では、どうぞ!
俺たちがどうにかロキを退け、オーディンの会談も無事に終わった。そのオーディンはもう帰ってたがな。
俺たちはそんなことを気にすることなく、部室でいつものように過ごしていた。
「あー、もうすぐ修学旅行だ」
オカ研の部室でだらけながら一誠が言う。確かに、もうすぐ修学旅行になる。俺も何か買っておいたほうがいいかもしれないな。
なんて事を思いながら朱乃が淹れてくれた紅茶に口をつける。
ヴァーリたちは親フェンリルと共にどこかに消えたそうだ。それはそれで問題になったが、ロキからフェンリル対策を聞き出せば問題なしという方向で落ち着いたらしい。
俺は小さく溜め息を吐いた。ヴァーリチームの事を考えてではない、オーディンが残していった大問題のせいだ。
「もう、終わりだわ!」
部室の中央で悲鳴をあげるロスヴァイセ。目から大量の涙を流している。
「うぅぅぅぅっ!酷い!オーディン様ったら、酷い!私を置いていくなんて!」
オーディンはロスヴァイセのことを置いて帰りやがった。今頃気づいてはいるんだろうが、一向に迎えにはこないし、何か連絡があったというわけでもない。
「これ、リストラよね!あんなにがんばったのに置いていかれるなんて!どうせ、私なんて、私なんてぇぇぇぇぇっ!」
若干やけくそになっているロスヴァイセ。そんな彼女の肩にリアスが手を置いた。
「もう、泣かないでロスヴァイセ。この学園で働けるようにしておいたから」
「……グスン。ほ、本当に?」
「ええ、希望通り、女性教諭ってことでいいのよね?生徒ではなくて?」
「もちろんです………。私、これでも飛び級で学び舎を卒業しているもの。教諭として教えられます」
リアスたちと大して年は変わらないと思っていたが、案外できる奴のようだ。
「私、この国でやっていけるのかしら……?かといって国に戻っても怒られるでしょうし、そのまま左遷されそうだし………っ!うぅ………せっかく安定した生活が送れそうな職に就けたのに!」
かなり落ち込んでいるようだ。俺としても帰ってほしかったんだがな。おかげでのんびりタバコが吸えん。
俺が再び溜め息を吐いていると、リアスが何かの書類をロスヴァイセに見せた。
「ロスヴァイセ、このプランはどうかしら?いま冥界に来ると、こんな特典やあんな特典が付くのよ?」
流れのまま書類に目を通したロスヴァイセの表情が驚愕に変わる。
「ウソ!保険金がこんなに………。こっちのは掛け捨てじゃない!」
「そうなの。さらにそんなサービスもこんなシステムもお得だと思わない?」
「すごいです!あ、悪魔ってこんなに貰えるんですか………っ!基本賃金が違うわ!ヴァルハラと比べても好条件ばかりです!」
リ、リアスが、俺の妹が、保険屋の人みたいになっている!悪魔的に言えばさすがと言えばそうだが、話がいきなりすぎないか!?
俺の胸中を知らないリアスはロスヴァイセへの交渉を続ける。
「ちなみに私のところに来るとこういうものを得られるわ」
「グ、グレモリーといえば、魔王輩出の名門。特産品の売り上げもとても良いと聞いてます」
「そうよ。そのお仕事に手を出してもいいし。グレモリーはより良い人材を募集しているのよ」
勧誘を続けるリアス。すると、突然ポケットから紅い駒を取り出した。なるほど、そういうことか。
「━━そんなわけで、私の眷族にならない?あなたの魔術と『
「リアス、眷族にするのはおまえの自由だが、駒は一つで足りるのか?俺から見ても、ロスヴァイセはなかなか強いぞ」
俺の懸念にリアスは不敵に笑む。
「きっと大丈夫ですわ、お兄様。先日、未使用の駒は主の成長によって変質するという報告がありましたから」
アジュカ様の遊び心というやつか。あのヒトは本当にわからないヒトだからな。俺の銃剣を設計したのもあのヒトらしいし。
「それで、どうするの?ロスヴァイセ」
リアスがロスヴァイセに視線を戻して訊く。ロスヴァイセはゆっくりと息を吐くとリアスに答えた。
「……どこか運命を感じます。私の勝手な空想ですけど、それでもあなたたちと初めて会ったときから、こうなるのが決まっていたのかもしれませんね」
ロスヴァイセはリアスが差し出した
ロスヴァイセは自分の背中から生える悪魔の翼を確認すると、一度咳払いをして俺たちに一礼する。
「皆さん、悪魔に転生しました、元ヴァルキリーのロスヴァイセです。こちらのほうが将来の安心度も高いので、悪魔になってみました。どうぞ、よろしくお願い致します」
若干ながら、感情がこもっていないような………。てか、洗脳でもされたみたいな表情になっているんだが!?
