俺━━ロイは二刀流の構えを取り、曹操は笑みながら槍を構え直す。
俺はゆっくりと息を吐き、そして、
「…………ッ!」
一気に飛び出して曹操に肉薄する!
勢いのまま右の剣で突きを放ち、曹操がそれを横に弾いて石突きで俺を殴りかかってくる!
俺はそれをスウェーして避け、足払いをかける。曹操は大きく跳躍してそれを避けると、
「
そう言いながら足元に球体を移動させた。球体は曹操を乗せると、そのまま空中を動き回る。
あれが浮遊能力の球体か、あとは分身と威力のみ!
俺は翼を展開して曹操に再び接近し、大量の火花を散らしながらの攻防を繰り広げていく!
少しでも体勢を崩せれば球体から落下してそれで終わりだが、曹操とあいつが操る球体がそれを許してくれない!
俺が大振りに二剣を振った瞬間、曹操が視界から消えた!?
俺はとっさに気配とオーラを探り、素早くその場を飛び退く。
その瞬間、聖なるオーラが俺のいた場所を通り過ぎていった。
あ、あぶねぇ。直撃したら消し飛んでいた。って、前もこんな感じだったな。
俺は視界に曹操を捉え、曹操は聖槍で肩を叩いていた。
曹操の横には球体が浮いており、おそらくだが、あれで自分を転移させたのだろう。
まったくの予備動作なしでくるおかげで対応がしにくい。もっと球体にも注意しねぇと…………。
俺は息を吐き、二刀を握り直す。
球体と聖槍、どちらにも注意しつつ、接近して一撃を入れる。難しいが、やるしかねぇ!
俺は一気に加速、曹操に接近しようとするが、奴は再び消える!
俺は瞬間的に先程の球体のオーラを察知し、方向転換、転移先に先回りするように突貫する!
曹操の転移完了と同時に斬りかかり、それを受け止めた曹操とつばぜり合いになる!
「早速合わせてくるとは、流石ですね!」
「さっさと終わらせて、オーフィスを助けないといけねぇからな!」
曹操を一気に押し切り、蹴りを放つ!
曹操はその蹴りを槍の柄で防ぐが、蹴られた勢いで浮かせる球体から離れ、落下していく。
俺は急降下しながら曹操に突きを放つが、再び転移で避けられた。
ムカつくが、腕は確かだ。もう少し速度を上げねぇと捉えきれない…………!
再び球体の上に戻った曹操は、また球体を手元に寄せて俺の接近に備える。
俺は高度を曹操に合わせ、少し離れた位置を取る。他の球体は木場やルフェイたちを警戒するように浮かんでいた。
俺が一気に飛び出そうと構えると、曹操の手元の球体が俺に向かってくる。そして、一気に弾けた!
弾けた球体は、人の形をした何かを複数生み出した。これが分身を生み出すとかいうやつか!
「
曹操がそう呟く。名前はどうでもいいが、曹操の姿が見えねぇ。
俺は二刀の柄頭を合わせて両剣モードに切り替え、ブーメランのように投げつける。
高速回転して飛んでいく両剣は分身をまとめて切り刻み、そのまま奥にいた曹操を━━━━。
「隙だらけですよ?」
「━━━━━ッ!」
いつの間にか俺の背後を取っていた曹操。俺は目を見開きながら振り向く。
まるでスローモーションのように曹操の放った突きが迫ってくる。
俺が半身をとりながらスウェーに移行する。その瞬間、鼻の先を高速で聖槍が通り過ぎていった!
「チッ!」
俺は舌打ちをしながら滅びを込めた回し蹴りを放ち、曹操を牽制。転移で避けた曹操は槍で肩を叩く。
今の一撃、死ぬかと思ったぞ…………。
頬を流れる脂汗を拭い、俺は曹操を睨む。
あとは威力重視だが、どれがどれなのかわからん。
俺は無駄な思考を切り上げ、戻ってきた両刃剣をキャッチ、二刀モードに戻すと再び曹操に接近していく。
曹操は何かをするわけでもなく、今度は正面から受けようと構える。
━━━が、そんな馬鹿正直に正面からいくわけねぇだろうが。
俺は途中で加速と減速、カーブを織り交ぜて隙をうかがう。
曹操は俺の動きを目で追ってきているが、俺は手元から魔力弾を一発放つ。
高速で曹操に向かうそれを受け流そうと球体が動き出し、魔力弾が渦に飲み込まれようとした瞬間、
「弾けろッ!」
俺が叫び、魔力弾は激しい閃光を放ちながら弾けた!
事前に仕込んでいた俺は目を閉じて問題なかったが、他の連中が大変なことになっていそうだな。だが、
俺は一気に曹操に接近。目が眩んでいる曹操に斬りかかる!
