グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life06 全てを賭けて

俺━━ロイの表情が変わったことを察し、コカビエルは笑みを強くした。

 

「表情が変わったな。ようやく本気というわけか?」

 

「なに、ちょっとヤバイと思っただけだ」

 

俺とコカビエルはそのやり取りを終えると同時に飛び出す!

俺が直刀の一撃を大上段から降り下ろし、コカビエルがそれを受け止め、そのまま弾き返してくる。

無防備になった俺の腹にコカビエルは再び右回し蹴りを放ってくるが、それを左腕で止め、そのまま掴む。

そのままコカビエルの右足に左手に生成したナイフを突き刺そうとするが、コカビエルは左足でも蹴りを放って来た!

無論、両手がふさがり攻撃に集中しすぎていた俺は、それに反応することは出来ずに蹴り飛ばされる。

 

「ッ!」

 

勢いのまま吹き飛ばされるが、素早く翼を展開して体制を整え、同時にコカビエルに刺し損ねたナイフを投げつける。

コカビエルはそれを弾き返しながら俺に突撃、光の槍で突きを放とうとしてきていた。

吹き飛ばされた勢いを殺しきった俺は地面に両足をつけ、踏ん張りながら直刀を右脇に構える。

コカビエルは顔を狙って勢いよく突きを放ってくるが俺は首をかしげるようにしてそれを避け、無防備になった腹に向けて一気に直刀を振り抜く!

………取った!

その瞬間に俺はそう思ったが、俺の手には固いものを斬ったような感覚があった。

俺が違和感を感じながらコカビエルの腹部を見ると、鋼鉄のようになった翼を使って腹部をカバーしていた。

驚愕する俺はハッとして身を屈める。一瞬後に光の槍が俺の頭の上を通りすぎていく。

俺は右手を地面につけて体を支え、左足で足払いを狙うがコカビエルは軽く跳んでそれを回避。

俺は回った勢いで立ち上がり、回し蹴りを放つ!が、あっさりと受け止められ、そのまま勢いよく近くの木に叩きつけられた!

 

「かはっ!」

 

俺は肺の空気を吐き出しながら、そのまま抵抗できずに投げ飛ばされる。

俺が歯を食い縛りながら体制を整えようとした直後、コカビエルは光の槍を投げつけてきた。

直刀を投げつけて光の槍に当てると二つのエネルギー体がぶつかった影響か、大爆発が起きた!

俺はとっさに気配を殺し、木の影に隠れる。

 

「はぁ……はぁ………」

 

息を整えながら頬を流れる血を拭い、状況を整理する。

セラから離れることには成功した。が、勝てるかどうかは微妙、いや、無理かもな……。

さっきの一撃も避けきれていた筈だが、頬が浅く切れている。本体以上に範囲が広いようだ。

俺が額の脂汗を拭うと同時に鳥肌がたった!考える間もなくその場にしゃがみこむと、俺が隠れていた木が叩き斬られ、盛大な音とともに倒れる。

俺は転がるようにその木から離れ、素早く振り向き切り株の向こうを睨む。

コカビエルが笑みを浮かべて俺を見てきていた。

 

「甘いな。その程度、隠れているとは言わん」

 

俺は溜め息をついた。この感じだと、奇襲は出来なさそうだ。

俺は立ち上がり、直刀を生成し直して刀身に魔力を込めていく。刀身の紅色が少し黒みがかり、小さな雷のようなものが刀身を走り始める。

それを見てコカビエルは笑う。

 

「刀身に込める魔力量を増やしたか。確かにそれなら一撃の威力が増すが、消耗もしやすいだろう?」

 

「確かにそうだが、もとより長期戦は望みじゃないだろ?」

 

「確かに、それもそうだな」

 

俺の質問にコカビエルは笑みながら答えると、何かに気がついたように言ってきた。

 

「貴様、あの女を助けるため距離を取ったのだろう?」

 

「?」

 

コカビエルの質問に俺が疑問符を浮かべていると、コカビエルは言った。

 

「あの女を殺せば、おまえはもっと本気になるか?」

 

…………は?…………セラを………『殺す』?

俺はコカビエルな言葉を一瞬だけ理解できなかったが、その一撃が過ぎた瞬間、俺の中の何かが切れる音が聞こえた気がした。

 

「そんな事━━━」

 

俺はコカビエルを睨みながら直刀に魔力をさらに込めていく。まるで、今まで自分に眠っていた何かが目覚めたように、魔力量が膨れ上がっていく。

 

「やらせるわけ、ねぇだろ……!」

 

言い切った瞬間、魔力が全身から放たれる!直刀と同じような現象が体からも起こり、小さな雷に当たった地面や木を焦がしていく。

コカビエルはそれを感じてさらに狂喜的な笑みを見せた。

 

「ハハハハハッ!いいぞ!いいぞっ!」

 

同時にコカビエルは飛び出してくるが、俺は直刀をしっかりと握りコカビエルを迎え撃つ!

