IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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世界はラウラを中心に回っていたのさ!そんな回です。


あ、話のタイトルは福◯雅治さんの曲から来てるわけじゃないですよ?ええ。断じて違います。


家族になろうよ

 

 

「やっと伸び伸びとして風呂に入れるのか」

 

「俺ら男子は肩身狭いからな、仕方ねえよ」

 

 一夏と龍也は解禁された大浴場を使用すべく向かっている最中だった。

 

「中学の時はたまに銭湯とか行ったよな」

 

「たまにじゃなくて結構な頻度でだよ。お前と弾がやたらと行きたがってたからな。

 流石に昼間からは勘弁して欲しかった……ん?誰かいるな」

 

 他愛もない会話をしながら歩いていると、曲がり角の向こうから声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 

「身体の方は大丈夫なのか、ボーデヴィッヒ」

 

「ああ。問題ない」

 

「そうか。なら良かった」

 

「お前にも迷惑をかけたな篠ノ之、すまなかった」

 

 そこにいたのは箒とラウラ。この前のトーナメント以来話す機会がなかったのでこの時間に初めて会っていた。

 

「気にするな。私も力になれず申し訳なく思っていた」

 

「そんな事はない。専用機持ちを相手に十分と言っていいほど戦っていたんだ、もう少し自分を誇れ」

 

「(なんか武士と軍人の会話って感じだな)」「(わかる)」

 

 一夏達はこっそり角からバレないように覗いている。特に隠れる理由はない。

 

「……お前に鍛えてもらわなかったらあそこまで戦い抜くことは出来なかっただろう。本当に感謝している」

 

「ふん。私が教官を務めたのだ、あれくらいの戦いが出来ないようでは困る」

 

「ふふ、そうだな」「ぬっ、師を笑うとはいい度胸だな」「すまない。つい、な?」

 

「(ラウラが鍛えてたのか……道理であそこまで強くなったわけだ)」

「(それもそうだけど結構友好的な雰囲気じゃないか。あんまり合いそうにないタイプの二人だけど)」

 

 意外な事実と意外に相性が合うことを確認した二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、少しの間普通に会話をしていた箒とラウラの話が突然止まる。

 

「…………ふむ」

 

「な、なんだ。此方をじっと見て」

 

 ラウラは箒を一直線に見つめる。

 

「お前は確か姉がいたな」

 

「え?あ、ああ。愚姉だがな」

 

 愚姉こと天災がこの場にいれば灰にでもなって消え去っているであろう。

 

「よし、それならばーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も今日からお前の『姉』になってやろう。『師』でもあるし丁度いい、よろしく頼むぞ『妹』よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………は?」「「(はぁぁ!?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと待て!いきなり何を言いだすんだお前は!?」

 

「言った通りの意味だが?分かりやすいようにもう一度言ってやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は私の妹にする!決定事項だ、異論は認めん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふんすっ!と堂々すぎるくらい胸を張るラウラ。

 

「な、何故妹なんだ!?百歩譲って師匠と弟子ならわかる!しかし、姉妹は意味がわからない!」

 

 焦りと動揺が爆発する箒。

 

「そうか、お前は知らなかったな。私には家族がいないんだ」

 

「ッ……家族が、いない?」

 

「生まれが少し特殊でな。詳しくは話せんが血の繋がりというものがある者はこの世に一人もいない。だから今は『家族』を増やしている最中だ!」

 

 勿論箒はまだ愛する幼馴染ともう一人の男性操縦者が、更には世界最強がラウラの家族(仮)になった事は知らない。

 

「弟か妹が欲しかったので丁度いい。シャルロットはあまり乗り気では無さそうだったからな」

 

「い、いや、しかしだな……」

 

 ラウラの中ではもう箒が自分の妹認定なのは決定らしい。

 

 すると、急変した状況の中盗み聞きをしていた二人が出てくる。

 

「なってやれよ箒、妹に」

 

「い、一夏!?それに、龍也まで……」

 

「おお!兄達よ!」

 

「…………ん?兄達?」

 

「どーも篠ノ之妹さん、兄一号と兄二号です。よろしくぅ!」

 

「!?な、なななななな……!」

 

 龍也のとんでも自己紹介に再び驚愕する箒。

 