取った…………!
俺は直感的にそう思った矢先、曹操が聖槍から聖なるオーラを放って全方位に攻撃をしてきた!
俺は小さく舌打ちをしながらも全身に魔力を流してダメージを軽減できるようにすると、減速なしで曹操に突っ込む!
聖なるオーラで身を焼きながらも俺が二刀を振ると、曹操がそれを受け止めた!同時に聖なるオーラがと閃光が止む。
つばぜり合いながら俺と曹操は睨みあう。
「瞬間的に魔力が上がれば、場所は探れますよ」
「本当に面倒だな…………!」
俺は押し切るように力を込めようとすると、曹操が転移で逃げる。
球体の場所を探り、再びそこに向かうおうとすると、別の球体が槍のように変ながら俺に急接近してきた!
俺はその球体を二刀で受け止め、弾き返すと、そこに聖なるオーラが飛ばされてくる。
俺はそれを避け、一気に曹操に接近。今度はつばぜり合いではなく、至近距離での戦闘となった!
曹操の突きや凪ぎを捌きつつ、俺も剣撃を放って攻撃していくが、まったく当たる気配がない。
攻撃を展開しながら曹操が言う。
「先程のは武器破壊のものでしたが、やはりあなたほどになるとダメでしたか…………」
「知るかッ!」
俺は大きく二刀を振って曹操を牽制し、一旦距離をとる。まあ、あの球体がある限り、間合いはすぐに詰められるんだがな。
やはり、隙を見てサマエルをやらねぇとダメか………。
俺がそう思慮しながらチラリとサマエルに目を向ける。相変わらず、オーフィスから何かを吸い出しているようだ。
俺は深く息を吐き、曹操に目をやる。向こうも汗を流しているが、余裕そうに笑みを浮かべていた。
リアスたちにサマエルを叩いてもらいたいが、それが受け流されて俺に飛んで来るのも面倒だ。だからって、俺一人でどうにかできるかは微妙だな。
俺は息を整え、再び曹操に突撃する!再びフェイントを織り交ぜて接近し、背後から斬りかかる!
曹操はそれを読んでいたように聖槍で防ごうとするが、俺はそこで再び高速で動きだし、曹操の正面をとった!
驚愕しながら一瞬だけ固まった曹操に全力の突きを放ち、心臓を貫きにいく!
だが、曹操が素早く戻した聖槍の柄で防がれ、曹操が弾き飛ばされただけだ。
俺は急降下し、転移される前に曹操に斬りかかった!
曹操は舌打ちをしながら俺の攻撃を受けとめ、そのまま弾き飛ばす。
弾かれた俺は体勢を整え、球体を使ってゆっくりとホールの床に降り立った曹操を睨み、再び突撃。落下と加速の勢いを乗せて、二刀を大上段から振り下ろす!
曹操が聖槍でそれを防いだ瞬間、激しい金属音と共に曹操が片ひざをついたが、俺の剣に小さなヒビが入った!
今まで無理させっぱなしだからな、そろそろ限界か!
俺は舌打ちをしながら一気に決めにいこうとすると、曹操は聖なるオーラを放ち、俺を牽制する。
至近距離で不意討ちでくらってしまえば、今の俺では耐えきれない!
俺は素早くその場を飛び退き、床に足をつける。やはり、足がついているほうが落ち着くな。
俺と曹操は肩で息をしながら睨みあい、次の一手を考える。
だが、どうすればこいつを倒せるかわからん!球体がどれかがわかればもっと楽になるが、どれも感じるオーラは同じで見当も付かない。
俺は深く息を吐き、二刀を握り直す。すると、曹操は凪ぎ払いを放てるように構えた。
あそこまで露骨に構えるとなると、あっちは決めにくるということだ。そして、あれが本当に凪ぎ払いを放つかは別問題。
俺が曹操の動きに警戒していると、いきなり曹操が目の前に移動してきた!いや、違う、これは…………!
「俺を転移させたのかッ!?」
「ご名答ッ!」
曹操はそう言いながら凪ぎ払ってくる!
俺は二刀でそれを受け止めた瞬間、剣が砕け散ると同時に想像を絶する衝撃に襲われ、一瞬意識が飛びかけて視界が歪む………。
俺がそれを自覚した瞬間、床を深く抉るほどの衝撃と共に吹き飛ばされ、ホールの壁に背中から激突する!
