グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

91 / 219
life08 脱出作戦開始

あの後、俺━━ロイが部屋に戻り、そこに朱乃も呼んで一通り作戦を練り終えた俺たちは、動けるメンバーを部屋に集めた。

全員が集まったことを確認したアザゼルが説明を始める。

 

「さて、まずはどうすればこの空間から出れるかだが、方法としては三つだ。一つ目は術者、つまりゲオルグが自ら解除すること。これは京都でやっていたことだな。二つ目は強制的に出入りすること。こっちは今からやろうとしていることだ。最後に三つ目は単純明快。術者を倒すか、結界を支えてる中心を破壊することだ。その作戦を伝える前に、ルフェイ場所を頼む」

 

「はい。総督」

 

ルフェイが返事をすると、ホテルの見取り図を置く。そこに目印になるもの(今回は紙の鶴だ)を複数置いていき、外部に『目』を作り出すとのことだ。

その後も魔術文字を書いたり、呪文を唱えたり、灰をまいたりなどの手順を踏んでいき術式を完成させる。

俺はあんまり詳しくないからよくわからんが、リアスや朱乃が興味深そうに眺めていた。

ルフェイが手を見取り図に向けると鶴が動きだし、魔術文字が光り、灰が動いて紋様を描いていく。

そこまでするとルフェイが口を開く。

 

「駐車場に一つ、屋上に一つ、二階ホールに一つの計三つですね。それらは尾をくわえたウロボロスの形の像です」

 

ルフェイはその像を紙に描き、アザぜルに渡して俺にも見せてくれる。

アザゼルが続ける。

 

「三つとは随分大がかりだ。力を削ったオーフィスを封じる前提で作ったんだろうな。それでルフェイ、死神はどんな感じだ?」

 

「はい、総督。どの結界装置にも死神の方々が集結しています。というか、この階層以外にはたくさんいらっしゃっています。駐車場が一番多そうですね。曹操様はいませんが、ジークフリート様がいらっしゃっていますし、ゲオルグ様は駐車場にいらっしゃいますね」

 

ルフェイの言葉に俺が呟く。

 

「てことは、駐車場の装置が一番重要ってことだな。そいつを壊せればいいが………」

 

「お兄様、アザぜル、先程の作戦通りに行きましょう」

 

それを聞いて俺とアザぜルは頷く。

 

「ああ、にしてもイッセー。お前が惚れた女は誰よりもお前を理解しているようだぜ?」

 

アザぜルが苦笑しながら言うが、まったくその通りだよ。

イッセーはわかってない感じだが、朱乃が耳打ちする。

それを聞いてイッセーには仰天していたが、さっき聞いた俺も驚いた。

尊敬の眼差しをリアスに送っているイッセー。俺はそんなイッセーの肩に手を置く。

 

「俺だって驚いたんだぜ?まったく。リアスはお前に夢中だよ。ソーナとは違う方向の戦術だろ」

 

それを聞いてイッセーは何回も頷いてきた。

 

「さて、皆、集まって」

 

リアスの声かけに全員がリアスに注目する。

 

「さあ、私の大事な眷属たち。さっさと突破しましょう。作戦を説明するわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちの説明が終わった後、駐車場が一望できる部屋に移動したときだ。小猫のイッセーへの逆プロポーズ騒ぎがあったが、珍しく甲斐性を発揮したイッセーがどうにか沈めてくれた。

 

「━━━術式、組み終わりました」

 

そんな中でも準備を進めていたルフェイの言葉を受けて、リアスがイッセーに合図を送る。

それを受けてイッセーが叫ぶ。

 

「『龍牙の僧侶(ウェルス・ブラスター・ビショップ)』!」

 

その叫びと共に赤いオーラがイッセーの背中に集まり、バックパックとキャノンが生み出される。イッセーはそのキャノンを上下に向けてさらに叫ぶ。

 

「行きます!」

 

作戦は簡単だ。屋上と二階ホールの装置をまとめて吹き飛ばす。砲撃力の高いイッセーだからできる作戦だ。

 

ドゥゥゥゥ………。

 

イッセーのバックパックが静かに鳴動してオーラを集めていく。それが溜まりきったところで、

 

「いっけぇぇぇぇぇ!ドラゴンブラスタァァァァァ!」

 

ズドォォォォォオオオ!

