第四天━━『エデンの園』を目指してエレベーターに乗り込んだ俺━━ロイ、ミカエル、ガブリエルを始めとした天使の面々。
道中で大量の邪龍にも襲われたが、ミカエルの圧倒的な強さのおかげで怪我人はいない。
エレベーターに乗り込み、浮遊感と同時に第四天に到着した。
エレベーターの扉が開いた瞬間、遠くからファブニールのオーラを感じ取れた。ここからでも感じ取れるって、相当なオーラを放ってやがるな。ってことは、リゼヴィムもそこか……?
「ミカエル、先に行くぞ!」
俺はそう言うと同時に駆け出す!足に魔力を回し、軽く地面にひびが入るほどの勢いで突き進んでいく。
リゼヴィム、待ってろよ……!
━━━━━
第五天を目指していた俺━━兵藤一誠とイリナ、ゼノヴィア、アーシア(リアスたちは下で戦っている)の前では、驚くべき光景が広がっていた。
『許さないッ!許さないッ!許さないッッ!』
怒りのままに攻撃するファブニールが、リゼヴィムを追い詰めているのだ!
いくら避けられても、撃たれても、執拗なまでに追っていく!相手を倒すまで決して倒れないであろう強烈なオーラを肌にひしひしと感じるぞ!
さすがのリゼヴィムも、これには驚愕していた。先ほどまで優勢だった奴がやってしまったこと。
━━アーシアに危害を加えた。
リゼヴィムが一発、アーシアを殴ったのだ。それは俺たちを怒らせるには十分な出来事だった。それは、ファブニールも例外ではない。
リゼヴィムは、ファブニールの『逆鱗』に触れてしまったのだ。
憎悪に燃える双眸で睨み付けるファブニールを見て、リゼヴィムが呟く。
「これが龍王の『逆鱗』かぁ。……いいものを見せてくれるじゃないか」
いつものふざけた様子がない、真剣な表情になっていた。
━━と、ドライグが声を発する。
『相棒!我らも仕掛けるぞ!解放された力、今のおまえになら使えるはずだっ!』
遅いぜ、ドライグ。ファブニールが全部持っていかれそうだったぞ。けど、ちょうど良かった。あの野郎を一発ぶん殴らなきゃ、俺も気がすまねぇ!
紅の鎧を装着し、リゼヴィムに突撃する俺。それを見て奴は笑う。
「無駄無駄ぁ!
愚直に突っ込む俺を、リゼヴィムは正面から迎え撃つ!
奴の手が鎧に触れた瞬間、鎧が解除される!『
残された籠手だけでぶん殴る!インパクトの瞬間、籠手から新たな音声が鳴り響く!
『
リゼヴィムは正面から打撃をもろに浴び、後方に吹き飛んでいく!
地に倒れ込むリゼヴィム。
「………なんだ、こりゃ………」
信じられないような声音で、倒れたまま自分の顔を拭う。鼻から噴き出した血がべっとりとついていることだろう。
「━━生前のドライグが持っていた『透過』の力だ。これなら、おまえの『
「な、なんじゃそりゃ!?」
リゼヴィムは立ち上がり、無様に鼻血を垂らしたまま俺を睨んでくる。
俺が再びなぐりにいこうとすると━━、
「ッ!おいおい、マジかよ」
リゼヴィムが何かに気づいたように上を見上げた。俺も釣られて上に目を向けると、何かが落下してきている。あれは━━、
「リゼヴィム、見つけたぞッ!」
深紅の刀身の剣を大上段に構えたロイ先生だ!トウジさんは俺たちな無事に保護して、
それを知らないロイ先生は、上から追って来てくれたようだ!
ロイ先生は落下の勢いのまま、剣を振り下ろす!聖なるオーラを感じ取れるってことは、あれがアロンダイトなのか!
リゼヴィムはその場を飛び退いて避けると、そこにファブニールが追撃に向かっていく!
リゼヴィムは自身の影からリリスを出現させると、そのままファブニールの相手をさせる。だが、ファブニールはお構い無しにリリスを吹き飛ばし、リゼヴィムを目指して突き進んでいく!
