グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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自由登校のルシファー
life01 力を求めて


俺━━ロイが目を開けると、そこは病院だった。鉛のように重いが、体に痛みはない。どうにか動けそうだ。

重い身体をどうにか起こしてみると、ちょうど看護師が入ってくる。が、目を覚ました俺を見て「先生!先生!」と叫びながら飛び出していってしまった。

それよりも、今回は何日寝ていた?いや、それよりもなんで━━。

 

《確かに、肉体の封印はどうしようもない。だが、「(コア)」だけなら、解呪できないわけではない》

 

《これも余興だ。一戦交えてみたらどうだ?》

 

ああ、そうだ。トライヘキサの(コア)と戦ったんだったな。本気で死ぬかと思ったが、どうやら助かったようだ。

俺がベッドから降りようとすると、その下から女の子が這い出てくる。

 

「偽龍帝、起きた」

 

リリスだ。どうやらついてきてしまったようだ。なぜそこに隠れていたかは訊かないでおく。

俺が苦笑しているとリリスがベッドに腰掛け、何かを求めるように俺を見つめながら足をぶらぶらさせ始めた。こういうところだけ見れば見た目相応の子供に見えるんだがな……。

 

「俺はロイだ。偽龍帝じゃない」

 

「わかった」

 

頷くリリスを頭を撫でてやると、くすぐったそうに目を細める。本格的に懐かれたようだ。

リリスを撫でながら小さくため息を吐くと、誰かが病室に入ってきた。

 

「ちょっと心配だったが、その様子なら大丈夫そうだな」

 

アザゼルだ。俺とリリスを見ながら苦笑していた。

一旦リリスを撫でるのを止め、アザゼルに訊く。

 

「トライヘキサはあれからどうなった」

 

「あいつらは手始めに冥界にある堕天使の研究施設を破壊した。その後は天界を襲撃。今は北欧の領域で、既に二日近く暴れている」

 

「暴れているって、ならおまえがここにいたらダメだろ」

 

俺が睨み付けながら返すと、リリスが俺の手を頭に乗せる。……話が進まねぇ。

とりあえずリリスを撫でてやり、アザゼルの言葉を待っていると、すぐに口を開いた。

 

「それはそうなんだが、おまえにつけられたレプリカの『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』、摘出は難しそうだ。聖杯を使ったのか、おまえの魂との繋がりが強すぎる」

 

アザゼルの言葉を受けて、俺は右手に籠手を出現させる。傷だらけの赤い籠手と、色の濁った宝玉。見ればわかるが、今度こそ機能が停止しているようだ。

トライヘキサを倒すには今の俺じゃ届かねぇ。何か爆発的に力を手に入れることのできる手段はないのか……。

そう言えば、イッセーは『白龍皇(ディバイン・ディバイディング)()(スケイル・メイル)』の宝玉の欠片を捩じ込んで白龍皇の力を行使出来るようになり、それが『飛竜(ワイバーン)』になったとか聞いたな。代償は生命力、寿命だったか……。

 

「……ひとつ頼んでいいか?」

 

「何だ?」

 

アザゼルに右腕の籠手を見せながら、俺は単刀直入に言う。

 

「この宝玉に━━━」

 

俺は、悪魔人生最大の博打を打とうとしていた。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

「━━頼めるか」

 

ロイの口から、信じがたい言葉が漏れた。

俺━━アザゼルは驚愕しながらもロイの胸ぐらに掴みかかり、柄にもなく怒鳴り付ける。

 

「おまえ、なに考えてやがる!そんな事をすりゃ、おまえがどうなるかわかったまんじゃねぇ!寝込んでいるうちにイカれちまったか!?」

 

「イカれなきゃ、あいつらには勝てねぇ。誰も守れねぇ……」

 

俺とは正反対に、ロイは冷静な声音で言う。瞳は決してぶれない覚悟の色に染まり、もはや俺の説得は聞いてはくれないだろう。いや、こいつの恋人の言葉でも、おそらく無理だ。そう思わせるほどこいつの覚悟は硬い。

