IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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箒、セシリア、一夏と夜ご飯を食べた後の話です。


第二十三話

 

 

 

 

「橘」

 

 

「はい?なんですか千冬さ……「織斑先生だ」痛いっ!?」

 

 

 頭を出席簿で叩かれる。

 

 

「次は手加減無しでいくからな」

 

 

「(冗談だろ、まだ上があんのかよ……)」

 

 

 まだこの出席簿アタック(命名:橘 龍也)に更に上のレベルがあるのかと恐怖する。

 

 

「で、俺に何か用ですか?」

 

 

「ああ、これをお前にな」

 

 

「おっと。……これは?」

 

 

 千冬から鍵が投げ渡される。

 

 

「お前の寮室の部屋の鍵だ。今日からここに住んでもらう」

 

 

「早いですね、初日からとは。わざわざ帰る必要がなくて助かります。

 荷物はどうなってますか?」

 

 

「安心しろ、束の奴がお前の身の回りの物を全て纏めて送ってきている」

 

 

 だが、そこで千冬は思うことが一つ。

 

 

「…………私としては、あいつに物の整理整頓が出来たことの方が驚きだがな」

 

 

「最初は酷かったですよ、研究道具から下着まで、そこら中に散らかってましたし。

 結局半年近くかけて一般女性並みのスキルにはなったと思います。料理以外は」

 

 

「そうか……」

 

 

 少し考え込む千冬。

 

 

 人の事を言えたものではないが、あのズボラな束の生活面を変えたのだ、あの束の。

 もしかしたら龍也ならーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ、束を貰ってやってくれないか?

 お前なら信頼関係もあるし、あいつもずっとあのままでは婚期に乗り遅れてしまうだろう」

 

 

「な、ななな何をいきなりぃ!?」

 

 

 唐突な爆弾発言。あの天災を嫁に貰えとのこと。

 

 

「軽い花嫁修行もお前が仕込んでいるんだ。悪い話だとは思わないが、どうだ?」

 

 

「じょ、冗談はやめてくださいよ!織斑先生!」

 

 

「冗談を言っているつもりはないのだがな。お前は束をどう思っているんだ」

 

 

「どうって…………ま、まぁ、美人な人だとは思いますけど……」

 

 

 顔を赤くしながら返答する龍也に、思わずニヤけが出てしまう千冬。

 

 

「ほう、そうかそうか。

 まぁ、今すぐにとは言わん。その気になったら私に言え、束に伝えといてやる」

 

 

「も、もう!俺部屋行きますよ!まったく……」

 

 

 少し駆け足気味にこの場を離れていく。

 

 

「ふふ、少しからかいすぎたか」

 

 

 1年以上会っていない弟の親友も、あまり性格は変わっていなかった。

 多少どこぞの天災に影響されている部分はあるが、根本的な部分はそのままだ。

 

 

 龍也も去り、自分も職員室へ戻ろうとしたその時、一つミスを犯したことに気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……しまった、一夏の時と同じで同居人がいるのを伝え忘れた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は同じく、とある場所の一室での会話。

 

 

「束様、今の会話は全て録音しておきました」

 

 

「…………そんなことしなくていいよ、くーちゃん………///」

 

 

 龍也の入学初日の様子はどうかと、モニターを眺めていた2人。

 思わぬ『美人』発言に言われ慣れない束は机に顔を伏せ、照れてしまう。

 

 

 ーーーちなみに、それが男に言われたからなのか、それとも『龍也』に言われたからなのかは、誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

「龍也様がお父様ですか、あまり想像できませんね」

 

 

「もうやめてぇ……///」

 

 

 此処ぞとばかりに束を揶揄う、クロエであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと、ここか」

 

 

 鍵に書かれている号室の部屋の前に着く。

 そのまま『どうせ一人部屋だろう、男だし』というどこぞの世界最強の弟と同じ安易な考えを持って部屋の中に入ると、

 

 

 

 

「お帰りなさい♪ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ、た、sーーー」

 

 

 

 

 少女が言い終える前にドアを閉める。

 

 

「(おいぃぃぃ!?なんで裸にエプロン着た水色の髪の女の子がいるんですかぁぁぁ!?)」

 

 

 戸惑いを隠せない。

 こうなると気づくのは、

 

 

「(千冬さんめ……一人部屋じゃないならないで、先に言ってくれればいいのに!)」

 

 

 ダークネスは企業秘密なんだぞ、と文句を言いたくなるが口には出さずしまっておく。

 それと、千冬は伝えようとはしていたのだが、別の話題に気を取られうっかりしてしまったことは龍也の知る由ではなかった。

 

 

 このままでは拉致があかないと判断した龍也。もう一度ドアを開けるとーーー

 

 

「お帰りなさい♪わたしにします?わたしにします?それともわ、た、s「いや全部わたしになってるし!?」……もうっ、最後まで言わせてよ」

 

 

 ぷんすこ怒り始めた少女。

 

 

「す、すいません……(あれ、俺何も悪くないよねこれ)」

 

 

「もういいわよ、別に。

 それと、とりあえず部屋に入ったら?私こんな格好だけど……♪」

 

 

 そう言って少女がニヤッと笑いながらエプロンの裾を掴み、上にチラリと上げようとしたその時ーーー

 

 

「し、失礼しましたぁ!!」

 

 

 勢いよくドアが閉められた。

 

 

「…………そんなに拒否されちゃうと、お姉さん悲しいなぁ」

 

 

 しょぼん、とうさ耳でも付いていれば垂れ下がってしまいそうなくらい落ち込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーそれで、貴女が自分のルームメイトということでいいんですね?」

 

 

「ええ、そうよ。私は更識 楯無《さらしき たてなし》、このIS学園の生徒会長をしているの」

 

