IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

4 / 54
第二話 イギリスの代表候補生

 

 

 

「ーーちょっと、よろしくて?」

 

 

「ん?」

 

 

 自分の席に座っている一夏の元に、また一人の女子生徒がやってくる。

 

 

「なんか用か?」

 

 

「ええ、学年に一人の男とはどのような方かと思いまして」

 

 

 

「そうか、俺は織斑 一夏……って、自己紹介はさっきしたか。

  君は、セシリア・オルコットさん、だったっけ?イギリスの代表候補生の」

 

 

 セシリアの目が大きく見開かれる。

 

 

「知っていらしたのですね」

 

 

「ははっ、そんな驚くことでもないだろ?さすがの俺でも、代表候補生くらいは知ってるさ」

 

 

「そうでしたか、失礼しました。それなら自己紹介が楽になりますわね。改めて、わたくしがイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットですわ。

  何か分からないことがあれば、いつでも聞いてくださって構いませんからね」

 

 

「ああ、何かあったら頼りにさせてもらうよ」

 

 

 するとセシリアは、満足そうに微笑み、自分の席へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 ーーただその眼は、光を宿しておらず、黒く濁っており、一切笑っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、授業の時間だが、この時間でクラス代表を決める。自他推薦は自由だ。役割としてはまぁ、クラス委員長みたいなものだと認識してくれて構わない」

 

 

「はーい!私、織斑君を推薦しまーす!」

「「「「私もー「うん、織斑君がいいよね〜「せっかくの男子だからねー」」」

 

 

「(げっ、まじかよ……)」

 

 

「ふむ、織斑か。それ以外にいるか?」

 

 

 手を挙げる生徒が一人。

 

 

「はい」

 

 

「オルコット」

 

 

「自他推薦という事は自薦も可能ということですわね。でしたら、わたくしも立候補しますわ」

 

 

「そうか、なら丁度1週間後にアリーナを貸し切ってクラス代表決定戦をやるぞ、いいな?」

 

 

「わたくしは構いませんわ」

 

 

「(ISの操縦にも慣れておいた方がいいし、実戦経験も必要だよな)

  わかりました。俺もそれでいいです」

 

 

「よし、決まりだな。

  アリーナで訓練をする場合、借りる為に申請をしなければならない。

  使いたいのなら早めに取っておくことだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーえっ、アリーナの使用許可が取れない?」

 

 

「は、はい、そうなんです……。

  実は、昨日から多くの生徒が申請していて‥‥1週間の間に空いている時間がないんです。

  入学したてということもあって、みなさん行動が早くて……ごめんなさい!織斑君!」

 

 

 一夏は早速、山田先生の所へアリーナの貸し出し申請をしに来たが、なんと既に全て埋まっているとのこと。しかも、自分とオルコットが対決する1週間後まで全部。

  さすがに借りられないとは思っていなかった為、内心動揺する一夏。

 

 

「い、いえ、山田先生は何も悪くないですから!だから頭を上げてください!ISで訓練できない分は……こっちでなんとかします」

 

 

「うう、優しいですね……ありがとうございます、織斑君。その……頑張ってくださいね」

 

 

「……はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  廊下を歩きながら考える一夏。

  先ほどの山田先生の会話で、アリーナを借りられないことがわかったので少し焦っている。

 

 

「しかしなぁ、アリーナが借りられないんじゃどうしようもないよなぁ……んー」

 

 

  1週間の間にISに触れないとなると、大きく話が変わってくる。

  こっちは稼働時間1時間にも満たない初心者もいいところ、しかし向こうは、遥かに自分を上回る稼働時間の代表候補生である。あまり世間の情勢に詳しくない一夏でも存在を知っているほどの、代表候補生という存在。戦いというものを知っていても、このまま挑んでは勝つ可能性は薄いだろうと一夏は考えていた。

 

 

「一夏」

 

 

「ん?おー、箒か」

 

 

「どうだったのだ?」

 

 

「あー、それがさ……」

 

 

 一夏は、先ほどの山田先生とのやりとりを箒へ説明した。

 

 

「そうか……1週間の間にアリーナは借りられないのか」

 

 

「そうなんだよ、どうしたもんかなぁ」

 

 

「………」

 

 

 少し間をあけて、考える箒。

 

 

「なあ一夏」

 

 

「ん?なんだよ」

 

 

「久しぶりに、私と剣道しないか」

 

 

「剣道?」

 

 

「ああ、どの道ISを使えないのではできることも限られている。

  それに、今のお前がどれ程の腕なのか私も見ておきたい。私より鈍っているようでは、あのセシリアとかいう女には到底勝てないだろうからな」

 

 

「そうだな………わかった。いいぜ、やるか!」

 

 

「ふっ、そう来なくてはな。それでは、今日の放課後から早速始めるとしよう」

 

 

「ああ」

 

 

 放課後の約束をして互いの席へと戻る二人。ちょうど、次の授業が始まる鐘の音が鳴った。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。