IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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第二十話 龍也、入学

 

 

「橘の席は織斑の隣だ」

 

 

「わかりました」

 

 

 一夏の隣の席に座る。

 

 

「まさか、また龍也と同じ教室で学生生活を送れるなんてな」

 

 

「こっちのセリフだよ。まぁよろしく頼むぜ?」

 

 

「あいよ」

 

 

「橘に色々と聞きたいこともあるだろうから、朝はこれで終わりにする。1限の開始までに授業の準備をしっかりしておけよ小娘ども」

 

 

「えっ!?ちょ、千冬さ……「はい!」……まじですか」

 

 

「はは、まぁ頑張れよ龍也」

 

 

「お前も大変だったんだな……一夏」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ、橘君って織斑君と知り合いなの?」

「仲良さげだよねー」

 

 

「おう、俺と一夏は中学が一緒なんだ」

 

 

 休み時間に案の定女子生徒から詰め寄られる龍也。

 

 

「それと、篠ノ之博士のお気に入りって言われてたけど……」

 

 

「あー、いや、お気に入りというかなんていうのかな……知り合い?」

 

 

「知り合いじゃないだろ、もっと深い関係だろ」

 

 

「ええ!?それって……」

「どういう事なの織斑君!?」

「橘×篠ノ之博士キター!」

 

 

「ふ、深い関係って、変な言い回しすんなよ!ちょっと色々あって世話になってた程度だって!」

 

 

「なんだー」「つまんないのー」

 

 

 ガヤに文句を言われる。理不尽である。

 それと、決して龍也の言っている事は間違ってはいないのだが、それをこっそり見ていた(監視していた)束は頬を膨らませていた。

 

 

「ーーーちょっといいか」

 

 

「ん?えっと」

 

 

「ああ、そいつは篠ノ之 箒。俺の幼馴染なんだ」

 

 

「そうなのか。……ん?篠ノ之?」

 

 

「単刀直入に聞く。何故貴様が姉さんと知り合いなのだ!?」

 

 

「…………え?束さんの妹?」

 

 

「え、龍也知らなかったのか?」

 

 

「あ、ああ。妹がIS学園にいるなんて一言も……」

 

 

 いや、そういえば束さんが製作してたISがあったな。あれはこの子に渡す為だったのか、と今更気づいた龍也。

 

 

「質問に答えてもらおうか、橘」

 

 

「あー、えっと、なんて言ったらいいのかなぁ」

 

 

 すぐに答えられるような内容ではない為言い淀んでしまう。

 すると、そんな龍也を見かねた一夏が助け舟を出す。

 

 

「箒。実は、前に箒に話すって言ってたことと関係あるんだ」

 

 

「!そうなのか……?」

 

 

「一夏、この子に話してたのか」

 

 

「詳しくはまだ、な。でももう話しても大丈夫だろ」

 

 

「そっか。じゃあ、篠ノ之さん?そこの所も含めてあとで3人で話せないかな?」

 

 

「……いいだろう。一夏も、話してくれるという事でいいんだな?」

 

 

「ああ。と言っても龍也が話す事で大体片付いちゃうような気もするけどな」

 

 

「わかった。そういう事なら私は席に戻る。また後でな」

 

 

 納得した様子で席に戻る箒。

 ちなみにセシリアはーーー

 

 

「(あ、あの方、龍也さんといいますの?織斑さんと親しいはずでしたが、確か死んでしまわれたはずでは……も、もしかして、幽霊!?)」

 

 

 ーーーと、自分の席で聞き耳を立てながら内心貴族らしからぬビビり方をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、また次の休み時間。

 今度は別の女子生徒が席を立ち上がった龍也の元へ。

 

 

「ねぇねぇ〜ちょっといいかな〜」

 

 

「ん?」

 

 

「私のことおぼえてる〜?」

 

 

「え?えっと……」

 

 

 じーーっと凝視する。

 どこかで……と思い出す一歩手前までは来ているのだが、肝心なところが思い出せない。

 

 

「そんなにみられたらてれちゃうよ〜///」

 

 

「…………あっ!?」

 

 

 恥じらう少女。

 

 

 それを見て思い出した、この子はーーー

 

 

「ーーーもしかして、本音ちゃん!?」

 

 

「やっと思い出してくれた〜そうだよ〜」

 

 

「まさかこんなところで会えるなんて思わなかったよ!久しぶりだね、本音ちゃん!」

 

 

 そんなやりとりを見ていた一夏が2人に声をかける。

 

 

「龍也、のほほんさんと知り合いだったのか?」

 

 

「おう、まぁちょっとな」

 

 

「どこで知り合ったんだ?」

 

 

「確かーー」

 

 

 だが、龍也の声に割り込んで本音が喋り始める。

 

 

「えっとね〜私が中学2年生の時に〜」

 

 

 そして、龍也の右腕に抱きつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーナンパされちゃったんだぁ///えへへ〜///」

 

 

 ピキッ、とクラス中の空気が固まる。

 

 

「ちょ、本音さん!?ナンパなんてしてないよね、俺!?」

 

 

「え、あの本音が……」「橘君って意外とチャラいのかな?」「本音をあそこまで骨抜きにさせるなんて、意外とやるんじゃない!?」と好き勝手に噂される始末。

 

 

「龍也、お前……」

 

 

「一夏まで!?俺そんなことしないってわかってるよね!?」

 

 

 すると、左肩を掴まれる龍也。

 

 

 恐る恐る振り返る。

 

 

「よ、よお、鈴、なんで1組にいるんだよ……?」

 

 

「休み時間になってなんかいやーな予感がしたから来てみれば……どういうことか説明してもらえるかしら?」

 

 

 後ろには般若《鈴》

 

 

 右横には小悪魔《本音》

 

 

「(な、なんでこうなったぁぁぁぁ!!)」

 

 

 ーー男の叫びは、誰にも届かない。

 

 

 だって口に出してないんだもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廊下を駆け足で歩く鈴。

 あの後、ナンパは誤解だということがわかり、事なきを得たのだが鈴の内心は穏やかではなかった。

 

 

「(もう!なんなのよ!あんなに龍也にベタベタして‥‥龍也も龍也でデレデレしてるし!)」

 

 

 イライラしているが、自分が何故そうなっているのかわからない。

 

 

 そして少しずつ歩くペースが落ちていく。

 

 

「(………龍也が帰って来たんだから、それでいいじゃない。何を悩んでるのよあたしは!)」

 

 

 頭をむしり掻く鈴。

 

 

 

 

 結局この日、鈴はもやもやする自分の気持ちを落ち着かせることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、自室でベッドに寝っ転がり気分を良さそうにしている1人の少女。

 布団の気持ち良さもあるがそれとはまた別の理由で頬を緩めていた。

 

 

「(えへへ〜またりゅ〜くんに会えたよ〜///)」

 

 

 かつて自分を助けてくれた恩人。

 1日の間彼と一緒に色々なところを歩き回った思い出が蘇る。

 それは、本音にとって大切な記憶だった。

 

 結局その日は、どこに住んでいるか、どこの学校に通っているかもわからないまま別れてしまった。

 

 

 つい教室では変なことを口走ってしまったが、それに慌てふためく彼を見れたのは貴重な経験だった。

 

 

「(ん〜〜ん〜〜)」

 

 

 言葉にならない感情を隠すこともないまま枕に顔をぐりぐりと押し付ける。

 

 

「(ーー仲良くなれるかなぁ)」

 

 

 

 

 ーー少女の夜は更けていく。

 




⇒『布仏 本音』がログインしました。かわいいよのほほんさん。

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