IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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第二十四話

 

 

 

 

「ふぅ、これはここでいいか」

 

 

「本当にありがとね橘君、助かったよー」

 

 

「これぐらいお安い御用だよ、また何かあったら遠慮なく言って」

 

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここってどうするの?」

 

 

「これはね、この公式を応用してーー」

 

 

「わ、すごいこんな簡単に解けるんだ」

 

 

「よくこっちを使おうとして引っかかるタイプの問題だね、似たような問題もこれから出てくるだろうから気をつけて」

 

 

「わかった、ありがとう橘君!」

 

 

「どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えいっ」

 

 

「わ、ちょっと本音ちゃん!?」

 

 

「出発進行〜」

 

 

「しょ、食堂に行くのにわざわざ背中に乗る必要はあるの?(ぐ、背中に柔らかい感触が……!)」

 

 

「ほら、早く行くぞ龍也(顔真っ赤だな)」

 

 

「何をしている、もたもたするな」

 

 

「ああ、もう!わかったよ!」

 

 

「んふふ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう!なんなのよ!」

 

 

「……またですか?鈴さん」

 

 

 ここ数日、セシリアと鈴は二人で昼食を摂っている。

 その理由もーーー

 

 

「いいじゃない別に!あーもうムカつく!」

 

 

「そんなにイライラなさるなら直接文句の一つでも言ったらどうです」

 

 

「それとこれとは別よ!」

 

 

「……はぁ」

 

 

 龍也は、学園に来て以来一夏と箒と本音を含めた四人で昼食を食べている。

 何故かというのは簡単で、本音が龍也を誘い(ほぼ連行の様なもの)、それに一夏と箒がついて行く為だ。

 

 

 それを見ていて面白くない鈴。

 また、昼の間だけでなく様々な時間で龍也を見かけるのだが、その度に誰かしら女の子が横にいるのだ。

 少しずつ溜まる鬱憤を晴らすため、要は愚痴を聞く相手としてセシリアがここ数日は同伴している。

 

 

「(これは確定ですわね。難儀な性格をしていらっしゃる、鈴さんは)」

 

 

 セシリアは鈴が怒る理由に気づいている。

 決まって龍也が女の子といる場面を目撃する鈴が、その後から眉間に皺を寄せるからだ。

 

 

「(しかも自覚無しときましたか、中学時代からずっとなのでしょうか)」

 

 

 憤慨している鈴を他所に優雅に紅茶を飲んでいる。

 大人の女性の落ち着きとはまさにこのことだろう。

 

 

「きっとあたしが見てないところでもそうなのよ!他の女といちゃいちゃしてんのよ!」

 

 

「龍也さんは一夏さんと同じタイプのようですしね、お節介焼きというか根が善人というか」

 

 

「…………あんたも、あいつのこと下の名前で呼んでるのね」

 

 

「え?……はい」

 

 

「ふーん、そっかぁ……」

 

 

 地雷を踏んだか、と思うセシリア。

 自分にも何か文句が飛んでくる前にこちらから手を打とう、と先手を取る。

 

 

「鈴さんは、龍也さんが女の子に囲まれているのを見て何が気に入らないのですか?

 ここは二人を除いて全員女子生徒、仕方のないことではあると思うのですけれど」

 

 

「………わかんないわよ。久しぶりに会ったあいつが、取られるのが怖いのかも」

 

 

「(そこは自覚があるのですね。ですが、『取られる』とは私のものであるという言い回しにも聞こえますけれど)」

 

 

「あたし、どうしたらいいんだろ」

 

 

「龍也さんと一度お話してみては如何でしょうか?」

 

 

「それが出来たら苦労しないわよ」

 

 

 はぁ、とため息をつく鈴。

 

 

「いつまで経っても行動を起こさなければ状況は変わりませんことよ」

 

 

「…………うん、そうだね」

 

 

「まぁ何かあればわたくしがお手伝いして差し上げますわ」

 

 

「ありがとね、セシリア」

 

 

「いいえ、友人の為ですもの、これくらいは」

 

 

「………あたしが男だったら、あんたに惚れてるわ、きっと」

 

 

「歯の浮くような言葉はもう聞き飽きてますわ、わたくしはそう簡単には落ちませんことよ」

 

 

 それでは、と先に席を立つ。

 

 

 その後、残された鈴は昼休みの時間終了ギリギリまで考え込んでいたが、結局心のもやもやは取れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セシリア、ちょっといいか?」

 

 

「はい?如何されましたか、龍也さん」

 

 

「鈴のことで、聞きたいことがあるんだけど」

 

 

「……鈴さんが、何か?」

 

 

 時間は変わり教室、授業が終わると同時にセシリアに話しかける龍也。

 

 

「それがな、クラスに来た初日から、なんでか俺に対して怒ってるっぽいんだよ。入学前に話した時はそんなことなかったのに。

 だからこっちからも話しかけ辛くて………心当たりもないし、困ってるんだ。何か知らないか?セシリアは」

 

 

「何故わたくしに?一夏さんや2組の方に聞いてもよろしいのでは?」

 

 

「最近セシリアと鈴が一緒に行動してるのを見かけるからさ、もしかしたらって思って。なあ、何か知ってたら頼むよ」

 

 

「そうですわね……」

 

 

 どの程度掻い摘んで話すかを模索する。

 まさか、貴方が女にちやほやされているのが気に入らないからとは言えないからである。

 

 

 そして、出した結論は、

 

 

「わたくしからは、全ては言えませんわ。

 ただ、貴方のことが嫌いになったからとか、そういうわけではございません」

 

 

「じゃあなんで……」

 

 

「……一度、鈴さんと話してみてください。そうすればきっと、解決しますわ」

 

 

「んー、そっか、そうだな。こっちから行かないと何も解決しないよな」

 

 

「ええ」

 

 

「とりあえず嫌われてないってことがわかってよかったよ、ありがとな」

 

 

 感謝されるが、セシリアは龍也に聞きたいことが一つあった。

 

 

「龍也さんは、鈴さんに嫌われてしまうのが、嫌ですか?」

 

 

「え?……ああ、当たり前だろ。昔からの大事な友達なんだ、嫌に決まってる」

 

 

「そう、ですか。ありがとうございます、もう結構ですわ」

 

 

「おう、それじゃあ」

 

 

 セシリアの元から離れていく。

 きっと龍也は次の休み時間にでも鈴の元へ行き、話し合う予定を決めたりでもするだろう。

 

 

「(あの様子ならすぐに解決、すればよろしいのですが)」

 

 

 このままでは終わらない予感がする、そんな不安を抱えるセシリアであった。

 


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