無名さん、KABEさん、紅いきつねさん、感想ありがとうございます!
一日目が終わり、校舎から出るとまずコンビニへと向かった。まずは日用品の買い物を済ませるべきだと判断したのだ。一通りコンビニの中を見て回ると、普段のコンビニとなんら変わりはない雰囲気である。品ぞろえや値段もこの学校に来る前に利用してたコンビニと同じぐらいだ。だがその中で、棚の所々に興味を惹かれるものがあった。
『無料コーナー』
名前の通り値段は無料で、それ相応の品質に見える。だが普通に暮らす分には問題は無いだろう。
学校から支給されたスマートフォンを取り出し、自分のポイントを確認する。残り残高は20000ポイント。先程の買い物のせいでかなり痛手を受けているが、こればかりは必要経費ということで我慢している。だが自分としては揃えておきたい物があるので、これ以上の出費は抑えたい。
ということで、普通の人なら無料コーナーの物を買うのだが、俺はなるべく普通の値段の物を選んだ。物としてはシャンプーとボディソープ、歯ブラシと歯磨き粉にといったものだ。後は食料を買いたいが、それはさすがにスーパーに行くとしよう。
会計を済ませるべく、俺は買い物客の列に並んだのだが、初日ということもあり、かなり並んでいる。時間には余裕があるので特にイライラすることは無いが、先程から列はあまり進んでいない。レジの方を見ると、何やら赤髪で長身、さらには何かスポーツでもやっているのか、ガタイがしっかりしている男子が必死に鞄の中を探している。
声をかけようかと思ったが、俺が動くよりも早く、茶髪の男子がそいつに話しかけていた。
ここからだと声は聞こえないが、恐らく学生証を忘れたのだろう。ま、学生証が財布代わりというのはいきなりは慣れないだろう。
そう思っていると、先程赤髪の男子に声をかけていた茶髪の男子が学生証を店員に渡していた。どうやら予想は当たっていたらしい。元凶である赤髪の男子は既に外で待っているらしく、茶髪の男子がカップ麺にお湯を入れていた。しかも良く見ると、その男子の隣には、黒髪ロングの女子がいた。スタイルもそこそこ良い方だと思われる。決して女子と一緒に買い物をしているという事実を羨ましく思っているわけではない。絶対に。
「いっ......!」
突然、感じたことのある衝撃が右足の踵を襲う。
犯人に目星は付いている、というか一人しか考えられないので、後ろを向くことはせず、深いため息とともに抗議の言葉を伝える。
「結構痛いんですけど......。」
「何やら上の空といった感じでしたので。列、進んでいますよ?」
「あ、ごめんなさい」
犯人は予想通り坂柳さんである。列が進んでいたのに気づかなかったとは……面目ない。
だが杖で殴る必要はあっただろうか? 普通に声をかけるだけで十分だった気がする。
「先程の人達はいかがでしたか?」
「ここまでくる途中に色んなクラスの人を見れたので、クラス分けの真意が大分理解できましたよ。おかげであの3人組のクラスも絞れそうです。」
コンビニの外で行われているやり取りに目を向ける。そこでは、先程の赤髪の男子と、新たに来た複数の男子生徒が何やら言い争っているのが伺える。だがその場所には先程いた黒髪の女子はいなかった。先程の雰囲気から察するに、あまり人と群れるタイプではないのだろう。
「先程の女子生徒が見れなくて残念でしたね。」
「強気な清楚系って感じでしたしたね。結構頭よさそうですし......何より暴力振るわなそうですし」
先程の恨みも込めて、皮肉を込めて返す。坂柳さんは初日ながらクラスでもカーストがかなり高く、実は今もその高さを見せつけられている。彼女の後ろには、教室で会話をしていた女子生徒が2名付いていた。そんな彼女に負けるということは、自分もその傘下に入るということだ。そうやすやすと屈するわけにはいかな.........。
「いっ......!!!」
先程よりも強く鋭い衝撃が踵を襲う。しかもそれは一回では終わらず、何度も杖で殴られる。しかもチラッと顔を見ると、いつもの笑顔であるはずなのに、なぜか寒気を感じた。
会計を済ませた後、坂柳さん達は寮へと帰り、俺は食材を求めスーパーへと向かう。そこでも無料の物をちらほら見かけたが、そこでも俺はそれには手を付けず、無難な値段の物を一通り買った後、部屋へと戻ろうとスーパーを出たのだが......。
「こんなところで会うとはな。同じクラスの一員として、よろしく頼む。できれば名前を教えてもらえるとありがたい。」
「確か......葛城さんでしたっけ?」
この体格の大きな男子は、同じAクラスの葛城さんである。この人は坂柳さんと同じく、クラスでのカーストはかなり高い。クラスの中心となりえる人物だろう。
「俺は槙野優璃です。期待してますよ、葛城さん。準備があるので、俺はこれで。」
この人の前で長話は危険だと感じ、すぐさま撤退を決める。取り敢えず雰囲気だけは知れたので、今日は良しとしよう。
俺の予想では恐らく、各クラスが頭角を現し始めるのは5月から。それまでには準備を整える必要がある。
そんなことを思いつつ、自分の部屋へと戻ったのだが......。
「はぁ......。」
何もないはずの玄関には、すでに3人分の靴がきれいに並べられていた。しかも横の棚には見覚えのある凶器......もとい杖があった。
気を落としつつも、自分も部屋へと上がる。かすかに聞こえる談笑を聞きながら部屋へと入ると案の定、坂柳さんと他女子2人がいた。
「お邪魔してます。優璃さん。あなたの帰りを待っていたのですよ。」
「人の部屋で何くつろいでるんですか。てか、どうやって入ったんです?」
「勝手ながらスペアキーを作らせてもらいました。流石にあなたと面識の無いこの2人の分は作ってはいません。安心してください。」
「全く安心できないですよ! そもそも坂柳さんが入れるということは、一緒に来れば他の人も入れるじゃないですか!!」
「そんなに怒らないでください。同じクラスとして、情報共有をする場所を確保するのは必要なことですから。」
「まあ、場所の提供ぐらいはかまいませんけど......何気に俺を引き込んでません?」
俺がそう問いかけると、坂柳さん含め、他女子2人の雰囲気が一気にピリッとしたものになった。
「あなたも既に気付いているはずです。Aクラスは既に分裂しようとしている。葛城康平と私、坂柳有栖。あなたはどちらに付きますか?」
今俺は、この学園で生き残るための、最初の選択を迫られている。
勿論、そんなことは考えるまでもないことだった。
もうちょっとよう実の勉強が必要ですね......。
評価・感想・お気に入りお待ちしております!