グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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Extra life03 見せろ、根性!

山に籠って三日程。

 

「よっと!」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃっ!」

 

俺とライザーは吹雪の中ドラゴンに追いかけ回されていた。俺は回避、ライザーは逃走って感じだがな。

俺は次々放たれるブレスを避けていき、ライザーは直撃すれすれで逃げ回っているが、あっちの限界が近そうだ。

一誠は吹雪がしのげる場所でレイヴェルと話しているし、ここからなら聞こえないだろう。

俺は再びブレスを避け、ライザーに声をかける。

 

「ライザー、暇か?」

 

「暇に見えますでしょうか!?」

 

そう言いながら逃げ回るライザー。初日に比べればだいぶ余裕が出てきたようだ。

俺は苦笑しながら続ける。

 

「まあ、聞けって。この近くに温泉があるんだ」

 

「そうですか!それがなにか!?」

 

「今日、リアスたちが入りに来るらしい」

 

「なんですと!?」

 

ライザーが驚きながらもこちらに目を向ける。その瞬間、ドラゴンのブレスが放たれた。それはまっすぐライザーの元に向かい、

 

「ギァアアアアアッ!?」

 

大爆発とともに吹き飛ばされた!まあ、不死身のフェニックスだから死にはしないはずだ。

俺は白目を剥いて気絶したライザーを担ぎ、一旦一誠たちと合流したのだった。

一誠も今の話を聞いた頃だろうな。

 

 

 

 

━━━━

 

 

 

 

レイヴェルから部長たちが温泉に入りに来ると聞いた日の夜。俺、兵藤一誠は洞窟の寝袋の中で寝れないでいた。

━━━温泉!部長たちが入る!

それを知ってしまっただけで、思考がピンク色になっている!しかも、話によれば、部長だけじゃなく、朱乃さんたちも来るようだ!

ライザーの更正もいいが、男なら覗かないという選択肢はない!そうと決まれば、即行動だ!

まずは、ロイ先生とライザーが寝ているかの確認だ。ロイ先生はともかく、ライザーが妙に静かな気がするけど………。

俺がそっとライザーの寝袋を確認すると、そこには!

 

「あのくそったれが!」

 

ライザーの寝袋には下手くそな顔が描かれた偽物が入っていた!あの野郎も知ってやがったのか!

 

「皆の裸を見せてたまるものかよッ!」

 

俺は怒りに燃えながら禁手(バランス・ブレイカー)の鎧を纏い、洞窟から飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

全速力で飛ぶこと数分。

俺は夜空に揺れる炎を見つけた。あそこか!

 

「ライザァァァァァァッ!」

 

「チッ!バレたか!」

 

「温泉を覗くつもりなんだろ!?やらせると思うかよ!」

 

「覗いて何が悪い!温泉に女が入るなら、それを覗くのが男というものだ!」

 

「それが貴族のすることかぁぁぁぁぁっ!」

 

許せん!このスケベ野郎が!皆の乳は俺が守ってやる!

俺はその覚悟の元、ライザーに向かって突撃していった!

 

 

 

 

 

 

 

雪山での空中決戦を始めて十数分。

 

「ぜーはー」

 

「ぜーぜー」

 

俺とライザーは疲れきっていた。不死身相手に持久戦はキツいな………。引きこもっていた癖に!まぁ、ここまで粘れる理由はわかる。何としても部長たちの乳を見たいと思う、スケベ根性ってやつだろう!

 

「………随分強くなったじゃないか。こちらに有利な空中戦でここまでやれるとはな。まったく、末恐ろしい奴だ!」

 

ライザーが息を切らしながらそう言う。こうなったら、モードチェンジして一気に………。

俺がそう思慮した矢先、突如ライザーが急速降下していった!俺が下に目をやると、すぐ近くには温泉があり、そこには見覚えのある人影が!

しまった!戦っていて温泉に近づきすぎたことに気がつかなかった!

