IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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第3章では回収していない伏線、説明事などを一通り消化した後にのんびりとした話を。
それでは、どうぞ。


第3章 束の間の休息、安息の日々
第二十一話


 

 

 

「それでは、今日の授業を始める。

 橘、織斑、オルコット、前に出ろ」

 

 

「「「はい」」」

 

 

「まずは橘のISを展開してもらう」

 

 

「わかりました」

 

 

 何もない空間からドライバーとメモリが現れる。

 そして、腰に装着、メモリを挿入する。

 

 

 

「ーー変身」

 

 

 

 声を出すと同時にメモリを横に倒す。

 すると、脚部から漆黒の鎧が装着されていく。

 

 

「おおー」「か、かっこいい」「全身装甲《フルスキン》のIS……」

 

 

「ふむ、自分で説明してみろ橘」

 

 

『わかりました。このISの名前は、「黒龍《こくりゅう》」、第3世代の機体にあたります』

 

 

 第3世代の様なものではあるが、束が龍也を学園に入れるためにダークネスにISへの改造を施したせいでパワーアップしている。

 よって、現世代のISより少し強さが優っていると言ってもいい。

 とは言っても、実力者を相手にすればあまり大差はでないが。

 

 

「ねえねえ橘君、なんでISを展開する時にそのベルト?とおもちゃみたいなのを使ったの?」

 

 

 女子生徒の一人から質問が出る。

 

 

『ああ、これは黒龍に乗るために必要なものなんだ。

 さっきは手で持ってから腰に付けたけど、直接装着した状態で呼び出すこともできるよ』

 

 

「へぇー」「なんか特撮のヒーローみたいだね」「男のロマンってやつなのかな?」

 

 

『ちなみに、普段はISの技術の応用で量子化してしまってある。これが便利なんだよ、持ち運びがなくて楽だから……』

 

 

 顔部分の鎧の中で遠い目をし昔を思い出す龍也。

 時代は進化したものだ、と感慨深くなっている。

 

 

「よし、次は武装を展開してみろ」

 

 

『はい』

 

 

 返事をすると、手元には一本の剣が。

 

 

『これが黒龍の基本武器、「黒龍刀=斬魔《こくりゅうとう=ざんま》」です。

 この剣は少し特殊で、切った相手の減らしたSE《シールドエネルギー》を吸収して自分のものにしてしまうらしいんです』

 

 

 生徒達からざわめきがでる。

 吸収《ドレイン》の効果があると分かれば、驚くのも無理はない。

 

 

「他にはあるのか?」

 

 

『はい、もう一つは普通のハンドガンと同じサイズの銃が二丁。射出させるのはもちろん実弾じゃなくエネルギー弾です』

 

 

 武装の説明を一通りしたところで、別の質問が女子生徒から出る。

 

 

「橘君、そのISって飛べるの?そういう装備が付いてないように見えるけど」

 

 

『ん?ああ、それなら問題ないよ』

 

 

 と、次には背中から先端が鋭く尖った6枚の翼が展開される。

 

 

『これがあるからね。名前はそのまんま、「6枚羽《ろくまいばね》」。ほとんどISと同じ要領で飛べるんだ。

 あ、ちなみにこれ指で触るとスパッと切れちゃうから生身じゃ触らないようにしてね』

 

 

 はーい、と声が上がる。

 また、この『羽』は形態を変化させ内側に曲げたり若干だが伸びさせることもできるので、背中からの攻撃を防御し、反撃に転じることもできる。

 

 

 次に別の生徒がまた疑問を掲げる。

 

 

「なんか、橘君のISって特殊だね。他の機体に比べてコンパクトっていうかシュッとしてるっていうか」

 

 

『量産化の目処とかない、最新機種だからね。実験体も兼ねて俺が篠ノ之博士から貰ったんだ』

 

 

 束にも全ては解析できない【ダークネス】だ。

 量産化などしては堪ったものではないだろう。

 

 

「よし、それぐらいでいいだろう。

 織斑、オルコット、お前達もISを展開しろ」

 

 

「はい」「はい!」

 

 

「まずはオルコットからだ」

 

 

「わかりましたわ」

 

 

 返事をするとほぼ同時にセシリアはすぐブルー・ティアーズを纏っていた。手元には武装である銃のおまけ付きだ。

 

 

「武器の展開に0.5秒、流石だな代表候補生。構え方にも問題がない」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「次は織斑だ」

 

 

「はい!……ッ」

 

 

