IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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この話で第4章は終わりです。ちょうど次から五十話だからキリがいいね。


動き出す悪意

 

 

「行くぞ我が妹よ!」

 

「ま、待て!走る必要はないだろう!」

 

「仲良いねぇ箒とボーデヴィッヒさん」

 

「まぁ、姉妹だしな…はは」

 

お昼の時間になり早々に食堂へ駆けていくラウラと箒を眺めるのは今の授業で使用した教科書を片付ける途中の龍也と鷹月静寐。

 

「でもあの調子ならすぐに皆と仲良くなれそうだね」

 

「ラウラも箒の部屋に結構な頻度で行くだろうからその時は鷹月さんも仲良くしてあげてくれよな」

 

鷹月静寐は部屋を移動した箒の新しいルームメイトになったのだ。

 

「ふふっ、橘君もいいお兄ちゃんしてるね?」

 

「…アイツを放っておくと色々と面倒事を起こしかねんならな」

 

悩みの種が一つ増えてしまった龍也。

と、そこに近づいて来る本音と鈴とシャルロット。

 

「龍也、行くわよ」

 

「へいへい」

 

「どうしたのお兄ちゃん?大丈夫?」

 

のそっと立ち上がる龍也を見て心配になるシャルロット。

 

「ん?ああ、なんか身体が重い気がしてな」

 

「りゅ〜くん風邪引いたのー?」

 

「体調管理はしてるはずなんだけどな、咳とか鼻水は出ないしただ怠いだけかな」

 

「ここ最近色々あったから疲れてるのよ。今日一日終わったら部屋でゆっくり休んでなさい」

 

「ああ、そうさせてもらう。それじゃあまたな鷹月さん」

 

「ん、またねー」

 

別れの挨拶を交わし横並びに歩く三人に後ろからついて行く龍也。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下に出て暫く歩いていたその時、

 

 

 

ドクンッッ‼︎

 

 

 

「(ッ、な、んだ?)」

 

突然の目眩に意識を失いかける龍也は、地面に倒れこむ。

 

バタンッ‼︎

 

「どうしたの…って、龍也!?」「お、お兄ちゃん!?」「りゅ〜くん!?」

 

倒れた龍也の元に駆け寄る三人。

 

「しっかりしなさい!龍也!」

 

「あ、あれ、俺…」

 

「大丈夫お兄ちゃん!?」「りゅ〜くんそんなに体調悪いの…?」

 

「し、心配すんなって。急にちょっと目眩がきただけだ」

 

鈴の肩を借りて立ち上がる龍也。その様子を見た三人は目配せする。

 

「シャルロット、本音」「うん」「はーいっ」

 

「は?ーーって、ちょっ!?皆さん!?」

 

「いいから来なさい。今あんたに必要なのは十分な休息よ」

 

本音とシャルロットが龍也の手を取り、鈴が先導する。

 

「さぁ、保健室へれっつごー」「行くよお兄ちゃん」

 

「ああもうわかったよ!大人しくついていきますから手を離せー!」

 

「やだっ」「やだ」「あんたに拒否権はないわよ」

 

三対一では勝ち目のない龍也だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こいつは、少しマズイかもな」

 

一人、何もない白い空間で呟くダークネス。

 

「(マスターの身体への負荷が大きくなっている。力の制御が出来ていないのか、あるいは…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタカタカタカタ

 

「……ふぅ」

 

モニターの前で何かを打ち込む研究者のような男が一人。

 

「(いいデータが取れている。"少年"は相変わらず戦い続けているようだな、ふふっ)」

 

思案を巡らせる男の元に後ろから近づく女が一人。

 

「ーー何をしているのかしら?"ドラゴン"」

 

「ん?おやスコール、君か。見ての通りだが?」

 

モニターの前から離れ、画面を見せる。

 

「なっ、これは…!?」

 

「ふふ、私の趣味だ。観察日記とでも思ってくれればいい」

 

モニターに映し出されているのは、一つの"IS"の詳細データ。

 