 

イッセーの砲撃で天井と床に穴が空いた!

それを確認したルフェイが告げる。

 

「屋上と二階ホールの装置が破壊されました!死神の方々ごとです!これで残るは駐車場だけです!………転移の準備も出来ました!」

 

言い終わった瞬間、転移の魔方陣が輝きだし、ルフェイ、イリナ、ゼノヴィアを包み込んだ。

 

「二人とも!頼むぞ!」

 

転移の光に包まれる二人にイッセーが告げる。

 

「死ぬなよ!」

 

「この事は必ず伝えるから!」

 

そう言い残して、二人は脱出した。

 

「よし!これで後はあいつらを倒して装置をぶっ壊せば終わりだ!いくぞ!」

 

俺はそう言いながら大剣を生成、そのまま横薙ぎに振り抜いて部屋の窓とその周辺の壁を破壊する!

 

『はい!』

 

皆が返事をして、前衛の俺、アザぜル、リアス、木場、朱乃は翼を広げ飛び出していく!

今回、イッセーは後衛で援護砲撃をしてもらうことになっている。アーシアは回復の光を矢として放ってもらい、黒歌は防御結界を張り、小猫はその護衛、手が足りないため、ヴァーリも無理しない程度に頑張ってもらう。オーフィスも後衛組と一緒にいてもらっている。

俺たち前衛組は前に出てきた死神の一団とそのまま激突する!

一人また一人と斬っていくわけだが、こいつら弱くね?

俺がそんな事を思った直後、

 

ドッゴォォォォォォォォォォン!

 

突然の爆発と煙で視界が奪われる!すぐさま、煙から飛び出し、近くにいたアザぜルに訊く。

 

「アザぜル!今の誰の攻撃だ!?」

 

「多分オーフィスだろ!ちょっと待ってろ!行ってくる!」

 

そう言って後衛組の方に飛んで行った。

俺は前衛チームの安否を確認する。

 

「とにかく、おまえら無事か!」

 

「私は大丈夫です!」

 

「こちらもですわ!」

 

「同じくです!」

 

「了解、作戦続行だ!行くぜ!」

 

リアス、朱乃、木場の返事を受けた俺は頷き、再び死神の群れに斬り込んでいく!

こうして俺たちの脱出作戦が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちはあれからもしばらく戦い続けていた。

 

バチッ!バチッ!

 

時折聞こえるこの音は、おそらく、先程のイッセーの砲撃やオーフィスの攻撃でこの空間にダメージを与えている証拠だろう。

それでも、この結界が健在なのは装置が無事だからということとゲオルグが無事だからだ。

なんてことを考えつつ、死神を直刀で斬り伏せていく。

見れば、他のメンバーも余裕そうだった。

一応、下級死神でも中級悪魔並みには強いんだがな。

そこで前衛に参加したイッセーが、リアスと朱乃に力を譲渡、その二人がまた強力な攻撃を繰り出していた。

すると、イッセーの方にジークフリートと死神一行が出現する。

あれは、援護に行きますかね。イッセーを死なせるわけにはいかねぇ。

俺はそう決めるとイッセーの方に向かう。途中で死神が邪魔してくるが、すれ違い様に斬っていく。

するとジークフリートの声が聞こえてきた。

 

「……今のキミでも十分すぎるほどの強者だよ」

 

もしかしてイッセーのやつ、会話の流れで『曹操には負けたがな』的なこと言ったのか?

 

「だから言ったろ。回りが強すぎるだけだって」

 

そう言いながら俺はイッセーの横に並び、言葉を続ける。

 

「サイラオーグや曹操と戦っていれば、この程度の死神じゃ何人来ても問題ないだろ」

 

「そうだぜ、イッセー。ま、俺たちもだがな」

 

アザぜルも下りてきて俺の横に並ぶ。

俺たち仲良く曹操に負けたが、こいつら程度になら負ける気がしない。

 

《死神を舐めてもらっては困ります》

 

どこからともなく聞こえた声。その声の主と思われる不穏な気配を感じてそちらを見てみると、空間が歪みだしそこから何かが出てこようとしていた。

そこから現れたのは、装飾されたローブに道化師が被っていそうな仮面をつけ、黒い刀身の鎌を持った死神だった。

気配でわかる。こいつは最上級の死神だ…………。

 

