IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界- 作:陽夜
「ーーちょっと、よろしくて?」
「ん?」
自分の席に座っている一夏の元に、また一人の女子生徒がやってくる。
「なんか用か?」
「ええ、学年に一人の男とはどのような方かと思いまして」
「そうか、俺は織斑 一夏……って、自己紹介はさっきしたか。
君は、セシリア・オルコットさん、だったっけ?イギリスの代表候補生の」
セシリアの目が大きく見開かれる。
「知っていらしたのですね」
「ははっ、そんな驚くことでもないだろ?さすがの俺でも、代表候補生くらいは知ってるさ」
「そうでしたか、失礼しました。それなら自己紹介が楽になりますわね。改めて、わたくしがイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットですわ。
何か分からないことがあれば、いつでも聞いてくださって構いませんからね」
「ああ、何かあったら頼りにさせてもらうよ」
するとセシリアは、満足そうに微笑み、自分の席へと戻って行った。
ーーただその眼は、光を宿しておらず、黒く濁っており、一切笑っていなかった。
「さて、授業の時間だが、この時間でクラス代表を決める。自他推薦は自由だ。役割としてはまぁ、クラス委員長みたいなものだと認識してくれて構わない」
「はーい!私、織斑君を推薦しまーす!」
「「「「私もー「うん、織斑君がいいよね〜「せっかくの男子だからねー」」」
「(げっ、まじかよ……)」
「ふむ、織斑か。それ以外にいるか?」
手を挙げる生徒が一人。
「はい」
「オルコット」
「自他推薦という事は自薦も可能ということですわね。でしたら、わたくしも立候補しますわ」
「そうか、なら丁度1週間後にアリーナを貸し切ってクラス代表決定戦をやるぞ、いいな?」
「わたくしは構いませんわ」
「(ISの操縦にも慣れておいた方がいいし、実戦経験も必要だよな)
わかりました。俺もそれでいいです」
「よし、決まりだな。
アリーナで訓練をする場合、借りる為に申請をしなければならない。
使いたいのなら早めに取っておくことだな」
「ーーえっ、アリーナの使用許可が取れない?」
「は、はい、そうなんです……。
実は、昨日から多くの生徒が申請していて‥‥1週間の間に空いている時間がないんです。
入学したてということもあって、みなさん行動が早くて……ごめんなさい!織斑君!」
一夏は早速、山田先生の所へアリーナの貸し出し申請をしに来たが、なんと既に全て埋まっているとのこと。しかも、自分とオルコットが対決する1週間後まで全部。
さすがに借りられないとは思っていなかった為、内心動揺する一夏。
「い、いえ、山田先生は何も悪くないですから!だから頭を上げてください!ISで訓練できない分は……こっちでなんとかします」
「うう、優しいですね……ありがとうございます、織斑君。その……頑張ってくださいね」
「……はい。」
廊下を歩きながら考える一夏。
先ほどの山田先生の会話で、アリーナを借りられないことがわかったので少し焦っている。
「しかしなぁ、アリーナが借りられないんじゃどうしようもないよなぁ……んー」
1週間の間にISに触れないとなると、大きく話が変わってくる。
こっちは稼働時間1時間にも満たない初心者もいいところ、しかし向こうは、遥かに自分を上回る稼働時間の代表候補生である。あまり世間の情勢に詳しくない一夏でも存在を知っているほどの、代表候補生という存在。戦いというものを知っていても、このまま挑んでは勝つ可能性は薄いだろうと一夏は考えていた。
「一夏」
「ん?おー、箒か」
「どうだったのだ?」
「あー、それがさ……」
一夏は、先ほどの山田先生とのやりとりを箒へ説明した。
「そうか……1週間の間にアリーナは借りられないのか」
「そうなんだよ、どうしたもんかなぁ」
「………」
少し間をあけて、考える箒。
「なあ一夏」
「ん?なんだよ」
「久しぶりに、私と剣道しないか」
「剣道?」
「ああ、どの道ISを使えないのではできることも限られている。
それに、今のお前がどれ程の腕なのか私も見ておきたい。私より鈍っているようでは、あのセシリアとかいう女には到底勝てないだろうからな」
「そうだな………わかった。いいぜ、やるか!」
「ふっ、そう来なくてはな。それでは、今日の放課後から早速始めるとしよう」
「ああ」
放課後の約束をして互いの席へと戻る二人。ちょうど、次の授業が始まる鐘の音が鳴った。