「君達は手を出すなよ。私が"三年近く"の月日をかけてじっくりと熟成させた大切な物だからな」

 

「…貴方、何を考えているの?」

 

「ふむ、そうだな。その質問に答えるとすればーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この腐りきった世界を壊すのさ。私が開発した"Darkness"の力を使ってな」

 

 

 

"回収"の時は近い。少年に託した力を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍也が鈴達に強制連行されている頃、食堂では、

 

「箒、あーん」

 

「ら、ラウ「お姉ちゃんだ」…ね、姉さん?これは?」

 

「クラリッサの奴に仲のいい姉妹は互いに食べさせ合うものだと聞いた。ほら」

 

「う、うぅ、なんだその無茶苦茶な話は…!」

 

「早くしろ。そろそろ腕が疲れる」

 

「…あむっ」

 

「ふふ、美味いか?」

 

「…おいしい」

 

「(なんですのこれ)」

 

テーブルを囲むのは箒、ラウラ、セシリアの三人。

一夏は別件で職員室へ行っているため不在だ。

 

「どうしたセシリア、お前も早く食え。食を欠かすのは一日の行動に支障をきたすぞ」

 

「(あ、な、た、の、せいですわぁぁぁぁぁ!!)」

 

居心地の悪さを感じているセシリア。今此処にいない少年に恨みの念を送る。

 

「悪い、遅くなった…って、なんだこの状況」

 

「むっ、やっと来たかお兄様!」

 

「ごめんな、千冬姉と少し話してたんだ」

 

「お姉様と?なら仕方ないな」

 

合流した一夏は手に持つ料理をテーブルに置きセシリアの前に座る。

 

「あれ、セシリア食わないのか?冷めるぞ」

 

「え、ええ。今食べますわ」

 

「食欲が湧かないのなら無理をするな。食事は楽しむものだとお姉様に教わった」

 

「(誰のせいだと思って…あら、美味しいですわね)」

 

「そういや朝に千冬姉が言ってたけど、臨海学校の準備もしなきゃいけないよな」

 

一夏が話を変える。SHRで千冬から告げられた7月の頭から行われる臨海学校のことについてだ。

 

「ラウラさんは水着はお持ちですの?」

 

「ふっふっふっ、既にクラリッサに夏を迎えるにあたっての必須事項として水着の事は聞いてある。胸に『らうら』と書かれたスクール水着を着ればいいのだろ「よし、買いに行くぞラウラ。お兄様が選んでやる」ほ、本当か!ありがとうお兄様!」

 

「(まぁ妥当だな)」「(ラウラさんの体型だとより危ない感じが増しますわね)」

 

「それならば箒よ。お前も着いてこい」

 

「…えっ?わ、私か?」

 

「お前以外に箒という名の人物はいないだろう。家族なのだから遠慮などするな」

 

「そ、そうか。家族か。うん、私も行こう」

 

「(ふふっ、なんだかんだ嬉しそうですわね箒さん。妹というのも悪くなさそうで何よりですわ)」

 

「セシリアも一緒に来るか?」

 

「お前も来い。家族以外の人間とも交友を深めたい」

 

「い、いえ、わたくしは遠慮させていただきますわ」

 

丁重に断るセシリア。何故かと言うと、

 

「(この人達と一日中一緒に居ては頭がおかしくなってしまいますわ)」

 

自分の身を案じてのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

prrrrrrrr prrrrrrrr

 

ピッ

 

「私だ」

 

『今日は何用だい?ちーちゃん』

 

「来週からうちの学校は臨海学校へ行くのだが…来るなよ?」

 

『ふっふっふっ、それは無理な話だね』

 

「ほう?理由を聞かせてもらおうか」

 

あいつのことだからどうせ突如現れるだろうと予測した千冬だが先手を取るのは無理だったようだ。

 

『やっと完成したからね、箒ちゃんへのプレゼントが!』

 

「篠ノ之に…?ッ、お前まさか!?」

 

 

 

 

 

 

 

