IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界- 作:陽夜
詳しくは活動報告を見ていただければ。
既に書き込んでいただいた方々、ありがとうございます。
それでは、どうぞ。
「ーーー単刀直入に言うぞ、一夏。シャルル・デュノアは女だ」
「…………え?」
「あはは……」
場所は龍也とシャルルの寮室、一夏を話があると言って呼び出した。
「何言ってるんだよ龍也」
「いきなりで悪いとは思ってる。でも他に伝えようがないんだ」
「………本当なのか?」
シャルルの方を見て問いかける。
「うん。僕は正真正銘の女だよ」
「そ、そうか」
男と認識していた人物が女の子だと分かれば、動揺するのは無理もない。
だがそこは一夏、すぐに冷静さを取り戻す。
「この事を他に知ってる人は?」
「今のところ楯無さんと、後は千冬さんと山田先生も知ってるだろうな」
「此処に来る前に、身体検査を受けたんだ。
だから、担任の先生なら知ってると思うよ」
「どうして男のフリなんてして入学したんだ?」
「そ、それは、その……」「わ、訳があるんだ!別に重い話じゃないから、大丈夫だぞ!」
「お、おう、そっか。ならいいんだけど」
くだらない理由を言える訳もなく、必死に誤魔化す龍也はまさしく苦労人であった。
「で、本題はシャルのサポートだ。男子としている間は俺達が色々と融通利かせないといけないだろ?」
授業中でのISスーツへの着替えをする時もそうだったが、他にもトイレやお風呂など日常生活では男と女では異なる部分が数多くある。
龍也一人では何かと限界がある為、一夏にシャルルの事を話すついでに協力を仰ごうといった所だ。
「わかった。俺は何をすればいいんだ?」
「別に何もしなくていい。強いて言うなら、シャルが女の子って事を頭に入れておいてくれればな」
「ごめんね、迷惑掛けちゃうと思うけど……」
「そんな、気にしなくていいんだぜデュノア。せっかく同じクラスで出会ったんだ、仲良くしてくれよ」
持ち前のイケメンスマイルを発揮する一夏。
此処でシャルルが落ちないのは、龍也がいるからなのか。
シャルルも安心したように柔な笑みを浮かべる。
「ふふ、ありがとね。
後、僕のことはシャルルでいいよ。僕も一夏って呼ぶから」
「おう、よろしくなシャルル」
「(……ふっ、やっぱ一夏だな。こいつに任せて正解だった)」
親友への信頼、それをここで龍也は再確認した。
すると、一夏から声が上がる。
「それにしても、まさか女の子だったなんてな。多分俺じゃずっと気付かないままだったかもしれないぜ」
「そんなに上手くできてるかな?」
「ぱっと見なら男にしか見えないぞ。よく言う中性的って感じの」
「一応、男の人っぽい振る舞いも教えられたんだけどね……僕にはちょっと難しくて」
「いや、十分なくらいだ。クラスのみんなも疑ってる様子はなかったしな」
「………………んー」
二人の会話を黙って聞いている龍也は、何かを唸るように考える。
そして、
「シャルはどう見ても女の子にしか見えないけどなぁ。こんなに可愛いんだし」
「お、お兄ちゃん!?何言って……」
「ん?どうした、シャル」
「ふぇっ!?い、いや、ナンデモナイデス……」
徐々に小声になり顔を赤くしながら縮こまってしまうシャルルを見ながら一夏は思った。
「(あー、はいはい出ました、いつもの女誑しタイムですね)」
……お前が言うな。
別の日の放課後。
アリーナで訓練をしているのは、セシリアと鈴。
「ふぅ、やっぱりキツイわね」
「鈴さんが相手だと疲れますわ……はぁ」
模擬戦の結果はセシリアの方が勝率は高い。
だが、相性の問題もあってか疲労は大きい。
「当分は、打倒あんたが目標かな」
「そう簡単には勝ちを譲りませんことよ。代表候補生の先輩として、見栄が張れませんもの」
「あんたそういうの気にするタイプだったんだ……」
代表候補生として、そして貴族としてもプライドが高いのがセシリア・オルコットという人間だ。
