グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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Return life 01 帰宅と自己紹介

 

「そうか、あいつら投降したか」

 

「ああ、この写真の二人は確認できた」

 

俺━━ロイはあの作戦の後に一旦病院へ送られ、そのまま一日だけ入院。無事に退院した足で魔王領の兄さんの執務である部屋を訪れていた。アリサとクリスのその後を調べてもらうためだ。

話を聞いた限りでは二人とも無事のようで、今は留置場にいるそうだ。

それにしても………。

 

「悩み事かい?」

 

「あ?顔に出てたか……、よく任務達成できたもんだ」

 

俺は自分の顔に触れながら苦笑した。少し気が抜けているみたいだな。

 

「ジル、じゃわからないか。俺ともう一人潜入した奴がいたはずだ。何者だ?」

 

俺が訊くと兄さんは苦笑しながら言う。

 

「ああ、教えたいんだが、向こうが黙っていて欲しいと……」

 

「なんだそれ………。向こうは俺を知っているんだろ?」

 

「いや、知らない筈だ。それを条件に黙っていてくれとアジュカから言われたんだ」

 

「アジュカ様から………」

 

アジュカ様がそう言うのなら、あまり調べないでおくか。向こうはこれからも極秘の任務をしていくのかもしれない。

 

「けど、そのうち会える筈だ。その時に直接聞くといい」

 

「お互い顔はわかるが、自信はないな」

 

俺は再び苦笑する。任務が終わってもまだまだ苦労は多そうだな。

 

「で、あの赤龍帝━━兵藤一誠だったか?あいつ、大丈夫なのか?」

 

俺は話題を変えて兄さんに訊いてみた。あの少年、思いっきり倒れたからな。それに『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』とかいう一種の暴走をしたんだ。何かしら後遺症が残らなければいいが………。

兄さんは少し俯き気味に俺に言ってくる。

 

「まだ目を覚まさないようだ。アザゼルは『もう少しすれば目が覚める』とは言っていたが………」

 

「先は長くない、か?」

 

「ああ………」

 

俺と兄さんはお互い黙りこんでしまった。

兵藤一誠がおこなった『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』は、聞く話だと生命エネルギーを大量に使うものらしい。悪魔は寿命が長いが、あの暴れ方だと、それを相当消費した筈だ。

俺は息を吐いて話題を変える。

 

「とりあえず、俺はリアスの眷族と会ってみるか。色々と言わないといけないしな」

 

「そうか。それと、もうすぐリアスの体育祭だ。見に行くのかい?」

 

「そうだな。まあ、行けたらな」

 

俺は適当に返しておく。あの年の妹の体育祭を見に行くというのも少し抵抗を覚えるのだが、兄さんは行く気満々のようだ。

 

「それじゃ、俺は帰る。母さんたちにも会いに行かないと」

 

「うん、そうするといい。しばらくキミには休暇をあげるよ」

 

「くれなきゃ勝手に休むがな」

 

俺は半目になりながら兄さんに言った。兄さんは「そう言わないでくれ」と言いながら笑うが、俺たち的にはいつもの会話だ。

俺は執務室から出ようとしたが、そこであることを思い出した。

 

「兄さん、一ついいか?」

 

「なんだい?」

 

「クレーリア・べリアル。誰かわかるか?」

 

「………いいや」

 

「そうか」

 

俺はその会話を終えて今度こそ執務室を出る。

兄さんが返すのに少し間があった。あれは、何か知ってはいるが教えられないみたいな感じだな。なら、無駄に詮索しないでおこう。

俺はそんな事を思いながら転移室に直行、そのままグレモリー城に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グレモリー城。昔と変わらない作りの転移室に俺は到着した。さて、母さんたちは………。

俺が転移室から出ようとすると部屋のドアが開かれ、そこから見慣れた銀髪の女性が入ってきた。

 

義姉(ねえ)さん、久しぶりですね」

 

「ロイ様、お久しぶりです。任務ご苦労様でした」

 

「ありがとうございます。母さんと父さんは?」

 

「こちらでお待ちです」

 

俺はいつもの様子の義姉さんに安心しながらその後に続く。屋敷もたいして変わっていないようだ。

歩くこと数分、俺はある部屋の前で止められた。義姉さんが扉をノックして「ロイ様をお連れしました」と告げると「入ってくれ」と返ってくる。

義姉さんはそこで一礼すると下がっていき、残された俺は部屋に入る。入ってみると、そこには━━━、

 

「お帰りなさい、ロイ」

 

「お帰り、ロイ」

 

母さんと父さんが正面に座っており、俺に笑みを向けてきていた。二人とも変わっていないようで安心した。

 

「ただいま帰りました、母さん、父さん」

 

俺は笑みを浮かべて二人に返す。そして、

 

「初めてましてと言うべきか?リアスの眷属諸君」

 

部屋の横に並ぶように立っていたリアスたちに声をかけた。見たことはあるが、名前がわからないからな。『騎士(ナイト)』の二人は軽く睨んできているような気がするが、気にするほどでもないか。

俺は咳払いをして改めて彼らに自己紹介をする。

 

「さて、知ってると思うが俺はロイ・グレモリーだ。話はリアスから聞いてはいると思う」

 

「はい、お兄様。少しだけならお話しました」

 

「そうか、ならそっちの紹介も頼む。顔はわかるが名前がさっぱりなんだ」

 

「わかりました。朱乃、お願い」

 

「わかりましたわ、部長」

 

リアスの一言を受け、黒髪ポニーテールの女子が一歩前に出る。

 

