曹操たち英雄派が退いてくれたのはいいが、まだ問題が残っている。
『あー、しんど。ヴリトラいなきゃ、辛かった……』
曹操たちがいなくなっても元に戻らず、瞳も陰ったままだった。
「母上!母上!」
『………………』
「さて、どうしたもんかいの。仙術で解いてもいいんじゃが、ここではちも時間がかかるのぉ」
初代も
俺がため息を吐くと、初代が一誠の方に目を向ける。
「赤い坊や。おまえさん、女の胸の内を聴ける能力があったよなぁ?」
話には聞いていたが、なんてもん身につけてんだよ……。てか、初代もよく知っていたな。
「え、ええ、ありますけど」
「そうか、儂が協力するんでな、そこの小さなお嬢ちゃんと九尾の姫さんに術をかけてくれんか?」
「いいですけど、もう魔力が…」
なるほど、魔力不足か。なら、
「初代様、俺の魔力も使えますか?」
「おう、ほれこれでいけるじゃろ」
一誠と俺を魔法陣的なものが囲む。これで大丈夫だろ。
「おし。一誠、頼む」
「はい!いくぜ!
一誠が使う魔力を俺が肩代わりして発動させる。謎の空間が発生し、九重と御大将を包み込む。
それを見た初代が棒で地面を叩くと、一誠の作った空間を上書きするように新たに空間が発生した。
「これで心に直接語りかけられるはずだぜぇ。小さなお嬢ちゃん、心の中でお母ちゃんに語りかけてみな」
初代が言うと九重がうなずき、ゆっくりと瞑目した。
それから数秒が経つと、九重と御大将を光が包んだ。そのまま光を発しながら御大将が徐々に小さくなっていく。
そして光が止むとそこには人間形態に戻った御大将、
無事に戻れたようだ。
「……ここは?」
八坂はフラフラと体がおぼつかない様子だ。まだ意識がしっかりてないようだな。
「母上!母上!」
九重が八坂に飛びついた。八坂はやさしく九重を抱き、頭をなでる。
「どうしたのじゃ、九重。いつまで経っても泣き虫じゃな」
やれやれ、これで解決か。英雄派にやられた木場たちも大丈夫そうだ。
「ま、何はともあれ、解決じゃい」
こうして、救出作戦はいろいろとあったが無事成功したのだった。
「ところで一誠」
「な、なんですか?」
魔力切れで息を荒くしている一誠に気になったことを言う。
「おまえ、よくあの魔力弾を曲げられたな」
「ああ、あれですか。あれは、ちょっとロイ先生の真似を……」
「俺の真似?」
俺が自分を指差しながら訊くと、一誠は頷く。
「ロキと戦う前に英雄派と戦った時に、工場の雑魚敵を片付けるときにやったじゃないですか」
「あの時か」
一誠はあれを真似たと。一度見たあれだけでやるとは、なかなかやるな。今度は兄さんのを見せてやりたいな。
「まぁ、とりあえずお疲れさん。戻るぞ」
「はい………っ!」
こうして、俺たちはホテルに戻るのだった。
そして、ホテルに戻ってきて早速、
「救護班!コイツらを看てやってくれ!ケガはともかく魔力と体力の消耗が激しい!俺は後でいいから!」
俺が指示を出し、皆が動いてくれる。忙しく動き回る救護班の動きを見ていると電話がかかってきた。
「もしもし、こちら、ロイ」
『ロイお兄様!さっきのは何だったんですか!?それよりも、そっちで一体何があったのです!?』
連絡してきたのはリアスだった。ろくに画面見ないで出たから気づかなかったよ。
「さっきのはよくわからん。こっちではテロリストと一戦やってた。だが心配すんな、みんな無事だ」
『それはよかった。ではなくて!とりあえず、帰ってきたらじっくり訊かせてもらいます!』
ブチッ!