俺とコカビエルの得物がぶつかり合い、先程よりも激しく火花が散る。

 

「らぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「チッ!」

 

俺は強引にコカビエルを押し切り、体制を崩させる。

コカビエルは舌打ちをしながら一対の翼を鋼鉄のようにして、俺を連続で攻撃してきた!

俺は素早く直刀を左手にも生成して二刀流にすると、それを捌いていく!それを見たコカビエルは翼を十枚に増やし、攻撃を激しくし始めた!

堕天使は幹部までになると翼は一対だけではない。こいつも何本あるかわからんな!

俺は連続で捌いていくが、少しずつ体を斬られ始め、

体のあちこちから血を流し始める。だが、その痛みは歯を食い縛って耐える!

ここで倒れたらセラが殺される……!そんな事、やらせるわけにはいかねぇ………!

そう思った瞬間に俺の魔力量がさらに増し、爪先にも滅びの刃を展開、少しずつコカビエルの攻撃が見えるようになってきた。

そして、増えた刃で翼の猛攻を捌いていく中で、捌かれた瞬間に一瞬の隙が生まれることがわかった。だったら!

俺はコカビエルの翼を捌いた瞬間に一気に懐に飛び込んだ!コカビエルはそれにあわせて光の槍で突きを放ってくるが、俺は跳躍してコカビエルの頭の上で体を捻りながら反転。そして━━、

 

「フッ!」

 

翼の根本に狙い済ました一撃を放った!

 

ビチャ………!

 

「がぁぁああああ!?」

 

コカビエルの翼の一つを落とした。

翼は魚が陸で跳ねるように動くが、すぐに動かなくなる。

コカビエルは激痛に耐えるように歯を食い縛り、残った翼で俺を攻撃してくる!

俺は避けようとするが、急に足の力が抜けてしまい、左肩にもろに食らってしまった!

 

「がっ!」

 

斬られた左肩から大量の血が流れる。それに構わず翼を切り払い、俺は後ろに飛び退く。

斬られた左肩を押さえるが、その程度で血は止まることはなく、大量の血が出続けている。それに、左腕がダラリと下がって動かすことができなくなってしまった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「はぁ……くっ!」

 

お互い息を荒くしながら相手を睨む。俺はコカビエルを睨みながらも片ひざをついてしまった。

血が出過ぎだな。これは、マズイ………。

俺は痛みに耐えてコカビエルを睨み、そのコカビエルは背中から大量の血を流しながら憎々しげに言ってきた。

 

「悪魔ごときが、俺の翼をッ!」

 

「カラスみたいに汚い羽だ。……要らないだろ?」

 

「貴様ぁぁぁぁぁッ!」

 

俺が言うやいなや激昂しながらコカビエルが突撃してきた!俺は避けようとするが、全く足に力が入らない。

 

「チッ!」

 

俺は舌打ちをしながら即席で右手に盾を生成する。そして、

 

ガキィンッ!

 

コカビエルの突きを盾で受けるが、踏ん張ることが出来ない俺は激しい衝突音と共に吹き飛ばされる!

地面を転がり、立ち上がった俺の目に迫りくるコカビエルの姿が写る。

俺は足を懸命に踏ん張り、迎え撃つ姿勢を取る。そこにコカビエルの放った突きを右に飛び込むように避ける。

その勢いを片ひざをつくようにして殺し、コカビエルの方を向いたとき、コカビエルが光の槍をまさに振り上げようとしていた。俺はとっさに避けようとするが、まだ体に力が入らない。

俺はとっさに後ろに上体をそらすが━━━、

 

「……がっ!ああぁぁぁぁあああッ!?」

 

焼けるような激痛が右目を襲い、俺は絶叫しながら右目を押さえて地面をのたうち回る。

 

「はぁ……はぁ………くく、ここまでだな」

 

コカビエルの声に反応して、痛みに耐えながらそちらに目を向ける。

無様に倒れる俺に、コカビエルは余裕そうな笑みを浮かべて近づいてきていた。

こいつは間違いなく俺を殺す。そして、その後にセラも殺す………。

俺は右目の痛みに耐えるように歯を食い縛り、再び立ち上がる。

何としても、例え命に変えても、セラを守る………!

再び覚悟を決めた俺は左目でコカビエルを睨む。そんな俺を見て、ようやくコカビエルは表情を変えた。まるで、化け物を見るような、恐怖を感じたような目だ。

俺は呟くようにコカビエルに言う。

 

「その顔が見たかった………」

 

コカビエルはハッとしたように光の槍を生成する。

 

「貴様は危険だ!ここで殺す!」

 

コカビエルは肉薄し、突きを放ってくるが、再び右手に盾を生成してそれを受ける!

 

ガキンッ!

