もしもバーン様が逆行したら?   作:交響魔人

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ダイ大の人類が嫌いと言う訳ではありません。あしからず。


ベンガーナ崩壊!

 ベンガーナ王都は混迷のただ中にあった。

 妖魔士団の猛攻。魔法を得意とする彼らにより、砲台は潰えている。

 燃え上がる街で、消火活動を行う部隊は先ほどの戦闘で狙い撃ちにされた。

 

 

 その復興もまだ癒えて居ないにも関わらず、再度の猛攻。

 隊長格と副官クラスがメダパニで混乱させられ、指揮系統が崩壊。まともに動ける兵士は魔法で打倒され、敵はその場を離れる。

 

 

 ザボエラは精鋭を率い、王宮を狙う。倒すべきは、クルマティッカ七世。

 奴を討てば、ひとまず首は繋がる。

 

 

「キィ~ヒッヒッヒ!」

 

 ザムザの担当はベンガーナ市街。ここを抑え、ベンガーナ王を追い詰めるのが任務だ。

 

「お、おのれっ、魔王軍めぇ!」

「またお前か」

 

 彼の前に対峙するのは、アキーム。

 

「フン、その頭…先ほどの失態で頭を丸めたか?」

「俺は元々こういう髪型だ。今日でお前は終わりだ!魔法が得意ならば、こちらも魔導で対処するまで!」

「ほぉ」

 

 

 人間の魔法使いが現れる。

 

「我が名はフォブスター。魔王軍の手先め、覚悟するがいい!」

「魔法戦でこの俺に挑むとはな。キヒヒッ、いいだろう、遊んでやる!」

 

 

 その様子を見、アキームは配下に命じる。

 

「よし、奴らの戦いが白熱してきたら、矢で射止めるぞ」

「砲台が潰されていなければ…」

「いうな。砲台を狙ったという事は、それだけ恐れているという事。ならば飛び道具で討ち取ればいい。頼むぞ、ヒルト殿」

「任せて置け!」

 

 

 互いに対峙し、にらみ合う。先に動くのはザムザ!

 

「メラゾーマ!」

「ヒャダインッ!」

 

 炎と冷気がぶつかり、消滅する。

 

「ちっ、イオラッ!」

「バギマッ!」

 

 

 逸らされたイオラは後方へ流れ、誰かを巻き込む。

 

「う、うわぁああああああ!」

「ひ、ヒルト殿?!」

 

 

 横目で見ると弓矢を持っている狩人だった事で、アキームの策をザムザは見破る。

 フォブスターの魔力は互角、そして敵は狙撃を狙っている…ならば…

 

「キヒヒッ」

「くっ、こいつ出来る…」

 

 フォブスターは眼前の相手しか見えて居ない。魔力で互角である以上、よそ見は出来ない。

 

 

 

 その場は地獄になっていた。風が吹き荒れ、爆裂魔法が炸裂し、炎と冷気が舞い踊る。その中でザムザは冷静にフォブスターと戦っている。

 

(こいつは気が付いて居ないな)

 

 ザムザが攻撃魔法を放ち、フォブスターが逸らした時。その先には必ずベンガーナ兵が居る。

 フォブスターが躱しせば、その先に瀕死のヒルトが居る。

 狙撃しようにもフォブスターが邪魔になるよう、ザムザは動いていた。

 

「ぐっ、ま、魔力が!」

「終わりだぁ!メラゾーマァ!」

「ぐわぁあああああああ!」

 

 絶叫を上げて倒れるフォブスター。彼は最後の最期まで気づかなかった。

 この場に人間は一人も生き残っていない事を。

 

 

「…抵抗は止んだか。市街地は制圧完了、だな」

 

 ザムザはトベルーラで空から見下ろす。

 残るは王宮。

 

 

 

 

 ベンガーナ王宮。かつては財力に物を言わせた豪奢な城は無残に焼け落ちる寸前。

 

「キィ~ヒッヒッヒ。王宮は無残に焼け落ち、家臣は逃げ出した。のう、ベンガーナ王」

「……」

 

