鬼岩城にて。
氷と炎が合体した魔物、老いた魔族、鎧をまとった剣士、フードを被った男、背中に長剣を背負った男、斧を持った獣人が歩く。
「…また全軍団長集結とは。」
「全くのう。」
「バーン様のお言葉は、全てに優先する」
「リンガイアへ向かう直前に呼び戻されるとは、な」
「この前全員揃ったばかりだというのに、何かあったのか?」
「まぁ、行くしかあるまい」
軍団長がお披露目した場所に、再び集う。
ややあって、六芒星の中心にある像の両眼に光が宿る。
『…全員揃ったようだな。地上制圧として、百獣魔団はロモス、不死騎団はパプニカ、、氷炎魔団はオーザム、妖魔士団はベンガーナ、魔影軍団はカール、超竜軍団はリンガイアを任せていたが…刻限を定める』
「こ、刻限ですかっ?!」
『そうだ。今から三か月後までに、制圧を完了せよ』
「さ、三か月?!」
意図が読めない5人の軍団長とハドラー。
ミストバーンは三か月後に討ち取られたという夢に対する意趣返しと即座に気が付くが沈黙を保つ。
『遅れは許さぬ。例えば、クロコダインよ、そなたは三か月以内にロモスを落とせば良し。だが…他の戦線で苦戦する軍団が出て来るやも知れぬ』
「そ、それは…」
クロコダインは言葉を濁す。バランはかなりの手練れだが、それでもリンガイアはかなり苦戦するだろう。
その実力は未知数だが、ミストバーンが担当するカールは勇者アバンを輩出した騎士団を擁するかなりの難敵だ。
『もしも、三か月後にも制圧が完了していない王国があった場合、その者も含めて罰を与える』
「ば、罰?」
『そうだ、フレイザードよ。』
突如、すさまじい業火が軍団長の前に現れる!
「ひょ、ひょげええええええ?!」
「ぬぅっ?!」
「なっ…」
凄まじい熱気、フレイザードの氷の半身は既に溶け始めている。
ややあってその業火は消えるが、一同の顔色は悪い。
『この炎が直撃する事となる。一人でも期限までに担当地域を制圧できなかったという失態を犯せば…な』
押し黙る5人の軍団長、ミストバーンは黙したまま。
本来、地上制圧は自分一人でも十分、魔王軍は余興のつもりだと聞いていたが…
思えば、忠誠心を見込んだクロコダインはロモス攻略に余り乗り気ではなかったようだが…その顔に浮かぶ汗を見る限り、やる気を出したようだ。
他人にこびへつらうザボエラも、追い詰めれば自分の手足を動かすだろう。
そして、先ほどの冷酷さを目の当たりにしつつも、軍団長だけと言う言葉に内心ホッとしたハドラーに、絶望的な言葉がかけられる。
『無論そなたもだ、ハドラーよ』