 

「なっ!?」

 

コカビエルが驚愕の声を漏らした。先程まで吹き飛ばされ続けた俺が耐えたのだ。驚きもするだろう。

 

「な、なぜだ!?」

 

「フッ………」

 

俺は笑いながらコカビエルを弾き返す。そして盾を素早く直刀に変えて降り下ろす。が、あっさりと避けられてしまった。

俺は足の裏にスパイクのように刃を生成して今の一撃に耐えたのだ。それを知らないコカビエルは少し焦り始める。

 

「チッ!いい加減に死ね!」

 

舌打ちをしながら再びコカビエルは突撃してくるが、今度は下から抉り込むように突きを放ってきた!

もちろん盾でそれを受けるが、受けた瞬間に衝撃で俺の体が浮き上がってしまった!

 

「しまっ!」

 

「ここだな!」

 

光の槍を凪ぎ払ってくるコカビエル。盾でそれを受けた瞬間に俺は弾き飛ばされた!

木々の枝でさらに傷を増やしながら吹き飛ばされ、森の開けた場所でようやく止まる。

 

「はぁ……はぁ………ごほっ!」

 

息を整えようとするが、息の変わりに出てきたのは血だった。何ヵ所か、骨が逝ったか……。

俺は震える足を懸命に踏ん張り、直刀を杖変わりにして立ち上がる。相変わらず左腕が動かず、ダラリと下がったままだ。

俺がそれを見て苦笑していると、コカビエルが肩で息をしながら現れた。

 

「まだ生きているのか………!?だが………!」

 

光の槍に今まで以上に光を濃縮し、刀身を細くしていくコカビエル。貫通力を上げ、盾を出されても突破出来るようにしているようだ。つまり、今度こそ終わらせるつもり……。

逃げようにも、立っているのがやっとだし、防ぐのは、無理だろう。

ここまで、か…………。すまねぇ、セラ。守ってやれなかったな…………。

どこか諦めのついた俺の腹部に、焼けるような感覚が走った。ボヤける視界には、俺の腹部に突き刺った光の槍が写る。すでに刺されているようだ。

 

「これで終わりだな………」

 

コカビエルの一言に完全に諦めがついた俺は、そのまま意識を手放そうとした瞬間━━━、

 

「ロイィィィィィッ!」

 

セラの泣くような叫び声が聞こえた………。

 

 

 

━━━━

 

 

 

私━━セラフォルーは懸命に森を走り、少し開けた場所に出ようとしていた。森の至るところに残るオーラを追ってロイを探しているうちに開けた場所に出た。そして、私の目に、

 

「これで終わりだな………」

 

コカビエルに腹を貫かれたロイの姿が写った。

そ、そんな、嘘、でしょ………?

私は体に力が入らなくなり、へたりこむようにその場に座り込む。そのままロイを見る。全く動く気配はなく、もしかしたら━━━。

 

「ロイィィィィィッ!」

 

私は最悪の結果を否定するように彼の名前を叫んだ!ロイが簡単に死ぬわけない!ロイは私が、初めて━━━!

私はハッとしてコカビエルを見る。先程の叫びのせいで私に気がついたようで、肩で息をしながらこちらを向いていた。

 

 

 

━━━━

 

 

 

「あい…つ。ま…だいたの……か」

 

かすれる声でそう言うと、消えかけの意識が再び戻ってくる。まだセラの奴は逃げていないようだ………。

光の槍を引き抜こうとしたコカビエルの右腕を左手で掴む。同時に左肩から大量の血が吹き出す。

 

「ッ!?」

 

掴まれたコカビエルはゾッとした表情になりながら俺を見る。俺は逆手持ちになるように右手にナイフを生成し、コカビエルの顔面を狙って降り下ろす!

 

「クッ!」

 

コカビエルはとっさに左手で防ごうとするが、その一撃は左手を貫き、左目の下当たりに浅く刺さる。

コカビエルは俺の腹に刺した槍を動かして抉ってくるが、あまり痛みは感じない。

俺はありったけの力をナイフと右手に込め、一気に上に振り抜いた!

 

「ああああぁぁぁああああッ!」

 

「がぁぁああああッ!?」

 

同時に腹に刺さった光の槍が消え、コカビエルは絶叫しながら後ろに倒れ、先ほどの俺のようにのたうち回る。俺も振り抜いた勢いで後ろに倒れた。

消えかけの意識を懸命に保って上体を起こすと、コカビエルが左目を押さえながら俺を右目で睨んできていた。

いつの間にかセラが駆け寄ってきており、セラが盾になるように俺の前に立つ。

 

「逃げろ………セラ………!死ぬぞ………!」

 

俺は絶え絶えの意識でそう言うが、セラは、

 

「逃げない!だって、私は━━━ッ!」

 

セラが何かを言おうとした瞬間、セラの盾になるように何かが上空から落下してきた。土煙を上げながら着地したそれは、

 

「まっ……たく………遅い……ぜ…」

 

「ごめん。待たせたね………」

 

今まで見たことがないほど、冷たい雰囲気を放つ兄さんだった。

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。

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