最も感情的になる事は少なく、大人っぽい少女なのだが。
そんな二人の元へ、一人の少女がやってくる。
「ーーイギリスと、中国の代表候補生か」
「ボーデヴィッヒ……」
「何の用ですか?」
招かれざる客に、雰囲気が最底辺へと落ちる。
「お前達は、織斑一夏と親しかったな」
「だったら何よ」
ラウラが問いかけてきたのは一夏のこと。
必然的に鈴達の警戒度も上がる。
「(この人、不気味ですわ。何を考えているのかが読み取れません)」
「何、簡単な話だ」
正面から殺気を露わにするラウラ。
「お前達には、彼奴をおびき出す餌になって貰う」
だが、その程度では二人は動じない。
「……何度も言うようだけど、あたし達はそんな事の為に戦うつもりはないわ」
「ええ。それに、それが煽りだと言うならドイツもたかが知れていますわね」
「ふむ、そうか……それは困った」
いきなり年相応なぐらいのきょとんとした顔、そして発言通り困り顔になる。
そして、次にはーー
「所詮は、種馬に跨るメスだったというわけか。
彼奴らがくだらん愚民であるなら、貴様らもそうなるのは仕方ないか、すまなかったな」
「ーーーーーーあ?」「……なん、ですって?」
「事実だろう?否定する要素があるのか?メス共よ」
「ッッッ!!!………セシリア、あたしの今からする事を、止めないでよ」
「いいえ、鈴さん。わたくしも、今回ばかりは抑えられそうにありませんわ」
挑発に乗り、戦闘態勢に入る鈴とセシリア。
「自分のことは、いくら侮辱されても我慢できる。でも、友達を侮辱することだけは……あたしは絶対に許さないから」
「友人の侮辱を黙って見過ごせる程、わたくしは出来た人間ではないのです。ボーデヴィッヒさん、お覚悟を」
「ふふっ……そうだ、それでいい」
「ーーさあ、このシュヴァルツェア・レーゲンの前に、ひれ伏せ」
「ーーねえねえ、今アリーナで代表候補生達の模擬戦がやってるらしいよー」
「(ん?)」
廊下を歩いていると、横を通り過ぎていく女子生徒の話す情報に思わず足を止める。
「確か、イギリスと中国と……後どこだっけ」
「ドイツだね」
「(ッ、なんだと?)」
「すごい三ヶ国だね、レベルの高い国同士で」
「やっぱり訓練も同じくらいの力じゃないとってことなのかな〜」
話していた二人の女子生徒に、後ろから声がかかる。
「ーーなあ、それって本当なのか!?」
「え、ええっ!?」「た、橘君!?」
突然話しかけられたこと、そしてそれが男子生徒だったことに驚くが、龍也はそれどころではない。
「今、アリーナで代表候補生が模擬戦してるって本当なのか!?」
「え?うん……」
「……っ!」
振り返り、アリーナの方へと走り出して行く。
「ど、どうしたんだろ橘君」
「さ、さあ……?」
「やはり、素晴らしい……!
この『停止結界』の前では、何人たりとも無力だ……!くくっ!」
「う、ぐっ……」「り、んさん……」
「いや、貴様達はよくやった方だ。褒めてやろう」
「な、めてんじゃないわよ……!」
鈴の甲龍は既にボロボロ、とても戦えるような状態ではなかった。
セシリアも似たような状況で、此方は立つことも出来ず地面にひれ伏している。
鈴も立つのがやっとだ。
「死に急ぐか。良いだろう、貴様から殺してやる」
鈴に向けてブレードが向けられる。
息絶え絶えの鈴には、回避するだけの力すらもう無い。
そして、
「無様に死ね。自身の力の弱さを実感しながらな」
「ッ、鈴さん!!!!」
「あ………………」
振り下ろされる。
だが、そのブレードを受け止める剣が一つ。
「……また、貴様か……!」
「龍、也……」
「よかった、龍也さん……」
二人の前に現れたのは、漆黒の鎧。
『鈴、セシリア、お前らは待ってろ。すぐにこいつを片付ける』
「ふん、やってみろ。その減らず口と共に、貴様の身体をズタズタに切り裂いてやろう」
戦いの火蓋が、切って降ろされた。
やばい、このラウラのキャラの口調が難しすぎる。