グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life03 いざ、試験へ

衝撃のオーフィス訪問から数日。

俺━━ロイは試験勉強中のイッセーたちと別れ、兵藤宅の地下にある室内プールに来ていた。

俺の視線の先には、プールでボール遊びをしているヴァーリチームの二人と一匹がいる。まったく緊張感がない。

 

「ルフェイちーん!パス!」

 

「はい!フェンリルちゃん!」

 

「…………」

 

ボフ…………。

 

しあさっての方向にボールを飛ばすフェンリル。そんなフェンリルに黒歌が吼える。

 

「ちょっと、フェンリルちん!どこ飛ばしてるにゃ!」

 

「あはは、大丈夫ですか?フェンリルちゃん」

 

ルフェイは苦笑しながらフェンリルを撫でていた。

そのフェンリルは………。

 

「……………」

 

特にリアクションはしない。

見た感じ、二人はノリノリだが、フェンリルだけ乗り気ではないようだ。

家から出るなと言いつけてはあるが、ルフェイはともかく黒歌がな………。あいつ、なにするかわからん。

俺は警戒を最大にして、その二人と一匹の監視を続行するのだった。

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

自分の部屋に戻ろうと階段を上がっていると、

 

「━━━━━━!」

 

「━━━━━━♪」

 

誰かの怒鳴り声と上機嫌そうな声が聞こえた。

俺はその二つの声の主がいると思われる階で止まり、その部屋を目指して廊下に出ると、前から黒歌が歩いてきた。

黒歌は俺を見ると笑みを浮かべ、立ち止まる。俺も対峙するように立ち止まった。

 

「おまえ、奥で何かしたのか?」

 

「別に、何もしてないにゃ」

 

ふざけたようでありながら隙がない。ヴァーリチームには変な奴が多いと聞いたが、その通りなんだろうな。

俺がじっと睨んでいると、黒歌が言う。

 

「どうかしたのかにゃ?もしかして━━━━」

 

不意に黒歌が俺に近づき、耳元で言ってくる。

 

「私に興味でもある?」

 

「━━━ッ!」

 

俺はとっさに黒歌を押し飛ばし、距離を取った。黒歌は華麗にその勢いを殺してイタズラっぽく笑んだ。

こ、こいつ、いきなり何を言い出すんだよ!?

俺は身構えながら語気を強めて黒歌に言う。

 

「いきなり何しやがる!」

 

「いやね、天龍の血ってのもありだけど、現魔王の血もありかにゃってね」

 

こいつ、何が言いたいんだ!確か、イッセーに子供どうこうの話をしたらしいが、多分その延長線上の話なんだろうが、俺をからかっているようにしか見えん!

俺は息を吐き、冷静を(よそお)いながら黒歌に返す。

 

「悪いが、俺には決めたヒトがいるんでな。おまえには興味なしだ」

 

「それじゃ、そのヒトがいなかったら?」

 

どうなんだろうな?セラと出会わずに来ていたら━━━、

 

「俺はこの場にいねぇよ」

 

「ふーん」

 

真面目に返した俺に、軽く返す黒歌。こいつ、聞く気ねぇだろ…………。

黒歌はペロリと舌をだし「ま、冗談にゃ♪」と言って、俺の横を通りすぎていく。本当に何がしたいんだよ!

俺が一人で怒りでプルプルしていると、小猫の部屋からイッセーとレイヴェルが出てくる。

 

「ロイ先生!大丈夫ですか?何か怒鳴り声が聞こえましたけど………」

 

「ああ、大丈夫だ。年甲斐もなくキレちまった」

 

「あの黒猫さんはイタズラ好きなのですね」

 

レイヴェルが冷静に言うと、小猫の部屋から小猫が顔を出す。

 

「………ごめんなさい。私の姉様が迷惑をかけてしまって」

 

「いや、気にすんな。おまえは安静に━━━」

 

そこまで言うと、俺はあることに気づく。心なしか、小猫の顔色がいい気がするのだ。

俺は横のイッセーに訊く。

 

「イッセー、小猫の様子が戻っている気がするんだが」

 

「はい。黒歌が何かしたのか、急に治ったそうです」

 

イッセーも困惑気味に返してきた。

よくわからないが、治ったのならいいか。

 

「ま、治ったんなら問題ないだろ。とりあえず、小猫はもう少し安静にしてろ。で、イッセーたちは早めに寝ろ」

 

