グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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修学旅行はパンデモニウム
life01 修学旅行開始


俺、ロイは冥界のある場所に来ていた。

 

「ロイ♪ロイ♪」

 

「はぁ………おまえな………」

 

セラの執務室だ。再び発作がでたとのことで呼び出された。室内は俺とセラの二人きりだ。

俺の胸に顔を埋め、いつも通りに頬擦りしてくるセラ。俺は彼女の頭を撫でながら言う。

 

「もう少し我慢はできないのか?毎度呼ばれると俺の仕事にも支障が出るんだが」

 

「十年近く我慢してたんだから、甘えてもいいじゃない!」

 

「十年いけたなら一週間もいけるだろ」

 

俺は小さく溜め息を漏らすが、構わず頭を撫で続ける。これを止めたらセラに睨まれる。まぁ、かわいく上目遣いでだが。

俺の溜め息が聞こえたのか、少し体を離して俺を少し涙目で睨んでくる。

 

「もう!いいじゃない!いいじゃない!甘えさせてよぉぉぉ!」

 

両腕をばたつかせながら言うセラ。駄々をこね始めてしまった。

俺は肩をすくめてセラに言う。

 

「わかった。好きなだけ甘えてくれていいから、先に仕事を終わらせてくれ」

 

「仕事といえば、今度、京都の妖怪のみんなと強力体制をとることになったの」

 

「そうなのか、頑張れよ」

 

「うん!頑張る!それでね、私、京都に行くの」

 

「………で?」

 

「時間があればだけど、デートしない?」

 

突然の申し出に俺は一瞬だけ間抜けな表情になるが、すぐに引き締めてセラに言う。

 

「それはいいが、そんな余裕あるのか?」

 

「会議の前なら問題ないわ☆」

 

「おまえはな。俺のことを訊いたんだが」

 

「………変装すれば?」

 

「どうやって?」

 

セラはその発言を受けて不敵に笑む。

 

「年齢を変えればいいのよ!ロイは外見年齢二十五なんだがら、ソーナちゃんと同じぐらいにすれば大丈夫よ!」

 

「悪魔の年齢変更をこんな形で使うことになるとは………」

 

俺は本日何度目かの溜め息を吐く。それに構わずセラが言う。

 

「それなら大丈夫でしょ?」

 

「リアスとソーナへの説明はおまえからしてくれよ?俺は面倒だからな」

 

「それって、つまり?」

 

「わかったよ。久しぶりにデートしようぜ?」

 

「やったー!ロイとデートできる☆」

 

セラは満面の笑顔を作りながら飛び付いてくる!セラって、抜けているようでしっかりしているんだよな。何か、俺が確実に油断しているときに攻めてくる。

俺は再び溜め息を吐き、抱きついているセラの頭を撫でる。生徒だけでなく、セラの面倒も見なければいけなくなったか。まあ、こういう面倒なら大歓迎か………。

 

 

 

 

そんな事があったが、ようやく修学旅行当日。

悪魔が寺に入れるようになる特殊なカードを用意してもらい、俺たちは現在新幹線に乗っている。

窓の外をボケッと見ながら周囲の声に耳を傾ける。

生徒たちの和気あいあいとした会話が聞こえ、こっちの気持ちも自然の高ぶっているのがわかる。

現に、俺の横では━━━、

 

「いやー、楽しみだぜ!舞子が、京都料理が俺を待っている!」

 

「仕事してくださいよ!仕事!何をしに行くとおもっているんですか!?」

 

「息抜きは大事だぜ?そんなに堅いから彼氏ができないとは思わないのか~?」

 

「そ、それは関係ないじゃないですかぁぁぁぁっ!」

 

アザゼルとロスヴァイセの口論が聞こえてきた。

俺は溜め息を吐きながらアザゼルに言う。

 

「アザゼル、あんまり(いじ)ってやるなよ。これから楽しい修学旅行だ。到着前にそいつがダウンされても困る」

 

でないと俺のデートができないからな。

その言葉は飲み込んで、窓の外を見ながら目に涙を溜めているロスヴァイセにも声をかける。

 

「ロスヴァイセもだ。あんまり()に受けるなよ。アザゼルはふざけて言っているだけだ」

 

「何だよ、そこは追い討ちじゃないのか?」

 

「俺はおまえほどガキじゃないんだよ」

 

俺はそれだけ言うと肘掛けに肘を置いて頬杖をつく。少し寝ておこう。体力を温存しないともたないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

『まもなく、京都に到着致します』

 

アナウンスで目を覚ます。やはり、寝ればあっという間だな。

俺は座ったまま伸びをし、アザゼルとロスヴァイセの方に目を向ける。アザゼルは俺と同様に寝ていたようで、大きくあくびをし、ロスヴァイセは修学旅行のしおりを読み返していた。

とりあえず、到着したら『京都サーゼクスホテル』に向かわなければならない。悪魔の影響力が京都にも伸びていたようだ。

そんなことを思いながら京都駅に降り立つ。

 

