IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

28 / 54
あっさりと残り2人のヒロインとの回を。


第二十六話

 

 

 

 

 龍也と鈴が話している頃、とある部屋での出来事。

 

 

「む〜」

 

 

「どうされましたか、束様」

 

 

 会話をしているのは、篠ノ之束と娘のクロエ・クロニクル。

 

 

「むむむむ〜」

 

 

「唸るだけではわかりませんよ」

 

 

「束さんレーダーにね、いやーな反応がある気がするよー」

 

 

 びびびび、と触角のように毛を見立て何処かも分からぬ方向を示す。

 レーダーと言っても要はただの直感なのだが、この天災の直感が外れるかと言われればそれもまた怪しいものである。

 

 

「……気の所為では?」

 

 

「いーや、これは絶対何かあるよクーちゃん!という訳で……」

 

 

「(ああ、これはおそらく何かしらの理由をこじつけてーーー)」

 

 

 

 

 

 

 

「りゅーくんに会いに行くのだ!待ってろよー!むふふー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(とりあえず、部屋に戻ったらシャワーでも入ってから飯行くか)」

 

 

 鈴との話を終え、1人で寮室へと戻る龍也。

 

 

「(楯無さんもう帰って来てるかな、一緒に食べるか誘ってみるか)」

 

 

 これからの予定を決める。

 そして、自室のドアの前に着き、軽くノックをしてから部屋へ入ると、

 

 

 

 

「やあやありゅーくん、久しぶりだね。元気にしてたかなーー」

 

 

 

 

 本来であれば見ることのない、ありえない光景に思わず扉を閉める。

 前にも同じ部屋で同じようなことがあった気がするが、それは置いておこう。

 

 

「(………なんでいる?楯無さんはいないのか?)」

 

 

 意外にも冷静に考えることができるのは、1年の間での慣れがあるのだろう。

 

 

「(次開けたらいないなんてことはーーー)」

 

 

 ドアを再び開ける。

 

 

「もう!なんで閉めるのさ!束さん怒っちゃうよ!」

 

 

「ないですよねー、はぁぁぁ」

 

 

 そこには、腰に手を当て叱るように此方を見る『天災』が。

 

 

「そんなに大きくため息を吐かれると束さんも悲しくなっちゃうよ?」

 

 

「何を今更、毎度の事じゃないですか」

 

 

「……りゅーくんの愛が厳しいよぉ」

 

 

 およよ、と涙を拭くようなそぶりまで見せ悲しんだフリをする束。

 そんな束を無視し本題へ入る。

 

 

「で、今日は一体何しに来たんですか?直接会いに来るってことは、それなりに厄介な話になってるとは思いますが」

 

 

 何かしらの面倒事を抱えてやって来たのだろうと推測する龍也。

 これでも1年も天災の付き人をやっていたのだ、それくらいはわかると踏んでいたのだがーーー

 

 

「え?何もないけど?」

 

 

「………………は?」

 

 

 思わぬ返答に呆気にとられてしまう。

 

 

「いっくんとりゅーくんのお陰で世の中も少しは平穏になったし、束さんとクーちゃんはのんびりする毎日だよ〜」

 

 

「えっと、じゃあどうして……」

 

 

「ただ会いに来るだけじゃだめなの?」

 

 

「そんな事はないですけど」

 

 

「なら問題ないよねっ!」

 

 

 胸を張って自信満々に言う束。

 すると、奥からもう1人出てくる。

 

 

「お帰りなさいませ、龍也様」

 

 

「クロエ!?君も来てたのか!?」

 

 

「はい、束様に連れられて。お久しぶりですね」

 

 

「そうだな、俺がラボを出てった時以来か」

 

 

「体調は崩されていませんか?」

 

 

「元気にやってるよ、心配すんな」

 

 

「そうですか、ならよかったです」

 

 

 まるで彼氏と彼女か、もしくは夫婦のような空気を出し再会を喜ぶ2人に、束が憤慨する。

 

 

「ちょっとぉー!束さんもクーちゃんとおんなじくらい久しぶりなんだけど!?」

 

 

「普段の行いの差ですよ、束さん」

 

 

「申し訳ありません束様、こればかりはなんとも」

 

 

「うわぁーん!クーちゃんまで敵に!味方がいないっ!」

 

 

「ははっ」「ふふふっ」「笑うなー!」

 

 

 こんなやり取りも、全員が楽しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、数十分かはたまた1時間程度か、話を楽しんだところで龍也は当初の目的を思い出す。

 

 

