インフィニット・ストラトス~皇室の楯~(凍結) 作:のんびり日和
まさかこんなにも早く登録されるとは予想していませんでした(;・∀・)
では本編をどうぞ
颯馬が少年と少女、スコールとオータムを家へと連れ帰って1年が経過した。和風の武家屋敷の玄関には2人の子供そして天城颯馬と女性、その背後には大勢の颯馬の部下達が居た。
「それじゃあ行ってきま~す!」
「行ってきま~す!」
「うむ智哉と穂香、気を付けて行ってくるんだぞ」
「先生の言う事はちゃんと聞いて、しっかりとお勉強をしてくるんですよ」
「「は~い!」」
智哉と穂香と呼ばれた2人の子供は玄関を出る。
「「「「「行ってらっしゃいませ! 若様! お嬢様!」」」」」
そう言い部下達は横断幕を張り『行ってらっしゃいませ!』と見送った。
智哉と穂香はにこやかな顔で門へと歩いていた。
「今日も皆元気だったな」
「うん、私もお兄ちゃんと一緒に学校に行けるから元気だよ!」
穂香はえへへ。と笑いながら智哉の手を握る。智哉は別に嫌がると言ったことはせず握り返し、門へと出る。すると一台の車が停まって待っていた。
「若様、お嬢様どうぞ」
そう言い金髪の女性が後部座席の扉を開き2人を乗せようとする。
「いつもありがとうございます、時雨さん」
智哉がそう言うと、時雨ことスコールは笑みを浮かべどういたしまして。と言い2人を乗せた。
「2人とも忘れ物とかはないか?」
運転席にいた栗色の女性は智哉達に確認する。
「うん、無いよ秋さん」
そう言うと、よし出すぞ。と秋ことオータムは車を走らせた。車が走って行くのを見送った部下達はそれぞれの持ち場へと向かい、颯馬と女性は自室へ向かった。
「こうして毎日あの2人が学校に行くのを見送るのは1日の始まりを感じてすがすがしい気分となる。なぁ雪子」
雪子と呼ばれた女性は朗らかな笑みを浮かべながらそうですね。と同意した。
「最初に此処に来たあの子達は、酷く怯えた様子でいましたが周囲の人達のお陰であそこまで元気に育っているから本当に良かったです」
雪子がそう言うと、颯馬もそうだなと感慨深そうな顔で空を見上げる。
1年前、スコール達が助けた少年達は家も家族も何もかも思い出せずにいた。その為帰る場所が無かった2人を颯馬は養子として向かえ入れた。そして少年を天城智哉、少女を天城穂香と名付けたのだ。
その時にスコールとオータムも名前を変える様言い渡し、それぞれ時雨、秋と名前と新しい戸籍を手に入れて天城家に仕えている。颯馬はゆくゆくは2人を智哉の部下にし傍で支えさせようと考えていた。
智哉と穂香は最初は周りいる人物達に中々心を開いてもらえなかったが、親身に接し続けた結果徐々に心を開くようになった。既に多くの部下達は智哉は次期当主としてふさわしい人物になるだろうと噂するくらい、智哉は立派な子へと育ち始めていた。
その頃、学校へと到着した2人は車から下り校内へと入り教室へと入っていた。智哉が通っている学校は共学制で男子と女子の生徒がそれぞれ均等に占めていた。通っている生徒は天城家を知っている家の子が多い。
智哉は自身のクラス3年1組へと入ると元気よくクラスの人達に挨拶をする。
「おはよう、皆!」
「おはよう」
「あ、おはよう智哉」
「智哉君おはよう!」
「天城様おはようございますわ」
「穂香ちゃん、おはよう!」
「相変わらず仲の良い兄妹で微笑ましいね」
クラスの皆に挨拶を終えた2人は席へと着き授業開始まで談笑を始めた。
時間は経ち、智哉と穂香はクラスの人達に挨拶を交わした後教室を後にし外へと出て門へと向かう。
すると門には秋と時雨が立って待っていた。
「あ、時雨さん、秋さん。迎えに来てくれたんですか?」
「はい。奥さまから頼まれた買い物を済ませている最中、お2人と一緒に帰ってきてくれと奥さまに頼まれましたので」
「ついでに言うと今日は車じゃなくて歩きだ」
そう言われ、智哉はそれじゃあ。と時雨に手を差し出す。
「若様?」
「手、繋いで帰ろ?」
そう言うと、穂香も空いている手を秋へと差し出す。2人は惚けた顔でいたがすぐに我に返り、分かりました。と言い差し出された手を握って家路へとついた。
暫く歩き続け数十分後、家からほど近い所まで来た途端智哉はふと誰かの視線を感じ後ろを振り向く。だが後ろには誰も居なかった。
「若様、どうかしましたか?」
そう言い時雨も後ろを振り向く。
「うんん。何でもないよ」
そう言い再び歩き始めた。そして4人が家の中へと入って行く姿を電柱の影から一人の女性が見つめていた。
「……間違いない」
そう呟き女性は天城家へと近付いた。