俺はわざとらしくため息を吐き、頷いてやる。

 

「……わかった。ミカエルに打診してみるが、おまえはグリゴリの施設に向かえ。そこに持っていく」

 

いつもならもっと考えてから行動に移すが、今回ばかりはいくらあっても戦力が足りない。一人でも強い奴が必要なんだ。それが、あいつらに恨まれる結果になったとしても……。

 

「アザゼル、悪いのは俺だ。あんまり気負うなよ」

 

ロイが笑みながら言う。ロイに頭を撫でられているリリスはよくわからないと言った様子で首を傾げているが、もしかして……。

俺はある機械を取りだし、それをロイとリリスに交互に向ける。……やはりか。今のロイは、ちょっとしたリリスの加護を受けてやがる。オーフィスの加護を受けるアーシアやイリナ、イッセーと同様だ。

 

「どうかしたのか?」

 

「いや、何でもない」

 

ロイが訊いてきたが、はぐらかす。聞いても「よくわからん」とか言うだろうからな。

ロイは立ち上がり、一瞬ふらついて壁に手をついた。身体が鈍ってしまっているようだが、心配している時間がない。早く行動に移さなくては……。

ロイに肩を貸してやり、そのまま転移室を目指す。目指す場所は人間界だ。即席の魔方陣じゃ届かない。

リリスが後ろをついてきたが構わずに転移室に入り、そのまま魔方陣を起動、座標を打ち込む。このときに平行してグリゴリと天界に連絡を入れておく。

それを済ませて座標を打ち込み終えると、魔方陣が輝き始め、あとは俺たちが乗るだけとなった。

 

「本当にいいんだな?もう後戻りはできないぞ」

 

「今さら戻るつもりはねぇよ」

 

即答するロイ。やはり、グレモリー三兄妹はどいつもこいつもわがまま野郎だよ……。

俺たちが魔方陣に乗ると、リリスがそのままついてくる。一緒に行くことになりそうだが、それに関しても連絡を入れたから大丈夫のはずだ。

最大の問題は今から行動を開始して間に合うかだ。それはロイを信じるしかないし、リリスの加護にも期待しないといけない。

俺が思慮しているうちに魔方陣の輝きが強くなり、俺たちを包み込んだ。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

人間界某所。グリゴリ施設。

アザゼルと別れた彼━━ロイは、準備が終わるまで待合室で待機していた。張り詰めた表情の彼の隣にはリリスが座り、少しだけだが不安げにロイの顔を覗き込んでいる。

ロイは優しく微笑しながら彼女の頭を撫でてやり、リリスの表情が和らぐ。

二人がそんなやり取りをしていると、待合室にヒトが入ってくる。ロイはそちらに目を向けると、驚愕を隠しきれず、目を見開いた。

 

「……ガブリエル」

 

「……はい」

 

名を呼ばれ、頷くガブリエル。だが、彼女の声音はいつもの間延びしたものではなく、少し悲哀の色が込められたものだ。

彼女の名を呼んでから口を開こうとしないロイに、ガブリエルが言う。

 

「あなたは、どうして……?」

 

「………」

 

黙りこむロイにガブリエルは詰め寄り、彼を睨むが、すぐに眼に涙がにじむ。

 

「どうして自分の命を大切に出来ないんです……!」

 

涙が彼女の頬を伝っていくが、ロイの指がそれを拭い、そのまま彼女の頬に触れる。

 

「大切にはしているさ。だが、命を懸けなきゃならねぇ時だってある」

 

覚悟の色が彼の瞳に宿り、決して揺らぐことはない。

ガブリエルは何か言おうとするが、すぐに躊躇う。今の彼には、何を言っても無駄だろう。彼は以外と頑固だ。

彼との付き合いはまだまだ短いが、何となくそれを察していたガブリエルは、彼に何も告げない選択肢を選ぶ。

ロイも彼女に気を使わせたことがわかったのか、苦笑しながら言う。

 

