グレモリー家の次男 リメイク版   作:EGO

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進路指導のウィザード
life01 契約


冥界での戦い━━『魔獣騒動』からしばらく経った日の早朝。

俺はある気配を感じて目を覚ました。部屋の外に、誰かいる………。

俺は静かにベッドから出ると一挺だけ銃剣を取り出し、扉の横につく。 同時にゆっくりと扉が開かれ、気配の主が部屋に入ってくる。

 

「動くな」

 

「にゃ?」

 

そいつのこめかみに銃剣を突きつけると、そいつはわざとらしく間の抜けた表情で俺に視線を向ける。

俺はそいつを見ながらため息を吐き、そして訊いた。

 

「………で、黒歌。何をしに来た」

 

「何をって、白音の様子を見に来ただけにゃ。あの子が私から術を習いたいって言ったもんだから」

 

「言葉が足りなかったか?俺の部屋に、何をしに来た」

 

引き金に指をかけ、怒気を込めながら再び訊く。

黒歌は両手を挙げながら笑みを絶やさずに言う。

 

「まあまあ、あの時に助けれくれたじゃない?そのお礼をしに来たのにゃ」

 

誘うように自分の体を撫でる黒歌を無視し、俺は無言で黒歌を睨みつけて質問を続ける。

 

「他のヴァーリチームはどうした?」

 

俺の返しに黒歌はため息を吐き、うんざりそうに言う。

 

「少しは興味持ってもいいんじゃないかにゃ?ま、いいにゃ。今回はルフェイちんしかいないにゃ。いちおう、敵地みたいなもんだし」

 

最低限のメンバーで来たようだ。いつかに来たときに転移魔方陣のマーキングをしていたようだな。常に見張っていたわけではなかったし、俺がいない隙にやったのだろう。

黒歌が続ける。

 

「それと、アザゼルから許可はもらっているから問題ないにゃ。たまにしか来ないけどね」

 

「あいつ、また勝手なことを………」

 

俺は呆れ気味にため息を吐く。てか、これは俺に話すことではないだろう………。

俺は銃剣をしまい、黒歌に言う。

 

「とりあえず、リアスに相談しろ。ここはあいつの領地だからな。それと、リアスの許可が出たら小猫のことは頼んだ。悪魔らしくギブアンドテイクだ」

 

「OKにゃ♪」

 

こうして、俺のストレス要因がまた増えることになった。今年に入ってから、面倒しか起きないな………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の放課後。

俺は職員会議を終えていつも通り部室に来ていた。

全員が集合したことを確認してリアスが話始める。

 

「今日集まってもらったのは他でもないの。今日から魔法使いとの契約期間に入っていくわ」

 

魔法使いとの契約か、古来より魔法使いと悪魔は深い関係がある。その関係ってのが、

 

「魔法使いが悪魔と契約する理由は大きく三つ。一つ目は用心棒として、二つ目は悪魔の技術、知識を得るため、最後は己のステータスにするためよ。魔法使いと契約することは上級悪魔及びその眷属の義務の一つになっているわ」

 

軽く解説しておくと、一つ目は有事の際の抑止力がほしいから。二つ目は悪魔経由でアイテムが欲しいから。三つ目はリアスが言った通りだ。

 

「まさか、魔法使いに呼び出される側になるとは、人生とはおもしろいものだ」

 

ゼノヴィアが複雑そうな顔で言っていた。

ゼノヴィアは教会側の人間だったからな仕方ないことだろ。

 

「まあ、異能に携わる人間なら普通は呼び寄せる側だ。そんで呼び出される側は悪魔とか魔物だろうからな。だから契約は大事にしとけよ。一回やっちまうと簡単には反故にはできん。契約したらしたできちんと仕事しろ。だからって変な奴と契約したら評判に関わるからな相手はしっかり選べ。悪魔的にはビズネスだ。普通の契約と魔法使いとの契約、しっかり両立してこそ一人前だ」

 

『はい!』

 

俺が言ったことに皆が返事をしたところでリアスが時計を確認していた。

 

「そろそろ時間ね。魔法使いの協会のトップが連絡をくださるの。きちんとしていてね」

 

