IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

19 / 54
Dの戦士 / その力、誰の為に振るうのか

 

 

 

 

 

 

 突如現れたもう一人の乱入者に、目を見開く千冬。

 

 

「なっ、全身装甲《フルスキン》のISだと!?」

 

 

「いいえ、織斑先生!IS反応ではありません!!」

 

 

「何だと!?では一体……」

 

 

 はっとする千冬。

 

 

「まさか、いやそんなことは………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………』「…………」

 

 

 睨み合う乱入者同士。

 いや、睨んでいるのは後から来た者だけか。

 

 

『(……鈴は、一夏を助け出したか)』

 

 

 こちらが何かしら行動《アクション》を踏まなければこの無人機は行動を起こさないと知っている。

 

 

『(束さんめ……後でお説教だぞ、まったく)』

 

 

「…………」

 

 

『さて、無人機さんよ』

 

 

 剣を向ける。狙いはもう一人の乱入者。

 

 

 

 

 

 

『ーーー俺のダチを傷つけたのは、許さないぜ?』

 

 

 無人機からレーザーが放たれる。

 だが、それを剣で叩き落とす。

 

 

『ふっ、はぁぁぁっ!』

 

 

 急接近からの急旋回、そして下から剣を振り上げる。

 だが鈴同様、大したダメージは入らない。

 

 

「…………」

 

 

 無人機から放たれたレーザーを躱す。

 

 

『おっと、危ねえな、ったく。

 

 

  ……こんな距離で当たったら死んじまうだろ?』

 

 

【ダークネス】は剣を捨て無人機を殴りつけ吹き飛ばす。

 

 

『パンチ力には自信あるんだよ、悪いな』

 

 

 だが、すぐに起き上がる無人機。

 

 

 次にハンドガンと同じサイズの銃を二丁呼び出す。

 

 

『ーーーほらよ!』

 

 

 銃から放たれるのはエネルギー弾。

 

 

 しかし当たりはしてもやはり目立ったダメージにはならない。

 

 

『(やっぱり、こいつを倒すなら一撃でケリをつけるしかないか)』

 

 

【ダークネス】は腰のベルトに刺さっているメモリを、横にあるスロットに入れる。

 

 

『さっさと、終わらせるッ!』

 

 

 

 

 

 

『『Darkness,Maximum Drive !!』』

 

 

 

 

 

 

 

 6枚の羽が、開いた。

 

 

 

 

 

 

『ライダー……キック!』

 

 

 

 

 宙に舞い上がり、足に闇の瘴気を纏い無人機へと一直線に蹴りを放つ。

 

 

 無人機はそれを拳で受け止める。

 

 

「……………」

 

 

『うおおおおおおおおっ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

『負けるわけには、いかねえッッ!!!!』

 

 

 蹴りが、拳を押し退ける。

 

 

 そしてーーー

 

 

 

 

 

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』

 

 

 

 

 

 ーーー無人機を、貫通した。

 

 

 

 

 

 

 勢い余り、地表を削りながら地面を足で滑る。

 

 

 

 

 

 

『……………俺の、勝ちだ』

 

 

 無人機は、音を立て爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やった!やりましたよ織斑先生!」

 

 

 そう喜んでいるのは、管制室に来た山田真耶。

 

 

「………ああ」

 

 

「……なんなんだ、あいつは」

 

 

「(……ッ!黒い全身装甲《フルスキン》……!まさか、あれが?)」

 

 

 突如現れ乱入者を倒してしまうもう一人の乱入者。

 箒は疑問を浮かべ、セシリアは推測を立て、そして千冬は何とも言えない表情をする。

 

 

「(本当に、生きていてくれたのか?お前は)」

 

 

 答えの出ない考えをしている千冬は、アリーナを見つめるだけ。

 

 

 そしてーーー

 

 

「なっ……!」

 

 

 ーーー再び、その目が見開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………』

 

 

「なんなのよ、あんた」

 

 

 気を失っている一夏を抱える鈴の元へと無言で歩いてくる全身装甲《フルスキン》。

 

 

「…………え、っ?」

 

 

「………鈴」

 

 

 ーーー男は『変身』を解いた。

 

 

