俺━━兵藤一誠と部長は第三の試練をクリアして遺跡の奥を目指していた。
まっすぐ通路を進んでいくと、前方から光が━━。そこから出ていくと、天井がなくなり、冥界特有の紫色の空が広がっていた。
これって、コロシアムってやつかな?円形の建造物で見物席と武舞台もある。俺と部長は見物席の一角から出てきたようだ。
武舞台の中央には、腕を組んたブラックが仁王立ちしている。こちらに目を向けると、腕を解いて俺たちを手招きしてきた。
俺と部長は頷きあって武舞台に降りていく。
「二人とも、よくやってくれた。だが、兵藤一誠、おまえにはもうひとつ試練がある」
ブラックはそう言うと、両手に紅の直刀を作り出した!
「━━━この俺を越えてみろッ!」
ブラックはそう言いながらさらにオーラを解放する!この人、マジで俺のことを殺そうとしていないか!?
俺は驚愕しながらも助けを乞うように部長に目を向けると、
「ふふふ!サタンブラック!あなたが何者か知らないけれど、私のイッセーは赤龍帝よ!悪神ロキをも倒したドラゴンを相手にするなんていい覚悟だわ」
部長!この人、ロイ先生です!確かにロキは倒しましたけど、目の前のこの人と眷族のみんながいたから倒せたんです!この人と単独で戦うって、なんの処刑宣告ですか!?
「相手は赤龍帝。それがわかっていると、存外怯えよりも高揚感の方が大きいな。これはあの時以来か………」
あの時って多分、いや絶対にコカビエルとの戦いのこと言ってますよね!?鎧を着ていればともかく、この人それまでに俺を倒しに来るでしょ!?
俺はこのの成り行きに慌てながらも周囲を見渡す。よく見ると、見物席の一角にサタレンジャーが陣取っていた。俺が助けを求めようとすると━━━、
「よそ見とは、舐められたものだな」
「━━━ッ!」
俺は放たれた殺気に反応してその場を飛び退く!その一瞬あとに俺のいた場所に深い切り傷が生まれていた!
見ると、ブラックが直刀を振り下ろしたような態勢になっている。オーラを斬撃みたいに飛ばしてきたのか!?
「どうした、鎧を纏わないと死ぬぞ?」
ロイさんはそう言いながら連続で斬撃を飛ばしてくる!三日月のような滅びの塊は、円を描くように高速回転しながらこちらに飛んでくる!
「ぎゃあああああああっ!」
俺は叫びながら逃げ回る!
こうなったらやるだけやってやるよ!ドライグ!
『待ちくたびれたぞ!』
俺は鎧を纏うためのカウントをスタートする!それに構わず斬撃を飛ばそうとするが、その時━━━、
「ブラック!ストップだ!」
「━━ッ!」
レッドが叫び、ブラックがとっさにオーラを散らすとレッドに目を向ける。今度はいったいなんだ?
「ブラック、知らないのか?こういう時は、攻撃しないのがお約束だ」
「………そ、そうなのか?」
ブラックは肩をすくめながら俺に視線を戻し、大きく息を吐いた。一気に殺気が薄まったような気がする。とりあえず、待ってくれるのか?
『
音声と共に俺を赤いオーラが鎧の形になっていく!
「
「そうこなくちゃ面白くない!」
かくして、俺はロイ先生と戦うことになってしまったのだった。
戦闘開始から十分程。
「はぁ………はぁ………」
俺は息を切らしていた。
「楽に終われるか。願ったりだ」
まだまだ元気そうなブラックがぼそりと漏らす。
あの人の本気ってどれくらいなんだ!?殴りに行っても全部読まれているみたいに避けられちまうし、ドラゴンショットは全部斬られちまうし、どうやって攻めればいいんだ!?
ロイさんの滅びはサーゼクス様や部長より弱いって聞いたけど、本当なのかも疑わしい!防いでくれると思った鎧がしっかり斬れたよ!加減してくれているのか肉体には届かなかったけどな。
だいぶ強くなったと思っていたけど、まだまだってことか。
「気張りなさい、今の段階でロイくんとここまで戦えるんだ、将来有望な証拠だよ」
「………ZZZZZZ………」
「頑張れイッセーくん!応援しているよ!」
「ブラックー!頑張ってー!」
ベルゼブブ様とサーゼクス様は応援してくれて、アスモデウス様は爆睡、レヴィアタン様は当然のようにブラックを応援していた。
俺は息を整え、飛び出こんだ勢いで右ストレートを━━、
「一気に接近して右ストレートってところか?分かりやすいな」
━━━ッ!?
よ、読まれてる!?表情から読むのは兜があるから無理なはず、適当なこと言って俺を混乱させようとしているのか?