『第4世代型IS『紅椿』。私から箒ちゃんへ送る専用機《愛の結晶》ってやつさ☆』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラッ

 

「調子はどうかしら?龍也君」

 

「問題ないですよ。って、またサボりですか?」

 

「ちょっと酷くない?その言い方。…まぁ正解だけど」

 

保健室で暇を持て余す龍也の元に楯無がやって来る。

 

「で、何の用ですか?」

 

「相変わらず察しの良さは抜群ね。一つ君の耳に入れておいて欲しいことがあるの」

 

椅子には座らず壁に寄りかかり話を始める。

 

「『亡国機業《ファントム・タスク》』」

 

「ッッ!…彼奴らに、動きが?」

 

「いえ、その逆よ。ここ最近は全くの音沙汰なし。もしかしたら何か企んでいるのかと思ってね」

 

「そうですか。でも、どうしてそれを俺に?」

 

「一年生はこれから臨海学校でしょう?伝えるなら今かなと思ってね。此処なら他の人もいないし」

 

ダークネスの存在を知る楯無だからこそ、龍也には警戒をしておいて欲しいとの考えだ。

 

「わかりました。少し気を張っておきますね」

 

「もうっ、それじゃダメよ?疲労が溜まってるから倒れちゃったってお姉さん聞いたんだから」

 

「え?ーーう、うわっ、ちょっ「静かに。大きい声出したらバレるわよ?」

 

龍也の元へ歩いてきた楯無はそのまま龍也に跨るようにベットの上に。そのまま前のめりになり顔を近づける。

 

「か、揶揄うのはやめてくださいって何回言えばわかるんですか!?」

 

「ふふっ、可愛いなぁ龍也君は。お姉さん本気になっちゃうかも」

 

チラリと胸元を開けるような仕草。思わず龍也は目を逸らす。

 

「見てもいいのよ?男の子なんだから我慢しないの」

 

「ぱ、バカなこと言ってないで降りてください!」「いーやー!」

 

ぐぐぐっ、とベットの上で取っ組み合いを始める二人。すると、

 

 

 

ガラガラガラッ

 

「調子はどう?りゅう、や…」

 

「あら」「げっ、鈴!?」

 

手に持った飲み物を思わず落とす鈴。

 

「あ、あんたって奴は…!あたし達が心配してる時にぃぃ!!!」

 

「ち、違うんだ!これは楯無さんが…「龍也君ったら『上に乗れよ、楯無(イケボ』だなんて王様プレイが好きなのねー」あんたはいい加減黙ってくれぇぇぇぇ!!!」

 

楯無の発言を聞いた鈴の中の何かがブチィッ‼︎と切れる音がする。

 

「ふ、ふふふっ、そうかそうかー。龍也ってば意外にもSなんだぁ…」

 

「り、鈴?」

 

「ーーーばかっ、あんたなんて知らないっ!!死んじゃえー!!」

 

「あ、お、おい!…行っちまった」

 

保健室を飛び出して行く鈴。

 

「…ごめんね?龍也君」「もういいですよ。わかりましたからそんなに落ち込んでないで早くどいてください」

 

流石の楯無も申し訳なく思ったのかしょんぼりしてしまう。

 

「鈴のことはこっちでなんとかします。楯無さんは早く生徒会室に戻ってください」

 

「うん…」

 

肩を落としたまま楯無も保健室を出て行く。

 

「(ったく、肝心なところで面倒な性格してる人だなほんと)」

 

自身もベッドから降りて鈴を探しに行く。

 

 

 

 

 

 

 

結局この後、日が暮れるまで鈴のご機嫌取りをした龍也はより疲労が溜まったのであった。




活動報告の方でアンケートを取らせていただきます。
龍也が臨海学校前の買い出し休日デートを誰とするか?というものです。ご協力いただけると嬉しいです。


それと、本当は臨海学校前に簪と楯無の話をねじ込みたかったのですが流石に時系列的に空きがなさすぎるかなと思ったので飛ばします。第6章までお楽しみに!

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