グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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総選挙のデュランダル
life01 年明け


色々と忙しかった今年が終わろうとしている頃。俺━━ロイは、今年最後であろう面倒事に首を突っ込んでいた。

 

「にゅふふ~、ロイ~」

 

満面の笑みで右腕に抱きつく、酔っぱらっているセラ。

 

「うふふ……」

 

恥ずかしそうに笑みながら左腕に抱きつく、酔っぱらっているガブリエル。

二人とも顔が近い。息がかかるほど近い。ちょっとくすぐったい……。

 

「おーでぃんのくそじじい!かくごぉっ!」

 

「なぜお主がここにいるんじゃ!?」

 

酔っぱらったロセに追いかけまわされるオーディン。そのせいで、ろくに酒や料理に手が出せないオーディン。自業自得だけどな。

視線のずらした先では、酔っ払ったアザゼルが上半身裸で踊り、それに同じく酔っ払ったオリンポスの主神━━ゼウスが即発されて踊り始め、これまた酔っ払ったミカエルがその二人を見て爆笑。

酔っ払った義姉(ねえ)さんに怒られ、正座しているコスプレ野郎、もとい兄さん。

 

━━なんだこの状況は……!?

 

アザゼルと兄さんに誘われるがまま、忘年会に参加したのだが、様々な勢力の主神や代表者が集まるものだとは思わなかった。

特に説明もなかったからロセも連れてきたが、あの様子なら大丈夫そうだ。ストレス発散は大切だからな。

黒歌は置いてきた。てか、誘おうと思ったら逃げられた。何かしらの直感が働いたのかもしれない……。来なくて正解だったかもしれないな!なかなかカオスだぞ!

両腕を押さえられ、酒を飲もうにも飲めないし、何か食べようにも食べられない。なんだよこの生殺しは……!

俺がどうにか二人を剥がそうとするが、謎の筋力でそれができない。俺ももっと食って飲みてぇのに!

本気で暴れようか迷い始めた頃、俺の胸に飛び込んでくる女性が一人。

 

「ロイしゃん……。おーでぃんのくそじじいつかまえるのてつらってくだしゃい!」

 

「……断る。面倒だ」

 

俺が視線をそらしながら言うが、ちょうど左腕に抱きついていたガブリエルと視線が合う。向こうはにっこりと微笑えんでくるが、俺は苦笑で返す。

セラとロセからの視線が痛いのだ……!あとで何かフォローしておかねぇとダメだろうな!

俺がひきつった笑みを浮かべていると、ロセが俺の胸に顔を埋めてそのまま頬擦してくる。いつもの流れで頭を撫でてやりたいところだが、両腕は塞がれてしまっているので何もできない。

俺がため息を漏らすと、ロセが突然おとなしくなった。

 

「……?」

 

ロセの顔を覗きこんでみると、

 

「くぅ………くぅ………」

 

規則正しい呼吸で爆睡していた。こいつ、ヒトの胸を枕のように……。まあ、いいか。嫌ってわけでもねぇ。

俺がロセの寝顔を見ながら癒されていると、両脇の二人が妙に静かなことに気づく。何かしら言ってきたり、リアクションしたりすると思うんだがな……。

ちらりと視線を向けてみると、

 

「ふふ~、ふにゅ……」

 

「すぅ……んん……」

 

二人とも寝ていた。いつの間に潰れるほど飲んだのか……。俺は全然飲めていねぇのに!これじゃあ、動こうにも動けねぇじゃねぇか!

俺が料理を前に悔しがっていると、踊っていたアザゼルがこちらに歩み寄ってくる。若干の憎しみのこもった邪悪な笑みを浮かべながら……。

 

「ロイ……。動くなよ?動いたら━━」

 

アザゼルは懐から何かを取り出し、その先端を俺に向けてくる。

 

「━━余計酷い事になるぞ」

 

アザゼルが取り出したのは、習字とかに使いそうな毛筆だった。

俺は口の端をひきつらせ、アザゼルに訊く。

 

「お、おまえ、何をするつもりだ……?」

 

「昔から今現在までの恨みを込めて、おまえに落書きする!日本の正月はこういうことをするみたいだからな!」

 

そう言いながら魔方陣を展開し、墨汁の入った紙コップを出現させる。そこに筆を突っ込み、墨汁を染み込ませていく……。

俺は逃げようとするが、三人に抱きつかれているため動けない。どうにか顔だけそらそうとするが━━、

 

