俺━━兵藤一誠を含めたグレモリー眷属、アザゼル先生は待ち構えていた最強の邪龍と呼ばれるクロウ・クルワッハを相手にド派手な戦闘をおこなっていた。
いくら攻めても倒れないクロウ・クルワッハに、アザゼル先生がファーブニルから受け取った(代償にアーシアのスク水が失われた)『タスラム』というクロウ・クルワッハと同じ神話体系の必中の魔弾のレプリカを使い、一気に倒そうとしたのだが、それでも大きなダメージを与えることはできなかった。
俺たちが次の一手を模索しているなか、突然部屋が揺れ始めた!
俺たちが驚愕しながらも踏ん張るなか、天井が崩れ始め、瓦礫が大量に落下してくる!
俺たちがそれを避けるなり壊すなりしていると、それに紛れて大きな影が落下してきた。
━━━あれは、グレンデル!白目を剥いて脱力した様子で落下してきている!
クロウ・クルワッハも少しだけだが驚いた様子で小さく目を見開く。同時にグレンデルが床に落下、大量の砂ぼこりが宙を舞った。同時に小さな影が落下してくる。
間を置いて砂ぼこりが晴れると、そこには━━━、
「はぁ…………はぁ…………っ……はぁ…………」
返り血で体を青く染め、息も絶え絶えになっているロイ先生が立っていた!杖代わりにしているエクス・カリバーに青い血がこびりついているけど、大きな怪我はしていなさそうだ!
俺たちが喜んでいるなか、ロイ先生は白目を剥くグレンデルを憎々しげに睨むとその眼球に銃口をねじ込み、何回も引き金を引いた。
銃弾を撃ち込まれる度にグレンデルの体はビクビクと反応するが、目を覚ますことはない。
ロイ先生は銃口を引き抜くとグレンデルから離れ、ぼそりと、
「━━━二度と立ち上がるな」
そう呟いた。
その瞬間、グレンデルの頭部から魔力が溢れ始め━━━━。
ビシャ!
グレンデルの頭部から、その原型がわからなくなるほどの大量の滅びの刃が飛び出した!
脳だったものが辺り一面に飛び散り、床に汚れを作る。
相手は邪龍。慈悲も容赦もいらないとドライグも言っていたし、倒れてもあそこまでしないとすぐに立ち上がるのだろう。
ロイ先生はゼノヴィアに謝りながらエクス・カリバーを返し、彼女も何とも言えない表情でそれを受け取っていた。
あとは、クロウ・クルワッハをどうにかするだけだ!
━━━━━
俺はゼノヴィアに血まみれのエクス・カリバーを返し、クロウ・クルワッハに目を向ける。
クロウ・クルワッハは特にダメージを受けた様子もなく、俺に視線を向けてきていた。
「グレンデルを倒したか。おまえにも参加してもらいたいな」
俺は息を吐く。
「リアスたちを手伝いたいが、休ませろ。連戦はキツいんだよ…………」
俺は後ろに下がり、目を覚ましたがまだ快復しきっていない様子の小猫とギャスパー、アーシアが入っている障壁の中に逃れる。少し休まないと、魔力と集中力がもたねぇ………。
クロウ・クルワッハは興味をなくしたように俺から視線を外し、何かを感じ取ったのか上を見上げた。
それと同時に俺も強力なオーラを感じとり、天井にあいた穴から上の階層の入り口を見上げる。
その瞬間、白い閃光が俺たちとクロウ・クルワッハの間に割り込むように降り立つ!
