インフィニット・ストラトス~皇室の楯~(凍結) 作:のんびり日和
刀奈達が智哉達、天城家に泊まりに来て数日が経ったある日の朝、智哉は何時もと変わらない午前6時に目を開けた。
「ふわぁぁ~」
体を伸ばすように腕を上にあげ目を擦り、辺りを見渡す。周りには未だ寝ている恵梨香達が居いた。
「皆まだ寝てるんだぁ。仕方ない、僕だけ先に起きてよ」
そう言い智哉は布団近くに置いておいた動きやすい服装に着替え、一人部屋から出て行った。
智哉は洗面所へと行き顔を洗った後、屋敷の奥に建てられている道場へと向かう。扉を開け中へと入ると、秋と時雨そして美哉達が居た。
「おはようございます、若様」
美哉がそう言うと時雨や秋達も「おはようございます」と言い一礼する。
「うん、おはようございます。それと今日も宜しくお願いします!」
そう言い智哉は準備運動を始めた。そして準備運動を終えた智哉は最初に秋や時雨、そして紅翼と格闘術の訓練を始める。秋、そして紅翼と訓練を行い最後に時雨と格闘術の訓練を始めた。
「以前より動きは良くなっておりますよ!」
智哉をそう褒めながら時雨は、智哉の懐に入り掴もうとするが智哉はそれを素早く回避し、逆に掴もうとしてきた腕を掴み裏拳を時雨の顔付近に向け行い、顔近くで止めた。
「技術の飲み込みが早いですね、若様」
「そ、そうですか? そう言って貰えて嬉しいです」
智哉は時雨にそう褒められ嬉しそうに笑顔を浮かべ小休憩をとった。数分後美哉、鴉羽、あずみとの剣術の訓練が始められた。
「では、参りますよ若様!」
そう言い鴉羽は竹刀を振り、智哉に向かう。智哉はそれを受け止めながらも果敢に攻めつつ次の一手を考えては打つ。
「いい太刀筋です。ですが!」
そう言い鴉羽は一旦距離を置き、突きを繰り出してくる。智哉は咄嗟に防げずそのまま竹刀は智哉の心臓部分がある胸の前で止まった。
「……参りました」
そう言い智哉は竹刀を降ろす。美哉は少し呆れた表情を浮かべんながら鴉羽に声を掛ける。
「鴉羽、少し本気を出し過ぎじゃないかしら?」
「そうかい? 若様なら今の見切れたんじゃないかしら?」
そう言い智哉の方へと目を向ける鴉羽。智哉は苦笑いを浮かべていた。
「う、うん。見切れていたんだけど、どう返せば相手に一撃を与えられるか思いつかなくってそのまま突かれちゃった」
「そうですか……。まぁ若様は未だ成長途中。これからどんどん訓練を積み重ねられましたら、自ずと対処法は身に付きます。では次は私が相手になりましょう」
そう言い美哉が前へと出た。
「は、はい! お願いします」
そう言い智哉は竹刀を構える。美哉は居合の状態で佇んでいた。
「では、智哉様何処からでも斬りかかってください」
そう言われ智哉は美哉の竹刀が当たらない右側から回り込むように打ち込みに行く。
「居合斬りの当らない方向から攻撃ですか。確かにいい案です。ですが!」
そう言い美哉は素早く抜刀し智哉が懐に入り込もうとしたのを防ぐ。智哉は素早く美哉から離れた。
「やっぱり美哉さんの抜刀より先に斬りかからないと」
そう呟き智哉は、颯馬が一度やった技を思い出し、試しにと構える。その構えは居合斬りの様な構えであった。美哉はその構えを見て何をする気だろうと思いつつ迎え撃てる様構える。そして智哉はそのまま一気に走り込み先程とは比べられないほどの速さで懐に潜り込み竹刀振ろうとした。
「っ!?」
流石の美哉も先程とは違い、素早く懐に入り込もうとしてきた智哉に驚き竹刀を振るのが遅れた。
そして斬られると思ったが智哉の足が滑りそのまま美哉にぶつかりそのまま押し倒してしまう。
