IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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第二十七話

 

 

 

「ん〜♪」

 

 

「相変わらず朝からご機嫌だね、本音は」

「最近ずっとだね」

 

 

「え〜そんなことないよ〜」

 

 

「嘘」「嘘だ」

 

 

 朝、教室へと向かうために廊下を歩くのは本音と清香と静寐の3人。

 その様子は、軽くスキップをしながら先頭を歩く本音を後ろから2人が眺めているというもの。それがここ数日の日常である。

 

 

「あ、橘君いたよ」

 

 

「毎日眠そうだよね、朝弱いのかな」

 

 

「ふんふんふーん………りゅ〜くん?」

 

 

 龍也の名前に反応する本音。

 2人の気の所為か、その姿にピクッと反応する猫の耳のようなものが見えたとか。

 

 

「(あーねみぃ)」

 

 

 本音達の少し前をゆっくりと歩く龍也。

 あくびをしながら気だるそうにしており、歩くスピードは3人が追いついてしまいそうなほど遅い。

 

 

「橘君おはよー」「おはよ」

 

 

「ん?ああ、鷹月さん、相川さん、と……本音ちゃんも、おはよう」

 

 

 少し遠くから大きめの声で龍也に朝の挨拶をする。

 もう龍也が学園に来てから日が経った為か、声だけで2人を認識したが、挨拶を返そうと振り返るまで2人の先を歩いている本音には気づかなかった。

 

 

「りゅ〜くんおはよ〜」

 

 

 そう言って龍也の側に駆け寄り、腕を組む。

 

 

「ちょ、本音ちゃんまたですか……」

 

 

「いいでしょ〜だめ?」

 

 

「……ダメ、じゃないけどさぁ」

 

 

 上目遣いで問いかけられてしまえば龍也は断れない。男とは悲しいものである。

 

 それと、普段であれば身体を密着させられれば驚きの声を上げたりする龍也なのだが、朝のせいか口調に覇気が感じられず、あまり動じなかった。

 

 

「早くいこ〜」「はいはい」

 

 

「なんか、熟年の夫婦みたいだね」

「朝だけね。お昼にあれになったらまた顔真っ赤にするんだよきっと」

 

 

 最早恒例となった『龍也パニック(本音にのみ)』もクラスの皆は見慣れたものである。

 むしろ、普段は誰とでも気兼ねなく親身になって女の子と話す龍也が、慌てふためく様子はギャップで可愛いとかなんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「橘君、本音、おはよー」「おはー!」

 

 

「おいっす」「みんなおはよ〜」

 

 

 教室へ入れば、クラスメイトに声をかけられる。

 

 

「あの、本音ちゃん、そろそろ離れて?」

 

 

「ん〜わかった〜また後でね〜」

 

 

 ちなみに、この『また後でね』というのは再び引っ付くという意味である。

 主には昼休みに。

 

 

「(昼の俺、頑張れよ)」

 

 

 未来の自分へエールを送る。

 後々テンパることをわかってのことだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 本音が離れれば、次は旧友のうちの1人が近寄ってくる。

 

 

「よ、龍也。相変わらず朝は弱いのな」

 

 

「ああ、一夏か。まぁな」

 

 

「ルームメイトの人に迷惑かけてないか?なかなか起きないだろお前」

 

 

「かけてねえよ。どっちかって言ったら俺がかけられてる」

 

 

 ため息を吐く龍也。

 布団の中に違和感を感じて起きてみれば裸に近しい格好で忍び込んでいたり、風呂上がりにはバスタオル1枚の際どい格好だったりと、心拍数が上がることが頻繁に起きるからだ。

 

 

「一夏はどうなんだよ。箒と一緒に寝てんのか?」

 

 

「そ、そんな訳ないだろ!何言ってんだ!」

 

 

「試しに一緒に寝るか?って聞いてみろよ。喜んでOKしてくれるかもしれないぞ」

 

 

「ビンタされるか、下手したら竹刀でボコボコにされるのがオチだよ……」

 

