IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界-   作:陽夜

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今回から鈴編ということで。



鈴は原作と違い中学1年の始めに転入してきて、その後中学3年の始まりと同時に中国へ帰ったという設定です。
キャラ紹介の方にも、龍也の欄にそう書いてありますので。


第2章 Another one of the Avenger 〜side 凰 鈴音〜
第十二話 中国からの転校生


 

 

 

 

 

 

「ーーそれでは、今日の授業はここまでにする。先ほど出した課題は、来週までにやって山田先生か私に提出するように。遅れた者には罰を与えるからそのつもりでな」

 

 

「(ああ、やっと終わった………)」

 

 

 昼休み前最後の授業が終わった。

 元々勉強の要領がよくない一夏には、IS学園の授業は非常にレベルが高いためただでさえ厳しい。ついて行くので精一杯だ。

 その為、中学生の時は、テスト前になる度に鈴と合わせて二人でよく龍也から教えを乞うたものだ。

 

 

 勉強以外はなんでも出来る、一夏の珍しい欠点の一つと言ってもいい。

 ちなみに他は、女心をわからないという欠点だ。

 

 

「ふふ、随分お疲れのようですね、織斑さん」

 

 

「全く、だらしないぞ一夏!男なら背筋を伸ばして堂々としていろ!」

 

 

「そんなこと言ったって、ここの授業レベル高すぎて俺には厳しいよ」

 

 

 一夏がクラス代表に決まった日から、この三人はお昼に集まり食事をするメンバーになっていた。

 

 

「オルコットさんは主席入学だったよなぁ。すげえよ、尊敬するわほんと」

 

 

「そんなに敬われることでもありませんわ。貴族として当然のことでしてよ」

 

 

「む、私だって主席とはいかないが上位にはいるんだぞ」

 

 

「え!?そうだったのか!?箒も意外と勉強できるんだな……」

 

 

「い、意外とはなんだ意外とは!」

 

 

「あら、レディに失礼ですわよ織斑さん」

 

 

 いつもと変わらない日常会話をしながら、今日も変わらず食堂へ向かう。

 

 

「今日は何食べようかな。箒はまた和食か?」

 

 

「またとはなんだまたとは。

 ……さすがに毎日同じものを食べていては飽きる。今日は違うのにするさ」

 

 

「わたくしは和食には手をつけたことがありませんわ。美味しいんですの?」

 

 

「ああ、美味しいぞ。日本ならではの食材の風味や味付けがいい。一回食べてみてはどうだ?」

 

 

「そうですわね、今日は和食定食にしてみますわ」

 

 

「ここの学食なら、大体の国の料理はあるし味もしっかりしてるからいいよなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、後ろから声をかける生徒が一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 思わず足を止める。

 

 

 聴き覚えのある声。

 絶対に忘れられない、自分と同じ『目的』を持った少女の声ーーーそう、彼女だ。

 

 

「久しぶり、一夏。元気にしてた?」

 

 

「り………ん?お前、鈴か!?」

 

 

「そーよ、あんたのお友達の『凰鈴音』ですよー。

  ふふっ、驚いた顔しちゃって。びっくりしたでしょ」

 

 

「鈴………」

 

 

 目を大きく見開き、言葉が出てこない一夏。

 

 

「お、おい一夏!誰なんだこいつは!」

 

 

「随分と仲の良さそうなお知り合いのようですけれど、彼女さんか何かで?」

 

 

「か、かかかか彼女だと!?どうなんだ一夏!」

 

 

 箒が詰め寄るが、一夏はそれどころではない。

 

 

「ぷっ。あははははは!あたしが一夏の彼女?ないない!こんな唐変木の彼女なんてありえないわよ、まったく」

 

 

 そう言ってひとしきり笑う鈴。

 

 

「で、あんたも。お昼食べに行くっていうのに女の子二人も傍に添えちゃって。隅に置けないわね」

 

 

「し、仕方ないだろ、女子しかいないんだから」

 

 

「あー、それもそっか」

 

 

「………中国から転入して来る代表候補生って、やっぱり鈴だったんだな」

 

 

「あれ、知ってたんだ。

 なーんだサプライズになってなかったのかぁ」

 

 

「い、いや、十分驚いたけど……」

 

 

「と、とりあえず皆さん、食堂の中へ入りませんこと?此処にいては、他の方達の邪魔になってしまいますわ」

 

 

「それもそうね。さっさと食券買って並びましょ」

 

 

「あ、ああ」

 

 

 セシリアの発言により収拾のつかなくなっていた四人は食堂へと入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、各々がお昼ご飯を手に席へと座った。

 

 

「ふぅ、人が多いわねここの学食は」

 

 

「仕方ありませんわ、ちょうどお昼に入ったばかりですもの。もう少し時間を空ければ空いていたかもしませんが」

 

 

「……で、結局お前は誰なんだ。一夏とどういう関係だ?」

 

 

「そんなに敵意むき出しにしなくてもいいじゃない。

 そういうあんたこそ、一夏のなんなのよ?」

 

 

「わ、私は……一夏の『幼馴染』だ!」

 

 