「ま、いいんじゃないか?私も破れかぶれだったしな」
ゼノヴィアは気にする様子もなく紅茶を飲んでいた。そういえば、こいつもやけくそだったな!
『よろしくお願いします!』
「まあ、よろしく頼む」
オカ研の全員は快く迎え入れた。俺は控えめに迎え入れる。俺の禁煙はもう少し続きそうだな…………。
「うふふふふふふふふ。オーディン様?次にお会いしましたら、絶対に許しませんからね?」
不気味に笑うロスヴァイセ。迫力を感じるオーラをまとっている。オーディン、女の恨みは怖いぞ!
それはそれとして、これでリアスの眷族は全員か。『
俺がそんなことを思っていると、一誠が訊いてくる。
「ロイ先生。先生は眷族探しはしないんですか?」
「ん?ああ、そうだな。俺はそもそもゲームに参加する気がない。それに、仕事も基本的に一人でやることが多かったからな。それに━━━」
「それに?」
「万が一、俺の眷族がはぐれになったら他の奴に迷惑だからな。もちろん俺が責任を取って殺すが、その時に、一思いに殺れるかがわからん」
俺は真剣にそう返した。共に死線を潜ってきた奴を殺すこと、昔の俺なら殺れたかもしれないが、今の俺はどうなんだろうな………。
俺の言葉に部室に重い空気が流れ始めるが、俺は咳払いをして話を戻す。
「ま、本音を言っちまえば、眷族持つことが面倒なんだ。無駄に仕事が増えるからな」
俺は苦笑しながらもそう言った。それを聞いたリアスはやっぱりかという表情で額に手をやり、一誠たちは少しじと目になりながら俺を見てきている。
そんなわけで話が終わると、朱乃が一誠に弁当箱を差し出した。
「これ、余り物だけど、良かったらどうぞ」
中身は肉じゃがか。一誠はそれを指で掴んで口に放り込む。すげぇうまそうに食べてるな。
「おいしいです!なんだろう、何か、安心する味がします!」
へー、いわゆるお袋の味ってやつか?俺も一口貰おうかな?……いや、あれは余りますと言いながら一誠のために作ったのかもしれん。ここは様子見だな。
朱乃から箸を受け取って一気にがっつく一誠。それを見た朱乃は嬉しそうに微笑んでいる。
「良かった、イッセーくんに喜んでもらって。━━━っと、口に」
朱乃はそう言いながら一誠に顔を近づけ、一瞬だけ唇同士を触れさせるって、キスじゃねぇか!
朱乃は頬を赤くしながら優しく笑う。
「うふふ。いちおう、ファーストキスになるのかしら」
やっぱりか。一誠はこれから大変だな!現にリアスたちに睨まれているからな!
「イッセー?」
「イッセーさん?」
「………先輩?」
「うん、説明してもらおう」
リアスとアーシアは笑顔で、小猫とゼノヴィアは少し怖い形相で一誠に迫っていく。
一誠は慌てながらも俺たちオカ研男組のほうに目を向けてくる。
「木場、ギャスパー、ロイ先生!助けてくださぁぁぁぁぁぁいっ!」
それを受けた木場は肩をすくめ、ギャスパーは足早に段ボール箱に待避。俺も満面の笑顔をつくりながら、ゆっくりと視線をそらす。
「甲斐性の見せ所だ。気張れ」
「ちょっと、待ってくださいよ!そりゃないでしょ!?」
逃げようとしていた一誠はリアスたちに捕まり、そのまま問いただされていく。毎日が前日よりも騒がしくなっていく。
本当、こいつらといると退屈しないな━━━。
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