「死ぬかもしれねぇけど、死ぬつもりはねぇよ。死んじまったら何にもならねぇからな」

 

そう言うとガブリエルの頬から手を離し、部屋の入口に目を向けると同時にドアが開き、アザゼルが入ってくる。

彼らは言葉を交わすことなく頷きあい、そのまま部屋を出ていくが、彼らの後ろにリリスとガブリエルが続く。

ロイだけが途中で別れ、ある部屋に入る。部屋の中央に腕を置くための機械と、それを中心に魔方陣が展開され、機械には厳重に固定された深緑色の宝玉が装着されている。

ロイは右手に籠手を出現させ、一歩、また一歩と機械に近づいていく。

その部屋と特殊ガラス越しに隣接する部屋にはアザゼルとリリス、ガブリエルが入り、ロイの様子を伺っていた。

ロイが機械の前に移動し終えると、アザゼルがマイク越しに話かける。

 

「ロイ、いいな?これが最後の━━」

 

『言ったろ、今さら戻るつもりはねぇ』

 

アザゼルの言葉を遮り、ロイは告げた。

アザゼルは小さく嘆息し、横目でガブリエルを見る。彼が天界にいた頃では想像もできないほど、誰かを心配する表情でロイを見つめていた。

 

━━ガブリエルに会わせれば、考え直してくれるかもしれない。

 

アザゼルの思惑はあっさりと下され、ロイの覚悟は揺るがない。

アザゼルはロイに指示を飛ばす。

 

「その機械に腕を突っ込め。そうしたら、細かいのはこっちで操作する」

 

『頼むぞ』

 

ロイはガラス越しにアザゼルを見ると、何の躊躇いもなく機械に腕を突っ込む。それを確認したアザゼルは手元のコンソールを操作を始める。

機械に固定された深緑色の宝玉が輝き始め、それが少しずつロイの籠手に填められた宝玉に移っていく。

籠手の宝玉に深緑色の輝きが触れた瞬間、ロイの表情が苦悶に染まり、血が出るほど歯を食い縛り始める!

 

『━━━ッ!ぐぅぅうううう!』

 

空いている左手で無意識に逃げようとする右腕を無理やり押さえつけ、痛みと共に流れ込む意識の侵食に耐え続ける!

 

『あああああああああああ!』

 

「ロイ様!」

 

苦悶の絶叫を放つロイに、我慢の限界となったガブリエルが今にも飛び出していきそうになるが、アザゼルが止める。

 

「止めとけ。今あの部屋に飛び込んだら、どうなるかわからん」

 

アザゼルはそう言いながら視線をロイに戻す。あまりの激痛のなか、ロイの身体から無意識に漏れ出す滅びの魔力により、部屋の壁には傷が生まれ始めていた。

ガブリエルはそれを見ても飛び出していこうとすると、横で静かにしていたリリスが小声で漏らす。

 

「大丈夫。ロイなら平気」

 

何の確証もない発言ではあるが、龍神の半身である彼女の言葉には謎の説得力があり、ロイから漏れ出す滅びの魔力が少しずつ落ち着き始める。

それでも顔は苦悶の色に染まっており、意識を飛ばさないように歯を食い縛り続けていた。

深緑色の宝玉の輝きの全てがロイの籠手に移った頃、変化が起きた。籠手の宝玉から深緑色の光が溢れ、ロイの身体を這い上がり始めたのだ。

 

『━━ぐッ!ああああぁぁああぁぁああああああ!』

 

ある程度落ち着いた様子から一転、再び絶叫するロイ。ついには固定していた機械から煙が吹き出し、彼の腕が抜けてしまう。押さえるものがなくなったロイは右腕を抱えながらのたうち回る。

 

「も、もう見ていられません!」

 

「お、おい!待て!今行ったら━━」

 

アザゼルの制止を無視して部屋を飛び出していくガブリエル。そのままロイのいる部屋に飛び込み、四つん這いになりながら右腕を押さえる彼を見つける。

そんなロイにガブリエルはゆっくりと近づいていき、両膝をついて彼に声をかける。

 

