もしもバーン様が逆行したら?   作:交響魔人

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おお、はどらーの胃よ!しんでしまうとはなさけない!

「報告を聞こう。ヒュンケル」

「…パプニカ王女への追撃の為、準備中だ」

 

「…フレイザード」

「後は王都とオーザム王国軍を残すのみ、包囲を敷いて居る最中」

 

「ザボエラ」

「ベンガーナに損害を与えた、まだ秘策もある。心配は無用じゃ、ハドラー様」

 

「…ミストバーン」

「カール王都は落とした…女王と近衛兵を追っている」

 

「バラン」

「ふっ、リンガイアはもう潰した。だが今は少々休ませねばならん」

 

 リンガイア陥落、という吉報はあった物の報告を聞いたハドラーは腹を押さえて倒れ込む。慌ててアークデーモンが胃薬と水を持ってくる。

 

「はぁっ、はぁっ…ま、まずいまずい!リンガイアは落ちたが、他はまだか!クロコダインへの増援として他の軍団を動かす必要があると言うのに」

「落ち着いてくださいハドラー様、まだ時間はあります」

「ふ、ふざけるなぁああああ!」

 

 激昂するハドラー、顔にはびっしりと脂汗が浮かび、頭をかきむしる。

 

「三か月!三か月しか、否、もう三か月もないのだぞ!査察に行かねばならぬ…」

「なるほど。直接見る事で現状を把握すると」

 

 感心するアークデーモン、その凡庸な態度にハドラーは若干落ち着く。

 次のセリフを聞くまでは

 

「それで、最初はどこの戦線でしょうか?」

「それを今!悩んでいるんだろうがぁあああああ!くそっ、クロコダインとフレイザードから見るべきか?ザボエラは策があると言う、ヒュンケルはあの鎧で魔法使いに遅れは取るまい。バランは放置だ」

 

 考えこむハドラーに、アークデーモンは小首をかしげて呟く

 

「あの、ミストバーン様は?」

 

 その空気の読めない指摘に、ハドラーは歯ぎしりする。

 

「王都を落としても女王を取り逃がす、となるとかなり苦戦しているのでは?カールの騎士団は精強と聞いておりますが…」

 

 バーン様のお覚えが良い軍団長が居る。ミストバーンとヒュンケル。

 かつて自分が倒せなかった王国の騎士団。

 それを始末出来るか否かはかなり気になるがかといって最初に査察に行けば、バーン様のお気に入りを六大軍団長の中で一番信頼していないと明言するような物である。

 

 

「やはりですね、ここは一番最初に気になるカール王国の戦線を査察、そのままベンガーナ戦線、パプニカ戦線、ロモス戦線、最後にオーザム戦線という順番で行けば移動時間もスムーズに」

 

 世界地図を指示しながら、「私、良いアドバイスしています!」とドヤ顔で言うアークデーモンの前で、ハドラーは静かに床に倒れ込んだ。

 

 

 ただ、彼が倒れている間に、北方のオーザム王国では動きが起きていた…

 

 

 

 オーザム王国にて

 

「ちっ…」

「引き上げよ!」

「……」

 

 数度にわたる交戦で、フレイザードは冷静にメアリーの戦略を読み切っていた。

 

 

「…ふ、フレイザード様!アレを使っては?」

「阿呆、なんで連中が時間稼ぎをしていると思っている。増援が来るからだ」

「なっ?!では我々は挟撃を受けて」

「増援ごとまとめて、アレに嵌める。その時こそ、アイツラの最期だ。」

 

 それなりに苦戦させられたが、これで終わりだ。

 彼の前で吹雪が吹き荒れる。

 

 

 翌日。

 

「ふ、フレイザード様ぁ~!」

 

 部下の声色から大体の状況を察するフレイザード。

 

「来やがったか、増援共。」

「はぁ、はぁ。リンガイアの北の勇者を名乗る子供が、部隊を連れて攻めてきます!」

「よし、アレの準備だ。お前らはそのガキと俺が戦い始めたら予定しているポイントへ向かえ、

俺がそいつを派手に戦う。そうなればあの女もやってくる…そこを」

「まとめて始末、ですか…」

「そういう訳だ。合図を待て」

 

 

 

 

 リンガイアからオーザム王国への救援として向かったノヴァは、見た事も無い怪物と遭遇する。半身が氷で、もう半分が炎の化け物。

 

「お前は」

「魔王軍六大軍団長、氷炎将軍フレイザードだ。」

「僕は北の勇者、ノヴァ。化け物め、覚悟!」

 

 ノヴァとフレイザードが激突する。剣技で応戦するノヴァと体術で応戦するフレイザード。やがてメラ系を使い始め、それに対抗するべく、ノヴァはマヒャドを使うが…

 

 マヒャドにフレイザードの氷の手が触れると、氷の部分が大きくなっていく!