「貴様は!」

 

アザぜルもわかったのか、驚いていた。

するとその死神が俺たちにお辞儀をしてくる。

 

《初めまして、堕天使の総督殿、そして魔王の眷属殿。私はハーデス様に仕える死神の一人。プルートと申します》

 

「なるほど、最上級死神のプルートね。伝説にも残っている奴を寄越すとは、ハーデスの野郎………」

 

「まったく、やってくれるもんだな!」

 

俺たちがそれぞれ喋っていると、プルートが話始める。

 

《あなた方はテロリストの首領オーフィスと結託し、同盟勢力を影から崩そうとしました。それは万死に値します。同盟を訴えたあなたがこのようなことをするとは》

 

あちらはそういう『大義名分』でやっているんだな。

俺はともかく、アザぜルはそれを聞いてぶちギレている様子だ。

 

「なるほど。そういう理由で俺たちを消すつもりか!そのためにテロリストどもと戦っていた俺たちに襲いかかったと!どこまで話が済んでいるんだ!」

 

《いずれはそんな理由付けもいらなくなりますが、今回は一応ということで理由を付けさせていただいただけです。さて、私はあなた方に後れを取るほど弱くないですよ》

 

「そういうが、プルートさんよ。単に嫌がらせしたいだけだろ?」

 

《ええ、そうともいいますね。死神にとってあなた方は目障りですので》

 

「…………舐めてくれるもんだな」

 

《舐めてはおりません。真剣です。それでは偽物ということになったオーフィスをいただきます》

 

フッ!

 

奴が高速で動くが、俺はそれに反応し近づけ刀で受け止める!

 

ギィィィィィィン!

 

直刀と鎌の激突で空間が大きく揺れる!

俺は一旦プルートと距離を取る。

 

「ロイ!助太刀は━━━!」

 

「いや、いらねぇ。その人工神器(セイクリッド・ギア)も本調子じゃないだろ?」

 

《一人で私と?舐めてくれますね》

 

「舐めてはおりません。真剣です」

 

挑発ついでにさっき言われたことをそのままの言葉で返してみた。

 

『そのようなことを舐めていると言うのですよ!』

 

若干キレているが無視してイッセーにも言う。

 

「イッセーも来るなよ。こいつは俺が殺る」

 

そう言って俺は奴に突っ込む!

 

ギィィィィィィン!

 

俺の剣撃をプルートが受け止め、再びつばぜり合いになるが、そのまま強引にプルートを上に押していく。

イッセーたちから十分距離を取ったところでつばぜり合いを止め、一気に高速の攻防を繰り広げる!

俺とプルートの一撃が激闘するたびに空間が震え、「バチッ!バチッ!」と今にも空間が破れそうな嫌な音が耳に届いてくる!

プルートの大上段からの振り下ろしを半身で避け、空振って体勢を崩したプルートに滅びを込めた蹴りを放つ!

 

《グッ!》

 

苦悶の声と共に吹き飛ばされるプルート。

俺は直刀を逆手に持ち替えると、そのまま投げ槍のように投げつける!

プルートは素早く体勢を整えて直刀を上に弾き飛ばすが、俺は高速で動き出して弾かれた直刀を回収。そのまま魔力を込めていき、落下の勢いを乗せて大上段から一気に振り下ろした!

 

ギィィィィィィンッ!

 

とっさに防いだプルートの鎌と激突し、甲高い金属音が空間に響き渡る!

俺は歯を食い縛って一気に押し込もうとするが、プルートも負けじと押し返そうとしてくる!

くそ!こういうときにパワー不足を痛感させられる!

激しく火花を散らしながらつばぜり合いをしていくなかで、俺は直感刀を消して爪先に刃を生成、プルートに蹴りを放つ!

 

「っつあ!」

 

《ぬぅっ!?》

 

押さえていたものがなくなり、大きく体勢の崩れたプルートの腹に蹴りが直撃する!

俺は刃から滅びを流し込みながら一気に振り抜く!

空気を切り裂きながら吹っ飛んでいくプルート。追撃として直刀を投げつけ、同時に俺も飛び出す!

体勢を整えて直刀を弾こうと鎌を振るプルート。だが、その前に直刀を回収し、鎌の一撃を避けて斬りかかる!

