グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life05 悪魔と侍

白銀の鎧から通常の鎧に戻ったヴァーリはかなり消耗したのか、肩で息をしていた。

最上級死神を完封で倒しやがった。こいつ、どこまで強くなるつもりなんだ…………?

リアスたちも目の前の男を前に言葉を失っていた。

 

「………恐ろしいな、二天龍は」

 

そう言いながら、曹操が近づいてくる。

 

「やはり、あの時『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を使わせなくて正解だったな………」

 

曹操なりの賛辞が送られたヴァーリは息を吐く。

 

「『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』は破壊という一点に優れているが、代償が大きすぎる。今の形態はその代償をできるだけ省いたものだ。それに、まだ伸びしろもある。曹操、仕留められるときに仕留めなかったのは、おまえの失点だ」

 

ヴァーリの言葉を受けた曹操はイッセーに視線を移す。

 

「兵藤一誠、キミは何者だ?」

 

突然の問いに首をかしげるイッセー。何者かと訊かれても、イッセーはイッセーだしな………。

答えないイッセーに曹操は言う。

 

「自力でここまで帰ってこられたキミは形容しがたい存在だ。天龍どころか、真龍、龍神に当てはまるわけでもない………。だからこそ、キミはいったい━━━」

 

「おっぱいドラゴンでいいじゃねぇか」

 

いい加減面倒になったのか、イッセーはそう断じた。曹操は一瞬間の抜けた表情になるが、すぐに苦笑して頷いた。

 

「……なるほど、そうだな。わかりやすいね」

 

それだけを確認すると、曹操は聖槍をこちらに向けてくる。

 

「さて、どうしようか。俺と遊んでくれるのは兵藤一誠か、それともヴァーリか、もしくはロイ殿が。または全員で来るか?いや、さすがにそれは無理だな」

 

挑発的に言う曹操。確かに、ここにいるメンバー全員でかかればやれるだろう。さっきのヴァーリを見れば、余計だろう。もう一度使えればの話だが………。

俺がそう思慮していると、

 

「では、ロイ殿の相手は拙者(せっしゃ)がしよう」

 

突然響いた第三者の声。この声、ようやく出て来やがったか!

俺は声の主を睨むように視線を送る。視線の先では、見るからに侍と思わせる格好に、身の丈にもなる太刀を背負った男性が不敵に笑んでいた。

 

「待っていたぞ、小次郎………!」

 

「おう、待たせたな」

 

侍━━小次郎は笑みを崩さずに言うと、倒れる仲間たちを見て瞑目した。

 

「やれやれ、あれほど油断するなと申したのに………」

 

倒れた仲間への苦言を言うとは、若干とはいえ、仲間意識があるということか?

俺は一歩前に出つつ、リアスたちに言う。

 

「おまえら、邪魔しないでくれよ。ようやく見つけたんでな」

 

「ロイお兄様!?ここは全員で━━━」

 

「リアス・グレモリー、であったな」

 

リアスの声を遮ったのは小次郎だ。目を細めてリアスを睨みつけながら、続ける。

 

「女であるお主にはわからぬと思うが、男とは元来そういうものよ」

 

「ああ、そういうもんだ」

 

俺はそう言いながら右手に直刀を生成、一歩ずつ小次郎に近づいていき、言葉を続ける。

 

「理屈とか、そんなもんは関係ねぇ」

 

「一度、好敵手と認めた者と出会ってしまえば………」

 

俺と小次郎がお互いの間合いに入ったとき、

 

「「一対一の勝負がしたくなる」」

 

俺と小次郎の声が重なった。存外、こいつとは馬が会うかもな。だが、こいつは敵だ………。

俺は小さく振り向きながらリアスたちに言う。

 

「だから、邪魔はしないでくれ。曹操はイッセーに任せる」

 

「はい!」

 

「わかりました。必ず、勝ってください」

 

イッセーはやる気をみなぎらせながら返し、リアスは心配そうに返してくれた。なら、問題はない。

俺は小さく笑みを浮かべ、小次郎に視線を戻す。俺の視線を受けた小次郎は構えを取った。

 

「さて、これが最後の手合わせかもしれぬな」

 

「ああ、ここで最後にしたいもんだな」

 

俺も構えを取り、ゆっくりと息を吐くと小次郎が表情を引き締める。

 

「『禍の団(カオス・ブリゲード)』英雄派、佐々木小次郎」

 

俺は突然の名乗りに一瞬驚いたが、すぐに意を察してそれに返す。

 

「『紅髪の切り裂き魔(クリムゾン・リッパー)』、ロイ・グレモリー」

 

一瞬の静寂。そして………、

 

「いざ━━」

 

「押して━━」

 

「「━━参るッ!」」

 

俺と小次郎は同時に刀を振り、得物を激突させる!激しく火花を散らしながらお互いの得物が激突したわけだが、小次郎の太刀は消滅せずに形を保っている!

俺はそれをまるで突然のように受け入れると、そのままラッシュに入る!小次郎も応えるように剣撃の速度を上げていく!本当に人間なのかを疑う速度だ!

お互いに次の一手を読み合い、防ぎながらも同時に打ち込んでいく!一瞬の判断、反応が遅れれば確実に一撃をもらってしまうだろう!

小次郎の突きを直刀で受け流し、そのまま首を取りに行くが、小次郎が刃を返して太刀を振り抜いてくる!

俺は刹那的にそれを察知、攻撃を中止してそれを防ぐ!

再び火花を散らすお互いの得物。

つばぜり合いながら、俺と小次郎の視線が交差する。こいつの目、本気で楽しんでいる奴のそれだ。だが………!