「あわぁわぁ! ご、ごめんなさい!」
そう言い智哉は慌てて美哉の上から退く。
「あ、いえ。大丈夫ですよ」
美哉は智哉に押し倒されたことに少し顔を赤めながら大丈夫と答えた。すると道場の扉が開かれ雪子が入って来た。
「美哉、朝御飯の準備をするから来てもらっても。あら、美哉。貴女顔が赤いけど大丈夫?」
「は、はい! だ、大丈夫です奥様!」
そう言い冷静を装う美哉。鴉羽や紅翼達は、良い物が見れたと少し笑みを浮かべていた。
「そう? なら朝食の準備を手伝ってくれる? 智哉、悪いんだけど皆を起こしに行ってきてもらってもいいかしら?」
「うん、分かった」
そう言い智哉は竹刀を片付け道場から出て行く。智哉が出て行ったのを確認した雪子はうっすら笑みを浮かべながら美哉達の方へ顔を向ける。
「それで、何かあったのかしら?」
「い、いえ何もありません「美哉、本当の事を言いなさい」……はい、訓練中に若様が足を滑らせそのまま押し倒されました」
美哉は顔を赤めながら報告すると雪子はそう。と言い何かに気付く。
「あの子、もしかしたらちょっとしたラッキーボーイなのかしらね?」
そう言い雪子はそれだったら将来が楽しみだわぁ。と笑みを浮かべ道場を後にした。道場に残された美哉達も、しばしその場で佇んでいたが、直ぐに我に返りそれぞれ持ち場へと戻って行った。
その頃智哉はお風呂場で軽く汗を流し、自身の部屋へと戻って来た。襖を開くと丁度虚が服を着替えている最中だった。
「へ? と、智哉君?」
「あ、あ、あわわわわ! ご、ご、ごめんなさいぃ~!」
そう叫び襖を慌てて閉めた。虚は突然部屋に戻って来た智哉に一瞬茫然としていたが、後から羞恥心が込み上げ急いで服を着る。
「と、智哉君もう大丈夫ですよ」
そう言われ智哉は少しだけ襖を開き、顔を覗かせる。
「ご、ごめんなさい。確認もしないで襖を開けて」
「い、いえ。此処は智哉君達のお部屋なのですから」
そう言い智哉に怒ってないと伝える虚。そして智哉は部屋へと入って来た。
「えっとそれで智哉君は何処かに行っていたのですか?」
「うん、道場で朝の訓練してきたんだぁ」
「え! 智哉君何時も朝の訓練をしているんですか?」
虚はこの年から朝の訓練をして言う事に驚き、そう言う。智哉は「うん、何時もだよ」と言いながらさも当然と言わんばかりの表情で頷く。
「そうなんですか。偉いですね、智哉君は」
そう言い虚は智哉の頭を撫でた。
「ん~、そうかなぁ?」
と首を傾げる智哉。虚は「偉いですよ」と言い頭を撫でていた。それから数分後――
「うぅぅ~、私は何てことをぉ」
と虚は三角座りをしながら、部屋の隅で呟いていた。小学生にも関わらず朝早くから訓練をしている智哉を褒め、頭を撫でて途中で自身より位の高い家の子だと思い出し、やってしまった!と思い部屋の隅に居たのだ。
「虚ちゃんは一体どうしたの?」
「あんなお姉ちゃん初めて見たぁ」
「虚さんどうしたんだろう?」
「ふ~む、何かやらかした感じではあるね」
「ふわぁ~、お兄ちゃん。もう少し寝てたいよぉ」
「穂香お姉様、もうすぐ朝食のお時間ですから起きていないと、お母様から怒られてしまいますよ」
そう言いながら部屋で寝ていた恵梨香達や刀奈達は部屋の隅で三角座りをしている虚に首を傾げていた。すると智哉がその訳を話し始めた。
「なんか、僕の頭を撫でて暫くしてあの状態になっちゃった」
そう言うと刀奈達は虚に顔を向ける。
「虚ちゃん、羨ましいぃ~」
「お姉ちゃん良いなぁ~、羨ましいなぁ~」
「虚さん、ちょっと詳しいお話を」