その夜学校であった事や帰りに時雨達と一緒に帰ったことを楽しそうに颯馬に話し、風呂に入って布団に入った2人はぐっすりと眠りについた。襖を開き2人の寝顔を覗き込んだ颯馬と雪子は朗らかな笑みを浮かべた。
「よく眠っている」
「えぇ、お昼休みに智哉が友達とサッカー、穂香は友達と大縄跳びで遊んでいたと言ってましたから、遊び疲れていたんでしょう」
2人はそっと襖を閉め、部屋から離れて行った。そして部屋から少し離れた所で颯馬は雪子ではなく誰かに向け声を掛けた。
「所で、先ほどから此方を窺っている者よ。いい加減出てきたらどうかね?」
そう言うと、庭に生えている草木から家の前にいた女性が現れた。恰好はアリス服で、頭に機械のうさ耳をしていた。
「何時から気付いていた?」
「君がこの屋敷の近くに居た時からだ。さて君は何者かね?」
そう言い、目を瞑った顔で体ごと女性へと向ける。雪子は颯馬の1歩下がった所で待機していた。女性は雰囲気から只者では無いと確信し、下手な動きはせず名を名乗った。
「……篠ノ之束」
「篠ノ之束……。なるほど、君がISと言う宇宙へと行くための道具を作った女性か」
颯馬は何を考えているか分からないような顔を束へと向けながら要件を聞く。
「さて、君が一体何の用で此処に来たのかね? 見ての通り此処は只の古風な家だ。君の興味を示すようなものが無いのだがね」
そう言うと、束は鋭い視線を向けつつ腕を上げ、ある部屋へと指をさす。指した先は智哉と穂香の部屋だった。
「この家に暮らしている子供の事で聞きたいことがある」
そう言うと颯馬は眉を少しだけ上げる。
「智哉達? あの子は私の息子達だがそれが何かね?」
そう言うと束は違うと叫ぶ。
「あの男の子の名前は一夏「大声をあげないで貰えるかしら」ッ!?」
一瞬で何者かが自分の目の前に現れ口元を塞がれた束。塞いだのは颯馬の背後に居た雪子だった。
「確かにそうだ。それより君はあの子の正体を知っている様だが、どう言った関係だったのかね?」
束はもう大声出さないから放してと言って放してもらう。
「……あの子がどう思っていたかは知らない。私としては彼の姉的な人だったらいいなと思って接してきた」
そう言うと、颯馬は悲しそうな顔つきで答えた。
「そうか。だがもう君の事をどう思っているか、それはもう聞く事は出来ない」
「!? どう言う事だよそれ!」
束は颯馬の言葉に信じられないと言った表情で言う。
「……私が言っても信じられないと思うから明日の朝、もう一度此処に来なさい。その時は玄関から来るようにな」
そう言い颯馬はその場から去って行った。雪子も会釈をしてから去って行った。束は手を握りしめながら、その場を去った。
次の日は土曜日の為、智哉と穂香は家で勉強をしていた。
「穂香、其処の式間違えているぞ」
「え? あ、本当だ。ありがとうねお兄ちゃん」
そう言いながら互いに勉強を見ながらしていると、襖の前に人が来た気配を感じ顔を向ける。
『時雨です。旦那様から智哉様に応接間に来るよう言伝を預かって参りました』
「お父さんが? 分かりました、今行きます」
そう言い鉛筆を置き、智哉が部屋を出ようとするとその傍に穂香が付いてきた。
「穂香、呼ばれたのは僕だけだよ?」
「穂香も行く!」
そう言われ智哉は困った顔でどうしようかと思いながらも仕方ないと思いつつ、穂香と一緒に応接間へと向かった。
応接間へと入る襖前に着いた智哉と穂香は正座をして襖を叩く。
「智哉です。入っても宜しいですか?」
『うむ、いいぞ』
そう聞こえ、智哉は襖を開き穂香と共に中へと入る。
「おや、穂香も付いてきたのかい?」
「うん。付いて行くって言ってそれで…」
「まぁ構わんよ」
颯馬は朗らかな笑みを浮かべつつ、相変わらず智哉の事が大好きな穂香だな。と思いつつ顔を部屋に居るもう1人へと向ける。
「さて智哉よ。この者を知っているかね?」
そう言われ、智哉は顔を部屋に居た女性へと向ける。女性は機械をうさ耳をした女性だった。束である。
「ひ、久しぶりだね、いっくん」
束は嬉しそうな緊張したような顔でそう言うが、智哉は怪訝そうな顔で言った。
「いっくん? ごめんなさい、僕の名前は天城智哉で、いっくんと呼ばれるような名前では無いですし、それと何処かで会ったことがありますか?」
そう言われ束はぎこちなかった笑みから信じられないと言った表情へと変貌した。
「じょ、冗談だよね? 束さんを驚かせようと冗談を言ってるだけだよね?」
束は信じられないと言った表情でそう聞くが、智哉は首を横に振る。束は目元から涙が零れ始めるのを感じ立ち上がって応接間から飛び出していった。
智哉は何かしたのだろうかと思い神妙な面持ちで颯馬へと向ける。
「大丈夫だ。ちょっとトイレにでも行ったのであろう」
