インフィニット・ストラトス~皇室の楯~(凍結)   作:のんびり日和

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4話

「―――では本日をもって五反田君と凰さんとの交流は終了となります。では智哉君、お2人にあれを渡してください」

 

「はい!」

 

教師に呼ばれた智哉は立ち上がり机の引き出しに入れていた色紙を弾と鈴の二人に手渡す。

 

「えっと、1週間と言う短い期間でしたが、一緒に学べたことと、遊べたことは凄くいい思い出になりました。ありがとうございました!」

 

智哉からのお礼の言葉に2人は照れながらも色紙を受け取り、教室全員に聞こえる大きさの声で感謝の言葉を送った。

そして放課後、学校の正門前に智哉、穂香、黒江と弾と鈴は迎えが来るのを待ちながら談笑していた。

 

「智哉、今日はありがとうな。この色紙一生大事にするぜ」

 

「そう言ってくれると準備したかいがあるよ♪」

 

弾と智哉がそう話している中、穂香達はと言うと

 

「それでね、お父さんったらお母さんにしこたま怒られてたのよ。どう思う?」

 

「これは鈴ちゃんのお父さんに同情の余地が無いね」

 

「はい、ありえませんね」

 

穂香と黒江が同意すると鈴はそうでしょ!と若干頬をふくまらせながら怒っていた。鈴が二人に愚痴っていたのは自身の父親が母に隠れて同僚の人とキャバクラに行っていた事だった。勿論会社の人との付き合いなどは大事だが、キャバクラ嬢から貰った名刺をスーツの内ポケットに入れているカードケースに大事そうに入れていることが問題だったのだ。鈴の母親は偶然そのカードケースを発見し、大事そうに入れている事にキレて木の床に正座で座らせ3時間ほどお説教を行っていたとのこと。

 

「それで、鈴ちゃんのお母さん達は仲悪いままなの?」

 

「ううん。 それが今朝居間に行ったら2人とも仲の良い夫婦に戻ってたの。けどお母さんが何時になく凄く若々しくなってるのに、お父さんは逆に真っ白になってやつれてたの。何でかしら?」

 

「何ででしょうね、それ?」

 

3人は鈴の母親が急に若々しくなった理由が気になり首を傾げる。それから暫くして一台の軽自動車がやって来た。運転席には弾の母、五反田蓮が乗っていた。

 

「お待たせ2人とも。さぁ乗って」

 

鈴と弾は後部座席へと乗り、智哉達が居る方の窓を開ける。

 

「智哉! また一緒に遊ぼうな!」

 

「うん! また遊びに行くよ」

 

「穂香達もその時は一緒に遊びましょうね!」

 

「鈴ちゃん、また遊ぼうね!」

 

「お2人ともお体にはお気を付けて!」

 

互いに別れの挨拶をした後、車は走り出し智哉達は車が見えなくなるまで手を振り続けた。

他校との交流会を終えて数ヶ月後、智哉はクラスの友人の一人にあるお願いをされていた。

 

「僕に剣道の試合の代理選手を?」

 

「そうなんだ。引き受けてくれないかな?」

 

智哉は友人の黒崎峰人にそう頼まれ、困った表情を浮かべる。

 

「けど、何で僕に頼むの? 峰人は剣道強いから別に僕が出なくてもいいはずじゃあ?」

 

「実は……」

 

峰人は悲しそうな表所を浮かべながら、自身の右足を見せる。其処には足首から踵までが包帯が巻かれていた。

 

「昨日家の庭で竹刀を持って素振りをしてて、足元に落ちていた石を踏んづけて変な方に曲がったせいで足首を痛めちゃったんだ」

 

「……そうだったんだ」

 

「医者からも無理に動かすのは駄目だって言われて、試合には出られないんだ。だから天城流の正統後継者である智哉に俺の代理選手を務めて欲しいんだ。頼む‼」

 

峰人は腰を90度曲げて智哉にお願いすると、智哉はアワアワと焦る表情を浮かべ峰人の肩を掴んで顔をあげさせようとした。

 