 

 楯無が着替え、龍也も部屋の中に入り椅子に座って話を始める。

 いつの間にか楯無は手に扇子を持ち、開いた扇子には『生徒会長』と書かれている。

 

 

「どうして自分は一人部屋じゃないんですか?もしくは、一夏と同じ部屋でもよかったと思うんですけど」

 

 

「それはね、私が織斑先生に直接お願いしたからなの」

 

 

「……理由をお聞かせ願いますか?」

 

 

「二人目の男性操縦者の護衛よ。この学園において生徒会長というのは、『最強』を意味するの」

 

 

 そう言って淹れてあった紅茶を啜るが、龍也は別の目的があることに気づいていた。

 

 

「ーーーそれと、俺の監視ですか?」

 

 

「あら、察しがいいのね君は。

 そういうことよ、篠ノ之博士のお気に入りとは言っても、まだ危険因子の可能性がないわけじゃないからね」

 

 

「俺を見張ってても何もありませんよ。

 それに、俺に何かしようとする輩がいれば、束さんが黙ってません」

 

 

「随分と信頼しているのね」

 

 

「いえ、信頼もそうですが、俺のISは『博士特製のオーバーテクノロジー』なんでね。誰かに盗られたりしたら大変ですから」

 

 

 解析はできなくとも力を振るうことはできる。

 もしダークネスの力が他人の手に渡り、悪用でもされた暁には大変な事になるであろう。

 

 

「そうならない為にも私が側にいるのよ。

 私の家系は少し特殊でね、裏の事情にも精通しているの。だから安心して?

 

 

 ーーー『仮面ライダー』の橘 龍也君?」

 

 

「…………へぇ、知ってるんですね」

 

 

「動揺しないのね、一夏君とは大違い」

 

 

「あいつと一緒にしないでくださいよ。

 それで、まさか中の俺を知ってる人がいるとは思いませんでしたが……どうして知っているんですか?」

 

 

 そう言い放ち、殺気を出す龍也。

 だが楯無も伊達に次期更識家当主ではない、それくらいでは動じない。

 

 

「私と会ったことあるの、覚えてない?」

 

 

「え?…………あ」

 

 

 そう言えば昔、ダークネスに成り立ての頃に『たまたま』姿を見られてしまった2人の水色の髪の少女達がいた。もしやーーー

 

 

「えっと、ビルの隣の路地裏の………?」

 

 

「そうよ、昔貴方がビルの横で武装を解除してるところに出くわしたのは私と私の妹」

 

 

「まじですか……」

 

 

 やっちまった、と言わんばかりに頭を抱える。

 思わぬ再会、しかもたまたま姿を見られたのが学園で最強の人間だとは想像も付かなかった。

 やらかした事の内でも印象に残っていたので、本人もよく覚えていた。

 

 

「あの後気になって少し調べたのよ。そしたら『黒い鎧のIS』がいるなんて噂があるから、まさかと思ってね。

 一夏君で初めて存在をちゃんと認識したけど、龍也君の時も解除前をチラッと見てたから」

 

 

「あいつ……」

 

 

 人のことを言えたことではないが、きっと自分と同じヘマをしたであろう一夏を恨めしく思う。

 

 

「貴方は何をしていたの?その力は一体何?」

 

 

 目を厳しくし問いかけてくる。

 

 

「詳しくは言えません、無関係な人間を関わらせるわけにはいかないので」

 

 

「セシリアちゃんには話してたのに?」

 

 

「彼女は一夏から概要を聞いているので仕方ありません。それを貴女が聞いていたのなら、それはそれでいいでしょう。

 ですが、俺自身が何をしていたか、行っていたかを喋る必要はないので。すいません」

 

 

「もうっ、ケチなんだから龍也君は」

 

 

「いやいや、そういう問題じゃないでしょうよ」

 

 

「自分の間抜けで正体もばれちゃうような人なのに」

「うっ、痛いところを……」

 

 

 拗ねた(?)楯無の言葉に傷を抉られる龍也。

 

 

「ふふっ、まぁ今はいいわ。でもいつかは話してちょうだいね?」

 

 

「そんな日がくればいいですけどね」

 

 

「えーそこは約束してよ」

 

 

「はいはい、わかりましたよ」

 

 

「むぅ、返事が適当……いいわよ、後で龍也君がお風呂に入ってる時に侵入しちゃうから」

 

 

「や、やめてくださいよ!仮にも護衛の立場の人が!」

 

 

「冗談よ、そんなに照れなくてもいいじゃない」

 

 

 ニヤニヤと揶揄われる。

 女性関係に弱すぎるではないのかと思うが、龍也はこういう人間だ。自分が攻められることに慣れていない。

 

 

「まったく……それじゃあ先にお風呂はどうぞ、俺は少し荷物の確認をしたいので」

 

 

「あら、いいの?それじゃあお言葉に甘えちゃおうかな〜」

 

 

 上機嫌で風呂場へ向かう楯無。お湯を溜めてはいないので、今晩はシャワーだけで済ますのだろうか。

 

 

 姿が見えなくなる寸前で楯無は振り返り、

 

 

「ーーー覗かないでよ?」

 

「覗きませんよ!!!」

 

「ふふふっ」

 

 

 また揶揄っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみにこの後、

 

 

「あ、それと、盗聴器と監視カメラは全部撤去しておいてあげたから感謝してね?龍也君?」

 

「助かります、自分でゴミ袋に放り込む必要がなくなりました」

 

 

 こんな有能な会話があったとか。

 




ルームメイトは楯無さんでした。
今後の話の為に接触させる必要があっただけなので、出会い方はあまり気にしないでください。



‥‥‥ビルの横で変身解除して見られた次の日から龍也は人前で変身を解くことはなくなりました←

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