ロイ先生もファブニールに合わせるように飛び出し、リゼヴィムに切り込んでいった!
ファブニールの纏う黄金のオーラと、ロイ先生の纏う深紅のオーラの残光が、リゼヴィムに襲いかかる!だが、リゼヴィムも紙一重でそれらを避けていく!
すると、ファブニールが一旦距離を放し、口から強力なオーラを放つ剣や槍、斧などの武器を吐き出していく!リゼヴィムの至近距離にいるロイ先生も巻き込まれそうだが、驚きの光景が広がる!
飛んできた武器の一つをロイ先生がキャッチし、さらに攻勢を強めていくのだ!リゼヴィムに弾かれてもすぐに次を、さらに次をキャッチしていき、様々な角度から、様々な攻撃が放たれていく!
そして、ついに━━━!
「フッ!」
「………ッ!!クソが………!」
リゼヴィムの左腕が宙を舞った!ロイ先生はアロンダイトで宙を舞うリゼヴィムの左腕に突き刺し、消滅させた!
だが、ファブニールがリリスに殴り飛ばされ、次にロイ先生にリリスが高速で迫る!
ロイ先生はリリスの拳を紙一重で避けるが、その余波で体勢が崩れた。そんなロイ先生に、リゼヴィムが至近距離で魔力弾を放った!
ロイ先生はそれを義手で受けて弾き飛ばさせるが、体勢を整えて上手く着地し、再び構える。
リゼヴィムが前腕から無くなった左腕を見て、苦笑する。
「やれやれ、その腕のやり返しかなんか?結構痛かったよ……」
「あなたへの罰は、それでもまだ足りないと思いますよ」
突如聞こえてくる第三者の声。そ声の主のほうに目を向けると、そこにはミカエル様がガブリエル様と天使たちを引き連れて立っていた。
リゼヴィムがミカエル様たちの登場に表情を険しくさせた。
ミカエル様は続ける。
「では、覚悟してもらいますよ。慈悲は……ありません」
ミカエル様の表情が冷淡なものに変わり、上空に巨大な光の槍が大量に現れた。
ロイ先生はそれを察知し、一気にこちらに戻ってくると、ガブリエル様が俺たちを囲むように結界を張った。
その瞬間、ミカエル様が手を下ろした。巨大な光の槍が降り注ぎ、リゼヴィムに襲いかかる!ガブリエル様の結界で俺たちは無事だが、リゼヴィムはあれを正面からくらっていく!
「はーっはっはっはっ!はっはっはっはっはーっ!」
『エデンの園』で大規模な爆発が連続で起こり、地形が変わっていく!それでも、リゼヴィムは笑い続ける。
━━すると、光の槍の爆破のなかから、黒い柱が、いや、ルシファーの黒翼が出現した!
攻撃が止むと、十二枚の黒翼を生やした無傷のリゼヴィムが立っていた。
今の攻撃を、耐えきりやがったのか……っ!
俺たちが驚愕し、ロイ先生が再び飛び出そうとすると、こちらに近づいてくる気配が複数。
「イッセー!お兄様!」
下から上がってきたリアスたちだ!オカ研メンバーと、
「ロイさん!大丈夫ですか!」
「何とかな」
ロスヴァイセさんは心配そうにロイ先生に駆け寄っていた。
「ういっす。間に合ったかな」
下でクロウ・クルワッハを相手してくれていたデュリオも上がってきてくれていた!
