IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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波乱の予感!?休日デート! その2

 

 

「ねえ龍也、これとこれなら?」

 

「右」「んー、おっけー」

 

 

 

「りゅ〜くんこの水着どうかなー?」

 

「ぶふぉっ!?な、なんだよその紐!?大人しく普通の水着を買いなさい!」「えー」

 

 

 

「シャルロットさんにはやはり此方の水着がよろしいかと。わたくしと同じ金髪ですのできっと似合いますわ」

 

「でもセシリア大人っぽいからなぁ。僕に似合うかな?」

 

「大丈夫ですわ。わたくしが保証します!」

 

「んーじゃあこれにしよ♪」

 

「(ああ、これが兄離れってやつか…)」

 

 

 

当初の予定通り龍也と鈴達の水着を買いに来た一行。

鈴は色々な水着を2着ずつ持ってきては龍也の意見を取り入れ、本音は少し特殊な水着しか選ばず龍也を困らせる。対してシャルロットはセシリアと2人っきりでじっくりと選んでいる。

 

「ふふふ、シャルも友達と楽しそうで何よりだなぁ」

 

「…そんな寂しそうな顔して言っても説得力ないわよこのシスコン。それよりちょっと来なさい」

 

「はーい」

 

鈴に連れられて龍也が辿り着いたのは試着室の前。

 

「此処で待ってて」

 

「は、おい…って、入っちゃったよ。しょうがねぇなぁ」

 

手に持った水着と一緒に中へ入る鈴。

龍也は一人少し離れて待っていると声をかけられる。

 

「ちょっと」

 

「(あんまり女性用水着売り場とかで一人にされたくないんだけどなぁ)」

 

「そこの男!聞いてるの!?」

 

「…え?俺?」

 

「アンタしかいないでしょ。これ元の場所戻しておいて」

 

女はそう言うとカゴに入った服を押し付けるように地面に置く。

 

「(あぁそっか。最近は学園の中にしかいないから忘れてたけど外だとこういう"男を下に見てる"やつがいたな)」

 

学園の中にも女尊男卑の考えを持った生徒や教師がいない訳ではないが、わざわざ自分からそんな人間に絡みに行くわけもない。

 

「悪いけどお断りします。自分で漁った物くらい自分で片付けて下さい」

 

「…は?男のくせに何楯突いてるのよ」

 

「俺は自分で片付けをしろって言っただけですよ?男とか女だとかは知りませんね」

 

「ッ、こいつ…!」

 

思うように言うことを聞かない龍也に苛々してきた女の顔が怒りに染まっていく。

 

「私は女性権利団体の人間なのよ。アンタ一人くらいすぐに痴漢に仕立て上げることくらい容易いわ」

 

「(…へぇ、権利団体ねぇ)"やれるもんならやってみろよ"」

 

「ーーーッッッッ!」

 

龍也の煽りにわかりやすく激情した女は電話を取り出し何処かへ電話をかけようとする。

 

「(あーやべっ、学生証出すしかねえかなこれは)」

 

世界で二人目である肩書きを見せようと財布に手を伸ばしたその時、

 

ガシッ

 

「おい」

 

「な、何よ!離しなさい!」

 

何者かが後ろから女の腕を掴む。

 

「頭冷やせよ。恥かくのはテメェの方になるぜ?」

 

「は?アンタ何言って…「見てみろ」

 

龍也の方を顎で指し示す。女が振り返ると既に手には学生証が。

 

「あんまりこういうのは好きじゃないんですけどね。お互い面倒事になる前に引きましょうよ」

 

「なっ、それって…!?」

 

IS学園の学生証。そして男。

この二つだけで女は龍也がどういった人間なのか察しがつく。

 

「分かったら大人しく自分でそこの衣類は片付けるんだな」

 

「くぅぅぅ、覚えてなさいよ!」

 

「(誰が覚えとくかバーカ)」

 

逃げるようにカゴを持って去って行く女。

 

「助かりました、ありがとうございます」

 

「気にすんな。随分とうざってぇ客がいたから追い払おうとしただけど」

 

「えっと、貴女は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"オータム"だ。こんな所で会えるなんて光栄だぜ二人目」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは…まぁ知ってる人もいるか」

 

「逆に此処に来るまで声かけられなかったのかよ?」

 

「全く。俺は一夏と違って目立つような情報はありませんからね」

 

「(…ふぅん。目立つような情報がないねぇ?よく言うぜ)」

 

龍也は何と言ってもあの"篠ノ之束のお気に入り"である。周りの親しい人間はそんな肩書き覚えているか怪しいくらいだが、世間一般の科学者や研究者達はこれだけで思うように龍也に手を出せなくなる。

 

と、オータムと会話をしていると着替え中の鈴から声が上がる。

 

「龍也?」

 

「ん?あ、ああ!どうした鈴!」

 

「ごめん、もうちょっと待っててねー」

 