 一夏も呼ばれ白式を展開、及び真似をして武装も展開するがセシリアよりは遅くなってしまう。

 

 

「初心者にしては悪くない早さだが、実戦では遅すぎる。精進しろよ」

 

 

「………はい」

 

 

『(うわぁ、千冬さんきっつー)』

 

 

 内心一夏に同情していると千冬から睨まれる。

 顔の隠れている鎧の下では冷や汗をかいてしまう龍也であった。

 

 

「全員ISを纏ったなら次は基本的な飛行操縦をしてもらう。飛んでみせろ」

 

 

 千冬から合図が出ると同時に飛び立つ三人。

 セシリアと龍也は先に上空へ着いたのだが、一夏は少し遅れてしまう。

 

 

 すると通信で千冬からきつい一言。

 

 

「どうした織斑、機体スペックはブルー・ティアーズより上のはずだぞ」

 

 

「そうは言っても、空を飛ぶのってなんかなぁ」

 

 

「織斑さん、大事なのはイメージですわ」

 

 

「そうだぞ、そんな気難しく考えんな」

 

 

「んーそっか、わかった」

 

 

 再び通信が入る。

 

 

「よし、次は急下降と完全停止だ。目標は地表から10cmとする」

 

 

「了解です。それではお二人とも、お先に失礼しますわ」

 

 

 セシリアは二人に声をかけると下へと加速し降りていく。

 そして地面から3m程の距離になると身体の向きをスラスターを使い上へと向け、停止する。

 

 

「5cm。上出来だ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「さあ、次はどっちが来るんだ」

 

 

「俺から先に行くぞ、一夏」

 

 

「ああ」

 

 

 一夏に声をかけると翼を一度大きくはためかせ、そのまま地面へと落ちるように一直線で降りて行く。

 地表から5m程で翼を広げ、勢いを羽を羽ばたかせ殺す。そして、停止する。

 

 

「よし、問題ないな。織斑も降りてこい」

 

 

「はい!……よし」

 

 

「(あ、やばそう)」

 

 

 意気込んだ一夏を見て嫌な予感を感じる龍也。

 すると次にはーーー

 

 

 

 ズドォォォンッ!!

 

 

 

 ーーーという音と共に、地面に大きなクレーターが。

 

 

「馬鹿者。誰が激突してグラウンドに穴を開けろと言った」

 

 

「………すいません」

 

 

 呆れてしまう千冬と、くすくす笑う生徒達に居心地が悪そうになる一夏。

 

 

「ドンマイだぞ一夏。初心者でいきなりやれって言われても難しい話だ」

 

 

 一夏を慰めるつもりで言うと、クラスメイトにつっこまれる。

 

 

「そう言う割には、橘君は完璧に出来てたよね」

 

 

「え?あー……うん」

 

 

「龍也……」

 

 

 ジト目で龍也を見る一夏。

 慰めは失敗したようだ。

 

 

「そろそろ時間か、今日の授業はここまでにする。

 穴はしっかり埋めておけよ織斑。夜までかかっても構わん」

 

 

「う………はい」

 

 

「(……強くあれよ、一夏)」

 

 

 結局、一人でこの穴を埋めるのは厳しいだろうと手伝ってあげた龍也。

 なんとか陽が沈むになる前に終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時間は夕暮れ前、龍也は一夏と箒の部屋へと足を運んでいた。

 自分が何故篠ノ之束と知り合いなのか、一夏の復讐についての過去の二点を話す為だ。

 

 

「さて、とりあえず軽く自己紹介をしようか。

 俺は橘 龍也。龍也って呼んでくれ。一夏とは中学生の時に出会った、ついでに鈴もな」

 

 

「私は篠ノ之 箒。箒でいい。もう知っているとは思うが篠ノ之 束の妹だ。後、一夏とは幼馴染だ」

 

 

「……まさか、学園の中に妹さんがいたなんてなぁ」

 

 

「なんだ、知らなかったのか?龍也」

 

 

「ああ。妹はいるって話は聞いてたけどな」

 

 

 はぁ、と軽くため息をつく龍也。

 それだけで箒は、龍也が束の元で苦労していたのだろうと察してしまう。

 

 

「…………お前も苦労しているのだな」

 

 

「…………わかってくれるか」

 

 

 今にも手を取り合いそうなぐらい見えない何かを共感する二人を、少し困ったような表情で見る一夏。

 

 

「だいたい姉さんはいつもいつも突拍子もなく行動してーーー」「そうだそうだ、急に出かけるから用意してって言われて来てみれば海外に飛ばされたこともーーー」「あの人はーーー」「束さんはーーー」