 

「?!呪文のエネルギーを吸収しているのか!」

「クカカカッ、そらそらどうしたぁ!」

 

 直後に、フレイザードはその場から大きく跳躍し、後ろに下がる。

 先ほどまでフレイザードが居た場所に穴が出来上がる。

 

「これはイオラ…」

「外したか、リンガイア王国の方ですね?」

「あ、ああ。僕はノヴァ。北の勇者!」

「感謝します、私はオーザム王国軍所属のメアリー。こいつが先日より我が国を脅かす魔物の指揮官です。」

「やはりそうか。」

 

 これで圧倒的に有利になった、この機を逃さずに仕留める。そう思うメアリーの前で、フレイザードは笑う。

 

「かかったな阿呆が!氷炎爆花散!」

「「?!」」

 

 驚くメアリーとノヴァの前で、フレイザードの身体がバラバラになって襲い掛かる!

 回避能力が高いメアリーも回避しきれずダメージを受け、ノヴァも少なくないダメージを受ける。二人の前で、フレイザードの身体が元に戻る。

 

 

「ぐっ…まだこんな隠し技を」

「だが、耐えられない程では無い!」

「ククッ、さぁて、地獄のバトルの始まりだぁ!」

「何を言って」

 

 

 当惑するノヴァ。直後に地震が発生する。

 

「?!なっ!じ、地震?!我が国で地震など起きた事などないはずなのに!」

「貴様、一体何をした!」

「ククク、カカカッー!」

 

 

 炎の塔と氷の塔が天を貫く勢いでせりあがっていく。

 

「これは一体…」

 

 ややあって膨大な光が周囲を包み込む。

 

 

「な、何だ!あの塔は!」

 

 説明しようとしたフレイザードだが、敵に説明してやる義理も義務も無いと思う。

 彼に余裕があれば得意げに説明したかもしれない。だがバーンが見せた炎。

 それはフレイザードから余裕を奪い、代わりに非情さをもたらしていた。

 

 

「この距離なら外さない!イオラッ!」

 

 だが何も起きない。

 

「?!い、イオラッ!イオラッ!どうして発動しな」

 

 メアリーが言えたのはそこまでだった、直後に顔を炎の手で鷲掴みにされ、絶叫を上げる。

 

 

「貴様ッ!女性の顔に!」

 

 激昂して切りかかるノヴァだが、全く力が出ない。

 

「なっ?!」

 

 氷の腕でメアリーの腕をつかみ、そこから全身を氷漬けにするフレイザード。

 

「さぁて、北の勇者さんよぉ。こいつを助けたいなら、俺を始末するしかないぜぇ?」

「言われずとも!」

 

 ノヴァは懸命にフレイザードに切りかかるが、急激にパワーアップしたフレイザードの素早さと防御力についていけない。

 

「ぐっ、貴様、自分の素早さと防御力を上げたのか!」

「クックック…そろそろトドメと行こうか。メ・ラ・ゾ・-・マ!」

「メラゾーマを5発同時に放つだと!ば、化けも」

 

 ノヴァが言えたのはそこまでだった。

 最期に彼が見た光景は、すさまじい業火だった…

 

 

「…敵の増援部隊の指揮官は叩いた、後は…」

 

 リンガイアの増援部隊にフレイザードは目を向ける。

 

「マヒャドで氷漬けにした後、王都を落とせばお終い、だな」

 

 メアリー率いる部隊とリンガイアの救援部隊の全滅、という報告はオーザム王国軍の士気を根こそぎ奪いさった。皮肉にもオーザム王国への救援は逆の結果をもたらしたのであった。

 

 

 この後、リンガイアの救援部隊とオーザム王家は潰える。

 




自分の技や能力について得意げにべらべらしゃべるキャラって、完全に油断して慢心していますよね。教える義理も義務も無い訳ですから。

もっともそれをやると、読者が付いていけなくなってしまいますが…

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