『D×D』メンバーが勢揃いするなか、リゼヴィムがあごに手をやる。
「━━うん。ちょっと舐めすぎたな。いや、はしゃぎすぎたか?まあ、悪かったな」
自嘲的に笑い、後頭部をかいたあと、冷徹な目を浮かべた。
「遊びは終わりってことにするか。俺は━━いや、私は貴殿らを我が夢の宿敵として迎え入れよう」
口調も、重圧すらも、変化した……!?いきなりふざけた雰囲気が変わる。
ロイ先生は動じずに返す。
「それがなんだ。どちらにしても、おまえを殺すことに変わりはねぇ」
アロンダイトの切っ先を向けると、リゼヴィムは首を横に振る。
「いや、今回は退こう。━━目的は終えたんでね」
リセヴィムの手には二つの果実が握られていた。
「それはっ!」
ミカエル様はそれを見て驚き、ガブリエル様も目を見開いていた。
リゼヴィムは言う。
「これは知恵の実と生命の実だ」
━━ッ!聖書に出てくるあれか!?なんであいつが実を持っているんだ!?
「もう長くなってないと聞いたんだがな……」
ロイ先生がぼそりと言うとリセヴィムが果実を見ながら言う。
「確かにもうなってはいない。だが、保存はされていた。と言えばどうする」
「そうか。おまえの母親━━リリスはここに」
「その通りだよ、ロイくん。私の母リリスはよく言っていた。『神の目を盗んで、果実を隠してやった』と、自慢げにな。昔は半信半疑だったが、こうして見つけられた。干からびていたがね」
「それを聖杯で復活させるのか?まったく、よく探したのかよ……」
ロイ先生がミカエル様とガブリエル様を半目で睨むと、ミカエル様が返す。
「探すも何もありません。感知もできませんでした」
「当たり前だ。これは
煉獄の奥地にあった……?じゃあ、ここを攻める理由はないんじゃ……。
俺がそう思っていると、ロイ先生が吐き捨てる。
「天界を攻めたのはついでか。……まったくいい迷惑だ」
リセヴィムはロイ先生の言葉を聞いて、ニヤリと口の端を歪めた。
「さて、私は帰るとしよう。リリス、行くぞ」
リセヴィムの言葉にリリスがどこからか現れ、横につく。リセヴィムはそれを確認し、転移型魔方陣を展開した。
「クロウ、キミもだ」
いつの間にか到着していたクロウ・クルワッハはリセヴィムを無視した。
「それも一興、か」
リセヴィムはそう言うと転移の光に包まれていった━━。
とりあえず、撃退は成功ってことか。リゼヴィムは、どうにかして早めに倒さないと、被害が広がっていきそうだな……。
俺たちがホッと息を吐いていると、
「キャッ!」
突如発せられた女性の悲鳴!俺たちが反射的にそちらに目を向けると━━━、
「………………」
ガブリエル様が顔を真っ赤にして固まっていた。そして、そんなガブリエル様の胸に、力なく頭を埋めるロイ先生。って、あのヒトなにやってんの!?
いや、それよりも、大丈夫なのか!?ガブリエル様、また堕天の危機なんじゃないのか!?
俺たちが心配していると、何かに気づいたガブリエル様はロイ先生を寝かせ、乱暴に上着を破いた。すると、顔から赤みが引いていき、驚愕の色が強くなっていく。
「あなた、あの時……!」
俺たちもロイ先生の体を見ると、所々に黒い染みが出来ている。こ、これって……!
ロイ先生が苦しげに呼吸をしながら、ガブリエル様に言う。
「……お、おまえを……庇った時に……ちょっとな……。滅びで……ど、どう……にか……抑えていたんだが、無理だっ……た……!」
もしかして、上で八重垣と戦っていて、その時に毒をもらったのか!?それでリゼヴィムの追撃を!?何て無茶を!
ミカエル様が言う。
「とにかく、治療施設へ。悪魔なので本格的な治療は冥界にお任せすることになりますが、それまで繋ぐだけなら、こちらでもどうにかなります」
「ロイさん!しっかりしてください!」
ロスヴァイセさんが肩を揺するが、ロイ先生は安心させたいのだろうけど、むしろ逆効果な力のない笑みを浮かべるだけだ。は、早くしないと!
俺たちはロイ先生を無事な治療施設に運び込み、天界防衛戦は幕を閉じることになった。
余談だが、近くにいたはずのクロウ・クルワッハは、そのどさくさに紛れていなくなっていた。あいつ、どうやって人間界に戻るつもりなんだ!?
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