グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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life04 探し人

京都を束ねる妖怪である九尾の妖狐━━八坂(やさか)須弥山(しゅみせん)帝釈天(たいしゃくてん)の使者との会談に向かったきりに行方不明となった。

必死の捜索が行われたが八坂本人が見つかることはなく、見つかったのは瀕死の状態だった護衛の烏天狗のみ。

その烏天狗が息を引き取る直前、八坂が拐われたことを告げたらしい。

京都にいる怪しい奴を徹底的に捜し、一誠たちを襲撃してしまったそうだ。そのの誤解はセラとアザゼルがどうにかしてくれたそうだがな。

 

「……なんだか、えらいことになってますね」

 

一通りの話を聞いた一誠が漏らす。俺たちは屋敷に上がらせてもらい、大広間の上座には九重(くのう)が座っている。

 

「ロキの時もそうだが、各勢力が手を取り合おうとすると狙われやすくなっちまう。今回の敵は『禍の団(カオス・ブリゲード)』、つまりテロリストってわけだ」

 

俺がざっと解説してやる。ただですら面倒な状況だってのに、テロリストまで来るとはな。本当、面倒なことになった……。

俺は溜め息を吐き、九重の両脇にいる妖狐の女性と山伏(やまぶし)姿の天狗の爺さんに目を向ける。

天狗の爺さんは天狗族の(おさ)であり、九尾の一族と天狗の一族は親交が深く、あの人も八坂や九重のことを心配しているそうだ。

 

「総督殿、魔王殿、どうにか八坂姫を助けることはできんのじゃろうか?我らならばいくらでも力をお貸し申す」

 

天狗の爺さんがそう言う。それなら人手に困るなんてことはなさそうだ。

天狗の爺さんがおもむろに一枚の絵画を見せてくれた。巫女装束の金髪の女性、かなり美人の部類に入るだろう。

何て思ったらセラがさりげなく睨んできたので視線を絵画から外す。

 

「ここに描かれておりますのが八坂姫でございます」

 

だよな。いきなり関係のない人の絵は見せないだろし、そんなふざけている時間も余裕もない。横の一誠の鼻の下がなんとなく伸びている気がするが、今は無視だ。

 

「八坂姫を拐った奴らがいまだにこの京都にいるのは確実だ」

 

アザゼルがそう言った。それに続いて俺も口を開く。

 

「九尾の狐は京都に住む妖怪だけじゃなく、この地を流れる気も統括しているんだ。京都自体が大きな力場ってのは割と有名かもな。で、九尾が死んだり、何の用意もなくこの地を離れると、何かしら異変が起きる。まだ何もないってことは、八坂は無事で、まだ京都にいる可能性が高いってことだな」

 

「そういうことだ。で、セラフォルー、悪魔側のスタッフの動きはどうなっている?」

 

「つぶさにやらせているわ。京都に詳しいスタッフにも動いてもらっているし」

 

アザゼルはセラの言葉に頷くと一誠たちに視線を向ける。

 

「おまえたちにも動いてもらうことになるかもしれん。人手が足りなさすぎるからな。特におまえたちは強者との戦いに慣れているから、英雄派との戦闘になったら力を貸してもらうことになるだろう。悪いが最悪の事態を想定しておいてくれ。あと、これは木場とシトリー眷属には俺とロイから連絡しておく。それまでは旅行を満喫してていいが、いざというときは頼むぞ」

 

『はい!』

 

アザゼルの言葉に一誠たちが頷く。結局、こうなっちまうのか。こいつらには迷惑かけちまうな。

九重が手をつき、深く頭を下げる。それに妖狐の女性と天狗の爺さんよ続く。

 

「……どうかお願いじゃ。母上を……母上を助けるのに力を貸してくれ……。いや、貸してください。お願いします」

 

あんな小さな子供が頭を下げて、声を震わせている。あんなにしっかりはしているが、まだ母親に甘えたい年頃なんだろう。

英雄派、よくわからん理由であんな子供を泣かせるとは、許せねぇ………!

俺が小さな怒りを燃やしていると、なぜか一誠が八坂の絵を見ながら鼻血を吹き出していた。絵を見た感じ、八坂はかなりの巨乳だ。もしかしたら、一誠は変なご褒美を想像したのかもしれない。

 

「一誠、おまえ、たまには自重しやがれッ!」

 

「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁいっ!」

 

広い屋敷に俺と一誠の叫びが響き渡る。どうしてこいつは、こう、バカなんだろうか………。

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

ホテルに戻ってきた俺は木場たちへの連絡を済ませ、妙な気配を感じた一誠の部屋に向かっていた。

 

「一誠、入るぞ」

 

俺は一応声をかけてから部屋に入る。だが、誰もいないようだ。

俺が首をかしげて部屋を出ようとすると、

 

ガタッ!

 

部屋の押し入れが動いた。俺が触れたわけでもなく、何かが触れたわけでもない。ってことは、中に誰かいるのか?

俺はゆっくりと押し入れに手をかけ、一気に開ける!

 

「「「あ………」」」

 

「……………」

 

中にはイリナ、アーシア、ゼノヴィア、そして気絶している一誠がいた。

俺は笑みを浮かべながら三人に言う。

 

「おまえら、俺は面倒が嫌いだってのは知っているな?どうする、今から自主的に部屋に戻るか?それとも俺に引きずられて部屋に━━━」

 

「「「すいませんでしたっ!すぐに戻りますっ!」」」

 

三人は足早に部屋に戻っていく。まったく、これだから若者は………。

なんてことを思いながら、一誠を押し入れから引きずり出してそのまま布団を被せる。

これから面倒になるってのに、まったく面倒なことさせやがって………。

俺は溜め息混じりに一誠の部屋から出ると、そのまま部屋に戻る。

相部屋のアザゼルは今ごろ何をしていることやら……。

 

 

 

 

 

 




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