IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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Dの戦士 / 闇、少女を包む時

 

 

 

「俺(私)から行く、援護してくれ(を頼む)」

 

「うん」「ああ」

 

 一夏と箒が同時に駆け出す。後ろではシャルルがアサルトライフルを構え、ラウラがレールカノンを一夏へ向けていた。

 

「そのまま突っ込め、篠ノ之。狙撃への警戒意識も怠るなよ」

 

「わかった!」

 

「一夏、ボーデヴィッヒからの攻撃に注意して。篠ノ之さんは僕が足止めする」

 

「おう!」

 

 まずはシャルルが箒めがけてアサルトライフルを乱射する。

 降り注ぐ銃弾を回避しようと一夏へ向かっていた足はその場で立ち止まるが、被弾は免れない。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

「甘いぞ」

 

「しまっ……!」

 

 隙のできた箒を斬ろうと接近してきた一夏を、近づいていたラウラがワイヤーブレードで捕獲しそのままレールカノンで砲撃しようとするが、

 

「ッ!」「ちいっ!」

 

 シャルルが武装をショットガンへと変え自身へ放とうとしてきたのを見て一夏を離し後ろへ下がる。

 

「(いけるッッ!!)」

 

 箒はシャルルの横に回り込み、剣を振り下ろす。

 

 

 ガキィンッ!!

 

 

「ふぅ、危ないねもう」

 

「防がれたか……しかし厄介だな、その高速切替は」

 

「そう言ってもらえると僕冥利に尽きるね」

 

 間一髪、シールドで防いだシャルル。

 

「シャルル!」

 

「貴様は私とだ!織斑 一夏!」

 

「くっ、うおおおおっ!」

 

 一夏を援護へ行かせず一対一へと持ち込む。

 

「(私は必ず貴様を殺してみせる!私の存在が、あの人に必要とされる為に!!)」

 

 プラズマブレードで一夏と競り合う。

 執念により重みを増した剣は、一夏を防戦に回らせる。

 

「ここで散れ!私はお前を越えていく!!」

 

「ーーーーッッ!!」

 

 一夏が体制を大きく崩したところに、プラズマブレードが振り下ろされた。

 

 しかし、それに合わせて一夏は、

 

「負けるわけには、いかねえだろうが!!!」

 

「貴様……!」

 

 相手の攻撃を受けることを厭わず、雪片弐型を横一線に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えっと、シャルロットちゃん?

 

 

 ……お兄ちゃん、誰?

 

 

 あー、俺は龍也って言うんだ。色々あって君のお父さんと知り合いになっちゃってな、ははっ

 

 

 ふぅーん

 

 

 えー、なんか反応冷たいんですけど

 

 

 シャルロット、この人はお前と遊んでくれるらしいぞ

 

 

 え!?本当!?

 

 

 ちょ、デュノア社長!?

 

 

 いいじゃないか。この子もあまり世に馴染んだ遊びをしていないんだ、君が連れ出してあげてくれ

 

 

 ねえねえ!私お外に行きたい!

 

 

 まじっすか……よっしゃ、こうなったらとことん遊んでやるか。

 行くぞ、『シャル』!

 

 

 うんっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(お兄ちゃんの前で、無様な姿は見せられない!)」

 

「ぐっ、くそっ!」

 

 巧みな武装扱いをするシャルルに箒は押され気味だった。

 致命傷となる痛手を受けていないのが不幸中の幸いだが、このままでは時間の問題だった。

 

「(この銃弾の雨の中、デュノアに接近するのは無理か……!ボーデヴィッヒは……!)」

 

 ハイパーセンサーでもう二人の様子を確認した箒は驚く。

 

「「はぁ、はぁ、はぁっ……!」」

 

 そこには互いに膝をつき、隠せぬ疲労した姿を晒す二人がいた。

 

「(まずい、ボーデヴィッヒのSEが……!)」

 

 一夏の斬撃を受けたラウラのSEは残量を大きく減らしていた。

 しかし、それは一夏も同じこと。ただでさえSE消費の激しい零落白夜を使用していて且つ敵からの攻撃も多くもらっている。

 

「(まだだ……!)」

 