「……ロイ様……」

 

「はぁ…!はぁ…!ガブリエル……!」

 

ロイがゆっくりと顔を上げると、ガブリエルは狼狽える。

彼の右肩から顔の右頬にかけてが黒い鱗に覆われ、右目の瞳も銀色に変わってしまっているのだ。

ロイはいきなりガブリエルを突き飛ばし、睨み付ける。

 

「離れろ……!」

 

「な、何を━━」

 

再び近づいた彼女が口を開いた瞬間、彼の右腕がガブリエルの首に伸び、そのまま掴みかかる!

 

「━ッ!?ロ、ロイ…様……!」

 

首を絞められながらも彼を心配するガブリエル。だが、ロイの両方の瞳が銀色に染まり、まるで親の敵を前にしたように殺気立っているのだ。

 

「気を……しっかり……!」

 

呼び掛けるが、ロイは反応しない。むしろ余計に力が加わっていってしまっているのだ。

それでもガブリエルは諦めない。首を絞められながらでも、出来るだけ優しい声音で語り懸ける。

 

「誰かを守る。そのために力を求めたのでしょう?思い出してください……」

 

ガブリエルの言葉を受けて、僅かながら力が弱まる。それを直接感じることのできた彼女は、先程ロイがしたように優しく彼の頬に触れる。

 

「あなたが言ったのでしょう?過去(つみ)からは逃げないと、未来を守ると。……なら、負けてはなりません!ロイ・グレモリー!」

 

「ッ!」

 

ロイの左目の瞳が深紅の色に染まり、左手の指の隙間に滅びのナイフを挟むと、そのまま右腕を殴りつける!

滅びのナイフは籠手を貫通し、生身の腕に達すると、ガブリエルの首を絞める手の力が一気に抜ける。

いきなりの行動で解放されたガブリエルは、咳き込みながらも心配げにロイに目を向けると、

 

「この程度の奴に負けてられねぇ。俺にはやらなきゃならねぇことがあるからな……!」

 

腕からナイフを引き抜くと、そのまま右腕に魔力を送りこむ。深緑色の光が深紅の光に押され始め、そのまま籠手の宝玉まで押し返されていく。

 

「何が何でも守るさ。それが俺の生き方だ。それが俺の戦う理由だ。戦うことに意味を見出だせねぇようなおまえに、負けるはずがねぇ!」

 

力強いロイの言葉と共に深紅の輝きが強まると深緑色の光が一気に宝玉の内に押し戻される。

 

「はぁ…はぁ…はぁ……っ!」

 

息を荒くしながら右腕の籠手を見る。深緑色の光が宝玉から漏れ出ているが、風に揺れる灯火のように弱々しく、先程のような勢いはない。

 

「ガブリエル、大丈夫か……?」

 

「は、はい。大丈夫です」

 

ガブリエルは笑みながら頷くが、彼女の首には巻き付くように(あざ)が出来ており、痛々しい。

それに気づいたロイは自分の弱さを責めるように歯を食い縛り、煙が吹き出すほど義手である左拳を握る。

 

「すまねぇ。俺のせいで……」

 

「大丈夫です。戻ってきてくれましたから」

 

「だが━━」

 

「大丈夫ですから。生きていれば、どうにかなります」

 

殺させかけたというのに、ガブリエルは一切気にした様子もなく笑む。

ロイは彼女の優しさに感謝しながら、ちょうど部屋に入ってきたアザゼルのほうに目を向ける。

 

「アザゼル、戦場に送ってくれ」

 

「大丈夫なのか?向こうで今みたいなことになっちまうかも━━」

 

「私も行きます」

 

心配するアザゼルの言葉をガブリエルが遮る。

 

「何かあれば、私と向こうにいるヒトたちで止めます」

 

ロイ同様に覚悟を決めた顔をするガブリエルに、アザゼルはわざとらしくため息を吐くと言う。

 

「どいつもこいつ無茶しやがるな……」

 