 対峙するのは、ベンガーナ王。経済力で世界の覇者とならんとし、そして今まさに潰えようとしている。それでも傲然と玉座に座っている。

 

「ほう、まだ策があるようじゃな?」

「賭けに勝つコツは、最後の最期まで自身の勝利を疑わぬ事よ!」

「?!」

 

 ベンガーナ王の後ろにかかった国旗を破り、巨大なロボットが出現する。

 

「こ、これはぁ?!」

「フハハハハ!パプニカ王国の司教に高い金を払って手に入れた兵器!魔王ハドラーが使っていた兵器だ。自分の仲間の武器で死ぬがいい!」

 

 敵の指揮官クラスをおびき出す為の餌として、ベンガーナ王は自身を囮にザボエラを誘いだす。その計略は成功した。

 

「ハドラー様の兵器、か。参ったのぅ…」

「そうだろうそうだろう!」

「壊してしまったらご不興を買うのぅ。まぁ、誰にも知られずに始末すれば良いか」

「何を戯言を!やれっ!」

 

『はいっ、父上!』

 

 ベンガーナ王子が操るキラーマシーン。かつてハドラーがアバン抹殺の為に開発した旧魔王軍兵器は時を超えて、新生魔王軍の前に立ちはだかる。

 

「バギクロスッ!」

『うわぁああああああ?!』

「な、何ぃ?!」

 

 ザボエラが放ったバギクロスを受け、あっさり転倒して吹っ飛ばされる。

 だが吹っ飛ばされただけで、まだ壊れて居ない所を見てザボエラは舌打ちする。

 

「チッ、まぁ良いわ。子供は親に逆らえぬしの…」

「な、何を…」

 

 クルテマッカが最期に見た光景は、ザボエラの爪が自身の腕に刺さる瞬間だった。

 

 

『くそっ…だが、こんな事では負けない!父上と母上、そして双子の妹の為にも…』

「威勢はいいのぅ、じゃがワシと戦う前に、こやつと戦って貰おうか」

『?!新手か!だがこの兵器の前に』

 

 そこまで言って、言葉が途切れる。

 実の父が剣を振りかざして襲ってきたからだ。

 

『?!ち、父上!くそっ、メダパニか!』

「さてどうかの…ワシは特等席でベンガーナ王家の親子喧嘩を見せて貰おうかの…キヒヒ」

 

 ザボエラに何かされたと思われる父と、息子は戦いを始める。

 クルテマッカは決して強力な戦士では無い。キラーマシ―ンの敵では無い。だが実の父と殺し合いする気にはなれないため、動きは鈍い。

 その間にも、クルテマッカの攻撃は一点を集中して襲う。

 

 

 こんな戦い方はメダパニでは出来ない。錯乱されているのに一点を集中して攻撃する芸当はどんな戦士にも不可能。ザボエラ自身の体内には数百の毒素があり、それを調合した物をクルテマッカに注入した。これにより彼は、意のままに動く木偶の棒に成り下がった。

 

『くそっ、くそっ、くそぉ!父上!申し訳ありません!』

 

 ベンガーナ王子は泣きわめきながら剣を振り下ろす!

 断末魔を上げて、ベンガーナ王は動きを止める。

 

「ほぉ…実の父を殺すか」

『黙れ黙れ黙れぇ!お前さえ、お前達さえいなければぁ!』

「さて、そろそろトドメをさすかの…ベギラゴン!」

 

 ザボエラはベギラゴンを放つ。キラーマシーンの装甲があれば耐えられると思っていたベンガーナ王子だったが

 

『うゎあアアアアアアア?!』

「阿呆が。」

 

 一点を集中させたのは、その装甲を貫く為。

 操縦者である彼が父殺しの直後で精神的に不安定になっている点を突き、ザボエラはキラーマシーンを容易く攻略した。

 

 

「これで終わりじゃの…さて、ハドラー様に報告じゃ」

 

 悪魔の目玉を呼び寄せ、ザボエラは報告をする。




ハドラーはキラーマシーンでアバンを討ち取れると思っていたのか謎。多少は疲弊させられるでしょうが。

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