グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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mission03 任務完了

俺━━ジャックは目を覚ました。覚醒したばかりで視界がぼやけて何も見えないが、多分もとから暗いのだろう。夜目が効く悪魔なのに、真っ暗だ。

壁に背を預けて座り込むような態勢になっている俺は体を動かそうとするが、左肩に激痛が走ったためにそれを一旦断念した。そして、耳を澄ますと謎の歌が聞こえてきた。

 

とある町の隅っこで

 

おっぱい大好きドラゴン笑っていた

 

嵐の日でもおっぱい押すと元気になれる☆

 

 

━━━なんだこれは…………!?

 

 

 

 

━━━━

 

 

 

 

「うーん。あれ?」

 

俺、兵藤一誠が目を覚ました時、禁手(バランス・ブレイカー)の鎧が解かれていた。号泣する部長や朱乃さんに抱きつかれて、何事かと思った。

よく覚えていないが、木場が言うには俺は暴走し、シャルバとあのローブの男性を倒したそうだ。まったく覚えてないな………。

って、ゼノヴィアがアーシアを抱えている!?な、なんで!?

 

「ヴァーリが助けてくれたんだ」

 

木場がヴァーリを指さす。ヴァーリもいたのか………。何でここに?てかなぜ笑っている?

理由を聞いてみればヴァーリがここに来たのは偶然が重なった結果なのだという。

何がともあれ、アーシアが無事でよかった!

俺が体を起こすとヴァーリが話しかけてくる。

 

「兵藤一誠。無事だったようだな」

 

「ああ。なんだか、世話になっちまったようだな」

 

「たまにはいいだろう。それよりも、空中を見ていろ」

 

「?」

 

俺は疑問符を浮かべながらフィールドの白い空を見上げる。すると━━。

 

バチッ!バチッ!

 

空間に巨大な穴が開いていく。そして、そこから何かが現れる。

 

「あれは━━」

 

俺たちはその何かを見て口が開きっぱなしになる。ヴァーリは口元をゆるくにやけさせながら言う。

 

「よく見ておけ、あれが俺だ見たかったもの『真なる赤神龍帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドだ。俺たちはあれを確認するためにここに来た。いつか、俺はあれを倒したいんでね」

 

見たことがないほどヴァーリはまっすぐな瞳でそう言った。あのとてつもなく巨大な真紅のドラゴンがヴァーリの目標━━。

こいつも越えたい目標のために頑張っているんだな。テロリストだけど………。

ヴァーリの目標を聞いて、案外悪い奴でもないと思った矢先、俺の耳に聞き馴染みのない声が聞こえてきた。

 

「グレートレッド、久しい」

 

「ッ!」

 

俺はハッとしながらその声の主を探す。視線の先には黒い髪に黒いワンピースを着た少女が立っていた。

 

「誰だ、あの()……?さっきまでいなかったよな?」

 

ヴァーリが苦笑しながら答える。

 

「彼女、と言うべきかはわからないが、あの娘がオーフィス。ウロボロスだ。『禍の団(カオス・ブリゲード)』のトップでもある」

 

マジっすか!?あの娘が親玉!何でこんなところに!?

オーフィスはグレートレッドに指鉄砲の構えでバンッと撃ちだす格好をした。

 

「我は、静寂を手にする」

 

すると今度は羽ばたき音と巨大なものが落ちてきたときのような音が響き渡った!

そちらを見ると、駒王学園の教師になったアザゼル先生といつもの様子のサーゼクス様、それと俺が夏休みにお世話になった元龍王のタンニーンのおっさんが現れたようだった!

