IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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今回から第4章になります。
2人の名前が長すぎて章タイトルを日本語にせざるを得なかったのですが(笑)、【Avenger and Revenger】がサブタイトルということで。


第4章 復讐者に堕ちる時 〜side シャルロット・デュノア&ラウラ・ボーデヴィッヒ〜
第二十九話


 

 

「皆さん、席に着いてください。朝のSHRを始めますよー」

 

 

 副担任、山田 真耶の呼びかけによりいつも通りの1組の朝が始まる。

 

 

「それでは織斑君、お願いします」

 

 

「はい、起立!……礼!おはようございます!」

 

 

「「「「おはようございます!!」」」」

 

 

「……おはようございまーす」

 

 

「橘、朝はしっかりと挨拶をしろ」

 

 

「……うぃーす」

 

 

「返事はハイだ」

 

 

「Ja《ヤー》」

 

 

 ドイツ語で返事をする龍也。

 早朝の為、寝ぼけておりボケをかますほどである。

 

 

 普段なら出席簿アタックが飛んでくる場面だが、千冬の頬をヒクつかせるだけで今日は違った。

 

 

「……まぁいい。

 それより、今日はお前達に一つ朗報だぞ。さあ、山田先生」

 

 

「はいっ、今日はなんと転校生を紹介します!しかも2人ですよー」

 

 

「「「えぇっ!?」」」

 

 

 にこにこと笑いながら言う山田先生。

 千冬と正反対である。

 

 

 ざわざわと騒ぎ出す生徒達を、千冬が手を叩いて静かにする。

 

 

「騒ぐな小娘共。ーーおい、入ってこい」

 

 

 廊下へと声をかけると、2人の生徒が教室へ入ってくる。

 

 

「失礼します」「………………」

 

 

 片方は金髪。優しい笑顔を保っており、友好的な意思が見て取れる。

 もう片方は対照的に銀髪であり、顔は無愛想。目には眼帯を着用している。

 

 

 そして、もう一つ決定的に異なる部分があった。それはーーー

 

 

 

 

「初めまして、シャルル・デュノアです。

 この度は、僕と同じ境遇の方が此方にいると聞いて入学しました。よろしくお願いします」

 

 

 

 

 綺麗なお辞儀をする。

 シャルルが挨拶を終えると、生徒から声が上がる。

 

 

「お、男…………?」

 

 

「はい」

 

 

 ーー男子用の制服を着ているという点。

 

 

「き、」

 

 

「き?」

 

 

「(あっ、これは……)」「(あー眠い……)」

 

 

「「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」

 

 

「え、ええっ!?な、何!?」

 

 

「(ぐっ、耳を塞いでいても鼓膜に響く……!)」

「おわぁっ!?な、なんだぁ!?地震か!?」

 

 

 急に黄色い歓声を上げ始めた生徒たちに、困惑するシャルル。

 一夏はもう3回目の為回避できたのだが、寝ぼけていた龍也は驚きのあまり飛び上がりそうになってしまった。

 

 

「さ、3人目の男性操縦者!?」

「金髪男子キター!」

「正統派イケメン、お兄さんキャラに加えて守ってあげたくなるタイプだと……?たまらん、たまらんぞ!!」

 

 

「……気にするなデュノア。馬鹿どもが騒いでいるだけだ」

 

 

「は、はは、賑やかで何よりです」

 

 

 苦笑いをするしかないシャルル。

 

 

「(3人目……?俺と龍也以外に、男でISを動かせる奴なんていたのか?)」

 

 

 一夏が疑問に思っていると、

 

 

 

 

「あ、ああっ!?お、お前、シャルか!?」

 

 

 

 

 声をあげ席を立ち上がったのは、橘 龍也。

 そんな龍也にシャルルはーー

 

 

 

 

「あっ、お兄ちゃん!」

 

 

 

 

 ーー喜びが見て取れる満面の笑みで、お兄ちゃんと呼び反応した。

 

 

 そして、龍也の元に近づいていく。

 

 

「久しぶりだね、お兄ちゃん」

 

 

「おいおい、お兄ちゃんはやめろって。学園の中なんだから龍也にしてくれ」

 

 

「んー、じゃあみんなの前ではね」

 

 

「おう、それならいいぞ……って、いやいや、そうじゃない!?

 何で此処にシャルがいるんだ!?それに、その格好……」

 

 

 シャルルを見て疑問を浮かべる龍也。

 そんな龍也を見兼ねて千冬が声をかける。

 

 

「橘、今はHR中だ。話は後にしろ」

 

 

「え?あ、は、はい」

 

 

「ふふ、また後でね龍也」

 

 

 教卓の前に戻るシャルル。

 クラスからはヒソヒソと声が聞こえる。

 

 

「ねえ、さっきお兄ちゃんって呼んでたよね」

「うん、間違いなく」

「知り合いなのかな?」

「多分ね」

 

 

「し、静かにしてください!

 そ、それではボーデヴィッヒさん、お願いします」

 

 

「………………」

 

 

「ボーデヴィッヒさん?」

 

 

「……ボーデヴィッヒ、自己紹介をしろ」

 

 

「はっ!教官!

 

 私はドイツから来た、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 

 千冬に言われ、名前を言うだけの簡潔な自己紹介をするが、教室の空気がシーンとする。

 

 

「い、以上ですか?」

 

 

「ああ。……アレか」

 

 

 教室を見渡し、一夏を見つけるとそっちの方へと歩いて行く。

 

 

「おい」

 

 

「……なんだよ」

 

 

 ラウラが友好的な態度ではない為、一夏の対応も棘がある。

 

 

「貴様が織斑 一夏か?」

 

 

「そうだけど」

 

 

「そうか、ならーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー死ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーッッ!!」

 

 

「何してんだよテメェ」

 

 

 一夏に振り払われようとしていた手は、隣の席の龍也によって止められた。

 

 

「貴様……ッ!」

 

 

「初対面の人間のやる事じゃねえな」

 

 

「す、すまねえ龍也」

 

 

「気にすんな」

 

 

 掴まれている手を振りほどくラウラ。

 

 

「ちっ。…………私は認めないぞ!貴様があの人の家族であるなど!!」

 

 

「な、に………?」

 

 

「ボーデヴィッヒ、その辺にしておけ」

 

 

「…………はっ」

 

 

 シャルル同様、教卓の前に戻って行く。

 

 

 そんなラウラを見て、龍也と一夏は其々思うことがあった。

 

 

「(袖の下に、刃物らしき物が仕込んであった)」

 

 

 ビンタかと思って見ていたが、キラリと光ったのを見てすぐに手を伸ばした。

 

 

「(ラウラ・ボーデヴィッヒだったか、要注意だな)」

 

 

 龍也の人物リストの危険欄に、ラウラの名前が追加された。

 

 

 そしてーー

 

 

「(…………俺の聞き間違いじゃなければ、あいつは確かに『死ね』って言ってた)」

 

 

 周りの人物には聞こえていない、一夏に向けられた憎悪の言葉。

 

 

「(俺が千冬姉の家族であることを認めない、とも言ってたか。ドイツから来たって事は軍の人間か?)」

 

 

 織斑 千冬は、ドイツの軍隊で教官をしていたことがある。それは一夏も知っていた。

 

 

「(…………俺、生きて学園生活送れるのかなぁ)」

 

 

 幸先が不安になる、一夏だった。

 


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