俺もすぐさま追いかけるが、なかなか追いつけない!このままだと、部長たちの乳が見られちまう!

俺が焦りながら追うと、ライザーが先に温泉に突っ込んでいった!?あのヒトも焦りすぎだろ!?

俺もすぐさま温泉に着地して、ライザーを睨もうとするが、

 

「イッセー?」

 

こ、この声は!?

俺は声に反応してそちらに目を向けると、こちらに背を向けるように温泉に浸かっている部長のお姿が!背中姿も美しいです!いや、今はライザーをどうにかしないと!

俺がライザーの方に目を向けると、

 

「あ、ああ、リアス、リアスの………」

 

めっちゃ鼻息を荒くして興奮している様子だった!この野郎、見やがったな!

俺が怒りに拳を震わせていると、部長が嘆息気味に言う。

 

「ライザーもいるのね。まったく、何をしにここに来ているのよ………」

 

あ、あんまり気にしていない?ライザーもいるのに?いや、俺もいたらいけない気もするけどさ………。

 

「いい?二人とも。私はね、面倒が嫌いなの」

 

………あれ?部長って、こんな事言うヒトだったっけ?

俺と同じ事を思ったのか、ライザーも首をかしげていた。

部長が体にタオルを巻くとゆっくりと立ち上がり、『白濁した右目』で俺たちを睨んでくる。

ま、まさか……まさかっ!?

俺が冷や汗を頬に伝わせていると、

 

「なあ、一誠、ライザー。寝床を抜け出して覗きとは、いい度胸じゃねぇか」

 

部長の声で、部長の笑顔で恐ろしいことを言われた!同時に部長が二挺の銃剣を取り出す!

 

「ぶ、部長じゃなくて、ロ、ロ、ロ、ロイ先生!?」

 

「そ、そそそ、そんなバカな!?」

 

俺たちが狼狽していると、部長、じゃなくてロイ先生が自分の体を見ながら言う。

 

「騙して悪いが、アザゼルからあるものをくすねてな。それを使うと男が女に、女が男になるんだ。何かやらかす前に没収したんだが、まさか自分に使うことになるとはな」

 

「ロイ先生!せ、せめて説教は元に戻ってからお願いします!」

 

「あら?私の体は嫌い?」

 

「いえ!そんなわけ━━!違う、このヒトは部長じゃない!部長じゃない!」

 

急にいつもの部長の声音に戻すロイ先生!くそ!思わず答えそうになっちまったよ!

横のライザーは完全に固まっている。相当ショックだったようだ!

すると、ロイ先生が光輝き始め、その光が止むと、そこにジャージ姿のロイ先生が立っていた。温泉で濡らさないためか、ズボンを捲し上げられている。

元に戻ったロイ先生が笑みながら言う。

 

「さて、そんじゃ、説教だ。今夜は寝かせないぜ?」

 

「「気持ち悪いことを言わないでください!」」

 

ロイ先生の笑顔の一言に俺とライザーは異口同音で返した!

くそ!この調子だとレイヴェルもグルで、今回の部長たちの訪問はデマか!

俺が歯を食い縛って悔しがっていると、俺の心を読んだようにロイ先生が言う。

 

「あ、因みにだが。リアスたちは温泉には来ているぞ。ここじゃないけどな」

 

「なん…………だと?」

 

ロイ先生の言葉に俺はそう漏らして絶句した。ライザーも同様だ。

ロイ先生が右手の銃剣を肩に担ぎながら次げる。

 

「だが、それを知ったところで無意味だ。おまえらはここで果てるんだからな………」

 

「くそ!ライザー………さん!こうなったらロイ先生を倒しますよ!」

 

「やってやる!やればいいんだろうっ!同じ悪魔だ!俺にだってやれるはずだ!」

 

俺とライザーがやる気になったことを確認すると、左の銃剣で手招きする。

 

「来な」

 

「「うおおおおおおおおおおっ!」」

 

俺とライザーは同時にロイ先生に向かって突撃した!これは、絶対に負けられない戦いだ!