「そ、そんな頭をあげてよ!? ……ちょっと時間をくれないかな? 明日にはどうするか返事するし」

 

「……分かった」

 

そして授業が終わり、家へと帰って来た智哉は颯馬の元へと向かった。

 

「お父さん、入ってもいい?」

 

「ん? 智哉か、いいぞ。入って来なさい」

 

智哉は失礼します。と言って颯馬の部屋へと入る。颯馬の部屋は6畳間で、上座の方には木の机が置かれておりその上には色々な紙の束が置かれていた。

 

「どうかしたのか?」

 

颯馬は智哉が何か悩んでいる様子だと瞬時に見抜き、そう聞くと智哉は颯馬の近くまで来て畳の上に座る。

 

「えっと、今日友達の黒崎峰人君からあるお願いをされたんだ」

 

「黒崎峰人? あぁ、恵吾の息子か。それで、そのお願いとは?」

 

「その、近々剣道の試合があるらしくてね。峰人君が足を怪我をして試合に出場できなくなったらしくて、それでその試合の代理選手になって欲しいって頼まれたんだ」

 

そう言うと、颯馬はフムと目を閉じ考え込むような表情を浮かべる。

 

「それで、智哉はどうしたいんだ?」

 

「僕としては、初めて浄苑小学校に通い始めた時に、峰人君に沢山助けてもらった恩もあるから助けてあげたいって言う気持ちがある。けど……」

 

智哉は最後まで言わず落ち込むような雰囲気を出し、颯馬がその訳を口にした。

 

「天城流は本来剣道で使用するような剣術ではない。お前はそれを気にして代理選手を引き受けられずにおるんだな?」

 

颯馬の推論に智哉は首を縦に振る。颯馬は息を吐き、立ち上がり智哉の方へと近付いた。智哉は怒られるのではと思い目をギュッと閉じ顔を下に向けていると、傍で布のこすれる音がした後自身の頭に大きな手が乗り優しく撫でられた。智哉はそっと目を開け前を見ると、朗らかな笑みを浮かべた颯馬が其処に居た。

 

「確かに天城流は殺人剣だ。しかしそれは使う人によっては活人剣にもなる。智哉、剣術のすべてが殺人剣ではないことは知っているな?」

 

颯馬の問いに智哉は首を縦に振る。

 

「剣術を考え出した者は、その剣術を殺人剣だと決めても実際に使うのは人だ。使う者が人を殺す為ではなく弱きを助け強きを挫くために殺人剣を活人剣として使う者が居る。だから智哉、お前が天城流と言う殺人剣を学んでいたとしても何ら気にする必要はない。思う存分自身が身に付け天城流を振るうのだ」

 

そう言われ智哉は、気持ちが固まり首を縦に振った。

 

それから数日後の試合当日、恵梨香は自作の電動自転車をゴムのベルトが引きちぎれるほどの速さでペダルをこぎ剣道の試合が行われている○○県の中で一番大きな剣道場に向かっていた。そして目的の建物に着くと駐輪場に自転車を停め、建物内に入って行き観覧席で自身の家族を探す。

 

「えっと、何処に…「あ、お姉ちゃ~ん! こっちだよ!」お! お待たせぇ!」

 

穂香は手を振りながら姉恵梨香に居場所を伝えると、恵梨香はカバンを持ちながら穂香達の元へと向かう。穂香達が居た場所は観覧席の一番前の列で真ん中付近に颯馬と雪子達家族が座り、端の方には警護としてやって来た秋や時雨、そして数人の従者が座っていた。

 

「お友達の課題は無事終わったの?」

 

「うん。かなたんが集めたデータを何処のフォルダに仕舞ったか分からないって大慌てにならなかったらもっと早く来れたけどね」

 

そう言いため息を吐く恵梨香に雪子はあらあら。と笑みを浮かべ颯馬もハハハハハ。と笑っていると従者の一人が顔を赤らめながら頭を下げる。

 

「申し訳ありません恵梨香お嬢様。娘の課題を手伝っていただきありがとうございます」

 

「そんな頭を下げないでくださいよ。かなたんとは親友だからこのくらい朝飯前ですよ」

 