3人はそう言いながらジト目で虚を見ていた。虚は背中に受ける視線に汗をダラダラと流す。
「にゃははは、羨ましいと思うなら3人もとも君になでなでしてみたら?」
恵梨香がそう言うと3人は「「「良いんですか!」」」と声揃えて聞く。
「別に良いよね、とも君?」
「ん~。3人がそれで満足するなら別に良いよ」
そう言われ三人はでは早速と言い、順番に智哉の頭を撫で始めた。
数分後
「「「大変満足出来ました!」」」
3人はキラキラと光る笑顔を浮かべていた。
「そっかそっか。それは良かったよ。…とも君は、お疲れ様」
恵梨香は苦笑いを浮かべながら智哉の方へと顔を向ける。智哉は頭を何度も撫でられたため頭がシェイクされ、目を回していた。
すると襖が開き雪子が顔を覗かせた。
「みんな~、起きているなら顔を洗って……。あらどうして智哉が目を回して倒れているの?」
そう言われ刀奈達はギクッと肩を跳ね上げた。
「うん、3人が虚ちゃんだけとも君の頭撫でたのが羨ましいって言ってたから、とも君にお願いして頭を撫でさせたら、目を回して倒れちゃった」
恵梨香がそう説明すると、雪子はあらあら。と笑みを浮かべながらそっと智哉の元に寄り抱き上げた。
「よいしょ。ふぅ~、大分重たくなりましたね、智哉」
そう言いながら雪子は智哉を抱き上げながら部屋を出ようとすると、思い出したように恵梨香達に顔を向ける。
「あ、そうそう。もう朝御飯ですから皆、顔を洗って居間に来るのよ」
そう言って雪子は部屋から出て行った。
「なんか、美味しい所をお母さんに取られた気がする」
恵梨香がそう言うと7人はコクコクと頷いた。
その後、7人は服を着替え洗面所で顔を洗い居間へと行った。その時智哉は意識が戻っており何時も座っている場所に居り、それぞれが席に着くとご飯を食べ始めた。
朝食が終わり、智哉達は部屋へと戻りそれぞれ勉強道具を取り出し勉強を始めた。恵梨香は会社へ出社した為この場に居なかったが、代わりに夜架が居た。
「本音様、その漢字は文章と意味が異なりますよ」
「ほぇ~、これっで合ってるんじゃないのぉ?」
そう言いながら本音は夜架が間違えていると言われた問題に鉛筆を向ける。
「そちらの『会心』は思い通り、期待通りと言った意味です。此方の問題に適しているのは『改心』と言う心を改めるです」
「へぇ~、そっかぁ。夜架さんって頭が良いんですねぇ」
本音はそう言うと夜架はいえいえ。と謙虚に返しながら笑みを浮かべた。そして本音は消しゴムで答案に書いた感じを消し正しい漢字に書き替えた。
「夜架さん、この食物連鎖ってどう言う意味なんですか?」
そう言い智哉は問題集の理科の分野に書かれていた事を夜架に聞く。
「それはですね…」
そう言い智哉の元に行き近くで教え始める夜架。
「植物を食べるのは草食動物、つまりシカや牛などです。そしてそんな草食動物を食べるのが肉食動物。つまりライオンや狼です。こういった食物がまるで鎖のように繋がっている事を食物連鎖と言います。因みに人間はこの食物連鎖には含まれません。人間はこの食物連鎖のバランスを崩すことも直す事もできる位置にあるからですわ」
そう説明しながら持っていたシャーペンでピラミッドを描きそれぞれ層を作り動物の名前などを書き分かりやすくした。
「へぇ~、そうなんだぁ」
智哉は夜架の説明を受け、問題になっているところに夜架に聞いた話を分かりやすくして書く。そして夏休みの宿題をある程度終えた智哉達は外へと出る。
それぞれ動きやすい私服を着て帽子をかぶる。智哉と穂香、そして黒江の手には竹竿とバケツを持っていた。