「「はい」」

 

「わかりましたわ」

 

とりあえず、俺の一言で解散となったのだが、黒歌の奴、何がしたいんだかまったくわからん。

とりあえずだが、イッセーの心配事が減ったんならいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに来た試験当日。

イッセーたち参加組を転移魔法で会場まで送り、俺たち非参加組は近くのホテルに終わるまで待機することになっている。

理由は簡単、イッセーたちは有名すぎるからだ。

ただですら番組で人気だと言うのにこの間のゲーム中に告白したことによってさらに拍車がかかってしまったそうだ。

元とはいえ、婚約者だったライザー・フェニックスのところにも取材が殺到しているそうだ。ま、ヴィンセントがメディア系の幹部をしているから、やり易いってのもあるかもしれないな。

俺がそんな事を思慮していると、イッセーが誰かを探すようにキョロキョロしていた。

 

「どうした、イッセー?」

 

「いえ、ギャスパーがいないなと思いまして」

 

「ギャスパーか。詳しくはアザぜルに聞け」

 

俺はアザゼルを親指で指差しながら言う。

それに気づいたアザゼルは早速説明を始める。

 

「はいはい、ギャスパーは今朝早くに『一人で』グリゴリの施設に向かった」

 

「ひ、一人で!あいつが!?」

 

「ああ、バアル戦の後にな、泣きついてきたんだ」

 

『もう守られるばかりは嫌なんです!先輩みたいに強くなりたいんです!』

 

「━━━だとさ」

 

アザぜルに説明させてから俺も続く。

 

「臆病な性格のギャスパーが一人で行くと決めた。相当な覚悟を持って行ったんだろ。今頃あいつも頑張っているはずだ」

 

俺たちの話を聞いてどこか嬉しそうな顔をしたイッセー。そのままオーフィスたちに目を向けた。

何を言いたいのか何となくわかった俺は、訊かれる前に言っておく。

 

「イッセー、安心しろ。あいつらは俺たちと一緒に行動する」

 

「はい、なら安心です」

 

イッセーの返事を聞いたアザぜルが言う。

 

「それと試験が終わったらオーフィスを連れてサーゼクスたちのところに行く。オーフィスはイッセーが行くなら一緒に行くと言っているからな。お前らも行くことになる」

 

まあ、タイミングとしてはいいかもな。そろそろ話しておいたほうがいいだろう。

俺は苦笑しながら言う。

 

「これで終われば、一気にテロリスト全滅かもな」

 

「ああ、そうなったら、ヴァーリには感謝しないとな」

 

俺とアザぜルの会話を聞いていたのか、イッセーが訊いてくる。

 

「ヴァーリは何を考えてるんでしょうか?」

 

それを言われたアザぜルは目を細めながら言う。

 

「隠そうとしたのかもな。脅威から」

 

脅威、か。オーフィスを狙うやつは多いからな。身内の英雄からも狙われることもあるだろう。

何かを考え込むイッセーに釘を刺すように言う。

 

「イッセー、深く考えるのは後だ。今はやることがあるだろ」

 

「わかってます。試験頑張ります!」

 

イッセーの言葉を聞き、転移させようとした時、リアスが待ったをかけてくる。

 

「ロイお兄様、少し待ってください」

 

「ん?ああ、わかった」

 

一旦転移を中止したところで、リアスがイッセーに近づき頬にキスをした。するとイッセーが意を決したように言う。

 

「リアス!俺が試験に合格したらデートしてください!」

 

おお!イッセーがデートの誘いをしやがった!まったく、成長したもんだな。

それにリアスは、とても嬉しそうに笑顔で答える。

 

「ええ。デートしましょう。約束よ。待ってるから」

 

良かった。これでグレモリー家は安泰だ。

それを見ていたアザゼルが半目になりながらで言う。

 

「前にも言ったかもしれんが二人きりの時にやれ」

 

「ま、いいじゃねぇか、アザぜル。俺としても、見ていて安心できる」

 

アザぜルの言葉に俺が返すが、それが聞こえていた二人は顔を真っ赤にしているた。いい加減慣れてもらいたいな。

 

「そんなわけで、行ってきます!」

 

照れ隠しをするようにイッセーが言ったので、俺は転移を再開。

イッセーたちを無事に送れたところで、俺たちも待機場所のホテルに転移するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーたちを送り出し、俺たちは集合場所のホテルで試験終了を待っていた。

