IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界- 作:陽夜
一夏が職員室で荷物を受け取った後。
渡された鍵の号室と同じ部屋へ向かう途中に、水色の髪の生徒に話しかけられる。
「ちょっといいかしら?」
「え?あ、はい」
「君が噂の織斑一夏君ね?」
「あはは……噂かどうかは分からないですけど、自分が織斑一夏なのは間違いないですよ。えっと」
「私は更識楯無《さらしき たてなし》。この学園の生徒会長をしているの」
《生徒会長》と書かれた扇子を広げる。
「(なんだよあの扇子…)それで、生徒会長さんが自分に何か?」
「いいえ、別に今何か用があるわけじゃないの。ただ、一応生徒会長として挨拶をしておこうと思ってね。」
「はあ」
「ふふっ、そんなに怪しまなくてもいいのに。生徒会長とコンタクト持っていれば、何かと役に立つのよ?
困った時にはお姉さんに頼りに来なさい。」
《相談窓口》と今度は書かれていた。
「じゃあ、何かあれば頼りにさせてもらいますね。更識会長」
「うん、それでよし!それじゃあまたね、一夏君。」
話が終わり一夏は部屋へと歩いていく。
その後ろ姿をじっと見つめる楯無。
「…………あれが、今の《ダークネス》、か」
部屋に着いた一夏は渡された鍵を使い中へ入る。
そこまではよかった。
「い、いいいいい一夏⁉︎ど、どどどどうしてお前が入ってくるんだ‼︎」
だが、男だから当然のように一人部屋だと思っていたのは、間違いであった。
部屋に入って再び再会した幼馴染、篠ノ之箒。そんな彼女は今、髪はしっとりと濡れており、身体にはバスタオルを巻いているだけ。
つまり、完全にお風呂上がりの状況真っ只中に一夏は入って来てしまったのである。
「ほ、箒⁉︎な、俺は一人部屋じゃ……「い、いいから出ていけーーーー!!!!」うわっ!ちょっ、落ち着けって箒!わかった!わかったから物を投げるなぁあぁあぁあぁあぁ!!!!」
外へ出てドアを閉める一夏。
「(おいおい、ちょっと待てって。なんで箒が同室なんだ!?いや、確かに千冬姉は一人部屋なんて言ってなかったけどさ‥‥こういうことになったらまずいから、先に言っておくべきじゃないのかよ!?)」
そんな一夏をジト目で見る少女が一人。
「…………………」
「お、オルコットさん……?」
「………女子寮の部屋の前で、何をなさってますの?」
「(やばい、完全に疑われてる!!)い、いや!別に何かしようとかいうわけじゃないんだ!俺にも寮室が与えられたから部屋に入ろうとしたら、ほ……同室の子がその、風呂上がりで……」
「はぁ……全く、少しはそういう事に気をつけた方がよろしくてよ?この学園に男はあなた一人。何か問題になるようなことがあっては遅いですわ。
それに、レディの部屋にノックも無しに入るなんてありえませんわ。」
「うぐっ、それは、ほんと、仰る通りです……」
何も言い返せない一夏。
それもそのはず、今この状況は完全に自分が悪いと分かっているから。
すると、ドアの内側から叩く音が。
「い、一夏?いるか?」
「っ!あ、ああ!いる、いるぞ!」
「そ、その、さっきは、悪かった。もう着替えたから、中に入って来い」
「お、おう。わかった。」
そんな二人のやりとりにセシリアは微笑む。
「ふふっ、同室の方とは大丈夫そうですわね。それじゃあ、私はここら辺で」
「あ、ああ。オルコットさんも悪かったな、こんなところで足を止めちまって」
「いえいえ、お気になさらず。それでは、御機嫌よう」
歩いて自分の部屋へと向かうセシリア。
一夏は入っていいと言われたので箒のいる部屋の中へと入る。
「……………」
「……………あー、箒?」
「………なんだ」
「ご、ごめん!千冬姉からは、誰かと同室なんて聞いてなかったんだ。まさか女子と一緒なんて思ってなかったからさ……」
「…………」
「その、許してくれないか……?」
「………はぁ。仕方ないか。いつまでも怒ったままでいるわけにもいかないしな」
「ほ、箒……!」
「ただし!次また同じようなことがあればその時は……」
ゴゴゴゴゴゴと、箒の後ろに般若のような物が見える一夏。
「わ、わかってる!次からは気をつけるよ!」
「……なら、いい。」
「それで、箒はどっちのベッド使ってるんだ?」
「私は手前のベッドを使っている。お前は奥の方を使ってくれ」
「はいよ」
荷物をベッドに置く一夏。
「ふふっ」
「な、なんだよ、いきなり笑って」
「いや、一夏は変わらないな、と思ってだな」
「?なんだよそれ、俺は……」
「確かにお前は強くなった。復讐するというのも、私の知らないところで何かあったのだろう。
だが、一夏は一夏だ。何も変わってない。……幼馴染なんだ、それくらいわかるさ」
「箒……ありがとう。お前が俺の幼馴染で、よかったよ」
「や、やめろ!照れ臭いぞ一夏!」
「お、箒照れてるのか?可愛いじゃんか〜オマケに美人さんになっちゃって〜」
「ええい!お前、そんな事言うタイプではなかったではないか!///」
「ははっ、そういうとこでは、箒が知ってる昔の俺より変わったかもな!」
「まったく……ふふっ」
こうして、夜は更けて行く。
再会した幼馴染の絆は、確かにここにあった。