IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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シャルは四人目のヒロインですよ。妹と兼ねてます。
それではどうぞ。


第四十八話

 

 

「「Zzz……」」

 

寝ているのは龍也と一夏。

布団を被り気持ち良さそうに寝息を立てる二人だが、その布団はよく見ると両方とも少し足の辺りが膨らんでいる。

 

「……ん、もう朝か……」

 

先に起床したのは一夏だ。

 

「(……なんか暑いな。気温が高いのか?今日は)」

 

寝起きの顔をスッキリさせるために洗面所へ顔を洗いに行こうと自分に被っている布団をどかそうとしたその時

 

「…………ッ!?!?」

 

目を見開き驚く一夏。その視線の先にはーー

 

 

 

 

「Zzz、Zzz……」

 

 

 

 

全裸で気持ち良さそうに丸まって寝ているラウラがいた。

 

「(あっぶねぇ、思わず叫ぶところだった……!)」

 

瞬時に意識が覚醒する。

 

「(なんで俺のベッドにラウラがいるんだよ!?それに、また裸だし!?)」

 

声にならない程驚いていると、布団をどけられて違和感を感じたのかラウラがゆっくりと起床する。

 

「ん……あ、おにいさま……おはよう……」

 

「お、おはようじゃねえ!なんで俺のベッドにいる!?」

 

「何故って、昨日の夜に侵入したからな。もう二人とも就寝していたから寂しかったぞ……ふわぁぁ」

 

まだ少し寝ぼけているラウラは軽く目を擦る。

 

「む、まだ時間があるではないか。もう少し寝ようお兄様」

 

「だーめーだー!起きろ!服を着ろ!そして部屋に戻れー!!」

 

「?……おや、私の服があんな所に……何故だ?まさか、お兄様が脱がしたのか?」

 

「そんな訳ないだろ!」

 

「おかしいな、ベッドに入った時は着ていたはずだが」

 

兄達からの言いつけをしっかり守っているラウラだが、『寝相で服を脱いでしまっては仕方ない』。本人にもどうしようもない事である。

 

 

 

 

 

すると、寝起きの妹を相手に格闘していた一夏が多少声を張ってしまったことにより隣で寝ていた龍也も起きる。

 

「……なんだよ。朝からうるせ「ん、なに……」えぞ一夏……え?」

 

三人以外の声が聞こえる。その発生源は、龍也にかかっている布団の中。

 

バサッ

 

膨れ上がった布団から金髪の少女がのそっと身体を起こし出てくる。その様子は目は開いておらず、頭はガクンガクンと落ちておりまだ意識が覚醒していない。

 

そんな少女にラウラが声をかける。

 

「起きたかシャルロット」

 

「んぇ?……あっ、お、お兄ちゃん!?」

 

「しゃ、シャル!?お前、何して……」

 

近距離で驚き合う二人。

 

「ら、ラウラ!お兄ちゃん達が起きる前には部屋に戻ろうって言ったよね!?」

 

「仕方ないではないか。お兄様の暖かさが気持ち良くてつい深く寝入ってしまった。それより、お前も中々に寝相が悪いのだな」

 

「え?……きゃぁっ!」

 

「おい一夏!こっち見んな!!」

 

「わかったからとりあえず早く服を着ろって!」

 

シャルロットも全裸とまではいかないが上下下着と際どい格好をしている。そして、ベッドの下にはラウラ同様着ていたと思われる寝間着が。

 

「(あ、暑くなって脱いじゃったんだ……!)」

 

ラウラと違い此方は自分から眠る前に服を脱ぎ捨てたようだ。

 

「ったく、ほら。布団被ってろ」

 

「あ、ありがとうお兄ちゃん」

 

身体に巻くように布団を被り姿を隠す。

 

「で、何でお前ら二人は俺達の部屋で寝てたんですかねぇ?」

 