 先に立ち上がったラウラは一夏をワイヤーブレードで再び捕獲し、レールカノンを射出する構えをする。

 

「これで、終わり……「させるかぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 ラウラ目がけて突撃してくるシャルル。

 その手には、この試合ではまだ見ていない武装。

 それは、

 

「なんだとッ!?」

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 盾の中に隠してあったシャルルの切り札。

 六九口径パイルバンカー、灰色の鱗殻《グレースケール》。

 通称ーー

 

 

 

 

 

 

「『盾殺し《シールド・ピアース》』!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 その名を叫びながら、ラウラを叩き潰そうとする。

 

「(これを食らえば、私はーー)」

 

 

 

 

 

 負ける。

 

 

 

 

 

 

「ボーデヴィッヒィィィィ!!!」

 

「ッ、篠ノ之!?」

 

「撃て!一夏をやるんだ!!!」

 

「なっ、君……!」

 

 シャルルとラウラの間に入るように、ラウラを庇うようにして入ってきたのは箒。

 その位置では、箒を潰せてもラウラには当たらない。

 

「君だけでも……潰すッッ!!」「ぐ、っ……」

 

 パイルバンカーは、箒に吸い込まれるようにして当たっていった。

 

「ッ、うおおおおおっ!!」「ぐぁぁっ!!」

 

 そしてラウラは、箒に言われた通り一夏をレールカノンで砲撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏、大丈夫!?」

 

「悪い、ほとんどSEを持っていかれちまった……これじゃ、零落白夜は出せない」

 

「……わかった。篠ノ之さんももう動けないと思うから、後は僕がやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、ののの……」

 

「ぐ、っ、お前は無事だな、ボーデヴィッヒ……」

 

 直撃した箒の打鉄はもう、SEは残っていなかった。

 

「どう、して」

 

 

 

 私を庇った。

 

 

 

「何、この試合に勝つにはお前の力がないと駄目だと判断しただけだ。……いい仕事をしただろう?」

 

「お前……」

 

 ラウラはこの試合に、このトーナメントにかける箒の想いを知っていた。

 だから、その覚悟をペアである自分に託したと、分かってしまった。

 

「もっとお前と共に、戦っていたかったのだがな……この機体と、私の実力ではここまでか」

 

「ッ」

 

 

 そんなことない。

 

 

 お前は十分立派に戦士として戦っていた。

 

 

 それに、私だって……

 

 

 

「……私も、お前と共にもっと戦っていたかった」

 

「え、ボーデヴィッヒ……」

 

「後は任せろ。私がや……ル!?」

 

 

 

 ーー願うか?

 

 

 

「(っ、なんだ!?この声は……!?)」

 

 

 

 汝、力を欲するか?

 

 

 

「(力……?)」

 

「おい、ボーデヴィッヒ……?」

 

 

 

 より強い力を、誰にも負けない力を欲するか?

 

 

 

「(誰にも、負けない力……それが、あれ、ば)」

 

 

 

 ーーーーまだ、篠ノ之と共に戦えるのか?

 

 

 

「!?……っ、ぐ、ぅぅ、ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「な、なんだ!?どうしたボーデ……!?」

 

 ラウラの様子に異変を感じた箒は声をかけるが、途中で呻き出したラウラを心配し駆け寄る。が、

 

「(ボーデヴィッヒの機体から、黒い『ナニカ』が溢れてきてる……?)

 これは何だ、ボーデヴィッヒ!お前の機体の仕様なのか!!」

 

 

 

 ーーーよカろウ、くレてヤル。キさまにチかラヲな。

 

 

 

「私から……」

 

 

「なんだ!?」

 

 

「わ、たしから、離れろッッッッ!!!!」

 

 

「きゃぁっ!」

 

 

 ラウラに突き飛ばされる。

 

 

 そして、シュヴァルツェア・レーゲンがドロドロと溶け始め、ラウラを飲み込んだ。

 

 

「ッ、ボーデヴィッヒ!!!!」

 

 

 明らかにおかしい。だが、今の箒にどうにかする手立てはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、何が起きてんだよ……あれ」

 

「わからないよ。でも、何やら只事じゃなさそうだね」

 

