では、どうぞ。
俺、ジャックが驚愕しながらアルビオンを見ていると、先ほど殴り飛ばしたアザゼルを追って一見廃墟の校舎に向かう。
一見廃墟と言っても、先ほど俺とカテレアが転移した建物だがな。
アルビオンを追ってカテレアも移動しようとすると、俺に頷いてきた。
俺が頷き返すとカテレアはアルビオンを追っていく。
「それじゃ、また会おう!」
俺は倒れる『
俺がそんな事を気にしていたが、それよりも気になることが一つ。例の時間停止が解除されているのだ。これでは周りの連中が動き出してしまっているだろう。
俺は撤退のタイミングを考えながら、カテレアとアルビオンを追った。
追い付くと、いつの間にか着地していたアルビオンとカテレアが、アザゼルとリアス、リアスの『
兜を収納したアルビオンは素顔を晒しているが、ダークカラーの強い銀髪の青年だったようだ。ライバルである赤龍帝を見ても大して興味なさそうではあるが……。
俺は二人に駆け寄り、カテレアの横につく。
「あ、あなたは!?」
「久しぶりだな、リアス・グレモリー」
俺を見て目を見開きながら驚愕するリアスに適当に返す。
すると、アザゼルが自嘲するように俺たちに言う。
「まったく、俺もサーゼクスもやきが回ったもんだ。お互い身内がこれとはな………」
アルビオンがまさかこちら側だとは思わなかった。俺にも知らせてくれないとは、対応しようがないだろうが!
俺が胸中で愚痴っていると、カテレアがアルビオンを見ながら言う。
「彼はジャック。彼もコカビエルを倒した後にスカウトしました。彼とヴァーリのおかげで、今回の下準備が十分にできました。アザゼル、ヴァーリの戦いを望む本質を理解しておきながら、放置しておくなど、あなたらしくない。結果、自分の首を絞めることとなりましたね」
それを聞いて苦笑するアザゼル。俺が静観していると、アルビオンが自身の胸に手を当てながら言った。
「俺の本名はヴァーリ。━━ヴァーリ・ルシファーだ」
「「ッ!?」」
俺とリアスはシンクロしたように驚愕しながらアルビオン━━ヴァーリを見る。ルシファーって、まさか、ルシファーにも末裔が!?
俺たちが驚愕していると、改めて説明するようにヴァーリは口を開く。
「死んだ先代の魔王ルシファーの血を引く者なんだ。けど、俺は旧魔王の孫である父と人間の母との混血児。
ヴァーリはそう言いながらルシファーの血を引く者特有の黒い翼を展開してみせた。今の話は本当のようだ。
「こちら側とはいえ、冗談みたいな存在だな、おまえさん」
「実際、冗談のような存在だよ。こんなことを敵に説明するのも
俺の言葉にアザゼルが返してくれた。マジで最強なんじゃないのか、こいつ………。
俺がヴァーリを見ながらそう思うが、同時に落ち着きを取り戻すとカテレアが言う。
「覚悟を決めてもらいましょうか、アザゼル」
それを聞いたアザゼルは愉快そうに笑うと懐から一本の短剣を取り出した。
「それは━━━」
俺とカテレアは訝しげにそれを見ているとアザゼルが言う。
「俺は、シェムハザがいなけりゃ何も出来ない
「安心なさい。新世界に
それを聞いたアザゼルはニンマリと口の端をつり上げると吐き捨てる。
「それを聞いてますますおまえらの目的に
言うやいなや、アザゼルの持つ短剣が変形し始める!パーツがわかれて光が噴き出す。
同時に俺たちを悪寒が襲った!これは、確実にヤバイことになる!
「ッ!まさか、あなたは!」
「カテレア様!お下がりください!」
驚愕するカテレアの盾になるように前に出る。同時にアザゼルは力のある言葉を発した!
「
一瞬の閃光が辺りを包み込む。光が止むと、そこにいたのはドラゴンを思わせる黄金の
アザゼルは十二枚の翼を展開して手元に巨大な光の槍を作り出す。
「これが俺の傑作人工
鎧から感じるオーラは本当にドラゴンのものであり、コカビエル以上のものを感じられる!