俺は一気に押し返し、小次郎の太刀の刀身を左手で掴む!太刀の動きを制限し、直刀で渾身の突きを放とうとした瞬間、

 

「ふんッ!」

 

小次郎が太刀の柄頭を叩いてスライドさせ、俺の左手の平に傷をつくる!不意打ちでそれをしてきたことで俺の体制は崩れ、その隙を見逃さずに太刀の一振りが放たれるが、無理やり体を捻ってそれを避け、追撃を警戒してその場を飛び退く。

俺は左手の平についた傷を一瞬眺め、小次郎に視線を戻す。傷からは血が出ているが、そこまで大量というわけでも、深いわけでもない。

小次郎は刀身についた血を空振りして飛ばし、再び構える。

俺も改めて直刀を構え、流す魔力を少し多めにする。奴の太刀、どういう理屈かはわからないが滅びが通じない。刀鍛冶がいい仕事をしたのか、それとも小次郎自身が何かをしたのか、根本的に俺の滅びが弱すぎるのか。それを確かめるためだ。

俺は深く息を吐き、そして飛び出す!小次郎もそれに反応するように足を踏ん張り、俺との衝突に備える。

そして、お互いの一撃が放たれた!

 

ガキィィィン…………!

 

儚い金属音が響き渡る。

 

「………マジかよ!」

 

俺は毒を吐きながら素早くその場を飛び退くと、俺のいた場所に銀光が振り下ろされた!

俺は手に握る物を見ると、直刀の刀身がキレイに折れて、いや、斬られていた!

魔力で作った物を斬るって、いったい何なんだ………!

俺は驚愕しながらも小次郎を睨む。小次郎は息を吐きながら、笑みを浮かべる。

 

「一刀に全てを懸ける。そうすれば、斬れぬものはない」

 

一刀に全てを懸ける、か。無駄に手数が多すぎるってことか………?いや、違うな………。

俺は直刀を修復し、小次郎を睨みながら苦笑する。

 

「何となく、俺に足りないものが見えた気がするな」

 

「ほう、それは?」

 

俺は息を吐きながら正眼に直刀を構え、小次郎に返す。

 

「全てを懸ける『覚悟』ってやつだ。昔、一度だけそれをしたことがあったが、毎度やっているつもりで、それっきりだったんだな」

 

コカビエルと初めて戦ったあの時、文字通り俺は死ぬ覚悟で戦った。あれから何度も戦ううちにそれを感じなくなっていたのは、慣れなんじゃなくてしていなかっただけだったようだ…………。

俺の言葉を受け、小次郎の表情が今まで以上に引き締まる。ようやく本気というべきか、それとも、俺の言葉で吹っ切れさせちまったのか………。

小次郎は迫力のある声で宣言する!

 

「では、次の技で仕舞いとしよう!」

 

「ああ、次で決める!」

 

俺は応えるように体から静かにオーラを放ち、その全てを直刀に集中させていく。

次の一撃以降は考えない。何としても次で決める。決めきれなかったら、終わりだ………!

俺と小次郎はジリジリと間合いを計り、必中の距離を探る。得物のリーチは向こうが上だが、速度ならこちらが若干上だろう。それでも防がれるのは、小次郎の勘と技が巧いからだ。

回避も防御もできないタイミングで、次の一撃を放つしかない………!

極限まで集中し、お互いの間合いを計り終えた瞬間、小次郎が叫んだ!

 

「秘剣━━━『(つばめ)(がえ)し』ッ!」

 

京都の時と同様、()()()()同時に三つの剣撃が向かってくる!

あの時、俺は防御と回避を念頭に動いた。その結果があれだ。なら…………!

俺は防御も回避もせず、三つの剣撃をギリギリまで引き付けると、一気に小次郎の懐に飛び込み直刀を袈裟懸けに振り降ろす!

 

「フッ!」

 

「━━━━ッ!」

 

斬った勢いで小次郎の背後まで行く俺。手に確かに斬った感覚。

俺は数歩前に歩き、後ろを振り向く。

 

「がはッ!」

 

体を深々と斬られ、血を吐く小次郎。持っていた太刀を落とし、俺のほうを向いてくる。

そして、苦しそうに笑みを浮かべ、

 

「見事だ………」

 

と、一言だけ呟き、背中から倒れた。その表情は満足げであり、今の結果を受け入れ、俺を恨むこともない。

俺は直刀で空を切り、刃についた血を消失させる。

 

「……………………」

 

俺は無言で倒れた小次郎を見つめ、瞑目。

 

「佐々木小次郎、討ち取ったり………」

 

そう漏らし、俺もぶっ倒れた。もう、限界………。

俺は荒れた息を整えていると、リアスの心配の声が聞こえた。

 

「ロイお兄様!大丈夫ですか!?」

 

「だ、大丈夫だ………。ちょっと、張り切りすぎた」

 

俺は上体を起こし、リアスに笑みを向けてやる。それと同時に気づいたことがひとつ。

リアスの胸が、少し小さくなっている………ッ!ま、まさか、例のビームを撃ったのか!?

 

「リ、リアス。もしかして、また………」

 

「使いましたが、それがなにか?」

 

リ、リアスゥゥゥゥッ!?何言っているんだ!?もしかして、胸を変なことに使われるのに慣れちまったのか!?

俺が驚愕していると、上空から木場が降りてきた。

 

「部長、ロイさん。申し訳ありません。曹操とゲオルグを逃がしました」

 

「………とりあえず、イッセーも勝ったのか?」

 

「はい」

 

俺の問いに頷く木場。なら、安心だ。

こうして、首都リリスの各地で起こった旧魔王派による反乱と英雄派による攻撃は鎮圧。そして、各地で進撃していたデカブツたちの殲滅も成功し、冥界壊滅の危機は、どうにか回避されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




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