 ラウラと箒に一番近い位置にいる二人は、すぐに異変に気がついた。

 そして、ラウラのISが溶けたと思えば次には、

 

「……何、あれ?」

 

『………………』

 

「ボーデ、ヴィッヒ……?」

 

 箒の前に『レーゲンとは違ったフォルムのISが君臨した』。

 

『………………』

 

 謎のISが箒を見る。

 

 そして、剣を振り下ろす。

 

「ッ、篠ノ之さん!!!!」

 

 シャルルは瞬時加速で箒の元へ飛び、箒の体を抱えその場から離れる。

 それと同時にISが振りかざした剣は空を切った。

 

「す、すまない、デュノア」

 

「これくらい気にしないで。それより、あれは……」

 

 一夏の元へ箒と共に戻ってくる。

 

「わからない。突然ボーデヴィッヒが呻き始めたと思ったら次にはISが溶けて……」

 

「やっぱり、溶けてたんだ……一夏?」

 

「な、んだよそれ」

 

「ッ、一夏!!」

 

 シャルルが一夏の手を掴む。

 今、一夏はラウラを飲み込んだISへと向かおうとしていた為だ。

 

「離せ、シャルル!!あれは、あれは……!!」

 

「落ち着いて一夏!!どうしたの!?それに、あれは何!!」

 

「間違いない……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれは『暮桜』、千冬姉の機体だ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事?どうして織斑先生の機体を、ボーデヴィッヒが?」

 

「そんなの知るか、俺は……!」

 

「待ってくれ一夏!!」

 

「ッ、箒?」

 

 再び駆け出そうとする一夏を止める。

 

「ボーデヴィッヒは、何かに苦しんでいた。きっと理由があって、あのISに乗せられているんだ!」

 

「僕もそうだと思う。ISが溶けて別のISに変化するなんて、聞いた事ないし」

 

「……じゃあ、あいつを引っ張り出して問いただすしかない」

 

 箒の必死の説得、シャルルの冷静な判断で一夏も多少落ち着きを取り戻す。

 

 そんな一夏の様子を見てシャルルは一つ決心する。

 

「一夏、僕のISに残ってるSEをあげるね。君の零落白夜なら、あのISを斬り裂いて中からボーデヴィッヒを引っ張り出せるかもしれない」

 

 素早く白式とコアを同期させ、エネルギーバイパスを構築しSEを渡す。

 

「飲み込まれたってことは、暴走かまた別のことが原因だと思う。早くしないと、手遅れになっちゃうかも」

 

「シャルル……ああ、わかった!」

 

「チャンスは一回。頼んだよ」

 

「頼む一夏。ボーデヴィッヒを、助けてくれ」

 

 ただならぬ状況。推測でしかないが三人はこのままでは自分たちも、ラウラも危険だと判断し行動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『緊急事態、今すぐアリーナから避難してください!

 繰り返します。アリーナから離れて、避難をしてください!』

 

「なんですの……あれ」

 

「千冬さんの、暮桜……なのか?」

 

「どういう事よ。なんであいつが千冬さんの機体を持ってるの!?」

 

「うぅ〜、なんか怖いよー、あれ」

 

「ッ、お前らは先に避難してろ!」

 

 駆け出す龍也。

 

「ちょ、龍也!?」「どこへ行かれるのです!?」「りゅ〜くん!?」

 

「束さんに連絡を取る!!」

 

 場合によっては、ダークネスが必要であると判断した龍也は自身の荷物の元へと走る。

 

 そして、携帯で束に電話をかける。

 

 prrrrrrrr prrrrrrrr

 

 ピッ

 

「ッ、もしもし束さん!?聞こえるか、すぐにダークネスをーー」

 

『りゅーくん!!た、大変だよ!!』

 

「!?……今度は何が起きているんです!?」

 

『だ、ダークネスが……』

 

 

 

 

 

 

『ダークネスのドライバーとメモリが、突然消えちゃったの!!』

 

 

 

 

 

 

「……なん、だって?」

 

 予期せぬ事態。それは、誰にも予測することは不可能だった。

 





ラウラ救出作戦は果たして上手くいくのか?
そして、ダークネスの行方は如何に。



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