「あ、そういえば俺、これから風呂と夜飯に行く予定だったんだ」

 

 

「おや、そうでしたか。長い事滞在しましたし、そろそろですかね束様」

 

 

「えーまだいいよー」

 

 

「これ以上居ては、迷惑になってしまいますよ」

 

 

「んーそれもそうだね。仕方ないか」

 

 

「(思ったよりあっさり引き下がったな、珍しい)」

 

 

 内心多少驚く中、立ち上がった2人のうちクロエが龍也の元へ寄ってくる。

 

 

「そうです、龍也様。最後に一つお聞きしたいことがあります」

 

 

「お、なんだなんだ」

 

 

 

 

 

「龍也様がIS学園に入学された日の、織斑千冬との話の内容についてなのですが」

 

 

 

 

 

「な、なんですとぉ!?」「ちょ、ちょっとクーちゃん!」

 

 

 急に慌て出す龍也と束。

 束に至っては顔を真っ赤にする始末。

 

 

「な、なんで2人が知ってるんだよ!?……って、ま、まさか……!」

 

 

「これから上手くやっていけるかが心配とのことで、束様と『見させて』いただきました」

「やっぱりかーーー!!!」

 

 

「ううう、その話はもういいよぉ……///」

 

 

「いえ、束様。本人の口からしっかりと聞かなくてはなりませんよ。

 それで、龍也様。『あの言葉』は本心ということでよろしいのですか?」

 

 

「ち、ちなみに、あの言葉とは……?」

 

 

「それは龍也様自身がご理解のはずです」

 

 

「い、いや、でも、本人を目の前にしてはちょっと……」

 

 

「ほう、ではあの発言は嘘だったということでよろしいでしょうか?」

「え、りゅーくん………」

 

 

「(なんで束さんそんなに悲しそうな声出すんですかー!?勘弁してくれ!)」

 

 

 クロエに追い詰められ困り果てる龍也。

 

 

 

 

 だが、ほんの数秒悩んだ後、男は覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

「ーーーいや、俺は束さんを、立派な美人だと思ってるぞ!!」

 

 

 

 

「おお……」「ちょ、ちょっとりゅーくん!?」

 

 

「(自分に嘘をつく事は許されねえ!そして何より、女性を悲しませるなんてもってのほかだぜ!)」

 

 

 謎の男気を見せ、堂々と仁王立ちするかのように宣言した龍也。

 

 

「具体的には、どの部分が美人と思いですか?」

 

 

「へ?そ、それはだな、その、なんだ……」

 

 

 今度はどう伝えればいいか迷い始める。

 結果、龍也が放った言葉はーーー

 

 

 

 

「全部、かな?」

 

 

 

「ーーーーーーーッッ!!!!」

 

 

 

「ほう……全てときましたか、そうですか」

 

 

 

 思わぬ返答にニヤニヤが隠しきれないクロエ。

 もう勘弁してくれ、と言わんばかりにげんなりしつつも頬を赤くする龍也。

 

 

 そして、束はーーー

 

 

 

 

「りゅーくんのばかぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

「あ、ちょっと、束さん!?……行っちゃった」

 

 

「許容範囲を超えてしまいましたか、仕方ありませんね」

 

 

 顔をトマトのように赤く染めながら、捨て台詞を吐き部屋を物凄い勢いで飛び出して行った。

 

 

「おいおい、大丈夫か。ここIS学園の中だぞ」

 

 

「安心してください、束様なら見つかる心配はないかと」

 

 

「そこの信頼はあるのな。……まぁ俺もそう思うけどさ」

 

 

「さて、それでは私もそろそろお暇させていただきます」

 

 

「1人で平気か?送って行こうか?」

 

 

「いえ、ご心配なく。問題ありません」

 

 

「そっか、じゃあまたなクロエ」

 

 

「はい」

 

 

 ドアの方へと向かって歩いて行くクロエ。

 すると、ドアの前で振り返りーー

 

 

「あ、そうです」

 

 

「ん?まだ何かあるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーお父様とお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」

「やめてください!!!」

 

 

 

 この日は、珍しく存分にクロエに揶揄われた2人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げぇっ!?ちーちゃん!?」

 

 

「な、ん、で、お前がここにいるんだ……!!」

 

 

「いや、ちょっ、アイアンクローだけは!アイアンクローだけはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

 ーーーちなみに、結局部屋を飛び出した天災は世界最強に見つかりこってり絞られたとのこと。

 





この作品の束さんはピュア設定でお送りしておりますが、後は本来の束さんとなんら変わりありませんよ。天災ですからね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。