グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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mission02 作戦開始

駒王学園で行われる三大勢力のトップ会談に俺━━兵藤一誠は部長たちと共に参加することになってしまっていた。

理由はコカビエルとの戦いに巻き込まれたからだ。当事者である部長から意見を聞くということになっており、一応俺は座っているだけになりそうだ。

小難しい話が進んでいき、ついに部長の出番となった。

 

「さて、リアス。そろそろ、先日の事件について話してもらおうかな」

 

「はい、ルシファー様」

 

お兄さんであるサーゼクス様に促され、部長と会長、朱乃さんが立ち上がり、この間の戦いの一部始終を話し始めた。それに聞き入る三大勢力の面々。

部長は冷静に淡々と事件の概要を話してはいるが、その手は極度の緊張からか、少しだけ震えていた。

発言を間違えればここで何かが起こるかもしれない。いくら部長でもこの場の空気は辛いのものだろう。

報告を受けた各陣営のトップは溜め息を吐く者、顔をしかめる者、笑う者━━と反応は様々だ。

 

「━━以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷族悪魔が関与した事件の報告です」

 

すべてを言い終えた部長は、サーゼクス様の「ご苦労、座ってくれたまえ」という一言でようやく着席する。

 

「ありがとう、リアスちゃん☆」

 

現レヴィアタン様であるセラフォルー様もウインクを部長に送る。

 

「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

サーゼクス様の問いに全員の視線が黒髪の総督に集中する。

アザゼルは不敵な笑みを浮かべて話し始めた。

 

「先日の事件は我々『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルが単独で起こしたものだ。奴の処理はその悪魔にやられたようだが、回収のために白龍皇を送った。その後、虫の息だったあいつを軍法会議のもと『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑にした。もう出てこれねぇよ」

 

天界のトップであるミカエルさんが嘆息しながら言う。

 

「説明としては最低の部類ですが、あなた個人が戦争を起こしたくないことは知っています。それに関しては本当なのでしょう?」

 

「ああ、戦争に興味はない。それよりもサーゼクス、一つ訊いていいか?」

 

アザゼルが突然サーゼクス様に話題をふった。サーゼクス様が頷くとアザゼルは言葉を続ける。

 

「そのコカビエルを撃破したとかいう奴、何者だ?」

 

「どういう意味だ?」

 

「コカビエルと一対一で勝負して互角以上なんて、おまえら魔王かその眷族ぐらいだろう。だが、そいつは一介の悪魔なんだろ?」

 

「ああ、少々強引に入ったようだが……、詳しくは調査中だ」

 

確かに、あのヒトは外を固めていた会長たちに気づかれないように入ってきていた。味方なら、もっと堂々と入ってきても良かったと思うけど………。

 

「まぁ、それはいい。で、何者だ?現在行方不明とかいう『切り裂き魔(リッパー)』の野郎か?」

 

アザゼルはちらりとミカエルさんの隣に座る金髪の女性天使(チョー美人だ!)に目を向けた。その女性の天使は少しだけ顔を赤くしているような………。

俺がそう思っていると、サーゼクス様が言う。

 

「彼は、キミが自分で言った通り行方不明だ。どこにいるかはこちらも把握出来ていない」

 

「妹のピンチに駆けつけたってわけじゃないのか?」

 

「悪いが、彼が生きていようと、死んでいようと、今回の事件は知らない筈だ」

 

アザゼルとサーゼクス様は淡々と話していく。その『切り裂き魔(リッパー)』って、コカビエルも言っていたような……。

周りに気づかれないように小さく首をかしげると、アザゼルがそれに気づいたのか口を開く。

 

「『切り裂き魔(リッパー)』、本名はロイ・グレモリー。俺たちが戦争している間、堕天使、天使の両方から嫌われた野郎だ。目の前で笑いながら仲間を斬られちゃ、そりゃ嫌いにもなる」

 

アザゼルが説明をしてくれたが、それに異を唱えたのはレヴィアタン様だった。

 

「アザゼル!それは見間違いよ!ロイは戦いで笑ったことはないわ!」

 

初めて会った時とはまったく違う厳しい声音。部長と会長も驚いた様子だ。

アザゼルはレヴィアタン様の怒鳴りを無視するように言った。

 

「まぁ、そう怒るなって。それは建前で、嫌われた本当の理由は、あの野郎がガブリエルの━━━」

 

「アザゼル、話を戻しましょう」

 

アザゼルの憎しみを込めた言葉を遮ってミカエルさんが言う。見ると横の女性天使さんの顔が真っ赤になっていた。もしかして、あのヒトがガブリエルっていう天使なのか!美人なわけだ!

俺が勝手に納得していると、アザゼルは咳払いをして話を戻す。

 

「悪い、それじゃ、単刀直入に言うぞ。和平を結ぼうぜ?そっちももとよりそのつもりだったんだろ?」

 

和平ってことは、平和を共に願うってことだよな?

アザゼルの一言に会場にいた全員が驚愕の表情となる。確かに、睨みあっていた三大勢力のトップがそんな発言をすればこうなるだろう。実際に俺も驚いているしな!てか、俺って歴史的瞬間に立ち会ってない?