「クラリッサの奴に聞いたのだ。今時の兄妹は夫婦のように一緒にベッドで睡眠を取るとな」

 

「なんだよそれ!?」

 

反応したのは一夏。それもそうだ、一夏は千冬と同じ布団で寝ることなど一切ない。

 

「ぼ、僕はラウラに連れられて……ね?「乗り気だったくせに何を言うか」ちょ、ちょっと!余計なこと言わなくていいよ!」

 

「ん?シャル、お前まだ男口調が抜けてないのか?」

 

「えっ?」

 

「今一人称が僕のままだったぞ」

 

「あ、つい……」

 

「まぁ別にどっちでもいいけどな。可愛いシャルなのには変わりないし」

 

シャルロットの頭を撫でる。

 

「そ、そう?えへへ」

 

笑顔になる二人。そんな状況を見て一夏は

 

 

 

 

「って、ちがーーう!!!早くお前ら部屋に戻れーーー!!!」

 

 

 

 

感情が爆発し、叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、兄さんの背中は私が頂いたぞ!」

 

「俺の背中は俺のものじゃないんですかねぇ」

 

「細かい事を言うな。さあ出発進行だ」

 

「早く行こう?遅刻しちゃうよお兄ちゃん」

 

「……はい」

 

「あははは……」「全く、朝から騒がしい奴らだ」

 

制服へと着替えた四人は合流した箒を含めて教室へ向かう。

龍也の背中にはラウラがぴたっと張り付くようにおんぶされており、シャルロットは龍也の服の裾をちょこっと摘んでいる。

そんな三人の後ろを歩く一夏と箒。二人とも少し呆れた表情をしている。

 

 

 

すると、この中々に濃いメンバーが揃う家族の前に二人の少女が現れる。

 

「な、何よこれ!?」「……りゅ〜くん?」

 

「おはよう、鈴、本音ちゃん。……どうした?そんな所で突っ立って」

 

「(あ、やばっ)」「(……面倒事になりそうな気しかしないな)」

 

いち早く危険を察知する一夏と箒。

 

「あ、あんた達なにしてんのよ!」

 

「む?その声は中国のスーパールーキーか。何をしているかと言われれば見ての通りだ」

 

顔を首元に埋めているラウラは目ではなく耳で判断する。

 

「シャルロット!」

 

「えっと、これは、その……あはは」

 

困ったような声を出しているが離れる気は無い。

 

「む〜そこは私の場所なのにー!」

 

珍しく怒りを露わにする本音。ラウラが背中に張り付いていることに怒っているようだ。

それもそのはず、いつもならそこにいるのは自分なのだから。

 

「ふん、残念だったな。今この場所は私のものだ」

 

「いや、だから俺の背中は俺のもの「おーりーてー!」「断る!」……って聞いてねえし」

 

「……先に行くか、箒」「ああ」

 

「おい待てって!お前らこの状況の俺を見捨てるのか!?」

 

「俺達には関係ない事だからな」「そういうわけだ、恨むなよ龍也」

 

「おはようございます一夏さん、箒さん……あら?」

 

「おはようセシリア。早く教室行こうぜ」

 

「え、ええ……」

 

立ち止まる龍也達の元に合流したセシリアを連れて颯爽とこの場を離れようとする一夏。

一夏達の背後を見て察したのかセシリアもすんなりとついて行く。

 

「こ、この裏切り者ーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

prrrrrrrr prrrrrrrr

 

「…………」

 

prrrrrrrr prrrrrrrr

 

ピッ

 

『もすもすひねもすーみんなのアイドル篠ノ之束だよー!』

 

「私だ」

 

『おや、その声は愛しきちーちゃん!どうしたんだい?やっと束さんと愛を深める気になったのかな?』

 

「そんな日は一生来ないな。それより、早速だが今日はお前に一つ報告しておかなければならない事がある」

 

『んー?なになに?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先日から私は龍也の『家族』になった。それを伝えておこうと思ってな」