俺も念のために服装を正してっと。

その瞬間部室の床に魔法陣が出現する。

 

「メフィスト・フェレスの紋様」

 

木場がそう言うが正解だ。

メフィスト・フェレス、英雄派のゲオルグの先祖━━ファウストと契約した悪魔。

俺がそんな事を思い出していると、魔方陣が椅子に優雅に座った中年男性を映し出す。

赤色と青色が入り乱れた頭髪に、右目が赤、左目が青のオッドアイが特徴の強面の男性。その男性はニッコリと笑った。

 

『リアスちゃん、ロイくんも。久しいねぇ』

 

相変わらずの軽い声音だ。イッセーたちも意外そうな顔をしている。

リアスが先に挨拶に応じる。

 

「お久しぶりです、メフィスト・フェレス様」

 

『いやー、お母さんに似て美しくなるねぇ』

 

「ありがとうございます」

 

次は俺だな。

 

「お久しぶりです。メフィスト様」

 

『うん、ロイくんも久しぶり。契約のために連絡したら任務でいないって返されたときは驚いたけど、無事に帰還できたみたいで安心したよ』

 

「ご心配ありがとうございます」

 

俺のあいさつもすんだところでリアスが紹介を始める。

 

「こちらの方が『番外の悪魔(エキストラ・デーモン)』にして、魔法使いの協会の理事でもあらせられるメフィスト・フェレス様よ」

 

『どうも、メフィスト・フェレスです。詳しくは関連書物でご確認ください』

 

いきなりメタいなこのヒトは………。

俺はいきなりのことについてこれていないイッセーに追加情報を伝える。

 

「因みにイッセー。メフィスト様はタンニーンの『(キング)』だったりする」

 

「ほ、本当ですか!」

 

『そうだよー。タンニーンくんには「女王(クイーン)」の駒をあげたんだ。ま、僕はゲームには参加しないし、冥界の事件にも首を突っ込まないから、基本的には自由にさせてるんだけどねぇ』

 

するとレイヴェルがイッセーに何かを耳打ちしていた。

その内容が聞こえていたのか、メフィスト様が口を開く。

 

『そうそう、その通りだよ。僕は昔の魔王たちがだいっ嫌いだったからねぇ。今の魔王の皆は大好きさ。僕のやってることを容認してくれるからね。アジュカくんとは思想の違いがあるけど嫌いってわけでもない』

 

じゃなきゃこんなこと出来ないと思うんだがな。

 

「ところでメフィスト様。ソーナたちとはお話しましたか?」

 

『残念ながら後になってしまったよ。なんでも新しい眷属を迎えてからお話をしたいっ言われたからね。キミたちが先になったんだ。サイラオーグくんとシーグヴァイラちゃんとは話したけどね』

 

「ソーナに新しい眷属か。話は聞いてます」

 

ソーナの眷属に新しく『騎士(ナイト)』と『戦車(ルーク)』が加わるとのことだ。さらに訊こうとしたら詳しくは今度って言われた。

 

『それにしてもキミたち「若手四王(ルーキーズ・フォー)」は大人気だよ。早く話をさせろって下に突っつかれて仕方なかったんだ』

 

リアス、ソーナ、サイラオーグ、シーグヴァイラの若手四人がそんな風に呼ばれてるらしいな。

俺がそんな事を考えているとアザゼルが部室に入ってきた。

 

「わりぃわりぃ、俺だけ会議が長引いてな。お、メフィストじゃねぇかよ!」

 

魔方陣の映像を見てすぐさま笑顔になるアザゼル。メフィスト様はそれに手をあげて答えた。

 

『やーやーアザゼル。久しぶりだねぇ。先に話をさせてもらっていたよ』

 

「そっちも大変そうだな。今度飲まないか?いいのが手に入ったんだ」

 

「お知り合いですか?」

 

仲良さそうに話している二人にイッセーが訊く。

 

「まあな、長い付き合いだ。昔グリゴリが独自に接触させてもらった」

 

『グリゴリの情報網は役に立ったよ。今でもお世話になっているしね』

 

