IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界- 作:陽夜
次の日の朝。
まだ起床時間には少し早い時間に一夏は起きた。
「……あれ、まだ5時か」
「(いつもと違う場所だから、ぐっすり寝れなかったかな)」
隣を見ると、箒はまだ寝息を立てていた。
「(箒を起こすわけにはいかないし、少し走るか)」
一夏は走りやすい服装へと着替え、学園の外周を走る。そのまま30分ほど走っていると、途中で女子生徒に声をかけられる。
「あ、あれ、織斑君じゃない?」
「ほんとだ〜おりむーだ〜」
「おーい!織斑君ー!」
「(ん?彼女達は確か……)
はぁ……はぁ……ふぅ。えっと、確か同じクラスの…」
「相川清香《あいかわ きよか》です!」
「布仏本音《のほとけ ほんね》だよ〜よろしくねおりむ〜」
「鷹月静寐《たかつき しずね》だよ、よろしくね織斑君!」
それぞれ自己紹介が始まった。
昨日である程度クラスメイトの顔は見ていた為、すぐに思い出せた。
「相川さんに布仏さんに、鷹月さんね。覚えたよ。俺は織斑一夏、よろしくな。 それで、えっと、布仏さん?そのおりむーっていうのは一体……」
「え〜おりむーはおりむーだから、おりむーだよ〜」
「あ、あはは……(なんじゃそりゃ……)」
「あはは、ごめんね織斑君。本音はすぐ変なあだ名つけるからさ」
「む〜変じゃないよ〜」
「そ、それより織斑君、こんな朝から走ってるなんて、すごいね。」
「え?ああ、なんか、朝までぐっすり眠れなくて。急にいつもと寝る場所が変わったからかな。」
「そっか、大変だね、織斑君も」
「まぁ、すぐに慣れるさ、きっと」
「……あっ!ごめんね、織斑君!走って疲れてるのに止めちゃって」
「いや、俺は大丈夫だよ、走るのには慣れてるから」
「おりむーすぐに呼吸戻ったもんね〜すごい〜」
「この調子なら、オルコットさんにも勝てるかな?」
「それはまた別だけどね。向こうは素人の俺と違って、ISの戦闘経験も段違いに多いだろうし。身体を鍛えれば勝てるってわけじゃないだろうからね」
「そっか。何かあったら、私たちも力になるよ!頑張ってね!織斑君!」
「それじゃあまた後で、織斑君」
「またね〜おりむ〜」
こうして、クラスメイトと仲を深めた一夏は汗を流すために部屋へと戻って行った。
そして、クラス代表決定戦当日。
……なのだが。
「………なあ、一夏」
「………なんだよ、箒」
「本当に一度もISを操縦していないが、大丈夫なのか?」
「………正直、すっげえ不安で仕方ない」
そう、仕方ないことなのだが、ISが使用できない以上、基礎知識等を学ぶことしかできないのだ。
イメージトレーニングも大した操縦をしていないのであまり役に立つとは言えず、結局一夏はこの一週間の間、箒と剣道や自主的に身体が鈍らないようにするしかなかった。
「(まだ専用機も届いてないみたいだし、本当に大丈夫かよ……って、ん?)」
一夏が不安に駆られていると、山田先生が走ってくるのが見える。
「お、織斑君〜!と、届きました!織斑君の専用機です!こっちへ来てください!」
「わ、わかりましたから、落ち着いてください!山田先生!」
山田先生に案内されたピットには、織斑千冬がいた。
「む、来たか、織斑。これがお前の専用機、【白式】だ。」
一夏の前には、白で飾られたISが一機。
「これが、俺の、IS……」
「さあ、時間が惜しい。悪いが《初期化》と《最適化》は試合中にやってもらうぞ」
「えっ、ちょっ、それって大丈夫なn……「大丈夫だ。ほら、早くしろ!」……はい。」
有無を言わせない千冬。
すると、一夏があることに気づく。
「織斑先生。今日の試合って観客はいないんですか?」
「ああ。本来ならクラスメイトを含め観客席に人を入れるのは問題ないのだが、オルコットが試合はお前と二人だけにして欲しいと言われてな。私と山田先生以外は観戦できない」
「そう、ですか。わかりました」
その事に、何故か少し不安を覚える一夏。
「そういう訳だから篠ノ之。お前にも試合開始前にここから出てもらうぞ」
「わかりました……一夏」
「ん?」
「負けるなよ。勝ってこい。」
力強く言われる一夏。
箒の目には、信頼が宿っていた。
「……ふっ、ああ!任せろ!」
「ならいい。それじゃあな」
ピットを出て行く箒。
「(箒にも言われたんだ。負けるわけにはいかない。それに、
俺の復讐を成し遂げる為にも、こんな所で立ち止まってはいられない)」
「織斑。そろそろ出撃準備だ。位置につけ」
「頑張ってくださいね、織斑君!」
「はい。 織斑一夏、【白式】出ます!」
一夏は、フィールドへと降り立った。
その目には、復讐が映っていた。