあるのだが。

 

「俺も、もう一度死にたいとは思えないので」

 

石棺の中に収められていた、宝玉の嵌め込まれたベルト状の装飾品。

それを躊躇いなく取り出し、腰に巻き付ける。

反応しないのでは、という想像を否定する様に、くすんだ色のそれは一瞬にしてその姿を変えた。

幾何学模様と古代文字の記された銀のバックル、赤い宝玉、否、霊石『天飛(アマダム)』が石室の中を眩く照らし、酷い異物感と熱、痛み。

 

「あ、あああ、ひ、ひぃ」

 

痛い。

痛くて痛くて痛くて痛くて。

でも、ああ、でも、それでも。

これは、死ぬ類の痛みではないと解るから。

 

情けない声が出ても、涙と鼻水が溢れても、まるで気にならない。

解る、森のざわめきの中で自分の呼気と足音がまず耳を打つように。

肉と神経に食い込む何かが、腹の中を這いずり回っているのが解る。

このベルトは、この霊石は、俺を戦わせようとしている。

戦うための身体にしようとしている。

死ぬような戦いを、戦わずして死ぬかもしれない様な力を持たせて。

 

「ああ、ああ、あああああ、これで、これでようやく」

 

ようやく、最初の一歩だ。

涙に滲む視界が、持ち上げた手を映し出す。

金縁のある白い装甲に包まれた、黒い手。

金属鎧のようで、明らかに生物のそれだと解る異形の身体。

 

戦える(抗える)

 

曰く、容易く死ねない身体になるらしい。

曰く、末は戦うためだけの生物兵器かもしれぬ。

丁度いい。

それくらいで、ようやく、丁度いいのだ。

戦っても生き残れないかもしれない。

だが、無為に殺されるよりは、抗えるだけ余程いい。

人のままで死ぬ事が美しいのかもしれない。

だが、醜くとも生きていたいのだ。

殺されたくなんてないのだ。

今年に死にたくない。

来年に死にたくない。

その次の年も、その次の年も、その次の年も。

理不尽に、ヒーローが倒すべき脅威の恐ろしさを伝える為になんて、絶対に御免被る。

 

「……だから」

 

肉体の変異と共に強化された超感覚が、三つの微弱なエネルギー反応を捉える。

何らかの力により生きたまま封印された、恐るべき力を秘めた怪人達。

封印が解除されたが最後、今の俺ではまともに太刀打ちなどできよう筈もない恐ろしい存在だ。

リュックサックの中から、伸縮式の警棒を取り出す。

一振りし、短い警棒はイメージの通りに……いや、若干イメージとは異なる形で変形を果たした。

金と紫でなく、赤と金で彩られた片刃の剣。

遠からず『成る』のか。

でも、まだ考える必要はない。

 

「まずは、死ね」

 

僅かに動き出していた力の源。

腹の中から感じるそれと似た反応目掛けて、力を込めて、刃を三度突き刺した。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

昔々、混沌から世界を作った神様が、自分の姿に似せて人間を作り出しました。

神様は次に、人と共にある仲間として自らの分身である天使達を元に獣を作り出しました。

けれど、人は自らを神の最も愛した子であると驕り、自分達よりも下等であるからと天使の子である獣を狩り、貪り始めてしまったのです。

天使達は自らの似姿である獣達を守り人を裁く為に戦争を始め、瞬く間に人はその数を減らしていきました。

それを哀れに思った火から生まれた天使は、人々との間に子供を作り、その子を人の力としました。

しかし、人との交わりという禁忌を犯してしまった火の天使は神の手により砕かれ、消えてしまったのです。

多くの天使達はそれを当然の事としましたが、ある天使は神の振る舞いに恐れを懐き、姿を変えて人々の中に隠れ潜み、その血と力を人の中に宿し、また、自らの力で神に立ち向かう為の戦士達を作り上げました。

結局、人と天使の戦いは、神の起こした嵐と洪水に流され、この時代の事は後の世から忘れられ、数ある神話の一つとされてしまいました。

 

時は流れ、地球という星には人間が溢れかえっていました。

けれど、その安寧は完全なものではありません。

火の天使と交わり生まれた力ある人々『ネフィリム』は力に呑まれ見境なく暴れ、罪あるもの『ギルス』と呼ばれるに至り──

火の天使は死に際に未来の人類に自らの力を分け与え、『アギト』という進化人類が生まれ──

神の振る舞いを恐れた天使の力を宿した人間は、やがて『グロンギ』と呼ばれる凶暴な種族へと進化し──

人類、ネフィリムと天使達の激しい戦いは世界を歪ませ『ミラーワールド』を作り出し──

人々の中に薄れながらも残り続けた天使の力はギルスとは異なる『オルフェノク』という異なる可能性を生み出し──

天使達の似姿である獣達の中から、天使に並ぶ領域まで進化した『アンデッド』が現れ、幾度となく地球の覇権を掛けて争い──

天使の力に目覚めながら、ただ野を行く獣の様に生きる事を続けた『魔化魍』は、自らを鍛え上げ人を守るために『鬼』へと至った戦士達と生きるために戦い続け──

神の目を盗み異なる星で生み落とされたとある天使の落とし子である『ワーム』は、しかし星の滅亡と共にその種子を宇宙へと解き放ち──

神や天使の力を自覚し、文明へと組み込む事で平行世界すら観測できるようになった未来人は、世界を自分達の居る可能性世界へ接続するため、過去改変能力者である『イマジン』を送り出し──

神に立ち向かう為に作られた戦士達はその目的を忘れ、自分達を『魔族』であると定義し──

 

時は西暦二千年一月。

人類は、終わりなき戦いへと脚を踏み出そうとしていた。

 

 

 




テオスさん渾身の玉突き事故
人類滅亡式ピタゴラスイッチは完遂されてしまうのか

☆オリ主
現代社会に生まれ変わって自己開発してたら超能力生えた
超能力の実在を調べ回ってたらスマートブレインやら何やら見覚えのある企業が実在してた
仮面ライダーという番組は存在しない
都市伝説的に『仮面の戦士』の噂とかは存在するらしい
城南大学も城南高校もある
森の中で巨大な化け物に襲われたけど変な人型のバケモンに助けられた的な都市伝説がちらほらある
紅音也とかいう天才ヴァイオリニストのイケメンクソ男が居たという特集本も見つけた
鏡の中に人が飲み込まれる系の都市伝説も多いなぁ

所で君、超能力が使えるんだってねえ
念動力に予知能力、発火能力? 凄いねぇ
まるで人間じゃないみたいだ! だって人間は超能力とか使えないものね!
まるで人間じゃないみたいだ!
だって!
人間は!
超能力なんて使えないものなんだもの!
そんなのは人間じゃないよね!

みたいな意志が存在しているのを確信してしまう
外伝登場のベルトの実在を確認して更に確信
ベルトは付けたが絶対東京なんて行かないマン
なお運命

生えてしまった超能力は引っ込められない
安全装置のないベルトを命綱に頑張る
原作が全て実写なので恐らくヒロインは居ない
でもヒロイン居たら殺されそうだから丁度いいのかもしれない

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