「無茶しなきゃならねぇ状況だ。やるしかねぇ」

 

「そう言うことです」

 

アザゼルは二人の言葉を受け、二人を囲むように転移用魔方陣を展開する。

 

「おまえら、死ぬなよ」

 

「当たり前だ」

 

「わかっています」

 

二人が頷くと同時に転移の光に包まれ、一気に弾ける。

 

「死ぬんじゃねぇぞ。あの話、聞かなきゃならねぇからな」

 

アザゼルの呟きと共に光が止む。二人の姿は既になく、静寂だけが室内を支配するなか、

 

「……ロイ……」

 

リリスが寂しげに、戦場に向かった彼の名を口にしていた━━。

 

 

 

 

 

━━━━━

 

 

 

 

 

『D×D』を含めた様々な神話勢力による連合軍と、トライヘキサを含めた邪龍軍団との戦いが続く北欧神話の領域。

大量の量産型邪龍と偽赤龍帝、それらに指示を飛ばす伝説の邪龍二体と、彼らと激突する連合軍に無慈悲にオーラを放ち、地形もろとも吹き飛ばしていくトライヘキサの(コア)

ロスヴァイセの開発した量産型邪龍を封じる術式も数の前では無意味であり、倒したとしても聖杯によりすぐに復活して向かってくる。

偽赤龍帝は一人一人の力が強く、なかなか数が減らない。

三つ首の邪龍━━アジ・ダハーカはあらゆる系統の魔方陣を展開してフルバーストを放ち、連合軍が聖杯に近づく事を許さず、一方的に蹴散らしていく。

今は人間の姿をとっている邪龍━━アポプスは自らの力で生み出した影で太陽を隠し、『原初の水』と呼ばれる全てを飲み込む水を呼び出そうしている。

アポプスを止めようと、ロスヴァイセを含めたヴァルキリーの大部隊が魔方陣を展開し、彼の術を妨害する。

それでも術の発動を遅らせているだけであり、発動は時間の問題だろう。

そんな戦場を一望できる山の頂上に、彼らは現れる。紅髪の青年━━ロイと、金髪の女性━━ガブリエルだ。

ロイは戦場の風と臭いを直に感じると、無意識のうちに笑みを浮かべる。

 

「間に合って良かった。それじゃ、万が一の時は頼む」

 

「その万が一がないようにお願いします」

 

ガブリエルの言葉にロイは苦笑すると、右腕の籠手を顔の横に持っていき、力のある言葉を口にする。

 

禁手化(バランス・ブレイク)……!」

 

Crime(クライム) Force(フォース) Dragon(ドラゴン) Balance(バランス) Breaker(ブレイカー)!!!』

 

彼の身体を深緑色の輝きに包まれ、彼の右腕がその輝きを切り裂く!

光が晴れ、そこにいたのは━━、

 

「……これなら、行けそうだ」

 

両腕につけられた肘までをカバーする黒い籠手、両足には(すね)までを覆う黒い脚甲、胸部には黒い胸当て、背中には小さな魔力噴出口のついた装甲と、イッセーやヴァーリたちのような全身鎧(プレート・アーマー)ではなく、装甲をギリギリまで削り、動きやすさに特化した軽鎧(ライト・アーマー)を纏ったロイだった。

彼がアロンダイトを異空間から取り出すと、耳元から顎先までが装甲に包まれ、さらにそれが鼻までを覆うマスクのように変形、両方の瞳が深紅に染まる。

 

「さて、とりあえず━━」

 

ロイは眼を細めて戦場を眺めると、アロンダイトの切っ先をアポプスに向ける。

 

「━━あいつを止めるのが先決か」

 

彼はそう呟くと、背中の魔力噴出口から魔力を放出して一気に飛び出し、一瞬にして最高速度まで加速していく!

彼の速度に反応しきれなかったガブリエルだが、現在戦闘中であろう仲間たちとの合流を目指して飛び立つ。

激化の一途となる北欧戦線に、たった二人だが、増援が到着したのだった。

 

 

 

 

 

 




誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。

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