「焦んなくていいぞ」「ありがとー」

 

少し遠くから声を張って更衣室の鈴とやりとりを交わす。

 

「彼女とデートか。ったく二人目も隅に置けねぇなぁ」

 

「あはは…そ、そろそろ"友達"のところに戻りますね?」

 

友達の部分を強調する龍也。

 

「おう。それじゃあな」

 

オータムは歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、龍也の横を通り過ぎたその時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー"銀"には関わるな。お前が動けば思う壺になる」

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろから聞こえてきた呟きに思わず振り返る龍也。しかし、そこには悠然と歩くオータムがいるだけ。

 

「(今のはオータムさんが?銀って何だ、それに思う壺って一体…)」

 

「もういいわよー」

 

「あ、ああ!」

 

鈴の元へ小走りで駆け寄る。すると、試着室のカーテンが開く。

 

「ふふん、どう?」

 

「おお…」

 

思わず見惚れる龍也。

 

「明るい色なのが鈴に合ってるし胸元のフリルは可愛いな。似合ってるぞ」

 

「そ、そう?じゃあこれにしようかなー」

 

嬉しそうに頬を緩ませる鈴。

 

「着替えたら一緒にレジ行くぞ。俺が払う」

 

「えっ、いいわよ!お金ならあるし」

 

「朝のお詫びも兼ねて、な?それにこういう時は男にカッコつけさせてくれよ」

 

「…じゃあ甘えちゃおうかな。ありがと龍也」

 

「ん」

 

カーテンを閉めて試着した水着を脱ぐ鈴。

 

待っている龍也は一人考える。

 

「(ま、今は鈴達が優先だな。もしかしたら俺の思い過ごしか聞き間違いかもしれないし)」

 

少し経つと着替え終わった鈴が出てくる。

 

「行くわよ」「あいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍也の元から去ったオータムは一人路地裏を歩いていると、背後から声がかかる。

 

「どういうつもりだ、オータム」

 

「ッ、来てたのかよ"M(エム)"」

 

「手助けでもするつもりか?」

 

「ドラゴンの奴は何か企んでやがる。このままじゃ亡国機業は手遅れになっちまうぜ」

 

「…………」

 

思案するMと呼ばれた少女。

 

「別に表立って手を貸すわけじゃねえ。彼奴が思惑に乗っかってくたばるようならそれまでの話さ」

 

「"Darkness"か。一体何者なんだ橘 龍也という男は」

 

闇に消えて行く二人。風が吹き抜けた路地裏には、何も残ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「♪〜♪〜」

 

「随分とご機嫌だなラウラ」

 

「む?ああ。今日はお兄様と箒と"デート"だからな!」

 

「でっ…!?」「(ラウラの中の家族の概念やっぱり無茶苦茶だな…はは)」

 

真ん中にラウラを挟んで横並びに歩く箒と一夏。

三人は手を繋いでおりスキップでもしそうな勢いのラウラに引っ張られる形になっている。

 

「まずは私服から選ぶぞ。水着はその後だ」

 

「別に制服でも問題はないだが…まぁ、お兄様が選んでくれるなら甘んじて受け入れよう」

 

「箒もそれでいいか?」

 

「ああ。構わない」

 

レゾナンスの中を歩く三人。

 

「此処がショッピングモールか。中々に人が多いのだな」

 

「ここら辺の地域でも大きいところだからな。それに今日は休日だから多いのは仕方ない」

 

「勝手に何処かへ行って迷子にはならないでくれよ姉さん」

 

「そんなヘマをするわけないだろう妹よ。私を甘く見てもらっては困る」

 

「(…なんだろう、面倒事が起きそうな予感しかしねえ)」

 

と、一夏が不安を抱えていると服屋の前に辿り着く。

 

「ラウラはどういうのが着たいんだ?」

 

「ファッションというやつは私には分からん。お兄様に全て任せる」

 

「そうか…よし箒、行くぞ」

 

「わ、私もか?」

 

「当たり前だろ。女物の服を俺が一人で選んでたら変人にしか見えないし」

 

「…そ、そうだな。うん。私も一緒に選ぶとするか」

 

「?おう」

 

「それでは、私は適当に此処の中を歩き回っているぞ」

 

「店からは出るなよー」「ああ」

 

ラウラは一人で店内を探索し始める。

 

 

 

 

 

「そうだ、お兄様に一つ言い忘れていた」

 

「ん、なんだ?」

 

「下着は派手なのでも構わn「ね、姉さん!?」

 

「あはは…流石に下着は俺の管轄外かな」

 

「…ふんっ、まぁいい。私は行くぞ」

 

少し拗ねたラウラは、颯爽とその場を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?俺が悪いの?これって」「選んでやればいいではないか。お前がな」「勘弁してくれよ箒さん…」

 

肩を落とす一夏だった。




その3では箒と一夏もちょいと二人きりでいちゃいちゃさせたいなと考えております。ええ。

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