「ラウラに家族がいないのは本当なんだ。だから、俺達でよかったら帰るべき場所になってやろうぜ」

 

「(……帰るべき場所、か。部屋に戻ったらハーゼの皆にも連絡して謝らなくてはな)」

 

 一夏の発言を聞いて自分の部隊を思い出すラウラ。

 

「う、うう、しかしだな……」

 

 渋る箒。本人としても色々と思うところがあるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー頼む『箒』、よかったら私の妹になってくれないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…………」

 

 箒に頭を下げるラウラ。

 

「(……っ、そんな真剣に頼まれては、断れないではないか)」

 

 此処で我を通し断固拒否をする程箒は思いやりのない人間ではない。

 

 そして、

 

「わ、わかった。私でよければ別に構わんぞ」

 

「ほ、本当か!?」

 

 ぱあっ!と花が開いたような笑顔を見せるラウラ。

 

「よかったなラウラ。でもお前家族増やしすぎじゃないか?」

 

「いいではないか兄さん。多くて困る事など何もない!」

 

「ま、まぁそうだけどさ」

 

 喜びを隠しきれないラウラを構う龍也を他所に一夏が箒の隣へ。

 

「ありがとな、箒。ラウラの為に家族になってもらって」

 

「要は姉妹ごっこのようなものだと思えばいいのさ。……私が妹だというのは少々気に入らんが」

 

「はは、二人目の姉が出来てよかったじゃないか」

 

「あの人のような駄姉にならないようしっかりとしてもらわなくてはな……」

 

 結局は苦労するのは箒本人である。早速これから先の事を考える。

 

「む、そうだ我が妹よ」

 

「……なんだ?」

 

 自信満々な様子で且つドヤ顔のラウラを見て嫌な予感を感じる箒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のことは『お姉ちゃん』と呼ぶようにーー「断るッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんか凄い嫌な予感がするよ」

 

「突然如何されましたか束様」

 

 立ち上がる束。

 

「私の直感が告げてる。何か取り返しのつかない状況になってるって……!」

 

「……はあ」

 

 余り関心を示さないクロエ。

 それもそうだ、隣の天災はよくわからない突拍子も無い事を言い始めたのだから。

 

「そんな事言って時間を無駄にしてる暇があったら早く下着を仕舞ってください。その龍也様に見せる用に買った大胆な下着を」

 

「ふぇ!?い、いや、べべべ別にそういう訳じゃ……」

 

「ああ、失礼しました。脱がされるのを見据えてのことでしたね」

 

「ーーッッ!!く、クーちゃん!!!!」

 

「(顔を真っ赤にされては否定になりませんよ。まぁ、家事を覚えてからご自身の身の回りに気を遣うようになったのはいい事ですが)」

 

 母の女としての成長を感じた娘であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 prrrrrrrr prrrrrrrr

 

 ガチャッ

 

『此方ドイツ軍IS部隊、シュヴァルツェ・ハーゼのハルフォーフだ』

 

「クラリッサ、私だ」

 

『ッ、ら、ラウラ隊長!?』

 

「声を聞くのも久しい気がするな。部隊の様子は変わりないか?」

 

『は、はい!特に問題ありません!』

 

「そうか。それならいい」

 

 箒達と別れたラウラは部屋に戻り、早速ドイツへ電話をかけていた。

 

『あ、あの、隊長?』

 

「ん?何だ?」

 

『その、何と言いますか、お、お元気でしょうか?』

 

「?如何したクラリッサ。何か様子が変だぞ……ははぁ、成る程な。そういうことか」

 

 心当たりを思い出したラウラは悪い顔になる。

 

「おい」

 

『は、はいぃ!?』

 

「お前、私の過去をペラペラと喋ったな。IS学園の生徒に」

 

『あ、ああああ……』

 

 電話越しに恐怖に染まった声が聞こえる。

 

 

 

 

 

「ーー帰ったらお仕置きだ、覚悟しておけよ副隊長」

 

 

 

 

 

『せ、せめて命だけは!命だけは勘弁を!!!』

 

 追い討ちをかけるラウラ。悪い女である。

 

「……ふふっ、あはははっ!冗談だよ、クラリッサ。そんなに怯えるな」

 