そう言い2人を部屋へと帰した颯馬。
その頃束は応接間から少し離れた廊下で涙を零しながら泣いていた。
「ヒック……私の所為だ。私がISなんか作らなきゃいっくんは……いっくんは……うわぁーん!」
束はそう呟きながら涙を流していると、その傍にそっとハンカチを手渡した人物がいた。束はそのハンカチを手渡した人物を見上げると其処には雪子が立っていた。
「ずっと溜め込んでいた物があるじゃないの? この際だから吐き出しちゃいなさい。そうすればスッキリするから」
そう言いながら雪子はそっと束の傍に着物にシワが出来ない様座る。暫く鼻を啜る音しか出さなかった束はぽつりぽつりと呟きだした。
幼い頃、自身は剣道が苦手なため勉強などで親に認めてもらおうとしたが、それを一切見ようとしない親。逆に剣道が出来る妹を可愛がる親にずーと嫉妬に近い物を抱いていた。だからもっと凄い物を作って見てもらおうとした。そんな時、剣道場から離れた所で遊んでいた少年を見つけた。それが束が言っていた一夏である。一夏は姉に無理矢理剣道をさせるために連れて来られ上手く逃げ出し隠れていたのだ。束は何となく一夏を自身の部屋に連れて行き匿っていた。それからは束が一夏の勉強を見たりしていた。そしてISを完成した。束は学会でISについて発表したが一部を除いて真面目に聞いてもらえず部屋で落ち込んでいた時、一夏がそっと小さな手で束の頭を撫でていた。
『頭の良い人は皆、束お姉ちゃんの頑張っている事に気付いていないだけだよ。きっとお姉ちゃんの頑張りは何時か分かってもらえるよ』
そう言われ束は一夏にギュッと抱きしめ、自身の努力を理解してくれるのはこの子だけだ。と思った。それから数日後、ある事件が起きた。それが巡航ミサイルの一斉発射だ。当時束は自身のISなら何とか出来ると思った。だがそれはこの子を戦争の兵器へと変える決断だった。それでも束は一夏を守るためならばと思い苦渋の想いでISを身に纏いミサイルを落とした。そして各国からISについて説明を求められた時にコアと説明書を送りつけ姿を消したのだ。唯一の心残りが一夏に何も言わずに姿を消した事だった。それから数日後に一夏が行方不明となり、束は衛星などを駆使し必死に探した。
そして漸く見つけ、こうして会いに来たがもう自分の知っている一夏は居ないんだと痛感した。
「―――これが私の送ってきた生活といっくんの出会いです」
「そう。大変な人生を送ってきたのね」
雪子は悲しそうな表情を浮かべ、何かを決心したような顔でそっと束を抱きしめた。束は突然の事に驚いた表情を浮かべる。
「貴女はちゃんと親の愛情を受けずに育った。ならこの家でちゃんと愛情を受けながら暮らしていかない?」
「け、けど私が此処に居たら迷惑が掛かるし、それに……言っていなかったのですが、私の隠れ家に幼い子供が一人いるんです」
そう言われ雪子はそう。と呟きギュッと更に抱きしめた。
「大丈夫よ。この天城家は貴女が思っている程軟弱な地盤で成り立っていないわ。だからその子と一緒にこの家にいらっしゃい」
そう言われ束は初めて、親の愛情と言う物を感じた。今目の前に居る雪子が自身の本当の親だったらどれ程良かったか。と。
「……ありがとう、お母さん」
そう言い束は涙を零しながら雪子に抱き着く。雪子は優しい笑みを浮かべながら優しく背中を摩った。
それから数日後応接間で智哉と穂香に、秋と時雨と部下達が座っていると襖が開き颯馬と雪子が入ってきた。
「うむ、今日は皆に集まってもらったのは他でもない。我が家にもう2人ほど家族が出来た。入って来なさい」
そう言うと、茶髪の女性と白髪の目を閉じた女性が入ってきて畳に正座して座った。
「初めまして、この度天城家の養子となりました天城恵梨香と言います。そしてこちらが」
「天城黒江と言います」
そう挨拶を終えた後、颯馬が説明を始めた。
「この二人を我が家の長女、そして三女として迎え入れる。何か異議がある者はおるか?」
そう聞くが、全員特に無しと言った表情でいた。
「宜しい、ではこの2人を正式に我が天城家の娘とする」
そう宣誓すると、部下達は一斉に声を合わせて平伏した。
「「「「「これからよろしくお願いしたします、恵梨香お嬢様、黒江お嬢様!!」」」」
突然の大声に2人は驚くが、直ぐに笑顔を浮かべた。
「「此方こそよろしくお願いします!!」」
こうして束改め恵梨香、クロエ改め黒江は天城家に向かい入れられた。
次回予告
智哉と穂香、そして新たに家族となった黒江は小学4年生となった。そんな時、学校交流の一環として智哉と穂香と黒江は隣町にある学校に学校交流の為赴いた。
次回
バンダナの少年と中華少女