IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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第1章 Two of the Avenger 〜side 織斑一夏&セシリア・オルコット〜
第一話 一夏入学、幼馴染との再会


 

 

「(……すごい、視線を感じる)」

 

 

  この教室の中で、織斑一夏は1番前の席に座っていた。普通、前の席であれば視線を浴びるのは仕方ないことではあるのだが、それとはまた別の、品定めのような視線。

  何故ならーー教室に、または学園の中に、男子は1人しかいないのだから。

 

  IS学園。篠ノ之束に呼び出され、ドライバーの正常動作確認をしていた時にたまたま触れてしまったISが反応してしまい、世界で一人目の男性IS起動者として入学する羽目になってしまった。

  その結果、本来入学予定だった藍越学園の合格通知は取り消しとなり、必死で勉強したのが無駄となってしまったわけだが。

 

 

「(あれって箒、だよな?こんなに視線送ってるのに全然こっち見てくれないし……なんで無視するんだよ) はぁ…」

 

 

  そんな彼は今、精神的に疲労していた。

  それもそのはず。女の園に一人で入れられ、好奇の視線に晒された挙句、久しぶりに再会した幼馴染(?)にも助けてくれといった視線を送っても無視されている。男として、なかなかに厳しい状況。

 

 

「ーー君。お、織斑一夏君?」

 

「っ!は、はい!」

 

 

  考え事をしていた一夏は副担任の山田真耶に呼ばれているのに気付かなかった。

  今は、SHRの時間。自己紹介の途中であり、ちょうど『お』に入ったところ。

 

 

「あ、あの、じ、自己紹介をお願いしますね、織斑君」

 

 

  一夏は席を立った。

 

 

「えっと、初めまして。織斑一夏です。趣味は特にありませんが、強いて言えば料理、です。……以上です。」

 

 

  唯一の男性操縦者の簡潔すぎる自己紹介に、クラスメイトがずっこける。

  一夏がどうしていいかわからず立っていると、頭に鋭い痛みが叩き込まれる。

 

 

「お前はまともに自己紹介もできないのか」

 

「ち、千冬ね……「ん?」……織斑先生」

 

「今の失言は、言い直したから不問にしてやる。今回だけだぞ」

 

 

 このクラスの担任の登場にクラス中に黄色い歓声が湧き上がる。

 

 

「(相変わらず、千冬姉は人気者な事で)」

 

「はぁ……。毎年毎年、よくもこれだけ馬鹿を集めてこれたな。

  諸君、私がこのクラスで1年間担任を勤める 織斑千冬だ。

  甘えた教育をする気はない。この1年でお前達を使い物になるまで鍛え上げる。そのつもりでいてくれ」

 

「「「キャー!千冬様ー!」」」

 

 

 歓声が止まない中、誰かが言った。

 

 

「あれ、織斑ってことは一夏君って……」

 

「そうだ、こいつは私の弟だ」

 

「え!?嘘、弟!?いいな〜」

 

「私も千冬様の妹になりたい!」

 

「(……家での千冬姉を見たらどう思うんだろう)」

 

 

 世間のイメージとはかけ離れた、女としてどうかと思う姉を思い出しながら、SHRの時間は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

  授業は終わり、休み時間。

  教材をまとめている一夏の所に、一人の女生徒が来た。

 

 

「ちょっといいか?」

 

「箒……だよな?」

 

「あ、ああ。久しぶりだな、一夏」

 

「久しぶりだな箒!6年ぶりくらいか?」

 

 

 話しかけてきたのは篠ノ之 箒。

 一夏の小学生時代の幼馴染であり、共に篠ノ之家の道場で剣の道を学んだ古き友人だ。

 

 久しぶりの再会に、自然と嬉しそうな笑みを浮かべる二人。

 

 

「そうだな……それくらい経つな」

 

 

 懐かしむように一人過去を振り返る箒。

 

 

「こんなところで話すのもなんだし、廊下に出ようぜ」

 

「わかった」

 

 

 

 

 

 

 廊下に移動した二人。

 

 

「元気にしてたか?」

 

「ああ。お前こそ、身体は鈍っていないのか?」

 

「一応鍛えてるっていうか身体は作ってるつもりだけどな」

 

 

 他愛もない会話をしながら廊下を歩く。

 

 すると、一夏があることを思い出す。

 

 

「そういや箒、剣道の大会優勝したんだってな」

 

「な、ななな、ど、どうしてそれを知っている!?」

 

 

 思わぬ発言に動揺する箒。

 

 

「いや、どうしてって新聞とかに載ってただろ。それで見たんだよ」

 

「そ、そうか、新聞か。そういう一夏は、剣道は続けているのか?

 

「あー……剣道自体は、辞めちまった」

 

「?どういうことだ?」

 

「剣道はやってないけど、色々あって剣自体には触ってるんだ」

 

「色々って、それってどういう……!?」

 

 

 何故剣道を辞めたのに剣を触っているのか、気になって聞いた瞬間、自分が知っている織斑 一夏とは思えないほど冷たい空気が流れる。

 

 

「(な、なんだ……?本当に一夏なのか!?こんなに殺気立ってるのは、一体……)」

 

「……っ!ああ、ごめん、箒。詳しくは、言えないんだ。すまない」

 

「……わかった、お前が聞いて欲しくないのなら、深くは聞かないでおくとしよう。

  その代わり、いつか話してくれれば、それでいい」

 

「ありがとな、箒」

 

「いいんだ、私達は、その、幼馴染なんだからな///」

 

「!……はは、そうだな。そろそろ次の授業始まるぜ、戻ろう箒」

 

「(……ほんと、いい幼馴染に恵まれてるな、俺は)」

 

 

 箒の気遣いに感謝すると同時に、いい幼馴染を持ったと実感する一夏。

 

 久しぶりの再会を喜んだ二人は、教室へと戻っていった。

 


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