そう言われ従者はありがとうございます。と再度頭を下げてお礼を述べた。

 

「所でお父さん。とも君の試合ってもう終わっちゃった?」

 

「いや、今から団体決勝戦が行わるからまだわからんぞ」

 

颯馬がそう言っているとアナウンスが入った。

 

『これより決勝戦を行います。出場するそれぞれの名前をスクリーンに出します』

 

そう言われスクリーンを恵梨香達が見ると、智哉の名前は一番下の大将の所に名前が書かれていた。

 

「おっ! とも君がまさか大将のポジションに置かれているなんてね」

 

「彼らの中では智哉が一番実力があると判断したうえでの配置なのだろう。まぁあの者達の実力は中々のものだから決勝まで智哉が試合が出ることは無かったぞ」

 

颯馬の説明に恵梨香はへぇ~。と声をあげモニターを眺めていると智哉の対戦相手の大将の名前に目が留まる。

 

「……ふぅ~ん。あれが対戦相手なんだ。まぁとも君だったら瞬殺しちゃうだろうなぁ」

 

恵梨香は冷めた目で名前を見ながらそう呟く。

そして試合が開始する。試合は白熱した展開となった。先鋒では智哉達が白星をあげたがその後の次鋒、中堅は黒星となり副将では智哉側が白星となり遂に大将戦となった。

 

「智哉、頼んだ!」

 

「この試合に勝てば連覇達成なの! 頑張って!」

 

「頑張れ智哉‼」

 

メンバーからの応援に智哉は頷き面をかぶり一礼して対戦相手の前へと立った。

 

「では、始め‼」

 

「てやぁーーー!」

 

開始の合図と共に相手は面の構えで迫ってくるが、智哉は焦ることなく逆に間合いを詰め体勢を低くして胴をとった。

 

「胴‼」

 

「胴あり‼」

 

胴を取られた相手はギュッと竹刀を握りしめ直し、開始位置へと戻る。

 

「ともく~ん! 頑張れ~‼」

 

恵梨香の大声の応援が木霊すると、相手は肩を跳ね上げ首を小さく左右に振る。

 

「…始め‼」

 

審判の合図に相手は我に返り、智哉の方に意識を集中しようとしたが既に智哉に間合いを詰められ

 

「めんっ‼」

 

と、面を打たれた。

 

「面あり‼ 勝負あり!」

 

そう言われ両者は開始位置へと戻り礼をして別れた。メンバーの元へと戻って来た智哉を峰人達は祝福した。

 

「やったな智哉! 連覇達成だ‼」

 

「これで目標にまた一歩近づいたわね!」

 

そう言い次鋒の少女がA4サイズのホワイトボードに書かれた『残り連覇回数3回』を2回に変更する。

 

「これで鷲尾道場を卒業していった先輩方が成し遂げた15連覇までもう少しだ!」

 

峰人がそう言うと全員笑顔で頷き、智哉も自然と笑みが浮かばれる。

 

「僕の力がみんなの役に立てて本当に良かったよ」

 

「本当だよ! 智哉君が居なかったら私達の夢が潰えてたかもしれなかったから、本当に助かったよ‼」

 

「ありがとうな智哉。本当にお前が引き受けてくれなかったら俺達の夢が潰えてたぜ」

 

全員からお礼を言われ智哉は照れながらどういたしまして。と言う。そして表彰式が行われ、その後鷲尾道場の人達と智哉はホールに居るとその傍に颯馬達がやって来た。

 

「いい太刀筋だったぞ智哉」

 

笑みを浮かべた颯馬にそう褒められた智哉は照れた表情を浮かべる。

 

「颯馬様! 今回智哉君の出場を許可していただきありがとうございます!」

 

「「「「ありがとうございます‼」」」」

 

峰人が颯馬に礼をしたと同時に後ろに居た鷲尾道場のメンバーも頭を下げてお礼を述べる。

 

「いや、許可とかではなく智哉自身が決めた事だ。私は特に何もしておらんよ」

 

