IS Avenger's Story -復讐が渦巻く世界- 作:陽夜
一夏達が中学二年生、鈴ちゃんが転校前の時系列です。
それでは、どうぞ。
ーーーある日、一人の少年が、死んだ。
【橘 龍也《たちばな りゅうや》】ーー普通の中学に通う、至って普通な男子生徒。
当時わずか14歳であった、少年が。
それは、決して事故などではなく、他人に命を奪われて、死んだ。
ISーーインフィニット・ストラトスによって。
女性にしか乗ることのできない、【兵器】となってしまった、篠ノ之束の、夢の結晶によって。
罪を犯したわけではない。
ただ、力を、人々の平和を守る力を持っていた。
だが、それを一部の者は許さなかった。
自分達の理想ーーまたは、野望には不必要だと。
ISを使い、思うがままに傍若無人を働く人々。
《女性権利団体》
女しかISに乗れないのをいい事に、男を見下し、女を優位に立たせようとする人達がいた。
何処からやって来たか、何故ISと戦うのか、全てが謎に包まれた仮面の戦士ーーー『仮面ライダー』と呼ばれる存在を。
ーー《女性権利団体》は、許さなかった。
そして、命を狙われ、戦いの果てに、死んだ。
それを知った、とある少年・少女は、嘆き、叫び、悲しみ、
そして絶望した。
ーーそんなの、一つとして知らなかった。
ーー俺たちの知らないところで、そんなことになっていたなんて。
ーーずっと、ずっと戦っていたなんて。
ーーどうして自分達の友人が命を奪われなければならないのか。
ーーどうして世界は彼に味方しなかったのか。
ーーどうして誰も、彼を救ってはくれなかったのか。
ーー俺たちが見ていないところでも、そうだ。
ーーきっと彼は、今まで何度も平和を守ってきたのではないのか。
ーーそんな彼のために、何かしてやれたのではないのか、と。
「……強く、ならなきゃいけない。
千冬姉も、鈴も、俺が、守れるように。
もう誰も、失わないように。
力を……」
少年は決意した。強くなることを。
「……私だって」
「守られるだけじゃ、ダメなんだ」
「私自身の力で、みんなを……」
「守れるだけの力を……」
少女は覚悟した。力を手に入れることを。
少年は、彼が残した、ーーーーーの力を受け継いで。
少女は、この世界を変えた、ISを使って。
彼を殺した、世界の悪意に対して、抵抗するために。
そしてーー彼を殺した悪意に、復讐するために。
後に、IS学園で再び出会うこの二人の、
二人の時間は、今、止まった。
もう決して動き出すことは、ないはずだった。
ーーこれは、死んだ少年の背中を見続ける、過去に囚われた二人の少年・少女の時間を。
死んだはずの少年が動かす。
救済の、物語である。