「お互い様さ、メフィスト。グリゴリ的にも魔法使いの協会とのパイプを持っていて損はなかったわけだしな」

 

アザゼルとメフィスト様はそこから二人で話し込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後話が一段落したのか、ようやく本題に入ることになった。

 

『長くなってしまって悪かったね。それでは魔法使いの詳細データを送るよ』

 

メフィスト様がそう言ったので俺は後ろに下がる。

そんな俺を見てイッセーが訊いてくる。

 

「ロイ先生、何で下がるんですか?」

 

「すぐにわかる」

 

俺が言った瞬間、宙に魔方陣が展開され、そこから書類が大量に降ってくる。

 

「な!?」

 

「な、わかっただろう?」

 

俺は苦笑しながらイッセーにいい、降ってきた書類を皆で集め仕分けしていくわけだ。一人分だけならまだしも、リアスを含めた眷属全員分だから余計に多い。

イッセーは作業しながらも不思議そうに一枚の書面を凝視していた。

 

「イッセー、今じゃこれが主流だ。まずは書類選考。しっかり選べよ」

 

「は、はい!」

 

その後、無事に仕分けを終えた。

一番多かったのがリアス。二番目がロスヴァイセ。三番目はアーシア。そこからは、イッセー、木場、朱乃、ゼノヴィア、小猫、ギャスパー、の順だった。

 

「まぁこうなるよな。リアスは『(キング)』だから。ロスヴァイセはヴァルキリーだから。アーシアは回復の神器(セイクリッド・ギア)があるから。イッセーは赤龍帝だから。木場は聖魔剣があるから。朱乃はバラキエルの娘だから。ゼノヴィアのデュランダル使いだから。小猫とギャスパーが少ないのは二人ともまだまだ成長中だからだろ」

 

「ロイの言う通りだな。だが、この書類の大半は雑兵もいいところだろ」

 

アザゼルが散々なことを言っているが、

 

『アザゼルの言う通りさ。大半は雑兵だよ』

 

メフィスト様もそう言うってことはそうなんだろうな。また、最初はこんなもんか………。

 

『赤龍帝くんの指名率が思いのほか伸びなかったねぇ。とは言っても多いほうだけどさ』

 

「魔法使いの連中はステータスも重視するが、体裁をそれ以上に気にするからな。イッセーは俗すぎると判断したのかもな」

 

アザゼルが言ったことにイッセーは何か言いたげだったが我慢していた。

どうせ、おっぱいドラゴンが流行る冥界がおかしいとか思ったんだろ。

 

『そんなわけで今回のはそれで全部だよ。めぼしい子がいたら連絡してくれるとありがたいねぇ』

 

メフィスト様の発言にイッセーは疑問符を浮かべていた。

 

「今回ってことはまたあるんですか?」

 

イッセーの質問にリアスが答える。

 

「それはそうよ。今回で決まるとは限らないし、契約しても魔法使いは悪魔のように長生きではないのよ。今回のでいい相手がいなければまた書類を送ってもらえばいいのよ。契約相手が亡くなったら、また新規契約することになるわ」

 

俺はそこに追加情報をおくる。

 

「期間限定の契約もあるし、途中で解約ってこともあったりする」

 

それを聞いてまた何か考えて始めるイッセー。するとメフィスト様が俺にも話しかけてきた。

 

『それで、ロイくんの契約の相手だけど………』

 

「………嫌な予感がするんですけど」

 

俺が冷や汗を流していると、メフィスト様は笑む。

 

『あの()からきているよ』

 

「………ですよね」

 

俺はため息を吐き、俺に契約を持ちかけてくる魔法使いのことを思い出していた。

あいつと初めて契約したのは十五年ぐらい前か。あいつの親からの代変わりって感じだったんだ。まあ、それまでは良かったが、なんか当たりが強いんだよな………。

イッセーが訊いてくる。

 

「あの、何かあったんですか?」

 

「……………」

 

俺が黙りこんでいるとメフィスト様が代わりに口を開く。

 

『その()は極端に言うとロイくんに惚れているんだ。ロイくんが眷属を探していたとしたら、真っ先にアタックしていただろうね』

 