だったら、接近した勢いのまま蹴りを━━━、
「今度は蹴りか。少しは学んだらどうだ?」
………適当じゃない。あの人、完璧に読んできている。けど、どうやって…………?
「━━━まさか!」
「何か分かったんですか!?」
あごに手をやって何かを考えていた部長が何かに気づいたようだ!逆転できなくても、せめて一矢報いたい!
俺が期待していると、部長の口から出て言葉は━━━、
「あなた、バアル家の者ね!」
だった!そういえばブラックの正体に気づいていなかったんでした!けど、それも間違えてますよ!いや、もしかしたら、無意識のうちにお兄様方がコスプレをしているという考えを捨てているのかもしれない。
すると、今度はレッドの声が届く。
「イッセーくん!そんな調子でいいのかい!?彼を倒すぐらいの気概を見せてくれないと、リアスを任せられないな!」
ごもっともですけど、ロイ先生を倒せるのってあなたたちぐらいですよね!?今の俺には少し荷が重いです!
こうなったら、タンニーンのおっさん!使わせてもらうぜ!
俺は大きく息を吸い━━━、
「お?今度は何をするつもりだ」
そんなに見たいなら見せてやるよ!
腹の中に小さな火種を作り、それを一気に増加させて一気に火炎として━━━、
「火を吐くか?まあ、ドラゴンなら当然か」
読まれているけど無視して発射!俺の口から大火力の炎をブレスをブラック目掛けて吐き出した!
名付けて『
名前は置いておいて、これなら広範囲を一気に攻められる!これならどうだ!
「やれやれ、舐められたもんだな………」
ブラックは左手の直刀を消し、右手の直刀に魔力を込めていく。直刀がみるみる大きくなっていき、ブラックの身の丈ほどの大きさになる!いわゆる大剣ってやつか!
ブラックはそれを横凪ぎに振り抜いた!風圧と共に滅びのオーラが広範囲に放たれ、一瞬にして炎を相殺された!
ブラックは大剣を直刀に戻しながら右肩に担ぐ。
『相棒、決めるなら一撃に全てを懸けろ。まったく、あの時同様、末恐ろしい奴だ』
あの時って、おまえ、ロイ先生を知ってるのかよ?
『ああ、俺とアルビオンが三勢力と戦ったとき、危うく目を潰されるところだった』
ロイ先生、昔から無茶するんですね。じゃない、どうすれば勝てるんだよ!?
『厳しいな。まったく、こいつよりも強いのが少なくとも四人とは、恐れ入る。だが、逆に言えば奴はまだ弱い方ということだな』
あれで弱い方ってのは聞きたくなかったかな!
『奴の滅びは現ルシファーやリアス嬢ほど強くはない。だが、その分を他のもので補っているようだ。反射神経や直感などは二人よりも上かもしれん。あとは向こうが接近戦主体なら、こちらは遠距離から攻めるしかないが━━』
俺も遠距離戦はできないからな。あんまり意味ないか……。どうすればいい………!
悩む俺にイエローが手招きをしてきていた。な、何事ですか?
見てみると、イエローの隣には部長のお姿が。
「呼ばれているぞ、さっさと行け」
「え?あ、はい」
兜を収納しながらグレイフィアさんに駆け寄る。
「なんでしょうか?」
「一誠さん。リアスのお乳を触りなさい」
━━━ッ!
イエローの一言に俺は鼻血を吹き出し、部長のお顔が真っ赤になった!そりゃそうなりますって!
「………やりたきゃやれ。容赦はせん」
明らかな怒気を含んだブラックの言葉が俺に届く。ロイ先生、マジでキレてませんか!?
不安が顔に出ていたのか、グレイフィアさんが言う。
「大丈夫です。何かあれば、私が止めますから」
グレイフィアさんが簡易試着室を出現させて俺と部長を放り込んだ!
━━━━━
俺━━━ブラックの前で一誠とリアスが簡易試着室に投げ込まれる。
俺は黙ってそれを見ながら直刀に魔力を込めていく。次の一撃、容赦はせん。
俺がイラつきながら待っていると━━━━、
「きたきたきたきたきたきた!」
一誠の叫びと赤い閃光が簡易試着室から漏れ始める。そして一誠が飛び出してきた!
「一発勝負です!このパワーをあなたにぶつけさせてもらいますよ!」
「来い………」
俺はただ冷静に直刀を大上段に構え、刀身に魔力を集中させていった…………。
━━━━
これが、俺の部長への想いだ!
「いくぜぇぇぇぇぇぇぇっ!俺と部長が生んだドラゴンショット・ネオバストバーストォォォォォォォッ!」
俺の叫びと共にまっすぐドラゴンショット放った!
━━━━っ!
その矢先、魔力を使い果たしたためか視界が霞んでしまうが、視界が黒くなる直前、俺の眼前に迫る紅の刃が見えた気がした……………。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。