「それで智哉君、何処に行くの?」
「家の裏手にある森林の中に流れている川にだよ。其処で偶にヤマメとかオイカワとかが釣れるんだぁ」
智哉はそう言いながら玄関前で待っていた源蔵、そして半蔵に声を掛ける。二人は釣り人スタイルなのか麦わら帽子にラフな格好であった。
「おはようございます若様、お嬢様。そして更識家の皆様」
「おはようございます! お2人とも今日はお願いします」
そう言い智哉が言うと源蔵と半蔵は「御意!」と言い7人を連れ裏手の森林へと向かった。勿論その後ろからは鴉羽と紅翼が付いて行く。
そして川へと着くと半蔵は持っていた袋から竹竿を取り出し、刀奈達に手渡していった。
「では、皆様。我々が目に届く範囲で釣りをお楽しみください」
「もし餌の取り付けや魚を針から外す作業が必要でしたらお呼びください」
そう言い半蔵達は何かの準備を始めに向かった。そして残った智哉達は釣り糸を川へと投げ込み静かに釣りを始めた。
そんな智哉達の姿を鴉羽達は日陰で岩の上に座りながら見ていた。
「夏休みの日記に書くネタと、自由研究の内容『○○川に棲む生物』を調べる為にここに来られたという訳ねぇ」
「まぁ、夏休みは色々しないといけない事が多いから、遊びながら出来る事が良いって考えられたんでしょ」
そう言いながら紅翼は足をぶらつかせる。
それから時間は経ちお昼頃となった。智哉達のバケツにはヤマメ等が泳いでいた。
「一杯釣れたね、お兄ちゃん」
「そうだな」
「魚の絵も描けました、お兄様」
そう言い黒江はスケッチブックを見せると、ヤマメやウグイなどの絵が描かれていた。
「流石黒江だね。皆綺麗に描けてるよ」
「本当ですか? 嬉しいです」
黒江はそう言い頬を赤く染めた。すると半蔵と源蔵がやって来た。
「皆様、お昼の準備が整いましたぞ」
「雪子様お手製のおにぎり等もございますので、焼き魚とご一緒にお食べ下さい」
そう言い半蔵達の後ろにはキャンプ用の机の上におにぎりや、焼き魚などが置かれていた。
「わぁ~、美味しそう!」
「ふにゃ~、いい匂いぃ~」
「本音、なんか猫みたいだよ」
「確かにいい匂いがします」
刀奈達はそれぞれ用意されたロングベンチに座りウェットティッシュで手を拭く。
智哉達も席に着き智哉が手を合わせると、穂香達も手を合わせる。
「それじゃあいただきます!」
「「「「「「いただきます!」」」」」」
そう言いそれぞれ焼き魚やおにぎりを頬張る。
「このおにぎり、美味しい!」
「鮭や昆布、塩むすびなど色々ありますね」
「お魚も塩加減が良くて凄く美味しい」
「これほどの腕をお持ちで羨ましいです」
刀奈達はそう言いながら料理を頬張り、智哉達も焼き魚やおにぎりを口一杯に頬張っていた。
そして7人はお腹一杯になり満腹になったお腹を摩る。
「源蔵さん、半蔵さん。お昼の準備をしてくださってありがとうございます」
「恐縮でございます」
「皆様のお口にあって良かったです」
智哉からのお礼の言葉に二人は一礼をしながらお茶の用意をする。
お昼休憩を終え、7人は川へと戻り浅瀬で水をかけあったり、水の中にいたサワガニを捕まえたりと遊んだ。太陽が沈み始め、空がオレンジ色に染まり始めたことに智哉達は家へと帰って行った。
智哉達は家へと帰り黒江が描いた絵を大きめの模造紙に絵を貼りながらその魚や水生昆虫の説明文を描き、夏休みの自由研究を完成させた。
後日談だが、智哉と穂香と黒江が作った自由研究は自由研究最優秀賞を獲得出来たらしい。
次回予告
日は経ち智哉達は中学生となり、智哉達は浄苑中学の入学式へと向かった。
次回
中学入学