「俺は眷属を持つつもりはありません」

 

俺とメフィスト様で話しているとリアスが訊いてきた。

 

「お兄様、その方と一体なにがあったのですか?」

 

「別に何もしてはいないが、なんか気に入られたんだ」

 

『俗に言う一目惚れだね。何となく、セラフォルーちゃんに似ていたような………』

 

「そうなのですか?」

 

怪訝そうに俺を見るリアス。俺は再びため息を吐いてリアスに言う。

 

「外見ってよりはテンションだ。やたらと高い。魔法使いなのに高い」

 

『でも、腕は確かだから断るに断れないんだよね』

 

俺のように無名な悪魔だと、あまりヒトが寄ってこない。協会のほうも全員のことを把握しきれているわけでもなく、先日まで行方不明だった俺はまさにそれだ。

それなのに、彼女は俺に契約を持ちかけてきた。ならば、答えてやろう。

 

「まあ、延長ってことでお願いします」

 

『わかった。書類を送るよ』

 

「お願いします」

 

俺は礼をしてメフィスト様に頼んだ。メフィスト様は頷き、俺の手元に書類を送ってくれた。

リアスとイッセーがそれを覗きこんでくる。

 

「お兄様、この方がですか………?」

 

「め、めっちゃ美人じゃないですか!?」

 

二人して驚きながらも書類の写真を凝視していた。

書類の写真には二十代後半ほどの青みがかった黒髪の女性が映っており、なぜかウィンクをしていた。

 

「変わらねぇな………」

 

俺は呟きながら銃剣を取り出して親指の指先を軽く切って出血させ、所定の場所に血印をつける。すると、書類が燃え上がって消えた。

 

『よしっと、さすがに手慣れてるね』

 

「慣れてますからね」

 

俺が言うとメフィスト様は頷き、今度はレイヴェルに目を向けた。

 

『そこの子はフェニックス家の者かな?』

 

「は、はい。レイヴェル・フェニックスと申しますわ」

 

丁寧に挨拶をするレイヴェル。

それを確認したメフィスト様はあごに手でさすりながら言い始める。

 

『これは極秘の情報なのだけれどね。どうにも「はぐれ魔法使い」が「禍の団(カオス・ブリゲード)」の魔法使いの残党と手を組んでフェニックスの関係者に接触する事例が相次いでいるんだよ』

 

部屋の空気が引き締まる。いきなりだが、イヤな予感しかしないな。面倒事は勘弁してもほしいぜ。

俺が指先を一度舐め、メフィスト様に訊く。

 

「ですがメフィスト様、フェニックスの涙の流出はもう無くなったはずでは」

 

『いや、闇のマーケットでフェニックス産ではない涙が流れているんだよ』

 

『ッ!?』

 

それを聞いて全員が驚いていると、メフィスト様が懐を探って小瓶を取り出した。

 

『これだよ。どうやっているかはわからないけど、事実フェニックス関係者に何かしら接触している。それでそこのお嬢さんも狙われているかもしれないから、気をつけてくれ』

 

それを聞いたレイヴェル嬢は表情を陰らせていた。

いきなり不安になるようなことを言われれば、そうなって当然か。

 

「俺もグリゴリでどうなっているか調べさせる。なーに心配すんな。お前には王子様がいるからな。それに結界もある。大丈夫だよ」

 

アザゼルがイッセーの肩を叩きながらそう言った。

俺はアーシアに止血してもらいながら言う。

 

「最近『禍の団(カオス・ブリゲード)』の残党をまとめあげようとしている奴がいるらしい。まだ詳しくは調査中らしいから何とも言えないがな」

 

俺の発言でまた重い空気になってしまった。

言うタイミング間違えたようだ。

すると、メフィスト様が一度咳払いをして話を始める。

 

『話がそれて申し訳なかったね。ということで、うちの魔法使いをよろしく頼むよ。それじゃ良い契約をー』

 

そう言うと魔方陣が消え、何の脈略もなく話が終わった。

とりあえず、フェニックスの件には警戒しておこう。

契約については相談ぐらいになら乗ってやるかな。いちおう、先輩としてな。

 

 

 

 

 




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