勢いよく電話がきられた。俺たち、間違いなく説教コースだが、大丈夫だろうか。
俺が帰ってからの心配をしていると、再び電話がかかってきた。
今度は相手の名前を見てから電話に出る。
「どうした、ソーナ。こっちは何とか終わったぞ」
『それは聞きました。お電話した理由は別の理由です』
ソーナの一言を受けて、俺は額に嫌な汗を流す。
そんな俺にソーナが静かな声音で告げる。
『お姉様と楽しんでいたようですね。お話は、帰ってきたらじっくり訊かせてもらいます』
ブチッ………。
…………やれやれ、面倒なことになっちまったな。
とりあえず、なにか適当な言い訳を考えながら、明日の修学旅行最終日のことも考え━━━。
「ロイ?」
「ん?ああ、セラか。ただいまっと」
背後から声をかけてきたセラに、思考を切り上げて振り向き、軽く右手を挙げて答える。
セラはニコニコと笑いながら言う。
「お帰りなさい。話はロスヴァイセちゃんから聞いたわ」
……………あ。
「いや、ちょっと待ってくれ!あれには深い訳がだな!」
「それも含めて全部聞いたわよ。ふふふ、溜まっているなら言ってくれれば良かったのに………」
なにか勘違いしたようなことを言うセラ。た、溜まっている?
「セ、セラ?な、何を━━━」
俺が訊こうとした矢先、セラが俺の首根っこを捕まえてズルズルと引きずっていく。
俺は驚愕をよそに改めてセラに訊く。
「セラ!?マジで何するつもりだ!?」
「ふふふ、疲れているところ悪いけれど、じっくりとお話を聞かせてもらうわ。あと、色々と処理もしてあげる………」
謎の迫力を放ちながら言うセラ。お、俺、どうなっちまうんだ!?
━━━━━
俺━━兵藤一誠は、修学旅行最終日のお土産屋巡りを終え、帰りの新幹線に乗るため、京都駅に来ていた。
そこには九重と八坂さんは駅のホームまで見送りに来てくれていた。
「赤龍帝」
「イッセーでいいよ」
俺のことを呼んだ九重にそう言うと、九重は顔を真っ赤にしてもじもじしながら訊いてくる。
「………イッセー。ま、また、京都に来てくれるか?」
「ああ、また来るよ」
俺が頷くと発車の音がホームに鳴り響く。九重が俺に叫ぶ。
「必ずじゃぞ!九重はいつだっておまえを待つ!」
「ああ、次は皆で来る。今度は裏京都も案内してくれよ?」
「うむ!」
それを確認すると、八坂さんがおっしゃる。
「皆々様、本当にすまなかった。礼を言う。これからレヴィアタン殿、
「ああ、頼むぜ、御大将」
アザゼル先生が笑顔でそう言い、八坂さんと握手を交わした。そこに、妙に機嫌が良く、肌がツヤツヤしているレヴィアタン様が手を重ねる。
「うふふ、皆は先に帰っていてね☆私はこのあと八坂さんと猿のおじいちゃんと楽しい京都を堪能してくるわ☆」
レヴィアタン様が楽しげなのはいいんだけど、
「ロイ、おまえ、大丈夫か?」
「あ、ああ……、新幹線で寝させてもらうから問題ない。女の恐怖を初めて実感したよ………」
アザゼル先生が目の下にくまができているロイ先生を心配していた。明らかに寝ていないとかそんな感じだ。
それを見ていたレヴィアタン様が言う。
「ふふふ、昨日は楽しかったわね」
「そうだな………」
ロイ先生が感情の籠っていない声で返す。昨日、あの後にも色々とあったようだ。
やり取りを終えた俺たちは新幹線に乗車する。
ホームで九重が俺に叫んだ。
「ありがとう、イッセー!皆!また会おう!」
手を振る九重に俺たちも手を振る。
新幹線の扉が閉まり、新幹線がゆっかりと速度を上げていく。九重はギリギリまで手を振り続けている。
短いけど、色々とありすぎたな。たくさんの思い出もできた。
また来よう。九重や八坂さんに会うために━━。今度は部長や皆も連れて━━━。
その時、俺はあることを思い出した!
「しまった!八坂さんのおっぱい見せてもらうの忘れてたぁぁぁぁぁぁっ!」
「くっ!お、おっぱいだと!?」
叫ぶ俺の横でロイ先生が苦しんでいた。あのヒト、本当に何があったんだ!?