 

 

 愚痴の言い合いが始まってしまった。

 

 

「な、なあ二人とも、そろそろ本題に入らないか?」

 

 

 本来の目的と違う状況が出来上がってしまったため、話を戻そうとする一夏。

 

 

「え?ああ、そういやそうだったな」

 

 

「す、すまない、柄にもなく騒いでしまった」

 

 

「いや、気にするな。俺も同じだから。

 それで、まずは俺の話からするか?」

 

 

「……俺から話すよ、そうすれば龍也の話にも繋がるしな」

 

 

「そうか。じゃあ任せた」

 

 

 話し手の役目を貰った一夏は、箒へ説明する。

 

 

 復讐を語る上で、龍也の死についての話は無視できない。

『ダークネス』という未知の力があること、その力があるばかりに狙われて殺されてしまったこと、殺された龍也の報いとして自分が復讐を志したことを話した。女性権利団体という存在は伏せたが。

 

 

「ーーーだから俺は、力をつけたんだ。箒が俺に剣で勝てなかったのはそんな感じかな」

 

 

「そうか、そうだったのか……」

 

 

 一つ一つをしっかりと理解する箒。

 すると、必然的に分かることがもう一つ。

 

 

「ーーーそうなるとお前は、姉さんに救われたということか?」

 

 

「察しがいいな、その通りだ。

 本来死ぬはずだった俺は、命を失う前に束さんに拾われた。まぁ、助けるためってよりは研究材料って感じだったけどな、最初は」

 

 

「そして、生きていた龍也は一年経った今、この前のクラス対抗戦の日に俺達の前に姿を現したってわけだ」

 

 

「本当は来るつもりなんかなかったんだけどな。あの人に嵌められたよ」

 

 

 苦笑するしかない龍也。

 

 

「龍也が生きていてくれたなら、もう復讐なんてする必要はないからな。箒に話す前だったから悪いけど、もう終わったことなんだ」

 

 

「まぁよかったんじゃないの?人殺しにならなくて済んだんだし。

 そんな重い気持ちのままじゃ存分に箒ちゃんといちゃいちゃ同棲生活できないだろ」

 

 

「な、なななななな何を言っている貴様!!!」

「そ、そそそそそそそうだぞ!い、いちゃいちゃなんてしてない!!!」

 

 

 同棲なのは否定しないのね、と思ったのは心の中に押さえておくのであった。

 

 

「さ、こんなもんで話はいいだろ。夜飯食いに行こうぜ。俺もう腹減ったわ」

 

 

「あ、その前にちょっといいか?」

 

 

「ん?なんだよ一夏」

 

 

「えっと、前にな?お前のことを話しちまった奴がいるんだよ。セシリア・オルコットっていう金髪の子なんだけど」

 

 

「ああー、それね。知ってるよ」

 

 

「え?なんで知ってるんだ?」

 

 

「………束さんとこのモニターで見てたからな、お前達が話しているのを一部始終」

 

 

 唖然とする一夏と箒。

 

 

「……別にいつも監視してるわけじゃないぞ?

 クラス代表決める時の戦いとかこの前の対抗戦とかイベント事の時しか見てないから………多分」

 

 

「そ、そうか……。でも知ってくれてるなら話は早い、オルコットさんと会ってくれないか?一応事情を説明した方がいいと思うんだ」

 

 

「おう、いいぜ。なら、今から一緒に食わないかって誘ってみるか。食堂で話そう」

 

 

「……いいのか?食堂でそんな話をして」

 

 

 箒が尋ねる。

 

 

「別に大丈夫だろ。一から全部説明するわけじゃないしな」

 

 

「……お前がそういうならいいのだが」

 

 

「鈴は誘わないのか?」

 

 

「あー……あいつなんか怒っててさ、誘いにくいんだよ」

 

 

「何したんだよ」

 

 

「わからん」

 

 

「………はぁ」

 

 

 龍也と本音と鈴の修羅場(?)を見ていた箒は鈴の気持ちを察し軽く同情する。

 目の前にいるのは鈍感という言葉が最も似合う二人なのだから。

 

 

「と、とりあえず行こうぜ。オルコットさんはどこの部屋なんだよ?」

 

 

「確かーーー」

 

 

 こうして、セシリアの部屋へと向かう三人であった

 




一夏側のヒロインとして箒が確定しています。
この後の展開で一夏がメインになる話があればそこでヒロインを増やすかもしれませんし、このまま一夏×箒になるかもしれません。

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