「初めまして、リアス・グレモリー様の『女王(クイーン)』、姫島朱乃と申します」

 

次に前に出たのは聖魔剣使いの少年。

 

「リアス・グレモリー様の『騎士(ナイト)』、木場祐斗と申します。その節はお世話になりました」

 

「………うん、悪かったな。足を撃っちまって」

 

「それを言うなら私もだ」

 

そう言いながら前に出たのは髪にメッシュを入れたデュランダル使いの少女。

 

「私は『騎士(ナイト)』のゼノヴィアだ。よろしく頼む」

 

「ああ、おまえも悪かったな」

 

一応だが謝っておく。出来るだけ威力を落としたし、後遺症が残らないように狙ったが、謝罪は大事だ。

俺たちがそんなやり取りをしていると、次に前に出てきたのは白い髪が特徴の中学生と思われる小柄の女子だ。

 

「………『戦車(ルーク)』の塔城小猫です。………私は皆さんと同じで高校生です」

 

口をへの字に曲げながらの一言。なぜか心を読まれていたようだ。高校生にしては、ちょっと小さすぎないか?

俺がそんなことを思っていたが、構わずに次の子が前にでる。次は金髪の女の子だ。

 

「リアス部長の『僧侶(ビショップ)』、アーシア・アルジェントと申します。よろしくお願いします」

 

礼儀正しく深々と礼をしてくるアーシアさん。なんだろう、アリサに似たような雰囲気がある。

最後に前に出てきたのは段ボール箱、段ボール箱!?

 

「何で、段ボール箱?いや、まあ、え?」

 

俺が困惑しているとその箱が喋りだす。

 

「ぼ、僕はリアス・グレモリー様の『僧侶(ビショップ)』、ギャスパー・ヴラディですぅ!よろしくお願いしますっ!」

 

「自己紹介するなら出てこいよ、まったく」

 

俺が嘆息しながら段ボール箱を持ち上げてみると、中にいたのは金髪で赤い瞳が特徴の女の子だ。すごい泣きそうな顔になっている。

 

「…………………」

 

「……………悪い」

 

とりあえず謝って段ボール箱を被せてやる。今の子、俺がいつかに縛り付けた奴じゃないか。いないなと思ったら段ボール箱の中にいたのか。

 

「それで、あとは赤龍帝か」

 

「はい、その通りです」

 

俺の確認にリアスは頷いた。それにしても、

 

「リアス、女子ばっかりだな。男子が『兵士(ポーン)』と『騎士(ナイト)』だけって………」

 

「お兄様、ギャスパーも男ですよ?」

 

「え?」

 

俺は間抜けな声を漏らした。え?あれで、男なの?

俺は確認するために段ボール箱を持ち上げる。

 

「…………ふぇ」

 

「………………」

 

再び泣かれそうになったのですぐさま段ボール箱を被せた。まじで男なのか?

 

「まあ、なんだ。眷属にどうこう言わないでおくさ」

 

「はい」

 

リアスの眷族の男子は赤龍帝で変態、聖魔剣使いのイケメン、そして、段ボール箱に入った男の娘。なんだろう、リアスの趣味がわからない…………。

俺は少しだけ困惑していたが、とりあえず言っておく。

 

「そんじゃ、これからよろしく頼む」

 

俺は軽い感じで右手を挙げた。母さんは注意しないというか、もう諦めたというか、そんな感じだ。

 

『よろしくお願いします』

 

こうして、俺たちの自己紹介は終了。

 

「では、俺は一旦部屋に戻って少し休ませてもらいます」

 

俺は母さんと父さんにそう伝えてから退室、部屋に戻る。任務中は安心して寝れないせいで本当に疲れたからな。いい加減しっかりと休みたい。

グレモリー城の廊下を歩いていると、義姉さんと義姉さんにくっついて歩く男の子を発見した。

 

「義姉さん、その子は?」

「この子は━━」

 

「ミリキャス・グレモリーです!」

 

義姉さんが言おうとした矢先に男の子が自分で名乗った。

感じる魔力のオーラが兄さんのものに似ているってことは、そういうことか。

 

「俺の甥っ子ですか?」

 

「はい、その通りです」

 

「義姉さんが母親で?」

 

「はい」

 

「へ~」

 

俺はミリキャスの頭を撫でながら言う。

 

「知っているかはわからないが、ロイだ。よろしくな」

 

「はい!ロイお兄様!」

 

「お兄様なんて年じゃないさ。ミリキャスのお父さんとだいたい同じ年だからな、叔父さんでいいさ」

 

「そうですか?でもお兄様のほうがしっくりきます」

 

「じゃ、どっちでもいいさ」

 

「はい!」

 

元気で何よりだ。兄さんと義姉さんの子か。……これから大変だろうな。

 

「それでは、俺は部屋に戻りますね」

 

「わかりました。ごゆっくりお休みください」

 

「はい。ミリキャス、またな」

 

「はい!またお会いしましょう」

 

こうして、自分の部屋に移動する。その後は何事もなく部屋に到着した俺はそのままベッドに倒れこんだが、すぐにベッドからおりて部屋のソファーに横になる。

ベッドの感覚が柔らかすぎて逆に落ち着かなかった。

十年近く寝ていない自分のベッドは少々寝ずらい事実に少しショックを受けたが、俺はソファーに寝転んで目を閉じる。これでも十分に寝れるからな。

こうして、俺はようやく帰宅することができた。

これからやることもたくさんあるだろうがな…………。

 

 

 

 

 

 




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