念のため、ヴァーリチームには変装をさせ、フェンリルはルフェイの影の中に入らせた。オーフィスは誰も顔を知らないためそのままの状態だ。

それにしてもそろそろ終わってもいい頃だと思うんだがな。

俺がそう思った矢先、連絡用の魔方陣が展開される。

 

「アザぜル!来たぞ!」

 

「へいへ~い」

 

「って、また昼酒かよ!」

 

俺が相変わらず昼酒を飲んでいるアザぜルに物申していると、魔方陣から映像が投影され、イッセーの顔が映る。

映像のイッセーが困惑気味に俺たちに言ってくる。

 

『アザぜル先生!ロイ先生!実技なんですけど……』

 

俺がにやけながら答える。

 

「圧勝だっただろ?」

 

『は、はい』

 

「やれやれ、言ったろ?そっちの三人は上級悪魔クラスだって。その試験に参加するのは、高くても中級悪魔の上クラスだぞ?負ける方がおかしいぜ」

 

『知りませんでした。俺たち、そんなに強くなってたんですね』

 

「イッセー、おまえは自分が弱いとか思ってるかもしれないが、今までの相手が強すぎるだけだ。今のお前らは十分に強いよ。そのうち全員が上級悪魔クラスになるだろうな」

 

ここまで言うと、映像の向こうのイッセーは不思議そうな顔をしている。

 

「どうした?まだ聞きたいことでもあるか?」

 

『あの~、アザぜル先生は?』

 

「また昼酒だよ。まったくいいご身分だ」

 

「うるせ~」

 

「こんな感じだ、わかったか?」

 

『アッハイ』

 

イッセーの返事に、アザぜルが軽くキレながら体を乗り出して叫ぶ。

 

「何が、『アッハイ』だ!イッセー!」

 

「アザぜル、うるせぇ!耳元で叫ぶな!」

 

「なんだとロイ!たまにはいいじゃねぇか!」

 

アザぜルはそこで一旦息を吐き、落ち着きを取り戻す。

 

「にしても、よくこれだけのメンツと巡り合ったもんだよ、お前の惚れた女は」

 

「『にしても』じゃねぇよ。また、確かにスゴいがな」

 

俺たちの言葉にイッセーが自信満々の表情で言う。

 

『はい、リアスは最高の女性です!』

 

なるほど、なるほど。いい愛情を見させてもらった。

 

「おい、リアス。イッセーが『リアスは最大の女性です!』だとさ」

 

「………」

 

リアスはそれを聞いて顔を真っ赤にする。まったく慣れろよ、いい加減さ。

 

『ちょ!?ロイ先生!リアスもいるんですか!?』

 

「ああ、いるぜ。にしても顔真っ赤にしてるぞ、リアスのやつ」

 

俺がイッセーとリアスを煽っていると、アザぜルが突然声を出す。

 

「お前らお熱いこったな!クソ!涙が出てくるぜ!俺は独り身を極めっかな、ちくしょう!」

 

調子狂うなまったく。

俺は気を取り直して続ける。

 

「アザぜルがさっきリアスに言ってはいたんだ。リアス自身がそこまで強くなることもないってな」

 

それを聞いたイッセーも思うことがあるのか、あごに手をやって考え込んでしまうが、俺は続ける。

 

「リアスの持つ一番の武器は、巡り合わせの良さなのかもな。眷属の豊富さだけでいったら、もう上級悪魔の比じゃない。これは生まれもってのものだからな、これからも続くはずだぜ?こういうのは」

 

「俺的に言わせてもらえば、もはや奇跡、いや、それをとうり越してイカれてるレベルだな」

 

アザぜルも言うが、イカれてるレベルね、確かにその通りかもな。

 

「とりあえず試験は終わったろ?センターにある転移魔方陣でこっちに来い。とりあえず打ち上げといこう」

 

『はい!向かいます!』

 

そこで連絡用魔方陣が消え、投影されていたイッセーの顔も消える。

ま、あいつらのことだからしっかり受かるだろうな。後は中間テストだ。木場と朱乃はともかく、イッセーが心配だ。一段落したら勉強見てやろうかな。俺もそこまでできないがな。

俺はそう思いながらイッセーたちの帰りを待とうとしたのだが、

 

「くそ!何で俺には出会いがないんだぁぁぁぁぁぁ!」

 

アザぜルがいつかのロスヴァイセみたいになっている

が、面倒だから無視でいこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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