━━━━━
新幹線で爆睡できたため、ある程度回復した俺、ロイと一誠たちは無事に帰宅できたんだが、帰宅して早々にリアスに怒られていた。俺も含めて正座させられている。
「グレモリー領で事件があったとはいえ、何で知らせてくれなかったの?」
「は、はい」
一誠も無駄な抵抗をしないな。しても助けないし、面倒だ。それにしても何で朱乃副部長と小猫もご立腹なんだ?
「こちらから電話したときに、相談してくれればよかったのに」
「……そうです。水くさいです」
一誠の奴め、電話させていたのか。その時に言ってくれればってことだな。
「で、でも、皆さん無事で帰ってきたのですから…」
そこでギャスパーが助け船を出してくれたが、ここでアザゼルが爆弾投下した。
「まあ、向こうで新しい女を作っていたからな」
「ちょ、アザゼル先生!?」
「事実だろうが。今度は九尾の娘だ」
「ったく、人聞き悪いな、アザゼル先生は!」
「だがな、イッセー。あの感じじゃ、きっと美人になるぞ」
アザゼルの追撃に一誠はたじろぎながら返す。
「そ、そうかもしれませんけど、小さい子への趣味はありません!」
その発言と同時に重い打撃音が部屋に響く。一誠に突然の暴力が襲いかかったのだ。一誠は腹部を押さえて殴ってきた小猫を見つめる。
殴られた理由は、まあ、小猫だからだろう。
「ロイ先生……」
小猫が俺を睨んでくる。おお怖い怖い。てか小猫、今、俺の心を読んだのか?いや、まさかな………。
その後も話は続き、一誠のパワーアップについての話になったことを皮切りに話がどんどん脱線していったんだが、アザぜルが突然思い出したように声をだした。
「そういや、学園祭前にフェニックス家の娘が転校してくるそうだぜ?」
「あ、そういえば」
アザゼルの一言に俺も思い出した。完全に忘れていた。
「レイヴェルがですか!?マジっすか!?」
「「マジで」」
驚愕する一誠に、俺とアザゼルは異口同音で答える。ついでに追加の情報も伝える。
「確か一年だったか?小猫とギャスパーと同じだな」
「猫と鳥、か。大丈夫か?」
「……どうでもいいです」
アザぜルと俺の一言に小猫は不機嫌そうだ。
「にしても、何で急に?」
一誠が訊いてくるが、アザぜルがスゲェいやらしい顔してるぞ。それにしても、
「リアスたちも大変だな」
「「「「「「……………」」」」」」
俺の一言に女子一同が黙り込む。
俺は咳払いをして話題を変える。
「そろそろ学園祭があるが、その前に、わかっているな」
「はい、ロイお兄様。みんな、サイオラーグとのゲームもあるわ。そちらの準備にも取りかかりましょう」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
リアスの言葉にみんなが返事をする。
俺は参加しないが、できる範囲で手伝っていくか。
にしても、奴らが言っていた『
その後、ソーナ宅にも呼ばれたんだが、
「言い訳はありますか?」
「すいません」
俺は正座をしてソーナに怒られていた。セラはまだ京都だ。
ソーナがため息を吐きながら言う。
「またお姉様のわがままなのはわかっていますが、いちいち受けないでください」
「まあ、そう言うなよ」
「……………」
「スイマセン」
ソーナの無言の迫力に負けて俺は謝る。どうしてソーナはこんなに怖いのだろうか。
それからもソーナの説教は続き、ようやく終わったのは数時間後だった。
そして、帰ったら帰ったで、
「ロイお兄様。ソーナの家で何を?」
「……はぁ…………」
リアスに訊かれたが、今は答えたくない。疲れたしこのまま部屋に戻るか。
俺が足早と部屋に戻ろうとすると、リアスに肩を捕まれる。
「逃がしませんよ。しっかりあの時に一言連絡しなかった理由聞かせてください。お兄様から何も聞いてませんからね」
いい笑顔で言うリアス。俺が寝れるのはもう少し後のようだ。
そうして、リアスからも(ソーナよりはマシだったが)説教くらったので一言。
━━━もうやだ!この妹たち!
とりあえず、これで修学旅行最終日の長い夜も終わりを迎えたのだった。
この章はここまでです。次回からは幕間③に入っていきます。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。