俺が冷や汗が頬を伝うのを感じていると、ヴァーリが笑った。
「ハハハ!さすがだな、アザゼルは!」
「ヴァーリ、おまえには山ほど説教があるが、それは後だ。『
アザゼルの言葉にヴァーリは肩をすくめるだけだ。それにしても………、
「その鎧。かなりの力を持った奴をベースにしているな。龍王クラスか?」
俺の問いにアザゼルは頷く。
「ああ、『
五大龍王の一匹か。二天龍の次に強いとされる五匹のドラゴンの内の一匹を使ったなら、それは強力なものになるだろう。
「で、どうする?俺は二人同時に相手してもいいぜ?」
俺とカテレアを見ながら手招きするアザゼル。俺は後ろにいるカテレアに一言言おうとするが、
「私を、なめるなッ!」
その前にカテレアが突っ込んで行ってしまった!
アザゼルとカテレアが交差する一瞬のうちにカテレアは光の槍で一閃されてしまう!
なぜ真正面から突っ込んでいくのか、俺にはわからん!
俺が怒り覚えていると、アザゼルの一撃の余波が地面を削りながら俺の真横を通りすぎていく。
「━━ただではやられません!」
光の一撃を受けた影響なのか、体のいたるところから煙を噴き出すカテレア。それでも彼女は自身の腕を触手のようにしてアザゼルの左腕に巻きつけた!同時に体に紋様を浮かび上がらせる。あれは、自爆用の術式か!
「カテレア様!」
俺はとっさにカテレアの名を叫ぶ。カテレアは苦しそうに笑むと、触手を剥がそうとしているアザゼルに告げる。
「アザゼル!せめて、あなたを道連れにさせてもらいますよ!これは私の命を使った特別製、あなたでも斬ることはできません!」
「確かに、安直ではあるが確実な手段だな!」
かなり危険な状態である筈なのに余裕そうなアザゼル。彼は触手と自身の左腕を交互に見ると肩をすくめる。そして━━、
バシュッ!
触手ではなく自身の左腕を切り落とした!アザゼルの左腕から血が噴き出すが、切り落とされた腕は塵となって消える。
「自分の腕を!?」
驚くカテレアにアザゼルは光の槍を投げ放つ!その一撃は吸い込まれるようにカテレアの腹部に突き刺さった。
「片腕ぐらい、くれてやるよ」
カテレアの体から自爆用の術式が消え、そのまま彼女は塵となっていく。悪魔であの密度の光をくらったのだ、魔王の血を引いているとはいえ、消滅は避けられない。………俺も刺されたような気がするがな!
カテレアの消滅と同時にアザゼルの鎧は解除される。アザゼルは左腕ではなく、短剣に戻った鎧を見て舌打ちをした。
「チッ。これが限界か。まだ改良の余地があるな。……核の宝玉が無事ならどうにかなるか。もう少し付き合ってもらうぜ」
そう言いながら短剣の宝玉にキスをするアザゼル。
俺はそれを見ながらヴァーリに訊く。
「ヴァーリ・ルシファー。俺はカテレア様の最後の命令の通り、ここで引かせてもらう。そっちはどうする?」
「俺はまだやらせてもらうさ。今のライバルを知っておきたいのでね」
「そうか……」
俺が返事をすると同時に俺を転移魔方陣が囲む。
「総督、見事だった。だが、次は殺す」
俺が適当な事を言うと、アザゼルは笑う。
「ハハハ!それこそ真っ先にやられる敵役のセリフだぜ?」
「フッ。それもそうかもな………」
俺がそう言うと同時に転移の光が強くなっていき、俺の視界を奪っていった。
視界が回復すると、俺の前で━━、
「た、隊長………」
アリサが目に涙を溜めていた。俺は出来るだけ無念の表情を顔に張り付けながらアリサに言う。
「すまん、守りきれなかった………」
俺が俯くように言うと、アリサは何度も首を横に振る。
「隊長が帰って来ただけでもありがたいです。もし、お二人が死んでしまったら………」
今にも泣き出しそうなアリサに近づき、優しく抱き寄せる。
「とりあえず、俺は無事だ。だから泣くのは後にしろ。とりあえずこの町から逃げるぞ。それが最後の命令だからな」
「は、はい!」
俺から離れたアリサは目元と頬を赤くしながら頷く。
俺とアリサはカテレアの指示通りにアジトに戻り、今回の事をクリスとジルに報告。二人は落ち着いた様子で頷き、俺たちは本部へ戻るための作業の入ったのだった。
━━━━
あれから三十分程。