 

「(お前の方が生身なら強いし、箒ならワンチャンあるだろうに)」

 

 

 とは思うが、口には出さずあえて内にしまっておく。

 箒の一夏を見る視線には気づいている龍也。

 他人の事情には、中学の時から敏感だったからだ。

 

 

「(ま、幼馴染ってアドバンテージもあるし、あの様子ならそのうちくっつくか?)」

 

 

 問題はこの超鈍感のモテ男をどう意識させるかだな、と考え始める。

 少し黙って視線を向けているままにしていると、

 

 

「?なんだよ龍也」

 

 

「いや、別に。(一夏が箒を少なからず女として見てれば、箒から告白すれば可能性はありそうだけど)」

 

 

 ちなみに、明確な好意ではないが、たった数日で龍也の評判はうなぎ登りである。

 男子2人は共に女子生徒、はたまた女教師にまで優しいという旗立て名人コンビであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お昼の時間、いつものように食堂へと向かおうとする龍也と本音。

 

 

「りゅ〜くんいこ〜」

 

 

「(よかった、今日は手か)」

 

 

 腕を組まれなかったことに安心する龍也。

 以外と女性関係の免疫がついているのか、手を繋ぐぐらいでは動じなくなっているように見えるが、本音に慣れただけである。

 

 

 と、引っ張られるようにクラスを出るが、声をかけられ立ち止まる。

 

 

「ちょっと、待ちなさいよ」

 

 

「ん?……って、鈴じゃないか」

 

 

「あんた何やってんのよ」

 

 

 ジト目で問いかけてくるのは、教室の外に立っていた鈴。

 

 

「いや、食堂に行こうとしてたんだけど」

 

 

「女と手繋いで、か。ふーん、いい度胸ね、あたしがいるのに」

 

 

 ピキピキと青筋を立てる鈴。

 鬼のようなオーラを感じ思わず一歩下がってしまいそうになる。

 すると、隣にいる本音が今度は力強く龍也を引っ張る。

 

 

「ーーーりゅ〜くん、早くいこっ」

 

 

「おわっ!ちょ、ちょっと!」

 

 

「だから、待ちなさいってば」

 

 

 龍也の空いている腕を掴み進行を止める。

 そして、龍也を挟んで本音に問いかける。

 

 

 

 

 

「あんた、龍也のなんなのよ」

 

 

「そういう貴女こそ、りゅ〜くんのなんなのかな〜?」

 

 

 

 

 

 バチバチバチと、交わされる視線の間に火花が散る。

 

 

「あたしは龍也の中学の時からの同級生よ」

 

 

「私だって、中学生の時からの友達だもん。ね?りゅ〜くん!」

 

 

 そう言って本音は、繋いでいる手を腕組みへと持っていく。

 

 

「ーーーちょっと龍也、どういうこと?」

 

 

「へ?い、いや、その……痛っ!」

 

 

 掴まれている腕の肉を思いっきり摘まれ激痛が走る。

 

 

「ふーん答えられないんだ。そっかぁ……」

 

 

「あ、あの、鈴さん?」

 

 

「…………なら、こうしてあげる」

 

 

「お、おい、鈴!?」「ーーーーむっ」

 

 

 摘んでいた指と掴んでいた腕を離し、本音と同じように腕を組む。

 

 

「別にいいでしょ、その子だって腕組んでるんだから。

 それとも、その子は良くてあたしはダメなわけ?」

 

 

「そうじゃないけど……」

 

 

「じゃあ問題ないわね。早く行きましょ」

 

 

「………………ふん、りゅ〜くんのばか」

 

 

「(ああ、もう!どうしたらいいんだ俺はぁぁぁぁ!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーちなみに、この3人の昼食が終始非常に微妙な空気であったことは、一夏と箒とセシリアしか知らなかったとの事。

 




ヒロイン2人の対面回でした。





‥‥‥あれ、本音と龍也いちゃいちゃしてないっ(絶望)

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