「さすが京都。駅も広いな」

 

「ここで迷子になる子がいないか心配です」

 

「大丈夫だって、あいつらはそこまで子供じゃない」

 

俺たち教師三人はそんなことを話していると、

 

「きゃー!痴漢!」

 

「「ん?」」

 

「何事ですか!」

 

女性の悲鳴にそれぞれ反応する。見ると、その痴漢をしたと思われる男性が取り押さえられていた。

 

「京都も物騒だな。注意事項に追加しておこう」

 

「そうですね。何かあってからでは遅いです」

 

「おまえら、真面目だな」

 

俺とロスヴァイセを見ながらアザゼルが漏らす。必要最低限の仕事はするさ。この後抜けるからな。

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけでホテルのホールに生徒と教師が集合していた。

生徒たちはホールの床に座り、その前に俺たち教師陣が立つ。

 

「さて、これから各自の部屋の鍵を渡す。そこに荷物を置いたら午後五時半まで自由時間だ。それと、駅で見たやつもいると思うが、変質者はどこにでもいる。班員とはぐれないように気を付けるように。最後に、時間厳守だ。遅れたら、問答無用で指導させてもらうからそのつもりで。するこっちも面倒だから、本当に頼むぜ?」

 

『は、はい!』

 

俺の言葉に生徒たちが少し強張ったような表情で返事をした。俺、怖がられているようだな。ロスヴァイセは『ちゃん』付けで呼ばれるくらい親しまれているというのに。

そして、各自に部屋の鍵を渡していく。そして、一誠の番になる。

 

「一誠、おまえはこれだ」

 

「あの、これは?」

 

「部屋の鍵だ。見ればわかるだろ?」

 

「そうですね」

 

明らかに他の部屋のものとは違う形の鍵を渡す。一誠の部屋は狭いしボロい、いわゆるハズレ部屋だ。万が一の時に備えての会議室を兼ねている。

細かい説明はロスヴァイセがしてくれるはずだ。俺はこれから忙しい。

 

「そんじゃ、せっかくの修学旅行だ。精一杯楽しんでこい」

 

「はい!」

 

一誠は元気に返事をすると友人たちと合流して部屋に向かっていく。さて、俺もやりますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後の京都駅。

 

「あ、いた!こっちこっち!」

 

「待たせたな」

 

俺はセラと合流していた。お互いラフな格好をして、現地の人にしか見えないように気を配っている。

今の俺は高校三年ぐらいの外見年齢をしている。髪はいつも通りに後頭部で一本にまとめ、右目は魔力を使って碧くしている。

話題を戻してセラとのデートだな。

 

「で、どこから行くつもりだ?あんまり遠くには行けないが」

 

「任せなさい!予定は決めてあるわ!」

 

「了解。任せるぜ」

 

こうして、俺とセラはのんびりとデートをすることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラとのデートを開始して数時間。二人でのんびりと寺を回り、休憩のために入った茶屋で談笑していると俺のケータイが鳴る。一誠からのようだ。

俺はセラに断りを入れて一旦席を外し、人目を気にしながらケータイに出る。

 

「一誠、どうかしたか?」

 

『ロイ先生、俺たちって許可を貰っているんですよね?』

 

「ああ。あの許可証を貰ったろ?あれが証拠だ」

 

『はい。持っていますけど、その………』

 

「なんだ、はっきり言え」

 

『……妖怪に襲撃されました』

 

「なんだと?」

 

『妖怪に襲われたんです!』

 

一誠の言葉に俺を眉を寄せた。許可証がある限り話は通っているはずなのに、襲撃された?一誠が入ってはいけない場所まで行っちまったってわけでもなさほうだ。なら、なんで………?

 

「とりあえず、すぐにその場を離れろ。詳しくはこっちで確認する。それと、リアスたちにはまだ連絡するな。一日目で問題があったと知ったら、あいつらが心配して学校生活どころじゃなくなる」

 

『わかりました。とりあえず、戻ります』

 

「ああ、気を付けろよ」

 

俺はケータイを切って席に戻ると、セラが険しい表情になっていた。あれは、仕事モードの時にする顔だ。

俺がセラの向かいの席に座り口を開く。

 

「どうやら、お互い問題ありみたいだな。一誠が襲撃されたそうだ」

 

「こっちも問題発生よ。詳しくは確認できたら話すわ」

 

「了解。デートはまた今度だな」

 

「そうね。けど━━━」

 

そこでせっかくのは言葉を切り、テーブルに手をついて体を乗り出してくる。そして━━━、

 

チュ………。

 

優しく唇同士が触れあった。

離れるセラの顔を見ながら俺は苦笑すると、セラは満面の笑みを浮かべる。

 

「これで我慢するわ。今度またのんびりデートしましょう?」

 

「ああ。おまえがきっちり仕事してくれればな」

 

「任せなさい。それじゃ、また後でね」

 

「またな」

 

俺とセラのデートは中断となってしまった。

どうやら、こっちに来ても面倒事は絶えないようだ。

 

 

 

 

 




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