「これも何かの余興だ。ロイ、我慢してくれ」

 

「何だか楽しそうじゃねぇか!」

 

兄さんとゼウスに頭を掴まれ、無理やり正面を向かされる。ダメだ、完璧に詰んだ……。

俺が諦めのついたことを強調するように息を吐くと、アザゼルが筆をこちらに向ける。

 

「さぁて、覚悟しろよ……!」

 

「もうどうにでもなれ……」

 

この後、なぜかアザゼルが筆を全員に回し始め、俺の顔は大変なことになった。止めない兄さんも兄さんだが、義姉さんもやってくるとは思わなかった。

ユーグリットの件で疲れているだろうから、俺と兄さんとで無理やり連れてきたんだが、正解だったな。落書きされたけど!

 

「━━って、いい加減にしろぉぉぉ!」

 

俺の叫びは無情にも無視され、この後も忘年会は続いたのである。

もちろん、しばらくしてから起きた三人から爆笑されたのは言うまでもない。墨汁って、簡単に落とせるよな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

時が流れて元旦。

 

「あ~、動きたくねぇ~」

 

「そうだにゃ~」

 

「我も」

 

俺と黒歌、オーフィスはこたつに入りながら突っ伏していた。

リアスたちは京都に初詣に行ったが、忘年会で疲れ果てた俺は、兵藤宅でのんびりさせてもらうことにした。てか、こたつに入ったら出られなくなった……。

ロセからは抗議的な視線を向けられたが、忘年会の惨状を思い出したのか、引き下がってくれた。

こたつに入ってみかんを食べながら、ボケッとしていると、黒歌が寄りかかってくる。こいつ、クリスマスにプレゼントをやってから、余計に絡んでくるようになった気がしてならない。俺的には感謝の思いを伝えたかっただけなんだがな。

次のみかんを剥いていると、黒歌が袖を引っ張ってくる。俺が黒歌に目を向けると、

 

「あー」

 

と、間抜けに口を全開にしていた。なんだ、指を突っ込んで欲しいのか?

俺が疑問符を浮かべていると、黒歌がみかんと自分の口を交互に指さし始めた。あー、そういうこと。

みかんを剥き終えた俺は笑みを浮かべ、丸ごと黒歌の口にぶちこんだ!

 

「んぐ!?」

 

驚く黒歌だが、そのままみかんを口に押し込んで咀嚼し始めた。……ま、まじか。丸ごといきやがったぞ……。

みかん丸ごとを噛みながら睨んでくる黒歌。食わせてやったのだから、文句はないだろう。

俺は鼻で笑って次のみかんを剥き始めると、今度はオーフィスが袖を引っ張ってくる。

 

「ん?」

 

そちらに目を向けると、

 

「あー」

 

黒歌同様に口を全開にしていた。つまり、そういうことだろう。

俺は小さくため息を吐き、みかんを小さく分けてから口に放り込んでやる。イッセーたちがいないから、俺にかまって欲しいんだろう。

俺がオーフィスにみかんを少しずつあげていると、黒歌が抗議の声をあげる。

 

「ちょっと!なんでオーフィスには普通なのに、私には丸ごとなの!?」

 

「小さい子にいたずらはしない主義だ」

 

冷静に返しながらみかんを食べる。……う!キツい酸っぱさだな……。

俺が眉を寄せていると、黒歌はため息を吐いていた。

 

「子供に優しいのはいいけど、もっと女にも優しいほうがいいにゃ」

 

「へいへい」

 

黒歌に適当に返し、再びオーフィスにみかんを食べさせる。甘いやつだといいんだがな……。

 

「うまうま」

 

大丈夫だったようだ。まあ、酸っぱくても平然としていそうだけどな。

小さくため息を吐き、ボケッと去年を振り返る。

十年間続けた任務が終わり、それから色々な面倒に巻き込まれて、その過程で左腕なくなって、深紅の力が手に入って、ロセに告白して、ガブリエルに告白(?)されて……。

激動すぎねぇか、去年。その前の数百年が平和に思えるほど濃い一年になっているじゃねぇか……。

それを自覚して再びため息を吐く。今年、どうなるんだろうな……?

 

 

 

 

 




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