「かはッ!」
肺の空気を吐き出しながら、意識を無理やり覚醒させられ、俺はホールの床に倒れこむ。
りょ、両腕の感覚がねぇ………。繋がってはいるが、しばらく動かせねぇぞ…………。
「
勝利を確信した曹操がそう漏らすと、聖槍にへばりつくようにくっついていた球体が剥がれる。あれが、威力重視ってやつなのか…………。
曹操は倒れる俺を一瞥すると、ゲオルグに訊く。
「どれだけ取れた?」
「……四分の三強ほどだろうな。これ以上はサマエルを繋ぎ止められないな」
ゲオルグの後方では、サマエルを呼び出した魔方陣の輝きが失われつつあった。時間制限付きだったってことか………。
ゲオルグの報告に曹操は頷く。
「上出来だ。十分だよ」
曹操が指を鳴らす。するとオーフィスを包んでいた塊が消えた。その瞬間にサマエルは魔方陣に沈んでいく。
『オオオオォォォォォ……』
苦悶の声を発しながら、サマエルは魔方陣に消えていく。
塊から解放されたオーフィスはパッと見ただけで変化はないが、何をされた…………?
するとオーフィスが曹操を見る。
「力、奪われた。これが目的?」
それを聞いて驚く俺たち。曹操は愉快そうに笑い、頷いた。
「そうだ。オーフィス。あなたが俺たちの思い通りに動いてはくれないだろう。だから俺たちはあることを思いついた」
曹操は槍の切っ先を天に向けた。
「新しい『ウロボロス』を創りだす」
血を吐きながらアザぜルが言う。
「………そうか!サマエルを使ったのはらそのためにオーフィスの力を削るためか!」
「その通りですよ、総督。我々は都合のいいウロボロスが欲しかった。正直グレートレッドなんてどうでも良くなってね。そこで俺たちは『無限を倒せるのか』という英雄派の超常の存在に挑む理念も試すことができた」
「こんな形で無限を消し去るとはな……」
「いえ、ロイ殿。消し去るとはまた違う。やはり、力を集めるにはオーフィスのような存在が必要だ。だが考えが読めない龍神を傀儡にするには不向きだ」
「………人間らしい、実に人間らしい、回りくどい考え方だ」
「お褒めいただき光栄の至りです。堕天使の総督殿。……俺は人間ですよ」
俺とアザぜルの言葉に笑みを見せる曹操。
新しいオーフィスを作る。物騒だな、本当…………。
ゲオルグが満身創痍の俺たちを見る。
「ヴァーリと兵藤一誠をやるなら今だと思うけど?」
「それもそうだが最近もったいないと思えてなぁ。データとしてはかなり希少な存在だし…………」
そこで曹操は輪後光と球体を消失させ、踵を返す。
「やっぱり止めだ。ゲオルグ、オーフィスの力はどこに転送される予定だ?」
「本部の研究施設に流れるようにしてある」
「そうか、俺は先に戻る」
俺はフラフラになりながら立ち上がり、笑う膝を懸命に踏ん張って曹操に訊く。
「曹操、なぜ
少しでも情報が欲しいのでね。少しでも、こいつのことを知れれば、何かしら対策できるだろ。
曹操は一旦立ち止まり言った。
「誰も殺さずに御す。という縛りをしていた。では納得出来ないですかね?あれはまだ調整が必要でしてね。データを取りたかったこともあります」
「舐めきってくれるな」
「そうでもないですよ、ロイ殿。ヴァーリもよくやることです。それに少なくとも貴方は殺そうとしましたから」
そこで曹操はイッセーに指を指す。
「兵藤一誠。何年かかってもいい。俺と戦えるようになってくれ。
イッセーはそれを聞いて戦意をたぎらせていた。
曹操はゲオルグに言う。
「ゲオルグ、
「見ただけだからできるかわからないが、やってみよう」
「流石、伝説の悪魔━━メフィスト・フェレスと契約した。ゲオルグ・ファウスト博士の子孫だ」
「先祖が偉大すぎてプレッシャーを感じるけども。あと、さっき入った情報なのだが」
ゲオルグが紙切れを曹操に渡し、それを見た曹操も目が細くなっていく。
「恩をこうやってかえすのが『旧魔王』のやり方か。わかってはいたが」
何があったかはよくわからんが、『旧魔王』ってことは面倒なことなんだろうな。
するとゲオルグが何処かに転移した。
「ゲオルグはホテルの外に出た。俺とジークフリートの入れ替え転移の準備をしている」
ルフェイと黒歌がやったあれか………。
「ヴァーリチーム、グレモリーチーム。ひとつゲームといこう。もうすぐここにはハーデスの命令で死神の一行がオーフィスを回収にやってくる。そこにジークフリートも参加させよう。キミたちが無事脱出できるかがゲームの肝だ。二天龍には生き残ってほしいが、それを仲間に強制する気はないのでね」
そう言うと曹操も去っていった。
………ゲームだと…………?ふざけるなよ…………!
俺たちは敗北を噛み締めながら、脱出のための行動を開始した。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。