 

 

 

━━━━

 

 

 

三竦みのトップ会談が始まってしばらく経ち、俺、ジャックとアリサ、カテレアは学園から少し離れた位置にある森に陣取っていた。

 

「カテレア様、いつ仕掛けるのですか?」

 

俺が訊くと、カテレアは「まだです」と返して魔方陣を展開する。どこかと連絡を取っているようだ。

俺はアリサに声をかける。

 

「アリサ、作戦通り、指示がなくても俺かカテレア様のどちらかが死亡したら生きている方を即転移させろ。多分だが、俺が死ぬと思うがな………」

 

「そ、そんな事言わないでくださいよ!絶対にお二人で戻ってきてください!」

 

アリサは精一杯強がるように言う。待つ者の苦労ってのはよく分からないからな…………。

 

「ああ、そうだな」

 

俺は笑みながらそう返し、乱暴に頭を撫でてやる。アリサも少しだけ落ち着いた表情になるが、その瞬間にカテレアが俺を呼ぶ。

 

「ジャック、和平交渉が始まりました。こちらも始めましょう」

 

「了解!アリサ、行ってくる」

 

「はい!」

 

俺はアリサを撫でるのを止め、カテレアの横につく。これから学園のもっと近くに転移するのだ。

俺はアリサに笑みを向けると、カテレアが展開した転移魔方陣に乗る。ここで一旦別れ、アリサは後方支援の班と合流するのだ。

アリサが俺に強がるように笑みを浮かべたことを確認したと同時に光が強くなっていき、ついにアリサが見えなくなった……………。

 

 

 

 

 

 

 

光が晴れると、そこはどこかの部屋のようだった。

目の前にはゲーム機を弄る紙袋を被った謎の女の子。俺たちの登場で動かなくなってしまった。格好から推測したが、女であっているよな?

俺の疑問を知るよしもないカテレアは、その女の子が声を出すまえに魔力の縄で拘束した!

 

「ひぃっ!」

 

情けない声をかけると出す女の子だが、それを気にせずカテレアは俺に言う。

 

「この転生悪魔の神器(セイクリッド・ギア)、『停止(フォービトゥン・)世界(バロール)の邪眼(・ビュー)』を強制的に禁手(バランス・)(ブレイク)させます。そうして、この周辺を固める三竦みの連中を止め、会談を行っているトップ陣を直接狙います」

 

「なるほど、裏切りを警戒するわけです」

 

俺はそう言いながら手頃な位置にあった椅子を女の子の前に置き、無理やりその女の子を縛りつける。じたばた暴れて抵抗してくるが、その程度、小さい頃のリアスに比べればかわいいものだ。

なんて思っているうちに拘束完了。俺が頷くとカテレアは魔方陣を展開、それを女の子の目に当てた。その瞬間、凄まじい閃光と共に俺を奇妙な感覚を襲うが、特に何かあるわけでもなく、問題はない。

俺が体を見ているとカテレアは言う。

 

「私たちなら問題はありません。あとは彼女たちに任せましょう」

 

カテレアは転移魔方陣を展開、そこからローブに身を包んだ数人の女性━━魔女が現れる。

そいつらは手筈通りと言わんばかりに部屋を陣取り、窓に防御を術式を張って割れないようにし始める。

俺はそれを横目で確認しながらカテレアに訊く。

 

「カテレア様、次の行動は?」

 

「魔法使いの部隊を投入して様子を見ます。ある程度経ったら、私たちも会場に突入する手筈です」

 

「了解しました」

 

俺が返事をするとカテレアと共に部屋を出る。建物は木造で、手入れは行き届いているがだいぶ古い建物に見える。だが、何かするのに不都合はなさそうだ。

俺が警戒しながら歩いていると、カテレアが足を止める。

俺もそれに合わせて止まると、カテレアは俺の方を向いて訊いてくる。

 

「ジャック、この作戦、うまく進むと思いますか?」

 

「私はあなた方が考えた作戦を実行するだけです。うまくいくかは私たちがどう動くかで決まるだけです」

 

俺がそう返すとカテレアは俺の頬に手を触れる。俺は驚きながらも動じることなく、カテレアの次の行動を待つ。

 

「あなたは、ただ進むだけですね………」

 

「そうやって戦争も生き残りましたから」

 

少し不安げな瞳のカテレア。何を考えているかはわからないが、俺は即答でそう返した。

カテレアは不安の色を消すと、なぜか優しさを感じさせる不敵な笑みを浮かべて俺に言う。

 

「なら、今回もお互い生き残りましょう。やることは戦争の頃と変わりません」

 

「はい。私も夢半ばで死ぬつもりはありません」

 

「そうね」

 

カテレアはそれを言うと深く息を吐き、俺の頬から手を離した。本当に何だったのだろうか………。

俺がそんな疑問を抱いていると外から爆音が響いてくる。魔法使いの部隊が派手にやっているようだ。

その爆音を聞きながら、カテレアは静かに呟く。

 

「さあ、私たちの戦争を始めましょう………」

 

カテレアの言葉に俺は頷き、深く息を吐きながら異空間に収納していた銃剣を取り出す。

俺がやることはただ一つ。

兄さんたちを生かして、三竦みの和平を成立させる!

 

 

 

 

 

 

 




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