白い閃光━━━鎧姿のヴァーリはクロウ・クルワッハを睨む。
「おまえがクロウ・クルワッハか」
「ああ、そうだ。現白龍皇」
それから無言で睨み合う両者。二人からは凄まじいまでのプレッシャーが放たれていた。
アザゼルが言う。
「ヴァーリ!遅ぇじゃねぇか。カーミラの領地から俺よりも先に出たのに、なぜここまで遅れた?」
確かにヴァーリの速度ならもっと早く俺たちと合流していてもおかしくない。
ヴァーリが言う。
「いろいろとね。途中で妨害されていたのさ。あの男……ユーグリット・ルキフグスにな」
━━━そうか。ユーグリットもここにいるのか。だからヴァーリも遅れたと。どうにかして捕らえたいが、今の体力じゃ無理だ…………。
アザゼルは再度問う。
「美猴たちは?」
「……はぐれ魔法使いの集団『
「
アザゼルがそう吐き捨てているが、俺も同感だ。
俺たち『邪なるもの』に対してだけならまだしも、全勢力の(割りと)いい奴にまで振るわれてるわけだからな。
とりあえず、そのひとつである聖杯ぐらいは回収しておきたいな。ヴァレリーの身柄ごと。
俺がそんなことを考えているとヴァーリがイッセーに訊く。
「キミはクロウ・クルワッハと戦ってみてどう思った?」
「簡単に言うと、化け物だな」
「その通り、現時点ではキミよりも遥か格上の存在だろう。と言っても、俺にも勝算があるようでないとも言える」
あのヴァーリがそんなことを言うとは、クロウ・クルワッハがどんだけすごいかはオーラからわかってはいたが、大胆不敵なあいつがそう言うのは以外に思ってしまった。
ヴァーリは続ける。
「━━━だが、俺はこの先にいるはずであろう者にようがあってな。できるだけ、消耗をしたくないんだ。………このドラゴンを追い求めていたんだが、それはそれだ。今はどうしてもこの先に行かなければならない。そこでだ」
何となくヴァーリの次のセリフがわかったぞ。それはおそらく━━━、
「共同戦線か?」
「嫌か?」
どうやらイッセーも気がついていたようだ。
イッセーが即頷く。
「いや、悪くねぇ。ギャー助の身内を助けるのにも苦戦していてよ。俺もこれ以上は無駄に消耗したくないのが本音だ」
それを聞いてヴァーリは笑った。
「交渉成立だな。ふっ、ロキ戦以来か」
ロキか。もうあの頃が懐かしく思えるな………。
俺が感傷に浸っているとアザゼルが言う。
「こいつらでダメならどうしようもねぇ。ここは二人に任せて俺たちは回復するべきだ」
「それで頼む。もたねぇ………」
「手伝いところだけれど、逆に邪魔になってしまいそうね」
俺が申し訳なく、リアスが渋々といった様子で頷き、後ろに下がる。
そして、イッセーとヴァーリが同時に飛び出していった!
およそ十分。二天龍と邪龍の戦いは、邪龍優勢の流れになっていた。
ヴァーリとイッセーの即席の連携では動きにむらがあり、クロウ・クルワッハはそれを見逃さず、二人の猛攻を捌ききっていた。
「………………頃合いか。これまでのようだ」
突然クロウ・クルワッハが息を吐き、構えを解いた。
俺たちが驚くなか、ヴァーリが訊く。
「やめるのか?」
「最低でも三十分は稼げと言われただけだ。━━━次に会うときは本気でやりあいたいものだ」
クロウ・クルワッハはそう言うと、踵を返して近くの壁に寄りかかった。同時にみなぎっていた戦意も消え失せたようだ。
奴の発言を鵜のみにするとしたら、タイムアップなのか………?
俺が嫌な汗を流しているなか、俺たちは足早に立ち去っていく。
クロウ・クルワッハは妨害も追撃もすることなく、なぜかギャスパーに視線を送っていた。
二天龍であるイッセーとヴァーリではなく、吸血鬼のギャスパーを見ている?今回の重要人物だからか、それとも何か引っかかるものでもあるのか?
俺はその疑問をすぐに捨て去り、先程の十分である程度回復した足を動かして最下層を目指す。
この階段の先にヴァレリーとマリウス、そしてリゼヴィムがいるはずだ。
ギャスパーのためにヴァレリーを助けて、マリウスを捕らえる。そして、兄さんたちのためにリゼヴィムが何かをする前に止める!
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。