 

 

 

 

 

━━━━

 

 

 

 

リアス・グレモリーとその眷属、イリナ、レイヴェルはタンニーンの領土にある温泉に来ていた。

 

(だ、大丈夫でしょうか………)

 

そのなかでレイヴェル・フェニックスは、一人だけ不安そうな表情になっていた。その原因はロイであり、

 

『今日、リアスたちが温泉に来るってことを一誠に伝えてくれ。俺はライザーに伝える』

 

『あの、そのようなことをしたら………』

 

『十中八九、覗きに行くはずだ』

 

『でしたら嫌です!』

 

『安心しろ、俺が止めてやるから。ライザーは多分それで立ち直る』

 

『ほ、本当ですか?』

 

『ああ、俺を信じろ』

 

というやり取りをしていたのだ。そのせいでレイヴェルはせっかくの温泉を楽しめていない。

そんなレイヴェルの様子に気づいてか、リアスが声をかける。

 

「レイヴェル、どうかしたの?」

 

「リアス様、少し悩み事です」

 

「悩み事?よかったら相談に乗るわよ?」

 

「はい。その、実は━━━」

 

レイヴェルは少し恥じらいながら事の顛末をリアスに説明した。それを聞いたリアスは「もう、お兄様ったら」と、ため息を吐きながら漏らし、レイヴェルに笑みを浮かべながら言う。

 

「お兄様が言ったのなら大丈夫よ。少し抜けているところがあるのも事実よ。けど、約束は絶対に守るヒトだもの」

 

「そう、でしょうか?」

 

レイヴェルの聞き返しにリアスが頷こうとすると、

 

『『ギァアアアアアッ!』』

 

どこからか、聞き覚えのある男二人の叫びが山に響き渡る。話を知らないメンバーは警戒するが、リアスが「大丈夫よ」と声をかけて落ち着かせる。そしてレイヴェルに笑みを向けながら、

 

「ね?」

 

と一言だけ言った。その時のリアスの表情にレイヴェルからも自然と笑みがこぼれ、同時に安心していた。

 

「はい。兄も大丈夫そうです」

 

「お互い、兄に振り回されっぱなしね」

 

「そうですが、とてもいいヒトたちですわ」

 

二人がお互いの兄について語らいながら、夜は更けていった。

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

「はぁ…………」

 

「おまえ、大丈夫か?」

 

俺━━ロイは冥界のバーのカウンターに突っ伏していた。横の席にはヴィンセントが座っている。

無事にライザーを立ち直らせることには成功した。やはり、スケベ根性の持ち主には女を使うに限る。が、男としての何かを失った気がする。

 

「はぁ……何であんなことしちまったのかな………」

 

ため息を吐きながら言う。もし、過去に戻れるのなら、俺は過去の自分をぶん殴りたい。

そんな俺の肩に手を置きながらヴィンセントが言う。

 

「ま、ライザーが立ち直らせてくれたんだ。今日は俺のおごりだ!ばんばん飲め!明日も仕事だから呑まれない程度に飲みまくれ!」

 

「ああ、そうさせてもらう」

 

久しぶりに親友と語らいながら俺は酒をあおっていく。二日酔いにならない程度に、それでいて今日のことを忘れられる程度に飲むかね。

そんな都合のいい程度なんてあるのか?

 

 

 

 

 

次の日。案の定二日酔いになっていた。

 

「ああ、くそ………。昨日の自分を恨むぞ」

 

ライザーを立ち直らせたのに、色々と失敗続きな気がする。まぁ、結果オーライってことでいいか。

二日酔いの頭痛と戦いながら、水分を補給し、バナナを食べる。リアスたちからはダイエットでもしているのかと疑われたが、そんなものもあったな。

俺はそんなことを思いながら、いつものように職場に向かう。

今日は何事もないように頑張らないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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