アザゼル先生が俺を見て笑う。

 

「おー、イッセー。元に戻れたようだな。今回ばかりは俺も怖かったが、案外どうにかなるもんだな。で、どうだったよ、あの歌は?」

 

「夢はいっぱいですけど、やっぱり酷くないですか!?」

 

「そうかい?セラフォルーも僕も頑張って考えたんだけどね」

 

何てことをおっしゃるサーゼクス様!本当に魔王の皆様はノリが軽いよ!ちょっと前に聞いたロイってヒトは真面目だって聞いたぞ!前に朱乃さんから━━━、

 

『現魔王様の兄弟や姉妹の方はしっかり者が多いのですわ。現魔王様のオフの時のノリが軽すぎてそうならざるを得なかったとも言われています』

 

って聞いた!出来れば信じたくなかったけど、もうどうしようもないな!

俺がそんな事を思い出していると、アザゼル先生とヴァーリか話していた。

 

「クルゼレイの方も死んだか」

 

「ああ、サーゼクスが片付けた。これで旧魔王派も終わりだろう。現に退却する奴らと降伏する奴らが出てきているからな」

 

後半からはオーフィスに言った感じだったが、あの娘は驚く様子もなくただ一言、

 

「それもまた一つの結末」

 

とだけ言って踵を返す。

 

「我は帰る」

 

しかし、テロリストのトップを前にしてやる気満々だったタンニーンのおっさんが翼を広げて呼び止める。

 

「待て!オーフィス!」

 

けど、オーフィスは不気味な笑みを浮かべるだけだった。

 

「タンニーン。龍王が再び集まりつつある。━━楽しくなるぞ」

 

ヒュッ!

 

空気が振動したかと思えばオーフィスが消えた!あの一瞬でどっかに行ったのか!

それを見ていたアザゼル先生とタンニーンのおっさんが嘆息する。

 

「俺たちも退散しよう」

 

ヴァーリもうしろに控えていた背広の男性が作り出した次元の裂け目に入ろうとしていた。毎回退くのは早いな!

 

「兵藤一誠━━俺を倒したいか?」

 

「ああ。けど、倒したいのはおまえだけじゃない。俺にも越えたい目標がたくさんあるからな」

 

「俺もだよ。俺にも倒したいものがいる。おかしいな。赤龍帝と白龍皇が戦わずに違う目的を持つなんて。俺とキミはおかしいのかもしれないな。だが、いずれは」

 

俺は拳をヴァーリに向けた。

 

「ああ、決着つけようぜ」

 

「その時までに、もっと強くなってくれよ」

 

ヴァーリはそう言いながら俺の拳に拳をぶつける。

そのやり取りを終えるとヴァーリたちは裂け目に入っていく。

追えばよかったのにって思った。けど、気まぐれかもしれないけど、あいつはアーシアを助けてくれたんだ。

決着はいつか、必ず。さて、俺も強くならないとな。

俺たちが一応の決着で安心しながら息を吐いていると、

 

バアアアンッ!

 

激しい爆発音と衝撃が俺たちを襲った!俺たちが再び警戒しながらその音がした方を見てみると、そこには━━、

 

「げほっ!げほっ!あー、強くやりすぎたな」

 

ローブの汚れを払うコカビエルを倒したあの男性。フードがとれて黒い髪を後頭部にまとめているのがわかる。今まで生き埋めになっていて、自分に被った土を銃剣を使って吹き飛ばした様子だ。

木場が聖魔剣を、ゼノヴィアがデュランダルを取り出して構える。

二人はすぐには飛び出さずに警戒しながら男性を見ている。二人は一度あのヒトに負けている。消耗している状態でやるのは無理があるだろう。

ローブの男性はタバコを取り出して吸い始める。こちらに気づいている筈なのに、特に気にした様子はない。

ローブの男性が紫煙を吐き出しながら俺に言う。

 

「タバコの味がするのは生きてる証拠だ。まったく、死にかけたぞ……」

 

愚痴るような感覚で言ってきたけど、あのヒトは敵なんだから倒しにいって当然だろ!まあ、暴走していたわけだけど………。

ローブの男性はまだ続ける。

 