 

《ぐぅ!》

 

再び苦悶の声を出すプルート。あまり斬っているという感覚がないのは、死神は骨ばかりだからだろう。

俺は息を吐き直刀を握り直すと、突然発生した霧から大量の死神が現れ、イッセーたちを囲む。

質より量に作戦を変えてきたようだ。

俺が小さく舌打ちをすると、プルートが斬りかかってくる。

 

《よそ見とは、隙だらけですよ!》

 

「あるわけねぇだろが………」

 

俺はそれを体捌きで避け、その後の連撃もすべて避けていく。こちとら隻眼だってのに、動きが読みやすいぞ。

俺がプルートの一撃を受け止めた瞬間、イッセーの叫びが聞こえてきた。

 

「ロ、ロイ先生!大変です!」

 

「どうした、イッセー!誰かやられたか!?」

 

「いや、そうじゃなくて!何か、先輩方がリアスの胸を次のステージに進ませようって言ってきてるんです!」

 

「………知るか!」

 

イッセーの言葉で、アザぜルは狂気すら感じる嬉しそうな顔をしていた。

 

《随分余裕そうですねっ!》

 

プルートはそう言いながら上段から斬りかかってくる。

 

「っ!」

 

俺はそれを体捌きで避けるが、

 

今のは危なかった………。今度からはイッセーの言葉に反応するタイミングを考えよう。

俺はそう思いつつ、プルートと斬り合っていく。

俺とプルートが激しく激闘していると、視界の端に紅の光が視界に映る。

 

「キタキタキタ!ついにリアスの胸が第三フェーズになったぞ!これぞまさしく乳力(にゅうパワー)だぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

アザぜルが場違いなほど騒いでいた。やっぱり、プルートの相手はあいつに任せればよかったよ。すると、

 

ズドォォォォォオオオ!

 

イッセーの砲撃が放たれた!あれで三発目だぞ!大丈夫なのか!?てか、今ので死神の三分の一が消えた!だが、もう限界なんじゃ……。

 

ビィィィィィィィ!

 

するとリアスの胸から紅の光が出てイッセーに当たる。すると、イッセーのオーラが回復した!?

 

「さしずめ『紅髪の魔乳姫(クリムゾン・バスト・プリンセス)』だな!そして今のは『おっぱいビーム』または『おっぱいバッテリー』だ!」

 

アザゼルの言葉に、再び俺の中で何かがキレた………。

 

《な、なんだ貴様もオーラが高まったぞ!》

 

「うるせぇ……」

 

俺はそのまま直刀でプルートに斬りかかる!

奴は鎌で受けようとするが、俺の一撃はプルートの柄を切り裂き、プルートの仮面を壊した!

 

《ぐぁぁぁ……》

 

仮面が壊れ、元の骸骨顔を拝むことができた。

 

「なんだよロイ!出来るなら最初から━━」

 

「黙ってろ………」

 

「ちょ!?ロイ、どうしたんだよ!?」

 

「ヒトの妹の二つ名を、胸に変な名前を………!」

 

「そ、そんなことで!?」

 

驚愕するアザゼルに、俺は怒気を込めて怒鳴る。

 

「『そんなこと』だと!?俺のはいいぜ、堕天使の誰かにもらったものだからな!リアスのは母さんのものをもらったものなんだぞ!?後、リアスの胸にそんな変な名前をつけるな!リアスのことも考えてやれ!わかってんのか!」

 

「まったくよ!お前、若干シスコンとマザコンが入ってんぞ!」

 

「アザぜル………」

 

俺が静かに直刀の切っ先を向けながら睨むと、アザゼルは慌てて言葉を発する。

 

「わかった!わかったから!取り消すから!さっきのも今のも取り消すから!」

 

俺とアザぜルがこんなやり取りをしている間にもイッセーの砲撃は続いていた。

 

「とにかく二人を守れ。プルートは俺が殺る………」

 

「わ、わかった!いくぞ、お前ら!」

 

『は、はい!』

 

アザゼルの号令に恐々としながら返事をする面々。

少し、怒りすぎたか?

俺はそんなことを思いつつ、プルートとの戦闘を激化させていったのだった。

 

 

 

 

 

 




誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。