無事に和平調停を終えた僕━━サーゼクスは帰還しようとしていたアザゼルとミカエルを呼び止め、口外しないとこを条件にロイのことと彼女のことを伝えていた。
「━━━以上だ。よろしく頼む」
「わかったよ。まったく、そういうのは早めに言っておいてくれよ。危うく殺すところだったぞ」
「私もわかりました。あなたも大胆な事をしますね」
「こうでもしないと、旧魔王派に先手を打たれてばかりになってしまうからな」
僕の言葉に二人は苦笑する。自分の弟を文字通り、敵地の真ん中に送り込もうとし、その弟はそれを快諾する。端から見れば正気の沙汰ではないだろう。
「それじゃ、俺は帰るぞ」
「ああ、すまないな、呼び止めてしまって」
「いいさ、俺のつっかえていたものが取れたからな」
「私も失礼します。お互いこれから忙しくなりそうですね」
「ヴァルハラへの連絡、よろしく頼む」
「お任せください。神への報告は我々の役目です」
僕たちはそのやり取りを最後にその場で別れ、それぞれ待たせている部下たちの元に向かった。
━━━━
俺━━兵藤一誠の前で、負傷した木場とゼノヴィアがアーシアに治療されていた。幸いなことに重症というわけではなく、問題はなさそうだ。だが、二人の表情は暗い。
「まさか、あの時の男性が裏切り者だったなんて………」
部長もショックを受けた様子でそう呟いた。あんな命懸けで助けてくれたヒトが裏切っていたなんて、俺も信じることが出来ない。本気ではなかったヴァーリにもギリギリ食らいつくのがやっとで逃がしてしまったし、俺もまだまだ弱いな…………。
俺が少し沈んだ雰囲気になっていると、治療を終えた木場がアーシアにお礼を言いながら立ち上がる。
「イッセーくん」
「どうかしたか?」
俺が訊くと、いつになく熱いものを瞳に宿しながら木場が言う。
「お互い、もっと強くなろう。越えないといけないヒトがいるからね」
「当たり前だ!」
俺と木場は決意に新たにお互いの右拳をぶつける。そうだ、弱いのならもっと強くなればいい!そうしないと、皆を守れないからな!
「なら、私もそれに交ぜてもらおう。私も強くならなければいけないからな」
そこに俺たちを真似たのか、横合いからゼノヴィアも拳をぶつけてきた。
それを見ていた部長が微笑む。
「なら、頑張りましょう。今まで以上に、ね?」
「「「はい!」」」
俺たち三人は笑顔で返事をする。俺だけでなく、皆で強くなる。そうだな、その方が面白そうだ!
━━━━
無事に本部に戻ってきた俺は、隊のメンバーと別れてあるヒトに会いに来ていた。
そのヒトがいる部屋の扉をノックし、許可を得てから入室する。
「シャルバ・ベルゼブブ様、お呼びでしょうか」
俺の前には厳格そうな男性。先代ベルゼブブ様の血を引く悪魔だ。こいつが次の俺の上司になると思われる。
「報告は先ほど聞いた。ご苦労だったな」
「ありがとうございます。ですが━━」
俺は再び無念の表情を見せて言葉を続けようとすると、シャルバはそれを遮るように言う。
「ジャック、貴様は強い。だが、我々程ではない。アザゼルとカテレアの戦いに参戦できないのは当然だ」
「……………」
俺は無言でシャルバの次の言葉を待つ。すると、シャルバは意外なことを口にした。
「とりあえず、しばらく貴様の隊は待機だ。休んでいろ」
「シャルバ様!失礼ながら我々はまだ━━━」
「これはカテレアからの頼みなのだ」
「カテレア様の?」
俺が首をかしげるとシャルバは頷き、言葉を続けた。
「『彼らが戻ってきたならしっかり休ませて欲しい。彼らには相当の無理をさせている』だそうだ」
「………了解しました。失礼します」
俺はカテレアの言葉の意味を考えながら礼をして部屋を退出する。
まさか、こんなことになるとは。疑われているのか……?いや、だったら、あの場で捕らえられるか……。
俺はとりあえず、この休暇の間はおとなしくしていようと決め、待機させているあいつらのところに戻る。
まあ、しっかり休ませてもらうか。何があってもすぐに動けるように、いつでも逃げ出せるように………。
次の話から一巻飛んで「体育館裏のホーリー」に入ります。ご注意下さい。