 すると、鈴の目が面白いものを見るような目に変わる。

 

 

「へぇ‥‥あたしも『幼馴染』よ。ね、一夏?」

 

 

「いや、鈴は別に幼馴染ってわけじゃないだろ?中学からの仲なんだし」

 

 

「あら、そうなんですの?」

 

 

「そういえば自己紹介が遅れたわね。

 あたしは凰 鈴音。今日から2組に転入したからよろしく。後、一応『中国の代表候補生』をやってるわ」

 

 

「………!そうですか、貴女が……」

 

 

「彼女を知ってるのかセシリア」

 

 

「ええ。少し前に、僅か一年足らずで代表候補生になった、中国の期待の新人がいると話題になりました。

 もしや、貴女のことでは?凰さん」

 

 

「あーそんな風にも言われてたかな、そういえば。

 それと、凰さんなんて固い呼び方じゃなくていいわよ。『一夏の友達』なんだし。気軽に鈴って呼んで。

 あんたはイギリスのセシリアだったわね代表候補生の……それと、あんたは?」

 

 

「………篠ノ之 箒だ」

 

 

「そ、箒。よろしくね」

 

 

 それぞれの自己紹介が終わった。

 一夏が話しかける。

 

 

「………帰ってきたんだな」

 

 

「……まぁ、ね。

 どの道いつかは日本に来てたから、それが今だっただけよ」

 

 

「なんで、IS学園に来たんだ?」

 

 

「それはこっちのセリフよ。なんで初の男性操縦者になんてなってるのよ?」

 

 

「ははは……ま、まぁ、ついうっかりISに触っちまったというか……」

 

 

「………また、一夏らしいというかなんというかね、ふふ」

 

 

 二人の空気は、久しぶりに会ったとは思えないほど仲が良いのを感じさせるものであった。

 すると、セシリアが鈴に問いかける。

 

 

「あの、鈴さん。鈴さんは織斑さんと中学からのお付き合いだということですが」

 

 

「ん?ああ、そうよ。さっきこいつが言った通り」

 

 

「それで、中学の時の織斑さんはどのような方で?」

 

 

「ちょ、オルコットさん!?」

 

 

「む、それは私も気になるぞ。私がいなくなってからの話は、まだ聞いたことがないからな」

 

 

「えー中学の時の一夏かぁ」

 

 

 鈴は首を上に傾け、目を細める。

 

 

「見た感じ、あんまり今と変わってないんじゃない?

 誰かが困ってるとすぐに助けに行ったり、女の子が重い物持ってると代わりに持つってその子のところに行ったり。街中の裏道でナンパされてる女の子がいた時なんかも、わざわざ助けに行ってたくらいよ」

 

 

「あー……それは……」

 

 

 セシリアが一夏を見る。

 ここ数日、一夏と行動を共にしているセシリアだが、今鈴が言ったこととほぼ同じ状況に全く同じことをしていたからである。

 

 廊下で会ったクラスの子が授業の教材(重めの機材)を先生に頼まれ運んでいる時も、隣の子が授業の教科書を忘れてしまった時も、自分が率先して重い物を持ち、教科書を見せてあげていた。

 

 

「いや、だってそれくらいは俺がやるべきだろ?クラスに男子は俺しかいないんだし」

 

 

「あんたはお節介が過ぎるのよ。昔からね」

 

 

「(その通りだな)」

「(その通りですわね)」

 

 

 お節介が過ぎるという点には、完全同意の二人であった。

 

 

「ったく、なんで持ってたか知らないけど、櫛を女の子に貸してあげるって言った時はさすがにあたしも少し引いたわよ。

 

 

 

 ……龍也にも止められてたしね」

 

 

「(…………ッ!!今、鈴さんは『龍也』とおっしゃいましたか……!?)」

 

 

 まだ一夏と互いのことを話してから日もそんなに経っていない為、話の内容は細かく覚えていたセシリア。

 

 

 確か一夏と、一夏の『もう一人の友人』の殺された友の名前が、『龍也』だったはずでは、と。

 

 

「朝急いで支度してる時に間違って千冬姉のをカバンに入れちゃったんだよ、あれは」

 

 

「そんなことだろうと思ったわよ」

 

 

「あ、あの、織斑さん?鈴さん?今名前が挙がった、龍也さんという方は?」

 

 

「あー……んー、なんて言ったら良いのかな」

 

 

「………オルコットさん、その話詳しくは、また後で良いか?」

 

 

「え?あ、は、はい」

 

 

「……後で、何処かで話そう、鈴」

 

 

「……いいわ。元より、あたしもそのつもりだったからね」

 

 

「……さ、そろそろ食べよう。昼休みの時間が勿体無い。ほら、箒も早く!」

 

 

「あ、ああ」

 

 

 少し長話をしてしまった四人。

 各々が食事を始めた。

 

 

 だが、セシリアは一つの確信を得ていた。

 

 

「(間違いありませんわ、鈴さんは織斑さんがおっしゃっていた、『その場にいたもう一人の友人』、つまり……

 

 

 

 

 ーーーーもう一人の、復讐者ですわね)」

 


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