 鈴は、この男を知っている。

 

 

 かつて共に笑い、決して短くない時を過ごした、『今は亡き少年』。

 

 

 『橘 龍也』本人だと、すぐにわかってしまった。

 

 

「怪我はないか、鈴」

 

 

「だ、れなのよ。あんた」

 

 

「……俺の顔を忘れたか?同級生だろ」

 

 

 

 

 

「違うッッッッ!!!!!」

 

 

 叫ぶ鈴。

 

 

「龍也は、もう死んだの!!」

 

 

 認めては、いけない気がしたから。

 

 

 もしここで龍也が生きていると認めてしまえば、一夏の、鈴の今まではなんだったのか。

 

 

 

 

 

 そして何より、死んだと決めつけ忘れようとしていた自分を許せないから。

 

 

「もう、ぐすっ、楽にしてあげてよぉ、龍也を………」

 

 

「…………ッ」

 

 

 ーー鈴は、ここまで俺を想ってくれていたのか。

 

 

 ーーこんなになるまで鈴を、一夏を苦しめていたのか、俺は。

 

 

「鈴」

 

 

 龍也は鈴の前に膝を下ろし、身体を自分の胸へと寄せ、手で頭を優しく撫でる。

 

 

「ごめん。ずっと、黙ってて。俺はここにいる。

  俺は………今ここで生きてるよ、鈴」

 

 

 命の音を感じる。

 

 

 暖かくて落ち着く心臓の鼓動の音が。

 

 

「だからもういいんだ。今は、ゆっくり休め」

 

 

「(ああ、龍也……よかった。本当に、生きてて、くれたんだ………)」」

 

 

 安堵の涙を流し、鈴は龍也の腕の中で意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ……ったく、二人揃って呑気な顔して寝やがって」

 

 

 悪態をつきつつも、その顔は笑顔であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー扉のロック、解除できました!織斑先生!」

 

 

「ご苦労、山田先生」

 

 

 ロックが解除されたアリーナへと続く扉を開ける千冬。

 

 

「き、危険です!織斑先生!」

 

 

「大丈夫だ。君はここで待っていろ」

 

 

「あっ!ちょっと……もうっ」

 

 

 アリーナへと到達する千冬。

 二人を優しい目をして見つめている少年へ、声をかける。

 

 

「………龍也、なのか?」

 

 

「おっと、もう来たんだ千冬さん」

 

 

 驚いた様子の少年。

 

 

「そうだよ、正真正銘本物の『橘 龍也』です」

 

 

 いえーい、とこちらに向けてピースをする少年。

 どこぞの天災を思い出させるその動作。

 

 

「……………」

 

 

「あ、あれ、面白くなかったですかね……ってうわぁっ!?ち、千冬さん!?」

 

 

「………ッ!よかった……!お前が生きててくれて……!」

 

 

「………千冬さんも、忘れないでくれてたんですね」

 

 

「当たり前だ……!一瞬たりとも、お前のことを忘れたりなんてしなかったさ……」

 

 

 少年の元へ駆け寄り、抱きしめる千冬。

 

 

 強く、もう離さないと言わんばかりに力強く。

 

 

「あの時は、すいません。いきなりあんな状況で電話して」

 

 

「本当だ、全く。突然意味のわからないことを言われ、挙げ句の果てに『ある場所』に『ある物』を置いておくから取りに来てくれだの………そのまま、死んだことになってしまうし」

 

 

「すいません、すぐに出てくるわけにはいかなかったんです。

  だから、束さんに一役買ってもらいました」

 

 

「やはり束か。だが、どうしてお前が束と接点を持っている?知り合いではなかったはずだろう」

 

 

「その話も、詳しくは後ほど。今は、立派に戦った二人を保健室へ運んであげましょう」

 

 

「ああ、そうだな。じっくり聞かせてもらうぞ、今までのこと」

 

 

「はは……お手柔らかに頼みますよ」

 

 

 二人は一夏と鈴を担ぎ、アリーナを後にした。

 

 




龍也が消えた『あの日』や、束とクロエとの1年間の生活の様子などは番外編にして投稿したいと思います。




IFで絶望胸糞鬱ルートも書こうかな‥‥?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。