そう言い智哉の方に顔を向ける。

 

「そうだったんですか。智哉、本当にありがとうな!」

 

「僕が浄苑小学校に通い始めた時に、どうしたらいいのか困っていた僕と穂香を真っ先に助けてくれたのは峰人だったからさ。だからその恩を返したかったんだ」

 

そう言われ峰人はキョトンとした表情を浮かべた後、声をあげながら笑い出した。

 

「ハハハハハっ! やっぱりお前は凄いやつだよ!……だからこそ我々は貴方のその心意気に感銘し、当主となられた暁には死ぬ時まで支えていくと決めたのです!」

 

そう言うと峰人の後ろに居た鷲尾道場全員が頷く。その光景を見た智哉は驚いた表情を浮かべるが、直ぐに笑みを浮かべた。

 

「ありがとう。僕もみんなの期待に応えられるような当主になってみせるよ!」

 

そう言うと、颯馬は立派な目標ができたな。と笑みを浮かべながら思い、雪子もこの子が大きくなった時の姿が楽しみだわぁ。と笑みを浮かべた。

 

「さすがとも君! お姉ちゃん感動したよぉ!」

 

そう言い恵梨香は智哉に抱き着きハグハグしながら頭を撫でる。

 

「お、お姉ちゃん!? く、苦しいよ~!」

 

「ちょっとお姉ちゃん、ずるい‼ 穂香もお兄ちゃんにハグハグする‼」

 

「黒江もです‼」

 

3人に抱き着かれ、智哉はた、助けてっ!?と峰人達に助けを求めたが

 

「では颯馬様、私達はこれで失礼します」

 

「うむ、今日は皆よく頑張った。しっかりと体を休めるんだぞ」

 

「気を付けて帰る様にね」

 

「「「「はい! 本日は応援に来ていただきありがとうございました‼」」」」

 

そう言い鷲尾道場の面々は帰って行った。

 

「ちょっ!? さっき支えるって言ってくれたじゃん! 助けてよぉ~!?」

 

智哉の助けを求める声に峰人達は全員親指を立てて

 

「「「「頑張ってください、次期当主様‼」」」」

 

そう言いぞろぞろ帰って行った。

 

「えぇっ!?」

 

智哉はガァーン‼とショックを受け、颯馬と雪子はハッハハハハ。と笑い出した。

 

「さて、智哉の祝勝会を行わんといかんから帰るとするか。源蔵、車の準備を」

 

「かしこまりました」

 

颯馬の背後に居た白髭の男性は頷いた後玄関を抜け車の元へと向かった。

 

「僕トイレに行ってくる」

 

そう言い智哉は恵梨香のハグから抜け出し、トイレへと向かった。勿論その後ろから警護のための男性従者が付いて行く。

その時、人混みの中から一人の少女が誰かを探すかのように首を左右に振っていた。

 

「あの声は確かに姉さんだった。何でこんな場所に?」

 

そう言い人混みをかき分けながら自身の姉を探す少女。そして茶髪の女性の後姿を見つけ、まさかと思い傍に向かう。

 

「ね、姉さん?」

 

そう声を掛けると、女性が後ろを振り向いた。女性は恵梨香だった。声を掛け垂れた恵梨香は首を傾げる動作をする。

 

「ん? 私は君のお姉さんじゃないよ。 もしかして迷子かい? すいませ~ん!この子のご両親は何処ですかぁ‼」

 

恵梨香はそう大きな声で言うと周りに居た人たちは一斉に顔を恵梨香たちの方へと向ける。

すると人混みの中から2人の男女が現れた。

 

「箒! 此処に居たのか」

 

そう男性が言いながら箒の元へと行く。

 

「娘を保護してくれてありがとうございます」

 

女性は恵梨香に頭を下げてお礼を述べると恵梨香は終始笑顔のままで

 

「別に良いですよ。それじゃあ私はこれで」

 

そう言いその場を離れようとすると、箒と呼ばれた少女が恵梨香の手を掴む。

 

「ま、待って下さい、姉さん!」

 

そう言うと箒の両親が怒った。

 