『……え?』

 

「むしろ、感謝している。お前が話した相手とその友人のお陰で私は大事なものを得て知ることができた」

 

『た、隊長?』

 

 

 

 

「すまなかったなクラリッサ。今までの軍での態度や非礼を詫びよう」

 

 

 

 

『……変わりましたね、隊長。まさか謝罪の言葉が聞けるとは』

 

「何、少し自分の身勝手さに気づいただけさ」

 

『いい学友をお作りになられたのですね、きっと』

 

「友、か。それは違うぞクラリッサ」

 

『え?』

 

 

 

 

 

 

「私に出来たのは『家族』だ。ちなみにさっき一人増えて四人になった」

 

 

 

 

 

 

 年相応の笑顔を浮かべ、嬉しそうに告げるラウラだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁ……最高……」

 

「ジジ臭えぞ一夏」

 

「そんな格好で言われても説得力ないな……ふぅ、あったけえ」

 

 入浴中の男子達。目に見えてくつろぐ一夏と、口では一夏に苦言を呈しながらも身体は浴槽でしっかりリラックスしている龍也。

 

「やっぱ広いっていうのはいいな」

 

「それは同感だ。ま、たまに来るからこういうのはいいってのもあるけどお前は違うか」

 

「……なんだよ、文句でも言いたいのか?」

 

「いーや、別に」

 

 険悪な雰囲気ではない。これが二人のスタイルであり、やり取りの中に不快感などは一切ない。

 

「まさか箒がラウラの妹になるなんてな」

 

「一応形式上は俺らも箒の家族になるのか?」

 

「さあ……もうよくわからん」

 

「まぁ、気にしたら負けか」

 

 和解した日からラウラの行動力には少し困らされている。はしゃぐ子供というよりは、自分の欲しいものは何がなんでも手に入れる暴君の様。

 

「家族、ねぇ……」

 

「どうした龍也」

 

「いや、親父達今何処ふらついてんのかなぁって」

 

「……ああ、一年に一回見るか見ないかのお前の両親か」

 

「放任主義もここまで来ると捨てられたんじゃないかって思うな。下手したら俺が二人目としてIS学園に入学したのも知らないんじゃないか」

 

「どうだろうな、流石に耳には入ってきそうだけど」

 

 ゆっくりと湯に浸かりながら他愛もない会話で時間が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、この二人に平穏は訪れない。

 

 ドタドタドタ

 

「ん?なんか走ってる音が聞こえるな」

「風呂場から聞こえるなんてどんだけ足音立ててんだよ」

 

 ドタドタドタ

 

「……音が大きくなった」

「……近づいてきてねえか?これ」

 

 ドタドタドタ ガラッ!

 

「ーー失礼するぞ兄達、背中を流しに来た!」

 

「「ぶふぉっ!!!ら、ラウラ!?」」

 

 今は女子禁制の大浴場に堂々と侵入してきたのはラウラ。

 

「お、お前何して……!」

 

「先程クラリッサの奴から『裸の付き合い』というものがあると聞いてな。それに、兄にご奉仕するのは妹の役目だ。遠慮しないで背中を流されろ」

 

「その前にタオルを巻け!前を隠せー!!」

 

「そんなに気にすることでもないだろ「「早く!!」」う……もう、仕方のない兄達だな」

 

 急かされたラウラは身体にタオルを巻く。

 

「さあ、お兄様と兄さんどちらからだ?」

 

「……じゃんけんするか」「そうしよう」

 

 ラウラに押し切られ順番を決めることにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあラウラ、家族とは言っても異性なんだから少しは恥じらいを持とうな?」

 

「む?そうか?なら今後は気をつけよう」

 

「(……意味あるのかなぁ、本当に)」

 

 背中を流され途中の龍也の発言が本当に届いたのか、これから先の不安が隠せない二人だった。

 




⇒『妹(箒)争奪戦勃発(!?)』『龍也の両親登場』『束、龍也に脱がされる』の三つのフラグを今回は建築しました。

ちなみにシャルロットはお風呂には来ませんでした。まぁ龍也と同室の頃に毎日侵入していたということでいいでしょう()



束さんが脱がされる回は当分来ないです←

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