 

 

 

『…………は?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『じょ、冗談きついぜちーちゃん。束さんがそんな事信じると思ってるの?』

 

「私が昔から冗談を言うのは苦手だと知っているだろう。何なら、本人に確認でもしてみればいい」

 

『…………』

 

プツッ

 

〜数分後〜

 

prrrrrrrr prrrrrrrr

 

ピッ

 

「もしもし」

 

『ふ、ふふふっ、そっかそっか家族かぁー』

 

「確認が取れたようで何よりだ」

 

『……で』

 

 

 

 

 

 

『そ れ を わ た し に い っ て ど う し た い の か な ?』

 

 

 

 

 

 

「ッッ!!!」

 

千冬の全身が震え上がる。

 

「(ッ、久しぶりに本気の束の威圧を食らったな。電話越しだというのに大した奴だ)」

 

『ねぇ答えてよ。早く。早くッッ!!!!』

 

「落ち着け。別に家族といってもお前の想像しているような関係ではない」

 

『……えっ?』

 

「私の教え子が兄が欲しいと言っていてな。龍也がそいつの家族になったついでに私も家族になったというだけだ」

 

『な、なにそれぇ!?』

 

VTシステム後の出来事を知らない束からしてみれば十分に衝撃的な事実。

 

「詳しく聞かなかったのか?まぁ、お前の事だから確認だけしてすぐに電話を切ったんだろう」

 

『うっ、あ、あははー』

 

「というわけだ。忠告ではないが余りうじうじしてると乗り遅れるぞ。彼奴を好く女は多い」

 

『な、何の事かな「好きなんだろう、龍也が」……うぅ』

 

「何年お前と親友なんてやっていると思っているんだ。普段からの態度を見ればわかる」

 

龍也の前では無意識に雰囲気を柔らかくしていたり、笑顔が優しかったりするのだろう。長年の付き合いがある千冬だから気づけたことだ。

 

数秒考え込むように黙り込んだ後、束は

 

 

 

 

 

『……そ、そうだよ!りゅーくんの事が好きだけど何か文句あるの!?』

 

 

 

 

 

「逆ギレするな。文句などないさ」

 

『ふんっ!もういいよ、ちーちゃんなんて知らないから』

 

「……ほう?いいんだな?」

 

『え?』

 

「私が味方にいれば何かと有利に立てるよう手助けしてやってもいいんだがな。そうかそうか、余計なお世話だったか」

 

『えっ、ちょっ、あの「それじゃあまたな束。頑張れよ」ごめんなさい千冬様ぁぁぁ!!どうかこの哀れな束さんに慈悲を!!!』

 

「ふっ、仕方ないな。私は優しいから協力してやる」

 

『…………うぅ、ちーちゃんの鬼ぃ(ボソッ)」

 

「な に か い っ た か ?」

 

『なんでもありませぇん!!』

 

「そうか。それではこれで切るぞ。またな」

 

ピッ

 

「……ふぅ」

 

親友への電話を終えた千冬は一息つく。

 

「相変わらず面倒な性格してるなあいつは」

 

束が何かと不器用なのは知っている。家族、妹、そして今回は男。

 

「……まぁ、少しくらいいいか」

 

龍也へのアタックの手伝いを宣言した千冬。その裏にはある考えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー私は既に家族だからな。あまり贅沢を言ってはいけないだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

誰にも見せたことのない優しい顔をする。

 

 

自らの想いをそっと胸を奥にしまって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……しまった、箒のことを伝えるのを忘れた」

 

何かと抜けているのは世界最強も同じだったようだ。




ら、ラウラと束さんの妹争奪戦が起きたらちーちゃんのせいだからねっ!←


千冬に『大人の恋愛』を匂わせるような雰囲気を出したかったんです。ヒロイン疑惑ですからね?ヒロインじゃないのよ?()

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