「こら! よそ様の方を姉さんと呼ぶんじゃない! 第一アイツがこんなところにいる訳が無いだろ!」

 

そう言い恵梨香を掴んでいる手を無理矢理放させ、恵梨香に頭を下げた。

 

「御不快な思いをさせて申し訳ない」

 

「別に。 もういいですか? 家族が待ってるんで」

 

そう言い恵梨香は笑顔を向け一礼した後振り返り先に玄関を抜けて行った颯馬達の元へと向かった。振り向いた際に束の顔は、真顔へと変わっていた。

車の所まで戻って来た恵梨香を颯馬達が出迎えた。

 

「ん? 恵梨香何かあったのか?」

 

恵梨香の異変に気付いた颯馬がそう聞くと、恵梨香は首を横に振って笑顔を向ける。

 

「ううん。何でもないよ」

 

そう言われ颯馬は深くは聞かずそうか。とだけ呟いた。

 

「お待たせぇ。早く帰ろ!」

 

そう言いながら道場の玄関から男性従者と共に智哉が戻って来る。そして全員(恵梨香の電動自転車は折り畳まれトランクの中)車に乗り込もうとした時、玄関から箒が走ってやって来た。

 

「姉さん!」

 

そう呼ばれ恵梨香はうんざりと言った表情を浮かべ、箒に体を向ける。

 

「ねぇ、さっきも言った通り私は君のお姉さんじゃないんだよ?」

 

そう言い呆れた様なため息を吐く。箒はそんな訳ない!と声をあげようとした瞬間恵梨香の後ろのの方に居た智哉を見て、驚いた表情を浮かべる。

 

「い、一夏!?」

 

そう叫び智哉の元に走り寄ろうとした瞬間、その行く手を恵梨香が塞ぐ。

 

「あの子は一夏なんて名前じゃ無いんだよ。さっきから一体何なの君? 私の事を姉だとかとも君の事を一夏とか言ってさぁ。 早く家族の所に帰りなよ」

 

恵梨香は今まで智哉達に見せたことが無いような冷たい声でそう言い放つと、箒は恐怖から後ずさる。もう来ないだろうと思った恵梨香は体を颯馬達の方に振り向いた瞬間、箒はその横を通り過ぎ一夏の元に駆け寄った。

 

「!?」

 

恵梨香は箒を掴み止めようと腕を伸ばす前に、智哉の傍にいた男性従者が箒を拘束した。

 

「ぐっ!??」

 

箒を拘束した男性従者は暴れる箒をそのまま拘束し続け、智哉の前には時雨と秋が立ち守る。騒ぎを聞きつけた箒の両親が大慌てでやって来た。

 

「箒‼ 一体何をしているんだ!」

 

そう叱り、颯馬に深々と頭を下げた。

 

「私の娘がとんだご無礼をしてしまい申し訳ない」

 

「いや、其処まで気にはしておりませんよ。ですが、しっかりと言い聞かせておいてください」

 

そう言い颯馬は智哉達に車へと乗せ、自身も車へと乗り込む。箒を拘束していた従者は箒を父親に渡し、車へと乗り込み去って行った。

その日の夜、恵梨香は颯馬と雪子が居る部屋に居た。

 

「それで恵梨香よ。今日会ったあの3人がお前の元家族なのか?」

 

「うん。箒と呼ばれていたアイツは私の元妹。そして白髭を生やした男と黒髪の女性は元両親」

 

恵梨香は淡々と自身の元家族を説明する。

 

「……元家族の元に帰ろうという気はまだあるのか?」

 

颯馬はそう言うと恵梨香は笑顔を浮かべ、首を横に振る。

 

「無いよ。私の顔を見ても自分達の娘だと気付かない様な家族の元になんか居たくないもん」

 

そう言うと颯馬はそうか。と朗らかな笑みを浮かべた。




次回予告
智哉達は颯馬に連れられ、颯馬の友人の家『更識』家へと向かう。家の中に入った智哉達の前に喧嘩している姉妹を発見し、智哉は仲裁に入った。
次回
更識家~……狐さんが居る~

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