「それに、何ださっきの歌は?俺が頑張っているうちにずいぶん楽しんでいたようだな、おまえも、セラも」

 

今度はサーゼクス様への愚痴のようだ。結構溜まっていらっしゃる?てか、セラって誰だ?部長は何かに気づいたような表情になっているけど………。

サーゼクス様は苦笑しながらもローブの男性に言う。

 

「あはは………、あれも仕事のうちなんだけどね」

 

「仕事って、もっと有意義なことをしろよ……。グレイフィアさんもよく許したもんだ………」

 

サーゼクス様とローブの男性の会話はとても親しい者同士のような軽い内容だ。あのヒト、敵、だよな?

俺たちがお互いの顔を見合わせていると、サーゼクス様がローブの男性に近づいていく。ローブの男性は銃剣を異空間にしまうとサーゼクス様に近づいていく。

そして、二人の距離が手が届くほどになるとローブの男性が跪いた。

 

「さて、ご苦労だったね。これで任務は完了だ、ロイ」

 

『え?』

 

サーゼクス様の言葉を聞いて俺たちは間抜けな声を出してしまった。

サーゼクス様は構わずにローブの男性の右腕についている腕輪に魔力を送る。

 

パリン………。

 

儚い音をたてながら腕輪が砕け散ると、ローブの男性は深く息を吐きながら立ち上がる。すると、髪の色が黒から紅に変わった!?

 

「あー、やっと終わった………」

 

だるそうに伸びをした男性は俺たちに笑みを向けるとサーゼクス様と一緒にこちらに歩みよりながら軽い感じで右手をあげて言ってきた。

 

「さて、挨拶しておくか………」

 

挨拶しようとしていた男性に部長が駆け寄ってそのまま抱きついた!

 

「ロイお兄様ぁぁぁぁっ!」

 

「おわ!?いきなりだなおい!」

 

ロイと呼ばれた男性は慣れた様子で部長を抱き止める。あ、あのヒトがロイさんなのか!?何か、イメージと違って乗りが軽い…………。

その男性は苦笑しながらも自身の胸に顔を埋める部長の頭を撫でる。それを真横で見ていたサーゼクス様が━━

 

「リーア!その勢いで僕にもハグを!」

 

と言うが、部長は少しだけサーゼクス様を見るとすぐにそっぽを向いてロイさんを抱きしめる。

それを受けたサーゼクス様はたそがれるように遠くを見ながら呟く。

 

「リーアはロイが大好きだからね………、仕方ないね………」

 

ロイさんは苦笑しながら部長に言う。

 

「あー、リアス、すごい見られてるぞ?意外な一面を見ちまったって感じの顔されてるぞ……」

 

「……………」

 

部長は黙って顔を赤くしながら男性から離れる。

その男性は少し溜め息を吐くと俺たちに言った。

 

「さて、もうわかってると思うが、俺はロイ、ロイ・グレモリーだ。妹が世話になっているな」

 

やっぱり、このヒトが部長のもう一人のお兄さんなのかぁぁぁっ!?

そこで俺は再び限界を迎え、気を失ってしまった………。

 

 

 

 

━━━━

 

 

 

俺━━ジャックじゃない、ロイの目の前で赤龍帝の少年が気絶した。なぜだ、俺が自己紹介したからか………?

 

「イッセーさん!しっかりしてください!」

 

その少年を金髪の少女が膝枕して介抱していた。その横では聖魔剣使いの少年とデュランダル使いの少女が俺を睨んでくる。やれやれ、誰が誰やら………。

 

「とりあえず、運んでやるか……。いいか、兄さん?」

 

「ああ。積もる話はあると思うが、それは後にしよう」

 

とりあえず、気まずい空気を切るように赤龍帝の少年を運ぶことに。とりあえず、俺も病院行こう、左肩がいてぇ……。

こうして、俺は一応の帰還をすることができた。あとは、アリサとクリスがどうなったかを調べるだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




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